クロスセルとは?売上総利益を劇的に改善する具体策と成功事例を解説
今回は、企業の基本的な収益力を示す売上総利益に着目し、売上総利益の上げ方 その①として「クロスセル」について解説して参ります。
「クロスセル」とは、顧客が購入した商品やサービスに対し、関連する商品やサービスを追加で提案し顧客単価を上げ、売上を上げる手法です。牛丼屋で卵とサラダを、ハンバーガーショップでポテトとドリンクを勧められたりすることが最も一般的なクロスセルの事例と言えます。今回は小売業の事例を元に「クロスセル」を解説していきたいと思います。
1.経費も時間もかからずに絶大な効果が得られる手法
前回までに「在庫回転率」「一人当たり売上高」「坪効率」を取り上げ、会社経営をしていく上で利益を上げる手法として企業の収益力を示す売上総利益ではなく、あえてCFや経費(人件費、家賃)を取り上げました。同じような売上規模、同じような商品を扱う競争環境の中で同業他社と大きな差別化を図るためには売上総利益よりCFや経費に目を向けることが肝要であるからで、前回までに具体的事例をご説明いたしました。今回はCFや経費の重要性を理解いただいた上で、会社経営の本丸である売上総利益に着目して参ります。
売上総利益は非常に単純な指標で、売上高から原価を差し引いた利益のことで、粗利と言ったりもします。商品やサービスそのものが、独自性があり差別化されていれば、高い売上総利益を上げることができます。今回は独自性があり差別化された商品やサービスの作り方で売上総利益を上げる方法ではなく、同じような商品を扱う状況の中で、如何に売上総利益を上げるか?ということを取り上げて参ります。
今回取り上げる「クロスセル」は経費も時間もかからずに売上総利益に対し絶大な効果が得られる手法です。ではなぜ「クロスセル」が重要か、以下順を追ってご説明いたします。
2.クロスセルとは
まず、クロスセルとは、顧客が購入した商品やサービスに対し、関連する商品やサービスを追加で提案したり品揃えをしたりすることで、顧客単価を上げたりリピート購入を増やすことで売上を上げる手法です。
例えば
・スーツを購入すれば、スーツに合ったネクタイを勧められる
・スマホを買えば、フィルム、ACアダプタ、保険、ウイルスソフトを勧められる
・カメラを買えば、レンズ、フィルター、メモリーカードを勧められる
・車を買えば、タイヤ、シート、ドラレコ、カーナビ、保険を勧められる
といった様なことが代表的で、このほかにもクロスセルの事例は枚挙にいとまがありません。
上記の様に直接的に勧められなくても、パソコンやカメラの周辺機器の様に沢山の品揃えをすることで後から購入してもらえる状況を作るということも、広義の意味ではクロスセルと言えます。クロスセルは、リアル店であれば店員のトークで、WEBであれば商品リコメンドとして、商品やサービスを販売する業態や業種であればどの企業でも大なり小なり実践していると思います。
クロスセルは一見非常に地味ですが、売上総利益に対し絶大な効果を及ぼします。次項ではどのくらいの効果があるかを見ていきたいと思います。
3.なぜクロスセルが重要か? クロスセルの及ぼす効果とは
いくつかの事例をもとにクロスセルの及ぼす効果を解説していきたいと思います。最初は、ある会社のある時期でのパソコンの利益をモデルケースに解説します。(モデルケースは架空の事例としていますが、実際の事例がベースとなっております。)
モデルケース
PC本体 売上総利益28億円 利益率20% 売上140億円
PC周辺/アクセサリー/関連商品 売上総利益 44億 利益率40% 売上110億円
(PC周辺/アクセサリー/関連商品とは、プリンター/ルーター/記録装置等の周辺機器、マウス/キーボート/バック等のアクセサリー、インク/紙等の消耗品、ブロードバンドの加入手数料、関連ソフト/関連書籍等を全て合算したものです。)
この事例で見ていただきたいポイントは、利益額、売上高です。
顧客が最初に目的として購入するパソコンの利益は28億円。パソコンを購入と同時、もしくは購入した後に必要となるクロスセル対象商品であるPC関連商品合計の利益は44億円。実に16億円、比率にして157%も利益が違います。売上はPC本体が140億円、PC関連合計は110億円で、クロスセル対象商品であるPC関連商品合計の方が30億円も少ないにも関わらずです。
PCだけではありませんが、顧客が最初に目的として購入する商品の多くは、商品での競合や店舗での競合があり、それほど儲かりません。PC関連商品合計の様なクロスセル対象商品はすべてではありませんが、利益率の高い商品が多く、クロスセル対象商品を顧客が最初に目的として購入する商品の販売時やその後のリピートで一生懸命売ることが利益額的にも、効率を見た利益率の面でも、売上総利益を上げることに対し絶大な効果を発揮していることがお分かりいただけるかと思います。
上記事例はPCの事例だったので、次はスマホの事例を見てみましょう。
以下の事例はある会社のスマホ販売における1ヶ月の利益内訳です。(モデルケースは架空の事例としていますが、実際の事例がベースとなっております。)
モデルケース
スマホ販売総利益 9,000万円
スマホ本体の販売による利益 5,000万円
スマホ関連商品利益 4,000万円
(スマホ本体の販売による利益とは、スマホ本体を販売することにより得られる利益の合計、スマホ関連商品利益とはスマホ本体のクロスセルによりスマホ本体以外から得られる利益の合計です。)
スマホ本体は、スマホの新規加入がPCに比べ利益があるので、顧客が目的として購入するスマホ本体の利益よりクロスセル対象商品であるスマホ関連商品の利益の方が多くなる、というところまでにはなっていませんが、全体の比率の45%が、スマホ関連商品の利益で占めています。顧客が目的として購入する商品の販売時に、クロスセル対象商品を一生懸命売ることで、売上総利益を上げることに対し、絶大な効果を発揮していることがこの事例でもお分かりいただけるかと思います。
上記2つの例からも分かる様に、クロスセルは売上総利益に対し絶大な効果を発揮するわけですが、クロスセルの最大のメリットは、追加の経費がほぼ掛からず、売上総利益の増加分=営業利益の増加につながるということです。
例えば店舗なら、売上を上げるために出店をしますが、家賃や人件費等の経費が追加でかかります。法人営業なら売上を上げるために営業マンを増強したり、広告費を追加したり、営業所を追加したりしますが、この分の経費が追加でかかります。店舗を増やしたり、営業マンを増強したり、広告費を増やしたりすることで、当然売上も売上総利益もいくらかは上がるでしょうが、この経費をかけた分を回収できる売上や売上総利益が上がる保証はありません。経費分が回収できず、営業利益ベースでは赤字だったという事例はたくさんあるのではないかと思います。
これがクロスセルだと追加の経費がほぼ掛かりません。クロスセルにより売上が上がり、売上総利益が上がると、追加の経費がほぼ無いので、上がった売上総利益がそのまま営業利益になるという、利益貢献度が抜群な手法であるわけです。
今回のモデルケースだけでなく、商品やサービスを販売するビジネスであれば、飲食でもアパレルでも、クロスセルを活用することで、顧客が目的として購入する商品やサービスで出す利益と同等か、それ以上の利益を上げることも可能で、全体の売上総利益の10%程度を底上げする程度なら、ハードルの低い取り組みで実現可能です。
さらに前述したように、追加の経費がほぼないので、売上総利益の底上げ分がそのまま営業利益になります。売上総利益や営業利益を上げたいと思うなら、出店や営業マンの増強、広告費の増加で新しい顧客を探すのではなく、最初にクロスセルで顧客単価を上げることをおススメいたします。クロスセルでの売上増加が営業利益まで直結して増加するためです。
同じような商品を扱う競合状況の中では、競合他社を大きく上回るクロスセルを実現すれば、売上総利益だけでなく、営業利益の面でも競合他社に大きなアドバンテージを持つことになります。クロスセルが経営に及ぼす効果が如何に大きいかおわかりいただけたのではないかと思います。
4.クロスセルで売上を上げるポイント
クロスセルの重要性はご認識いただけたかと思いますので、クロスセルで売上を上げるポイントをいくつか紹介させていただきます。
クロスセルで売上を上げるポイント①
クロスセルが成り立ちやすい商品を扱うということと、関連商品の品揃えをしっかりすることです。
分かり易い例でいえば、冷蔵庫や洗濯機は延長保証くらいしかクロスセルが成り立ちませんが、例に出したPCやスマホ、カメラ、車、スーツあたりはクロスセルの宝庫といえます。スーツを例にとると、ワイヤシャツ、ネクタイはもちろんのこと、スーツに合うカバンやベルト、靴等を品揃えすればクロスセルが成り立ちますし、ネクタイピンやシャツずれの防止グッズあたりもクロスセルにつながります。上記は例ですが、クロスセルが成り立つ商品を扱うことと、その関連商品の品揃えをしっかり行うことで、クロスセルによる売上は上がります。
クロスセルで売上を上げるポイント②
クロスセルの重要性の教育が従業員になされており、常に会社と従業員がクロスセルを高めるために商品知識や接客トーク、接客技術を磨き、接客や展示、仕入れ等に対し創意工夫をし続ける血の通った経営をし続けることです。
なぜクロスセルの提案商品が必要なのか?を顧客の目線で説明できるトークを身に着け、提案商品が複数あれば提案の順番とどのタイミングで提案するかを考え、提案商品をどこに置くと効果的かを考え展示をしていく。このような創意工夫ができる会社とできない会社では、圧倒的な差が生まれてきます。
また、クロスセルで提案する商品は利益があればなんでもいいというわけではありません。関連性があり顧客メリットが無ければ、単なる無理やり販売になってしまい、購入体験における顧客満足を落とす結果になり、経営としてマイナスの結果になってしまいます。どの商品のどの部分に関連性があり顧客にメリットがあるのかを顧客の目線でストーリー化する必要があります。このようなことの実現にも、深い商品知識と創意工夫が不可欠であることは言うまでもありません。
クロスセルで売上を上げるポイント③
テクノロジーの活用です。
WEBで買い物をすれば過去の購買状況からレコメンドが出ますし、通信業界では接客中にシステムでレコメンド商品が上がってくるといった取り組みが始まっています。当然、誰がどのくらいクロスセルができているのかを可視化することも、テクノロジーの領域です。テクノロジーの例はこれだけではありませんが、テクノロジーを使いこなすことはクロスセルによる売上アップに欠かせない要素の一つであることは明確です。
以上、クロスセルで売上を上げるための代表的な例を3つほど紹介いたしました。
もちろんクロスセルで売上を上げるためのポイントは他にもございますが、最大のポイントは、クロスセルの重要性の教育がなされたヒトがテクノロジーを使いこなすことです。結果的には、クロスセルで売上を上げ経営効率を飛躍的に向上させることは、ヒト×テクノロジーの掛け算の上に成り立つということになると思います。
5.まとめ
今回は、クロスセルのお話をさせていただきました。クロスセルは経費も時間もかからずに売上総利益だけでなく、営業利益に対しても絶大な効果が得られる手法で、このクロスセルにより、顧客が目的として購入する商品やサービスの売上を最大化することこそが、売上総利益と営業利益の最大化につながり、競合他社との大きなアドバンテージポイントになることをご説明いたしました。
今回のクロスセルは、前回までにお話しした「在庫回転率」、「一人当たり売上高」、「坪効率」として取り上げた、在庫、人件費、家賃のCFや経費の後にあえて取り上げております。1番最初の「在庫回転率」から一連の流れとしてご一読いただきますと、経営のポイントがより見えてくると思います。まだお読みでない方は、是非ご一読いただけますと幸いです。
今回のクロスセルを通してディ・ポップスグループとしてお伝えしたいことは、前回までと同様ビジネスは、ヒトにより成り立っているということです。商品を購入いただくお客様もヒトであり、商品を販売する販売員も、テクノロジーを使うのも、すべてはヒトであります。AIをはじめとするテクノロジーを使いこなさなければビジネス上で競争に勝ち生き残ることはできないと思いますが、テクノロジーだけでは生き残ることはできないと思います。テクノロジーが良いから、経営戦略が良いから、ビジネスが成功するのではなく、ヒト×テクノロジー×経営戦略の掛け算が大切であるとディ・ポップスグループは考えます。
この考えの元、ディ・ポップスグループはヒトが輝くために、また社会課題解決のために、ベンチャー企業に対して、出資を通じた支援と、効率という数字だけではない価値を通じた、グループエコシステムの実現を目指しています。
これからもご支援、応援の程、よろしくお願いします。
D-POPS GROUP 常務執行役員 渡辺哲也