【ベンチャーエコシステム事例】オンラインの壁を越えろ!『コドマモ』を全国の携帯ショップに広めた3社の挑戦
「子どもは学校でいじめられていないか?」
多くの保護者が抱えるこの不安を、AIの力で解消するペアレンタルコントロールアプリ『コドマモ』。
この革新的なサービスが今、全国の携帯ショップで存在感を高めています。これは、サービス提供元のAdora株式会社と、携帯ショップ事業で豊富なノウハウを持つ株式会社ディ・ポップス、そして全国の携帯ショップに強固なネットワークを持つアドバンサー株式会社の3社が、互いの強みを活かした戦略的パートナーシップを構築した結果です。
本記事では、ベンチャーエコシステムの同志である3社が、いかにして『コドマモ』を日本中に広めるという課題に挑み、解決へと導いたのかをまとめます。
【課題】『コドマモ』の認知度向上という壁
①コドマモというサービスとは?
Adoraが提供するペアレンタルコントロールアプリ『コドマモ』は、子どもの安全を守る革新的なサービスです。具体的には、お子さまと保護者のスマホにインストールしておくと、お子さまが危険なチャットに巻き込まれていることを検知したり、スマホの使いすぎを防ぐスクリーンタイムの制限をかけたり、歩きスマホの防止をしたりすることができます。
しかし、サービス提供開始当初、大きな課題に直面していました。それは、いかにして『コドマモ』の存在を必要とする人々に知ってもらうか、という認知度の壁でした。
②当時のコドマモと顧客の接点は?
当時のコドマモと顧客との接点は、主にオンラインチャネルとアプリ内に限定されていました。SNSやウェブ広告を通じて公式サイトへの誘導を図るものの、受動的な広告配信だけでは、潜在顧客にリーチするのは困難でした。また、アプリ内のチャット機能は、既にサービスを知っているユーザーへのサポートに留まり、新規顧客との接点にはなり得ませんでした。「子どもは学校でいじめられていないか?」という不安を抱える多くの保護者がいる一方で、『コドマモ』がその解決策となりうることを知る機会が圧倒的に不足していたのです。この状況を打開しなければ、サービスが本当の意味で社会に貢献することはできませんでした。
【仮説】全国の携帯ショップが潜在顧客との接点となる
上記の課題を解決するため、私たちは仮説を立てました。それは、全国に広がる携帯ショップこそが、『コドマモ』と顧客を結びつける最適なタッチポイントになるのではないか、というものです。この仮説の実現には、「携帯ショップ運営のノウハウを持つディ・ポップス」と「全国の携帯ショップに強固なつながりを持つアドバンサー」の支援が不可欠でした。
携帯ショップで『コドマモ』を案内することには、多くのメリットがあります。
①顧客との直接的な接点
子どもが初めてスマートフォンを持つ際など、来店した保護者に直接『コドマモ』を提案できます。
②専門スタッフによるサポート
料金プランが複雑なように、多くのアプリの中から最適なものを選び、設定をサポートして欲しいというニーズは少なくありません。専門知識を持つスタッフが、親と子の両方のスマートフォンでアプリを使えるようにサポートできます。
③継続的な相談窓口
サービス利用後に困りごとが生じた際も、店舗に直接相談できる安心感を提供できます。
オンラインだけでは解決できない課題に対し、リアル店舗での「face-to-face」の価値を最大限に活かすという構想は、D-POPS GROUPの事業展開の根幹である「リアル×テクノロジー×グループシナジー」を体現したものです。
【戦略】「販路拡大」「システム連携」「販売スキーム構築」という3本柱で全国展開へ
仮説を現実のものとするため、私たちは3つの柱からなる戦略を構築しました。
①販路拡大
全国に約7,000店舗あるキャリアショップの中でも、圧倒的な店舗数を誇るドコモショップでの取り扱いを目指しました。そのためには、大手通信キャリアが設けている「独自商材申請制度」を活用する必要がありました。この制度は、販売店が独自の商品・サービスを取り扱う際に必要な承認プロセスです。ディ・ポップスが運営するドコモショップから申請を提出し、承認後にアドバンサーが持つ人材派遣先のネットワークを通じて、全国のドコモショップへの営業活動を展開する、という戦略を描きました。
②システム連携
『コドマモ』は当初、アプリ内課金のみで、携帯ショップでの販売には適していませんでした。アプリ内課金という仕組みでは、店舗ごとの販売実績を正確に把握できず、決済手数料の高さから販売店への十分なインセンティブも提供できなかったのです。この課題を解決するため、私たちは販売店のビジネスモデルに寄り添ったシステム連携を模索し、販売実績の可視化と適切なインセンティブを実現する仕組みを構築しました。
③販売スキーム構築
携帯ショップでの販売ノウハウが豊富なディ・ポップスのトップセールスメンバーとの協議を通じて、最も効果的な販売スキームを確立しました。具体的には、フィルタリングサービスの案内が義務付けられている18歳未満のお客様への提案と組み合わせることです。このスキームにより、保護者が子どものスマホの安全対策を考える、まさにその瞬間、コドマモを自然な形で選択肢として提案できるスキームを構築しました。
これらの戦略は、3社が密に連携することで、単なる計画から実行可能な全国展開へと昇華しました。
【実行】ベンチャーエコシステムが加速させた成長軌道
ここまでの課題・仮説・戦略を元に実行した内容を時系列でまとめました。
2024年7月: ディ・ポップスグループがAdoraに出資。
※Adora株式会社への出資 プレスリリース
2024年8月: Adora、ディ・ポップス、アドバンサーの3社によるプロジェクトチームが発足。
2024年10月:スマホ相談窓口 TOP1での販売開始(2024年10月1日~)
最初のステップとして、ディ・ポップスの自社店舗『スマホ相談窓口 TOP1』で販売を開始。販売ノウハウを蓄積し、販促物をグループ会のgraphDで制作しました。
2024年10月下旬:ディ・ポップスの運営するドコモショップでの独自商材申請の承認
蓄積した「販売ノウハウ」とドコモショップでの「独自商材申請の承認」を武器に全国のドコモショップへの営業を開始。「社会意義と収益性を兼ね備えた、スマホとセットで売りやすい商品」として多くの販売店から好意的な反応を得ました。
2025年2月:ディ・ポップスの運営する楽天モバイルショップでの独自商材申請の承認
将来的な店舗拡大を見据え、新たな販路を確保しました。
このように、ディ・ポップスグループのベンチャーエコシステムが、Adoraの成長を加速させる強力なエンジンとなりました。
【成果・次への挑戦】ドコモショップ約300店舗への拡大と、今後の課題
2024年11月から本格的に開始したドコモショップ向け販路拡大は、わずか1年足らずで約300店舗での取り扱いを実現しました。この急速な拡大は、3社の連携がもたらした大きな成果です。
しかし、次なる課題も見えてきました。それは、導入店舗での獲得数の向上です。導入店舗数が増える一方で、各店舗での獲得件数にはばらつきが生じています。この課題に対し、全国に拠点を置くアドバンサーが、携帯ショップでの販売経験を持つメンバーでサポートチームを新設しました。獲得に伸び悩む店舗への個別サポートを通じて、全体の底上げを図っています。
また、ディ・ポップスとアドバンサーの提携先であるMVNO企業や端末メーカーなど、さらなるパートナー企業への導入支援もAdoraと共同で進めています。
【まとめ】ベンチャーエコシステムが拓く、成長への無限の可能性
本記事では、ベンチャーエコシステムの同志である3社が連携することで、1社だけでは解決が困難だった『コドマモ』の認知度向上という課題に挑み、大きな成果を上げた事例をまとめました。
今回の取り組みは、単なる資金提供に留まらず、グループ内の各企業が持つ専門性とリソースを結集させることで、ベンチャー企業の成長を力強く支援する、新しい成功モデルといえるのでははいでしょうか。ディ・ポップスグループは、これからもベンチャーエコシステムの無限の可能性を活用し、社会に貢献する新たな価値を創出し続けます。
株式会社ディ・ポップス 坂巻彰一/アドバンサー株式会社 細田修平・大橋二三