COLUMN

在庫回転率とは?~小売業の隠れたプラットフォーム~

  • MEDIA
2025.02.28

ディ・ポップスグループは、「リアルビジネス × テクノロジー × グループシナジー」を掛け合わせた事業展開をしている会社の集合体で、100年後も社会から必要とされ続けるベンチャーエコシステムの実現を目指しています。今回は、その中でも最初に掲げている「リアルビジネス」を行う上での重要なポイントとなる「在庫回転率」について解説してまいります。

「リアルビジネス」といっても多種多様なビジネスがあります。今回は「在庫回転率」のお話になるため「リアルビジネス」の中でも、在庫をもちビジネスを行う小売業にスポットをあて解説していきたいと思います。

 

1.小売業を経営する上で着目してもらいたいポイント
小売業を経営する上で大切にするポイントは沢山あります。売上高、利益率、販売点数、販売単価、等など、、、、数あるポイントがあるなかで、小売業を経営する上で着目すべきポイントとは何か?ズバリ在庫回転率ではないかと思います。なぜ在庫回転率が重要か、以下順をおってご説明いたします。

2.在庫回転率とは
まず、在庫回転率とは、商品の在庫が売上に対して適性であるかを判断する指標で、限界値はありますが回転率が高ければ高いほど良いとされます。一般的には年間の売上高を期末の在庫高で割った計算式により算出されます。

例えば
年間6000億円の売上高の会社で在庫が2000億円あれば、在庫回転率は3回転/年
年間400億円の売上高の会社で在庫が20億円であれば、在庫回転率は20回転/年
となります。

小売業の中でも業態により違いますが、一般的には年間12回転以上が(1ヶ月の売上で在庫の金額が賄える水準)標準的と言われています。

3.なぜ在庫回転率が重要か?
在庫回転率がなぜ重要か、以下の例を元に解説してみたいと思います。

扱い商品や業界が違う会社同士は比較がしにくくわかりづらいので、比較がしやすい様に同じ商品を販売していて、売上規模が同程度の家電販売店をモデルケースに解説していきたいと思います。(モデルケースの会社は架空の会社ですが、実際の会社がベースとなっております。)

【モデルケース】
・家電販売店A社 店舗数550店 従業員数16000人(内臨時従業員8500人)
売上高7300億円、売上総利益2080億円、利益率28.5%、経常利益350億円、
経常利益率4.8%、在庫高1600億円、在庫回転率4.6回転/年
・家電量販店B社 店舗数24店 従業員数5000人
売上高7500億円、売上総利益2250億、利益率30%、経常利益550億円、
経常利益率7.3%、在庫高380億円、在庫回転率18回転/年

家電販売店業界の中で収益ベースでは1位、2位の会社といっても過言ではない非常に優秀な会社がA社、B社です。A社は郊外型、B社は都市型で主な違いは立地による店舗数となりますが、見比べていただき一番違うポイントとしてみていただきたいのが、在庫高とそれに伴う在庫回転率です。

どちらも売り上げは7000億円程度ですが、A社は7000億円程度の売上を作る為に保持している在庫が1600億円、B社は7000億円程度の売上を作る為に保持している在庫が380億円で在庫高が1220億円も違います。在庫が1220億円違うということは、単純に考えればA社は在庫で、B社は現金で持っていると考えることができます。在庫回転率の4倍程度の差が、が大きなキャッシュフローの差につながっています。

ちなみにA社の時価総額は2600億円程度ですのでB社との在庫回転率から生み出される在庫の差額(1220億円)が時価総額の半分くらいになるというと、この差がどれだけ大きいかということがお分かりいただけると思います。

多少の違いがあれど、同じ商品をあつかっている家電販売店業界ではA社、B社以外をみても、売上総利益率は大体28-30%程度でどの会社も同じような水準となっています。家電販売店だけでなく、他の業態もそうかと思いますが、同じ商品をあつかっている業態で同じような売上規模だと売上総利益率に大きな差は出にくいです。

A社、B社の比較の場合でも売上総利益率の差は1.5%程度、額で100億円/年程度の差となりこれも非常に大きな数字ではあるものの、在庫回転率からでる差である1220億と比べると売上総利益率の差は、10分1以下のインパクトであると考えることが出来ると思います(在庫回転率でのキャッシュの差を売上総利益の差で解消するには単純に考えて12年かかるためです)。

今回はわかりやすい例として、同じ商品を販売していて、売上規模が同程度の家電販売店をモデルケースとして解説いたしましたが、店舗を作り、在庫を仕入れ、従業員を雇う等、キャッシュが先行してかかる業態である小売業で重要な指標の1つは間違いなく在庫回転率です。今回のモデルケースの様に同じ商品を扱っている業界はもちろん、商品そのもので差別化ができ、売上総利益で大きく差をつけることができるアパレルや製造小売でも、小売業では在庫は必要で在庫から逃げることはできません。

業界水準を大きく上回る在庫回転率を実現することができれば、ビジネスをする上で避けて通れない競合他社との競争上において、大きなアドバンテージを持つことに直結していきます。

4.在庫回転率の上げ方
在庫回転率の重要性はご認識いただけたかと思いますので、在庫回転率を如何に上げるか?というお話をさせていただきます。単純に在庫を減らせば在庫回転率が上がるのか?というとそうではありません。当たり前ですがただ在庫減らすだけだと売れる商品からなくなり売上が減るので在庫も減りますが、在庫回転率は上がりません。それどころかお客様の欲しい商品が無いお店となり、店舗存続の危機になりかねません。

「言うは易く行うは難し」なことではありますが、売れる商品を売れるタイミングで売れるだけ仕入れるという当たり前なことを実現することが在庫回転率の向上につながります。

在庫回転率の高い会社は例外なく、テクノロジーにより在庫数や販売数の可視化が出来ており、自動化も進みタイムリーに売れる商品を売れるだけ仕入れています。また、物流網に投資がなされており店舗で商品が売れてから次の商品が入荷するまでのリードタイムをできる限り短くすることも実現しています。

そして最大のポイントはテクノロジーや物流の様な仕組みだけでなく、会社全体にキャッシュフローで経営していくための在庫回転率の重要性の教育がなされており、テクノロジーや物流を教育の行き届いた従業員が血の通った運営をしています。

ヒト×テクノロジー×仕組みの掛け算こそが、在庫回転率を向上させるポイントなります。

5.まとめ
今回は「リアルビジネス」の中で、小売業を行う上でのポイントなる在庫回転率のお話をさせていただきました。小売業を経営されている方の多くは、売上や売上総利益率を追いかけているかと思います。もちろん売上が無ければそもそも収入がないので成り立ちませんし、売上総利益率1%ではさすがにビジネスを成り立たせるのは難しいと思います。

こういった極端な例はさておき、小売業は商品をお客様に購入いただき成り立っています。お客様の欲しい商品が欲しい時にあるということが必須でその為に商品を先に購入し在庫として店舗に置いています。この在庫の最適化こそが、在庫回転率として数値化され、キャッシュフローの最大化につながり、他のポイントとは比べ物にならないほどの競合他社とのアドバンテージポイントになります。

売上や売上総利益率と比べ表に出てくることが少ない、まさに小売業の隠れたプラットフォームといえると思います。

現在「リアルビジネス」を生かすためには、テクノロジーや仕組みは必須です。ただ、テクノロジーや仕組みを使うのはヒトであり、「リアルビジネス」の最後のお客様接点もヒトであります。結局「リアルビジネス」を生かすためには、1人1人のヒトの力を最大限に生かした、ヒト×テクノロジー×仕組みの掛け算であると、ディ・ポップスグループは考えます。

その考えの元、ヒトが輝くため、また社会課題解決のために「リアルビジネス」を行っているベンチャー企業に対して、出資を通じた支援と「リアルビジネス」の価値を通じたグループエコシステムの実現を目指しています。

これからもご支援、応援の程よろしくお願いします。

D-POPS GROUP 常務執行役員 渡辺哲也

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