ディ・ポップスグループは、「リアルビジネス × テクノロジー × グループシナジー」を掛け合わせた事業展開をしている会社の集合体で、100年後も社会から必要とされ続けるベンチャーエコシステムの実現を目指しています。永続するグループという姿を描く上で、そのエコシステム内で活用されるテクノロジーとして、AIは不可欠となっていきます。
そこで、この記事では、生成AIについて、そして、そのビジネスへの応用についてまとめてみました。
1. 生成AIとは
生成AIは、もちろんAIのカテゴリの一種です。AI関連の様々な言葉がありますが、以下、大きなくくりから簡単に説明をします。なお、この順番にAIの研究は進化してきました。
① AI(Artificial Inteligence)
人工知能と訳される学術分野の一つのカテゴリで、概念的なもので、「人間と同じ知的作業をする機械を工学的に実現する技術」と定義できます。1950年代に第一次ブームの研究が始まり、80年代に第二次ブームがありましたが、その後2010年頃までは実生活やビジネスへの活用はあまり見られず、冬の時代と言われています。
② 機械学習(Machine Learning)
AIの要素の一つであり、人間が経験を通して自然に学習するように、データを使ってコンピュータに学習させて、その学習を重ねながら、課題の遂行能力を向上させるデータ解析技術のことです。プログラムの訓練に用いられるデータの集合体をデータセットと言い、購入履歴、閲覧履歴、検索履歴、気象データ、画像、自然言語などが利用されます。
③ ディープラーニング(Deep Learning)
機械学習技術の一つで、ニューラルネットワークという、人間の脳を模した方法で意思決定を行うモデルを使い、コンピュータが自動的に大量のデータの中から希望する特徴を発見する技術のことです。CPUの性能向上と大量なデータを収集できる時代となって、機械学習よりも高い精度で複雑な問題の答えを導けるようになり、急速に普及しました。
④ 大規模言語モデル(LLM, Large Language Model)
ディープラーニングモデルを更に発展させたもので、多数のパラメータを持つ人工ニューラルネットワークで構成されるコンピュータ言語モデルのことです。従来のモデルに比べて、データ量、計算量、パラメータ量が圧倒的に大きいことが特徴です。膨大な言語のデータセットを分析することにより、人間の言語テキストを理解し、生成することができます。
⑤ 生成AI(Generative Artificial Inteligence)
今最もよく聞く言葉、生成AIとは、文字などの入力に対して、人が作り出すようなテキスト、画像、音楽、ビデオなどのデジタルコンテンツを自動で生成するAI技術の一種です。訓練データの規則性や構造を学習することで、訓練データに含まれない新しいデータを生成することができます。つまり、既にある答えを返すのではなく、ゼロからイチを生み出し、あたかも思考や創造性を持つ人間のような回答をすることができます。
⑥ ChatGPT(Generative Pre-trained Transformer)
2022年に登場して以来、爆発的に普及したChatGPT。誰でもがAIに触れることができるようになった、AIブームの火付け役ですが、こちらは上記の概念ではなく、生成AIの応用の一つで、オープンAI社がリリースした製品(サービス)名称です。同様の製品にGoogleのGeminiがありますし、また、AppleのSiriもこのモデルを採用する方向にあるようです。
以上、生成AIは人工知能の概念の一種であり、その研究の歴史の中でも最新となるトレンドな技術で、今もなお進化を続けています。上記で列挙した用語は、以下の関係になります。
AI > 機械学習 > ディープラーニング > LLM > 生成AI
2.生成AIでできること
生成AIは、テキスト生成や画像生成などさまざまな応用ができます。それぞれの性質に適した活用方法を選択することで、人間による作業を効率化したり、本人に似たアバターを生成したり、人間では思いつかなかったアイデアを形にすることが可能になります。
① テキスト生成
人間の簡単な指示により、会話形式で質問に答えたり、レポートにまとめたり、逆に、論文や文献など長文の要約やシンプルなキャッチコピーを創出したりできます。また文章だけでなく、プログラミングコードの自動生成などができます。
② 画像生成
テキストでの指示により、その指示した人のイメージに近い画像を生成できるAIです。指示の仕方によっては、プロのイラストレーターが描いたようなイラストや、人間では思いつかないような創造性に富んだアートを生成することもできます。
③ 動画生成
テキストでの指示や入力により、そのイメージに近い動画を作成できます。また、静止画像を動画化したり、既存の動画を別の表現で動かすようなことも可能です。ある人の写真を元に、あたかもその人が演じているかのような動画を作ることもできます。
④ 音声生成
音声やテキストの入力により、新たな音声を生成するAIです。たとえば、ある人物の声を大量に学習させると、その人物の声質で、文章を自由に話す音声を生成することが可能になります。動画生成技術と組み合わせれば、アバターに音声付きで演じさせることもできます。
⑤ その他
これらの他にも、生成AIは、アイデアや発見を導くことにも応用が可能です。科学技術分野では創薬(新たな薬の開発)や新素材開発への活用、エンタメ分野ではパズルゲームの生成や新たなゲームストーリーの生成、新キャラクターの生成などが考えられます。
3. 生成AIのビジネスへの活用
さて、これらの特徴を持つ生成AIを含むAI技術ですが、実際にビジネスの現場に利用されているのでしょうか?
ChatGPTが登場した頃は、AIを相手にチャットを楽しむ、ググるよりも手軽に答えが得られるので、あたかも万能な物知りが手元にいるかのように、調べ事に使う、という利用に留まっていました。しかし、2023年頃から、いよいよビジネスでも幅広く活用され始めています。
① 効率化支援
伝えたいことや送信者との関係等を指示するだけでメールの原案を作成してくれたり、会議の音声を読み込むだけで自動的に議事録を文字起こし、しかも同時に多言語に翻訳もしてくれる、といったことができます。人と違って、ケアレスミスや疲れが無いことや、人間の脳よりも遥かに膨大なデータに基づいて言語化できるので、調べることに多くの時間や作業がかかっていたような業務ならば、相当な時短をすることができます。
② クリエイティブのサポート
コンセプトやターゲット顧客を指定するだけで、バナーなどの静止画像からショート動画まで、クリエイティブを制作することができます。ロゴの案やプレゼンテーションのデザイン等、従来はプロのデザイナ-さんが行っていたセンスを問われるような仕事や、音楽家が行っていたメロディ作りの領域や画家のアートワーク領域でも、AIなら不満も言わず、標準的なものから斬新なアイデアまで、様々なパターンを生成してくれます。
③ 人間の作業の代替
コールセンターやヘルプデスクの代わりにAIチャットで対応したり、過去の判例を調べるだけであればパラリーガルの仕事を代替をしたり、レントゲン画像の読映を医師に代わって行ったりと、人の代わりに作業を行う取り組みも普及し始めています。人の場合には感情や疲労によって判断や対応にブレが生じることは避けられませんが、生成AIの場合にはその対応に波が無く、一貫した答えを示してくれるというメリットがあります。
4. 生成AIの活用における課題
このように、長い研究の歴史とコンピュータの処理能力の向上、そしてインターネットの普及により膨大なデータの収集が可能になったことで、生成AIとその応用範囲は益々広がっています。
しかし一方で、物凄い勢いで進歩する技術の発展に対して、その運用上の課題や懸念が広がってきました。答えの信ぴょう性の問題、学習に使うデータおよび生成されたクリエイティブの著作権問題、企業内情報の漏洩の問題、情報操作や洗脳への悪用ができてしまう問題、そして、若者の学ぶ姿勢、考える能力の低下という懸念、などです。
そのような懸念の中でも、人々に喜びと輝きを提供する企業グループを目指す(株)ディ・ポップスグループが、特に注目している課題があります。
① 倫理・道徳問題
包丁は、料理に使うこともできるし、殺人に使われてしまうこともあります。ノーベルが発明したダイナマイトは、鉱工業や土木業で大いに活用されていますが、戦争の武器にも使われています。現在、世界のほぼ全てのAIプロダクトの開発は、優秀なエンジニアによってリードされています。そのエンジニア達が全て倫理・道徳的に素晴らしい考えを持っているとは限りません。
あるエンジニアは、こんなことを言いました。生成AIの既存の技術を使えば、有名な女優に自分が書いた通りのシナリオと姿で演技させた動画を作ることができる、ダークサイドに落ちたポケモンの物語を作ることができるんだ、と。彼は人権や著作権問題については考えていない、ユーザーが欲しているサービスなら課題は後から解決できると、意に介しません。
生成AIを使って製品を作る企業、生成AIを使う企業、そしてその従業員たちは、AI研究やサービス開発を進める前に、まず、正しい心、理念の教育、日本風に言えば道徳の授業をしっかり受けるべきではないでしょうか?
② 電力問題
流行のChatGPTが、その学習のために必要な電力消費量は、原子力発電1基の1時間分の電力量(約1,000MWh=石油86トン相当)を上回っているということをご存じでしょうか?
生成AIは、高性能の演算装置を使ってデータを学習するため、大容量のサーバーが必要になります。相応の規模のデータセンターも確保する必要があり、必然的に消費電力も高くなります。国際エネルギー機関が2024年に発表したレポートによると、世界の多くのデータセンターでは、生成AIの影響で電力需要が伸びており、2026年の時間当たりの消費量は2022年の売以上に達するとしています。
つまり、生成AIの利用が増えれば増えるほど消費電力量も多くなり、発電の際に排出されるCO2の量も増える恐れがあります。人類のためにと願って開発された生成AI製品のおかげで、地球温暖化など環境に悪影響を及ぼし始めているのです。
生成AIの開発に関わる事業者は、同時にクリーンエネルギーの開発や事業への投資も同時に行うよう規制するなど、地球のエコシステムとセットで考えるべきではないでしょうか?
5. AIは人類をサポートする道具
これらのAIに関する定義や、AI技術で実現できること、そして課題や問題を踏まえて、その有益な活用方法を考えると、以下のようなことが言えるのではないでしょうか?
生成AIの技術によって、確かに、人が行う作業は各段に効率化が図れるようになりました。また、単なる調べ事やレポートの作成補助に留まらず、営業や製品開発の業務プロセスの効率化により、事業会社の売上及び利益への貢献が目に見える形のプロダクトも徐々に登場するようになりました。
生成AIの適用範囲が広がるにつれて、人が行っていた作業や職業のうち、いくつかは消滅するものもあります。一方で、人にしかできないこと、よりクリエイティブなこと、感情が伴った判断、人と人の触れ合い、といった領域はこれまで以上に重要になります。別の見方をすれば、生成AIのおかげで、人は、その人にしかできないことに、時間とその能力を集中することができるようになります。
また、疲れ知らずで、感情を持たず、倫理感よりもデータに基づいて、テキスト、画像、映像等を生成するAI。その制作物の中から、どれを選ぶのか、どのように使うのか、どのようなルールで使うのか、といったことは、人が策定しなければいけないし、その関わる人々の倫理感や道徳が今まで以上に問われることとなります。
そして、地球温暖化を進める要因の一つであるCO2の排出量の増加に一役買ってしまっている、データセンターでの消費電力の問題。この消費量を抑えるデータ学習技術や、データセンターを使わないエッジコンピューティングの技術、電力消費を圧倒的に抑えられる光コンピューティングの技術、などの開発も併せて行われることが期待されます。
以上、AIは人の仕事を奪ったり、その価値を下げてしまうテクノロジーではなく、人の能力を最大限に活かし、一人一人が活き活きと働けるようにするための支援ツールであると、ディ・ポップスグループは考えます。
その考えの元、人々が輝くため、また社会課題解決のためにAIを活用しているベンチャー企業に対して、出資を通じた支援とその利用を通じたグループ内での研究をしていきます。
これからもご支援、応援の程よろしくお願いします。
D-POPS GROUP アドバイザー 杉原眼太