
こんにちは。テックビーンズの前川です。
2025年11月27日、僕らは展示会「DXPO」のブースに立っていました。テックビーンズ、アットマーク・ソリューション、アイデアランプの3社がそろって出展した、初めての展示会です。正直、手応えはありました。ただ、2日間で出会えた企業は目標の半分くらい。で、そこから受注につながった案件は、ひとつもなかったんですよね。
それから9か月後の2026年8月、東京ビッグサイト。ブースの前で声をかけるのは営業や非エンジニアのメンバー、足を止めてくれた方に技術の話をするのはエンジニア。各社で役割を分けて動いた2日間で、出会えた企業は前回をぐっと上回り、商談のテーブルにつく会社も一気に増えました。

テックビーンズ、アットマーク・ソリューション、アイデアランプ。D-POPS GROUPのIT3社が「3本の矢」として開発アライアンス「ワンテックワールド」をつくった話は、前回の記事(3本の矢で挑む! IT企業3社が結成した開発アライアンス「ワンテックワールド」)に書きました。
あれから1年。前回掲げた4つの挑戦はどうなったのか。うまくいったことも、いかなかったことも含めて、3社で束になって動いたこの1年を書いてみようと思います。
結論からお伝えをすると、3社がただ集まるだけでは、お互いそれぞれの経営方針や内部事情があり、課題は「矢の束ね方」にありました。"シナジー"を生み出すことは容易ではありませんでした。では、どのようにして取り組んできたのか。前回掲げた4つの挑戦に合わせてご紹介いたします。
1. 答え合わせ──4つの挑戦のその後
AIで開発を加速する
3社の開発責任者で定例MTGを実施し、AIの知見を持ち寄って議論を続けてきました。設計書のテンプレート、AI活用度を測る診断ツールの試作、AIコーディングツールの使われ方を見える化する仕組み。各社の中でも、AIエバンジェリストを置く、全エンジニアにツールを配る、上流担当メンバーにAIの上位プランを付与する、とそれぞれのやり方で前に進みました。
ただ、3社を横断して、現場の全てのエンジニアにAIを活用した開発手法を展開するには試行錯誤の連続でした。AIは日進月歩で、上から「これがベストな使い方です」とトップダウンの方式では、3か月もするとすでに古びたものになり、現場では最新の使い方がある状態でした。各社の考え方にも差がある。
なので僕らは、型を決めて落とし込むのではなく、現場でのリアルな実践を持ち寄り、ナレッジを共有するボトムアップの形を仕組み化しました。現場で使っている人たちに、普段の使い方をそのまま発表してもらって、意見をぶつけ合ってもらう形です。
11月13日、3社の現場メンバーが2名ずつ登壇する「AI共有会」を開きます。役員層ではなく、シニア・ミドル・ジュニアが、自分と同じくらいのレベルの人の使い方を知る場です。役員層が話すと「あの人だからできるんでしょ」で終わってしまい、なかなか自分事になりにくいですよね。そうではなく、誰もが試行錯誤の中でナレッジを積み上げていき、ベストを探すのではなく現場の声を聞いて互いに磨き合う。何を目指すのかの共通認識は、そこから育んでいきます。
アイデアランプのクリエイティブを活かしたインバウンド
2026年8月、3社横断のサイト「Web開発ナビ」を公開しました。3社のエンジニア10数名が顔と名前を出して並び、「ゼロスタート」という無料プロトタイプのサービスを看板にしています。デザインはアイデアランプが、実装はアットマーク・ソリューションが、全体のディレクションはテックビーンズがそれぞれ担当し、3社でローンチいたしました。こちらのお問い合わせへの対応を強化してまいります。
【Web開発ナビ】

一気通貫の体制による大手案件への挑戦
今年7月、ある大手メーカーの商談に、3社の代表が全員でスクラムを組んで対応しています。秘密保持契約の締結まで進み、詳細の解析を行なっている段階です。別の場では、IT領域のM&Aを手がける会社から、「インフラからアプリ、上流工程まで一体で任せられる」という体制そのものを評価してもらえました。着実に前進していますが、超えなければいけない壁はまだまだあります。開けるのは、これからです。
グループ外パートナー会社の参画
「グループ3社全てと秘密保持契約を結ぶ」という条件をクリアしたAmpTech、Beekleなどのパートナーが、2026年2月に加わりました。AmpTechとは展示会に2回一緒に出て、ワンテックワールドに流入したDX案件も担ってもらっています。Beekleからは案件の紹介に加えて、高いAIの知見を共有してもらい、定期的にリソースを共有する場も始まろうとしています。こちらの挑戦も「できた」と言える事例です。
この1年で生まれたものを、数字でざっと振り返ります。
- 2回の出展で出会えた企業は、のべ126社。そのうち25社ほどと商談に進み、この記事を書き終える直前に、1社から初めての受注をいただきました。
- 3社横断のサイトを公開し、エンジニア10数名が顔と名前を出しました。
- グループ外のパートナーが加わり、グループ内の連携案件は、前回の「20件以上」から年間40〜50件に増えました。
- そして、3社で受けた案件のうち月々続く契約は、春から秋にかけて月額ベースで約1.5倍に積み上がりました。
こうした定量的な数字をしっかり追っていくことが大事だと思っています。
2. 出口が、入口になった
当然、展示会に合同出展しただけで簡単に受注できるほど甘いものではありませんでした。
では受注はどこから来たのか。展示会という入口ではなく、「3社で受ける」という出口からでした。 そして、その出口が、次の入口になり始めています。
テックビーンズの昔からのお客様に、EC構築を支援している会社があります。そこからEC構築の案件が相次いだんです。テックビーンズだけでは、さすがに受けきれない。そこでアイデアランプと一緒に提案して、受注にいたりました。いまは構築から保守まで、アイデアランプが担っています。入口は1社でも、得意な会社が受ける。アライアンスの基本形が、絵に描いた餅じゃなくて、受注として動き始めました。1年経ってみると、インフラや保守はアットマーク・ソリューションが月々の契約で、EC構築はアイデアランプがプロジェクト単位で受ける、という形が自然に固まっていました。
もう1つ。業務コンサルティング会社が業務の流れを見える化して、アライアンスパートナーであるAmpTechが開発を担ったDX案件が、この秋に納品されました。元請の会社からは「非常に良かった」と言ってもらえました。見える化して、合意して、小さく作って確かめる。「PoCと言えばワンテックワールド」と掲げてきた僕らにとって、これ以上ない手応えです。
そして、ここが1年でいちばん変わったところです。展示会で1社ずつ取りに行く入口から、案件が継続的に流れ込んでくる入口へ変わりました。業務コンサルティング会社、EC構築支援会社と営業パートナーの関係を結び、そこから来る案件をワンテックワールドで受ける形です。コンサルティング会社には毎月10件ほどの相談が入っていて、業務の見える化から数か月後に開発が始まる。1回きりの受注を追いかけるのではなく、流れ込む案件を3社で受け続ける仕組みに、入口そのものが変わり始めています。2027年の初めあたりから、本格的に動き出す見込みです。
グループの「ベンチャーエコシステムとは?成長と永続のためのプラットフォームの実現について」には、コラボレーションの要素として「顧客開拓」と「協業」が挙げられています。この1年、僕らが着実に結果を出せているのは、この2つでした。
3. グループ連携で、何が変わったか
テックビーンズから見た変化は、はっきりしています。一社では座れなかった商談の席に、座れるようになったことです。アイデアランプのUI/UXと、AWSパートナーであるアットマーク・ソリューションのインフラを合わせると、提案の厚みがまるで違うんですよね。大手メーカーの商談に3社の代表で乗り込めたのも、大手小売チェーンの内製化支援をアットマーク・ソリューションと一緒に提案できているのも、この組み合わせがあってこそです。
それからもう1つ。大型案件でテックビーンズの手が足りなくなったとき、2社のエンジニアがテックビーンズの手がの案件に入ってくれました。手が足りないときに支え合える。グループ連携をして、最初に実感したのはこれでした。
じゃあテックビーンズは何を担うのか。いまやっているのは、業務システムの要件定義から開発までを引き受けて、AIを使った開発の効率化と品質向上を、日々の案件の中で積み上げることです。お客様の要件を分解して、何をAIに任せ、何を人が設計し、どこでレビューを挟むか。この進め方をワンテックワールドの標準にしていくことと、第4章で書くFDEの育成を主導すること。この2つが、3社の中でのテックビーンズの役割だと思っています。
アットマーク・ソリューションのインフラとセキュリティの力は、3社の提案の「土台」になっています。クラウドの設計から運用まで任せられる会社が同じチームにいる。お客様から見た安心感が、それだけで変わります。
アイデアランプの宮原社長は、この1年をこう振り返っています。
「自社だけでは提案の幅に限界があった基幹システム連携やインフラの領域まで含めて、ワンストップで提案できるようになりました。特にEC事業者様のサイト刷新やAX、DX対応のご提案では、各社と提案段階から連携し、案件の受注や確度の高いご提案につながりました。3社の技術を組み合わせることで『選ばれる理由』が深まった1年でした。」
4. つまずいた話
うまくいった話ばかり並べても、読んでもらう意味は薄くなると思うので、つまずいた話を3つ程書きます。
見込み顧客を、追い切れなかった
1回目の展示会で出会った企業について、僕らは、その一社一社を追い切れませんでした。費用感が合わずに見送りになった案件、返信が途絶えた案件。追いかける手が、まったく足りていませんでした。
2回目は、やることを1つだけ決めました。メールを2通送って反応がなければ、電話をかける。 それだけです。電話をかけた先の38.5%が商談に進みました。ちなみに、怒られたことは一度もありません。
そして、進んだ商談の1つが、1年目の最後に、展示会からの初めての受注になりました。
営業会社の方から見れば、基本中の基本だと思います。でも、僕らはシステム会社なんですよね。営業のナレッジは、どの社にもほとんど溜まっていませんでした。だからこそ、やったことを手順にして残し、出展した各社に共通のやり方として広げ、すべてのリードに同じように当てていく。一から作る営業の型を、個社じゃなくてアライアンスの財産にする。そこに意味があると思っています。11月の展示会からは、この手順で動きます。
実績がないから、実績がつくれない
ある大手開発会社グループのIT企業に提案したときのことです。技術力は認めてもらえました。それでも通らなかった理由は、「チームで成果を出した実績がない」。別の上場企業グループの案件では、AIを使った開発に対する決裁者の不安が、失注の一因になりました。
悔しい話なんですが、学びははっきりしています。大規模対応をうたうなら、まず中規模の案件で3社チームの実績をつくること。そしてAIは、「速い」とだけ言わないこと。工数を減らしつつ、ドキュメントとテストはきちんと残って、属人化しない。その安心感とセットで伝えて初めて、決裁者は首を縦に振ってくれるんです。
バラバラに戦っていた
いちばん痛かったのはこれです。3社とも、それぞれが自分の案件を回していて、隣の会社のどのメンバーが空いているのか、見えていませんでした。「束になった」はずなのに、矢はバラバラのままだったんですよね。
背中を押してくれたのは、ディ・ポップスグループの渡辺常務でした。「可視化ができていないから、各社が個別に戦ってしまう」。この言葉で、リソースの見える化と、「展示会のリードはアライアンスの共有財産」というルールづくりに踏み出しました。「小さくてもいいから、まず始めること」という助言にも助けられました。
この助言を受けて、僕らは自分たちで仕組みをつくりました。"当たり前のこと"ではありますが、これを愚直に、地道に、コツコツと進めていくこと、これが何よりも重要なことだと実感しました。ツールを作るだけでは形骸化してしまいます。これを推進する担当者を決め、少ない時間でも定例のMTGを実施することも重要で、これら一体となって仕組み化する取り組みを行なっています。
「顧客を知る」はエンジニアの仕事でもある
先ほどのDX案件の高評価から、もう1つ学んだことがあります。顧客満足度を決めるのは、成果物の品質だけじゃないということです。お客様の課題やビジネスの中に入り込んで、理解と報連相を重ねながら、一緒に課題を解いていく姿勢。これが評価を分けていました。
「顧客を知る」。商売の基本中の基本です。営業の仕事だと思われがちですが、僕らはこれを、エンジニアという専門職も身につけるべきものだと考えています。お客様を知らずに書いたコードと、知ったうえで書いたコードでは、同じ仕様でも届く品質が違う。技術力に「顧客を知る力」を掛け合わせたものを、僕らの提供する品質にしていきたいんです。
お客様の現場に入り込んで、課題の発見から解決まで伴走するエンジニア。海外では「FDE(Forward Deployed Engineer)」と呼ばれていて、日本の企業にもこの考え方が浸透し始めています。僕らはこのFDEの育成を、ワンテックワールドの方針として打ち出していきます。
5. ベンチャーエコシステムの中で、僕らはどこまで来たか
「ベンチャーエコシステムとは?」では、エコシステムを支える要素として、コラボレーション(顧客開拓・協業・人材交流・新規事業創出)と、学び合いと助け合い(勉強会・レンタル移籍・共同採用)を挙げています。
顧客開拓と協業は、ここまで書いてきたとおり、受注として動き始めました。人材交流も、展示会の合同ブース運営や他社案件へのエンジニア参画という形で、少しずつ形になっています。新規事業で言えば、Web開発ナビとゼロスタート、それにスキルシートを3社で統合するシステム等が芽を出したところです。
一方、学び合いと助け合いは、土台をつくっている途中です。勉強会は開発責任者層の知見共有から、ようやく現場メンバーが登壇する共有会へと広がるところですし、レンタル移籍や共同採用は、3社横断の人材活用の取り組みとして、これから手をつけます。
できていることと、これからのこと。その両方があるのが、1年目の等身大の姿です。
6. 束ねた矢をより強固にする1年へ
次の1年でやることは、4つです。
1つ目は、「AIを使いこなす力」と「顧客を知る力」の掛け算で、FDEを育てること。11月のAI共有会を一度きりのイベントで終わらせず、現場の使い方を持ち寄る場として続けていきます。そこで3社の共通認識をつくりながら、お客様の課題に入り込んで解決まで伴走できるエンジニアを増やしていきます。
2つ目は、3社横断の人材活用。人材の活用、見える化、共有は、発足当時からの課題でした。稼働状況の見える化を足がかりに、ワンテックワールドとして案件を獲得し、3社のエンジニアが会社の垣根を越えて稼働する協業を推し進めていきます。
3つ目は、3社チームの実績をつくること。「実績がないから、実績がつくれない」という壁を越えるために、3社での合同提案とチーム編成を、積極的に仕掛けていきます。いま進んでいる大手メーカーの案件も、その試金石です。
4つ目は、ご支援できる会社様を1社でも多く増やすこと。展示会からの受注は、1年かけてようやく1件。Web開発ナビから問い合わせを生み出して、2026年11月、2027年1月の展示会には、一から作った営業の型を持って臨みます。
で、その先で、D-POPS GROUPの中のITシナジーの中心になっていきたい。3社でワンストップで提案し、受けきれる体制を、グループ全体の先行事例にしていく。これが僕らの本心です。
アイデアランプの宮原社長は、「3社の強みを掛け合わせた共同提案を、個別の偶然ではなく仕組みとして回せる体制に期待している。アイデアランプはUI/UXとDX実装の担い手として、グループ横断の成功事例づくりを牽引していきたい。」と言っています。偶然ではなく、仕組みとして回す。まさにそこが、次の1年の肝だと思っています。
前回の記事で、僕らは「束になる」という選択肢を選びました。この1年は、矢を増やす1年じゃなくて、矢を束ねる1年だったと思います。矢は折れませんでしたが、束ね方はまだ甘いと率直に思っています。 D-POPS GROUPが掲げる「社会に変革をもたらす多数の成長ベンチャーを輩出する」というミッションの中で、学び合いと助け合いを実践しながら、3社がそろって成長していく場として、ワンテックワールドはその一翼を担っていきます。ベンチャーエコシステムという考え方を、言葉のままで終わらせずに、実際の案件と仕事の中で形にする。それが僕らの役割だと思っています。
次の1年は、束ねた矢で、どこまで遠くを狙えるのか。その答えを、実際の仕事の成果で示していきます。
今回はそんなところで。また1年後に、答え合わせの続きを書けたらと思います。

株式会社テックビーンズ 代表取締役 前川和浩
