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【百名山から学ぶベンチャー経営論】第六部「失敗から学び、成長を続ける」

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2026.10.15

ディ・ポップスグループは、「社会に変革をもたらす多数の成長ベンチャーを輩出する」というミッションを掲げ、「誠実・謙虚・感謝の心で、共に学び、共に成長する」をバリューとしています。

アドバイザーを務める杉原は、昨夏「ユニコーンTシャツを着て日本百名山を完登する」という目標を掲げて以来、一座一座を積み重ねて、執筆時点で62座に登頂しました。本連載では、その挑戦の中で経験した成功や失敗、そこからの学びを、ベンチャー経営や組織運営になぞらえながら考察しています。

比較的易しい山から登り始めたので、50座を超えた頃から、残っているのは険しい山々ばかりになってきました。この一年間、毎回の登山を振り返り、失敗から学び、鍛錬を繰り返しながら、挑戦できる山のレベルを徐々に上げてきました。今登っている山々に最初から挑戦していたら、体力と技術が足りず、途中で引き返すか、大怪我をしていたかもしれません。

登頂した感動の余韻に浸るのはもちろん良いことですが、一座登る度にきちんと振り返りを行い、次の挑戦に活かすことはとても重要です。登山経験を重ねるだけで登山技術が上がるわけではないように、ビジネスでも、ただ経験年数を重ねるだけでは大きな成長は期待できません。

第六部では、失敗を認識し、そこから学び、次の挑戦につなげていくことが成長の源になる、ということについて考えてみます。

16.一座登る度に振り返りを行う
~失敗しないことよりも、失敗から学ぶことが重要~

日本百名山以外の山も含めて、登山後には、登山アプリ(私の場合はYAMAPというアプリ)を使って記録を残してきました。

当初の目的は、歩いた軌跡を確認したり、撮った写真を記憶とともに後で味わったりすることでした。しかし、百名山への挑戦を積み重ねるうちに、その目的に「振り返り」の記録が加わりました。

具体的には、つまずき、足滑り、足首捻り、そして転倒した回数。行動食や昼食の内容。使用したシューズと足の疲労感やマメの状態。そして、その日の全体的な調子などです。

登山道、特に急勾配や岩場において、転倒は滑落事故に直結する可能性があるため、最も避けなければなりません。そして、つまずき、足滑り、足首捻りは、捻挫や打撲、さらには大怪我につながる転倒のきっかけにもなります。

今日はつまずきが何回あった、木の根で滑った、尻もちをついて転倒した、などを覚えておき、その原因を探る。そして、同じことを繰り返さないためには、どこに注意すべきかを考える。それが事故を起こさないための予防になると思ったからです。

また、挑戦の前半では、足指のマメや爪の内出血、内転筋のけいれんなどを何度も経験しましたし、前に転んだ際に手をつき、肩を捻挫したこともありました。つまずきや滑りのパターンを学び、食料や水分の量を記録しながらけいれんの原因を探り、それぞれに対策を考えることで、徐々にトラブルを減らすことができました。

(毎回の登山レポートは必ず「今日の振り返り」で締めくくる)

百名山への挑戦を始める前は山の素人だった私ですが、こうした振り返りによって数々の失敗を認識し、そこから多くのことを学んできました。

ざっとその一例を挙げると、

・岩場の下山では足首捻りを起こしやすいので、特に注意する
・皮の剥がれた木の根は、濡れると滑りやすい
・長距離歩行では、空腹を感じる前にこまめにカロリーを補給する
・けいれん予防には水分と塩分のこまめな補給が有効だった
・捻挫、膝痛、マメの予防のため、各箇所にテーピングを活用する
・登山前日の睡眠の質は、疲労度合いに大きく影響する

なんだ、登山家にとってはセオリー通りじゃないかと、当たり前のことばかりに聞こえるかもしれません。しかし重要なのは、この当たり前のことを、実地での経験を通して学ぶことです。

ビジネスの世界でも同じことが言えます。

プロジェクトが完了した時や、事業提携や企業買収などを行った時には、その直後、あるいは成果を評価できる一定期間が経過した後に、きちんと振り返りを行うことが欠かせません。何がうまくいき、何がうまくいかなかったのか。その原因は何だったのか。そして、次に同じような場面に直面した時には、何を変えるべきなのか。こうしたことを言語化しておく必要があります。

MBAの授業や市販のビジネス書では、起業や事業開発、営業などのセオリーを学ぶことができます。しかし、知っていることと、実際に行えることは別物です。そして、多くのセオリーは、現実の世界では一筋縄でその通りにいかないことにも気付かされます。

だからこそ、実際の失敗から学ぶ姿勢が、ベンチャー企業には欠かせません。

失敗しないように無難な道を選ぶのではなく、失敗を恐れず挑戦し、振り返りによって経験値を高めていく。登山でもビジネスでも、重要なのは失敗しないことではなく、失敗から何を学び、それを次にどう活かすかです。つまり、経験を経験のまま終わらせず、知見に変換することが大事なのです。

経験しただけでは、人は必ずしも成長しません。経験を振り返り、失敗の原因を言語化し、次の行動を変えて初めて、その経験は「学び」に変わるのです。

17.平時から鍛錬を積む
~本番で力を発揮するために、平時から備える~

「アラカンで百名山を完登する」、すなわち、58歳から挑戦を始め、3~4年で100座を登りきるというのは、疲れ知らずの若者が挑戦するのとは違う難しさがあると思います。

それは、筋力が低下し始め、関節も硬くなり、疲労回復にも時間がかかる年齢での挑戦となるからです。

百名山への挑戦を続ける中で、16章で書いた「振り返り」に加えて、次第に重視するようになったのが、登山をしていない平時にも鍛錬を積むということです。

これまであまり好きではなかった入念なストレッチ運動、特に下半身を中心に関節をほぐすこと。上半身の強みを活かした登山スタイルを磨くため、筋力トレーニングを継続すること。そしてお酒を控え、良質な睡眠を取ること、などです。

また、次に登る山については、対話型AIと壁打ちしながら、登山道のタイプを分析して最適な登山靴を選んだり、疲労度を考慮して登山口までの交通手段や出発時間、そして宿泊ポイントを決めたり、必要な水分量や行動食、食事の内容、補給ポイントを確認したりしています。

(異なる登山道のタイプによって事前に装備の対策を研究する)

このように、日頃から鍛錬と研究を続けることで、年齢によるハンディキャップを補いながら挑戦を続け、徐々に難易度の高い山へとレベルを上げることができました。

一方、ビジネスにおいても、平時から自らを磨き続けることが大事です。

ただし、登山とは一つ違いがあります。登山の場合は、年齢が高いことがある意味ハンディキャップになりますが、起業家やビジネスリーダーにとっては、逆に若いことや経験が浅いことがハンディキャップになり得ます。情熱があっても、業界における人脈の乏しさや、信用の低さ、そして経験不足が足かせになることは多々あります。

だからこそ、その不足を補うために、日頃から学び続けることが大切です。

多忙な中でも、先輩経営者にメンターになっていただくなどして、先達の知恵を学ぶ姿勢が大事です。また、自分が取り組む事業領域に関する成功・失敗の事例研究をしたり、類似企業や競合企業について、公開情報をもとに深く分析したりといった勉強も怠ってはいけません。

特に大切なのは、何か問題が起きてから学ぶのではなく、平時から学び続けることです。

登山中に難しい岩場に遭遇してから筋力を鍛えることはできません。道に迷ってから地図の読み方を勉強しても遅いのです。それと同じように、ビジネスでも、資金難に陥ってから財務を勉強したり、組織が崩れ始めてから人事組織論を学んだり、強力な競合が現れてから競争戦略を研究したりしていたのでは、間に合わないことがあります。

日頃から幅広い知識を蓄え、他社の成功や失敗を疑似体験し、自分ならどう判断するかを考えておく。そうした地道な学びの積み重ねが、いざという時の判断の速さと選択肢の多さにつながります。

登山における体力や技術が一朝一夕には身につかないように、経営者としての判断力も、必要になった瞬間に手に入れられるものではありません。

本番で発揮できる力は、平時にどれだけ準備してきたかで決まります。

だからこそ、挑戦を続ける者ほど、挑戦していない時間を大切にしなければならないのです。

18.場数を踏む
~経験の「引き出し」を増やし、未知への対応力を高める~

16章で述べた「振り返り」と、17章で述べた「平時の鍛錬」を繰り返しながら、さらに重要なのが、実際に山に登る「場数」を増やすことです。

「山の足は山でしか鍛えられない」

これは、登山に必要な足腰や体力は、平地やジムでのトレーニングだけではなく、実際に山を歩くことで鍛えられる、という意味で使われる言葉です。

この言葉が示すように、多くの山に登り、振り返り、必要な改善を行い、また次の山に登る。この繰り返しによって、険しい山にも耐えられる強い足腰が養われていきます。

しかし、場数を踏むことで身につくのは、体力や技術だけではありません。

山は一座一座違います。同じ山でさえ、天候や季節、自分の体調によって状況は変わります。それでも経験を重ねていくと、「この岩は滑りそうだ」「あの石は浮石だ」「このペースは速すぎる、後半に響くからペースダウンしよう」「ここは一旦休憩をして回復を図ろう」といった判断が、次第にできるようになります。

それは、過去のさまざまな経験が蓄積され、初めて遭遇する状況でも、似た経験を無意識のうちに引き出して判断できるようになるからではないでしょうか。

場数を踏むということは、単に経験の数を増やすことではありません。未知の状況に対応するための判断力を磨き、「引き出し」を増やすことなのです。

(最難関と呼ばれる、まだ登頂していない未知の山々 ※YAMAPサイトより引用)

ビジネスでも同じです。

特に、新しい領域で社会に変革を起こそうとするベンチャー企業には、そもそも正解を書いた教科書がありません。どれだけ事前に研究し、壁打ちを重ねても、実際の営業活動や交渉の場では、想定した通りに会話が進まないことの方が多いでしょう。

顧客から予想外の質問を受ける。重要な商談で突然条件を変えられる。採用した人材が期待通りに活躍しない。大手企業が突如同じ領域に参入してくる。資金調達の環境が急に悪化する。

こうした事態に直面した時、最後にものを言うのは、教科書の知識だけではなく、それまでにどれだけ多様な状況を経験し、そこから何を学んできたかです。

場数を踏んだ経営者やビジネスリーダーは、第四部で述べた「アンテナ」や「センサー」が研ぎ澄まされていると同時に、多くの「引き出し」があります。初めて直面する問題であっても、過去の経験と照らし合わせながら、「あの時と似ている」「この選択肢にはこんなリスクがある」「この局面では、まずここを確認すべきだ」と考えることができます。

もちろん、場数を踏めば失敗しなくなるわけではありません。しかし、一つひとつの経験を振り返り、そこから学び、次の行動を変えていけば、同じ失敗を繰り返す確率は下げられます。そして、未知の状況に直面した時に選べる選択肢は増えていきます。

経験しただけでは、人は成長しない。しかし、経験しなければ得られない学びもある。成長とは、失敗しなくなることではありません。経験を重ねるたびに、自分の中の「引き出し」を増やし、次の挑戦でより良い判断ができるようになることなのです。

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以上、【百名山から学ぶベンチャー経営論】の第六部でした。

最近、下山中にすれ違った方に「かっこいいTシャツですね!」と声を掛けられました。また、この挑戦を始めて15ヶ月目には、節目となる60座に到達することができました。これも職場や家庭など、周りの皆さんのご理解とサポートのおかげだと思っています。その感謝の想いを込めて、登った百名山の地元のお土産を買って帰ってオフィスで配るのが恒例となりました。

これまで数々の百名山の頂上を共にしてきたD-POPS GROUPのこのユニコーンTシャツが、ベンチャー界隈と登山愛好家界隈の両方で知れ渡る日が来るよう、引き続き頑張ります。

次回のテーマは「誠実・謙虚・感謝」。山に誠実に向き合い、自然に対して謙虚な気持ちで挑み、そして山で出会う人や、登山道を整備してくれる方々、サポートしてくれる周りの人々に感謝する。こうした姿勢は、ベンチャー企業の経営においても、とても重要なものだと考えています。次回は、登山を通して改めて感じた「誠実・謙虚・感謝」について考えてみたいと思います。

なお、シリーズのこれまでの記事をまだお読みでない方は、こちら↓もぜひお読みください。

第一部「頂を決め、準備する」
第二部「計画は綿密に、実行は地道に」
第三部「戦略・戦術・戦闘」
第四部「アンテナを張り、センサーを研ぎ澄ませ」
第五部「不撓不屈の精神と、慎重な判断力を併せ持て」

D-POPS GROUP アドバイザー 杉原眼太

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