
株式会社ディ・ポップス(以下ディ・ポップス社)では、ベンチャーエコシステムを活用し、CRM開発をすることで、より顧客に寄り添った店舗づくりに取り組みました。
グループ会社との共同開発により、自社だけでは解決できなかった大きな課題を解決することができました。
本記事では、当社で抱えていた課題とベンチャーエコシステムを活用して課題解決にいたるまでについてまとめます。
1.携帯電話販売代理店の課題
携帯販売代理店は、消費者の携帯電話契約や端末購入の窓口として重要な役割を担っていますが、近年、様々な課題に直面しています。
①収益性と競争激化
日本国内の携帯電話普及率は非常に高く、新規契約の獲得が難しくなっています。市場が飽和状態にあるため大幅な契約件数の増加は見込みにくくなっています。
また、通信料の値下げと販売奨励金の減少や、各キャリアのオンライン販売強化、MVNO(格安SIM)の普及により、低価格な料金プランへの移行が進むことで、代理店の収益性が低下する原因となっています。
②複雑化する商品と顧客対応の難しさ
各通信キャリアの料金プランは非常に多岐にわたり、すべてのプランを理解し顧客に最適なプランを提案することが難しくなっています。特に、高齢者層など、ICTリテラシーが低い利用者にとっては、プラン変更やキャリア乗り換えの手続きが複雑で難しく、丁寧なサポートが求められます。
また、単なる新規契約獲得だけでなく、顧客の満足度を高めるための継続的なサポートが求められています。
③人材に関する課題
店舗での接客業務では、複雑な商品知識嫌顧客対応スキルが求められるため、人材の確保と育成が喫緊の課題です。また、定期的にメンバーの異動があることで、ご契約いただいたお客様の情報を正確に管理することが難しい状況で、認識の相違による「言った」「言わない」というトラブルが発生するケースもありました。
④アナログな店舗運営
各通信キャリアで、オンラインでの手続きやサポートが増える中で、ディ・ポップス社の「スマホ相談窓口 TOP1」では、来店予約方法が電話か来店の2択のみであったり、お客様からの問い合わせ内容をシステムで記録する手段がなく、用紙に手書きで書き残す等、アナログな方法で店舗を運営していました。
⑤顧客情報が通信キャリアに帰属
携帯販売代理店で各通信キャリアの契約手続きを行う場合、お客様の情報は各通信キャリアから支給された専用の機器にて手続きをします。そのため、顧客情報は通信キャリアに帰属し、代理店独自のサービスを提供する場合には、自社でCRM等のシステムを準備する必要があります。
これらの課題に対し、携帯販売代理店は、単なる販売拠点から、地域におけるサービス拠点や、より専門的な相談窓口へと役割を変化させていくことが求められています。
2.CRM活用による顧客のファン化の必要性
上記課題から、携帯販売代理店でリアル店舗を運営していくにあたり、下記の必要性について仮説を立てました。
①CRMと感情移入接客の融合による顧客のファン化
私たちは、接客をする上で「感情移入接客®」をモットーとしています。単なるニーズのヒアリングだけではなく、相手と心が通う関係構築をつくることを重視していますが、CRMを活用することで、そのお客様との応対履歴やお好み・ご利用状況を把握し、永続的に「スマホ相談窓口 TOP1」のファンとなっていただくことが必要です。
②アナログからDX化による効率化
世間のDX化が進む中、我々もユーザーニーズに合わせて来店予約や顧客情報の管理等のDX化・シームレス化が必要です。
③リアル店舗だからこそできるわかりやすい料金・サービス説明
「スマホ相談窓口 TOP1」は、複数の通信キャリアを中立公正にご案内できるリアル店舗だからこそ、各通信キャリアを比較し、お客様にピッタリなプランやサービスのご提案をすることが必要です。
④「スマホ使い方サポート」による専門店との差別化
ディ・ポップス独自のサービスである「スマホ使い方サポート」は、通信キャリアや端末・サービスの種類を問わず、スマホの操作や設定などの使い方をサポートするサービスです。
各通信キャリアも同様のサービスを提供していますが、その通信キャリアのサービスのみのサポートに限定されるなどの制限があります。複数の通信キャリアを取り扱っているからこそ、専門店と差別化を図れる独自のサービスを活用する事が必要です。
上記のような仮説を立てましたが、ディ・ポップスでは2020年8月に、他業種でシステム開発をしていたメンバーを元にIT部門を発足したものの、当初は社内メンバーのITリテラシーも低く、システムの開発やCRMに関するノウハウもありませんでした。
3.CRMシステム開発と顧客情報の活用
上記の仮説を解決するために「ベンチャーエコシステム」を活用した戦略を立てました。
CRMシステム開発と顧客情報を自社で活用できる状態にするために、グループ会社に協力を仰ぎ、下記戦略を立てました。
①CRMシステム開発による顧客情報の管理と運用
「スマホ相談窓口 TOP1」で契約できる通信会社すべてに対応し、顧客情報の管理だけでなく、来店予約情報・ご案内内容・書面データ・エビデンスの一元化など、スムーズにご案内できる環境を作るためのCRMシステムを開発する。
②セールスブック導入による通信キャリア比較の仕組化
各通信キャリアの料金プラン改定やサービス追加等の変化に柔軟に対応し、顧客に最適なプランをご案内するために、各通信キャリアの料金プランやサービスを比較できる「セールスブック」を導入する。
③CRMデータの活用による顧客のファン化
ご契約時にご加入いただいた料金プランや割引サービス、携帯電話(スマホ)の購入サポート加入状況により、一定期間を経過すると料金が上がってしまうお客様や、料金プラン改定によりプランの見直しをしたほうがよいお客様を見つけ出すこと。また、契約したその時だけでなく、常に最適なプランになるよう、継続でサポートをし続け、永続的に当社店舗をご利用いただける環境を作る。
上記の戦略を元に、グループ会社「株式会社テックビーンズ」「株式会社アットマーク・ソリューション」協力の元、CRMシステムの開発を進めました。
4.来店予約の開発からCRM開発・セールスブック運用
ここまでの、課題・仮説・戦略を元に、約4年かけて以下の開発・運用を進めました。
①来店予約システムの開発(2021年8月リリース)
まず初めに、株式会社テックビーンズ協力の元「来店予約システム」の開発に着手し、2021年8月にCRMシステム「DAMO」と「来店予約管理」機能をリリースしました。それまでは店頭もしくはお電話での予約しかできませんでしたが、コーポレートサイトやGBP(Googleビジネスプロフィール)へ掲載することで、WEBからのご予約を促せる環境を作りました。
②セールスブックの導入と運用(2023年3月リリース)
次に、お客様へ最適な通信会社と料金プランをご案内するための説明資料となる「セールスブック」を導入しました。まず、店舗メンバーやマネージャーと話し合いの上お客様へご案内する流れを洗い出し、お客様が理解しやすい流れのベースを作成しました。そして、それぞれの項目の中に、料金表や画像(絵)を入れながら「比較して選べる」説明ツールを作りました。このセールスブックは、使いながらよりわかりやすく新人メンバーでも説明しやすいツールになるよう、現在でも日々ブラッシュアップしています。
③CRMシステムの開発(2023年10月リリース)
来店予約管理機能に続き、2023年10月に株式会社テックビーンズ協力の元「ヒアリングシート(ご利用状況)」「お客様カルテ(通信キャリア契約状況)」「商談メモ(対応履歴)」「架電管理(電話対応管理)」機能をリリースしました。また、2024年3月に株式会社アットマーク・ソリューション協力の元「商談結果(ご契約情報)」機能をリリースしました。上記のリリースにより、お客様のご利用状況の確認、各通信キャリアの契約状況、当店での契約・対応内容を一元化することができました。
④CRMデータ入力の仕組化とデータ活用
上記のリリースにより、お客様のご利用状況の確認、各通信キャリアの契約状況、当店での契約・対応内容を一元化することができましたが、運用方法や入力方法の浸透が課題となりました。そこで、運用の流れをまとめた「運用マニュアル」を作成し、お客様へのご案内内容の最適解を見つけお客様へご案内できるよう週次で「データ集計・配信」を実施しています。
5.【顧客数5万人突破】来店予約から店舗対応のシームレス化
2021年8月に、来店予約機能をリリースしてから2025年5月末時点で管理顧客数が5万人を突破しました。また、来店予約から店舗でのご案内まで、シームレスに対応できるようになり、お客様のご要望やご利用状況についても、わざわざ引継ぎすることなく、エビデンスを残すことができるようになりました。
また、CRMシステムを活用する中で新たな課題を発見することができました。
①CRM管理の目的・運用の浸透
便利なシステムがリリースとなった一方で、今までのやり方からなかなか脱却できないことや、人によって運用の流れが変わることもあり、CRM管理の目的の理解に対する教育や、運用方法の統一化が新たな課題です。
②顧客情報の活用
また、管理されている顧客情報について、どのようにお客様へ最適解をご案内していくのかが今後の大きな課題です。
6.まとめ|ベンチャーエコシステム活用による可能性
本記事では、ベンチャーエコシステムを活用した「CRM(顧客管理システム)開発」と、より「顧客に寄り添った店舗づくり」への取り組みについてまとめました。
今回の取り組みは、自社で課題と感じていながらも、自社にはリソースがなく解決することが難しいと感じ、長年解決できずにいたことが解決する道につながりました。
ディ・ポップスグループ内のベンチャーエコシステムの活用により、中にはたった数か月で開発が進むものもあり、ベンチャーエコシステムの強みを再認識しました。
また、一度協業したから終わりということではなく、運用していくにあたり、日々改善が必要となり、グループ会社に協業できる環境があることの強さを感じました。
ディ・ポップス社では、引き続きベンチャーエコシステムの無限の可能性を活用し、より「感情移入接客®」を体現できる店舗づくりと、お客様に「スマホ相談窓口 TOP1」のファンになっていただける環境づくりに取り組んでまいります。
株式会社ディ・ポップス 営業本部 営業企画部/メディア営業部 マネージャー 石井花奈
【株式会社 ディ・ポップス】
代表者:代表取締役社長 増田 将人
所在地:東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ32F
設 立:1998年2月
サイト:https://d-pops.co.jp/