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D-POPS GROUPが考える「のれん」とは?「のれん償却」見直しの考察

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2025.06.25

ディ・ポップスグループは、「リアルビジネス × テクノロジー × グループシナジー」を掛け合わせた事業展開をしている会社の集合体で、100年後も社会から必要とされ続けるベンチャーエコシステムの実現を目指しています。また、このベンチャーエコシステムの成長のために、既存事業のオーガニック成長、新規事業・新会社の設立、M&A、CVC、資本業務提携の5つの基本戦略を推進しております。

今回は、この5つの基本戦略の1つである「M&A」と関わりの深い会計における「のれん」について、その会計処理についてニュースとなっていることもあり、取り扱いたいと思います。特に、「のれん」の「非償却」の可能性についても、言及できればと思います。

「のれん」に関しては、2025年5月30日に「のれんの非償却の導入およびのれん償却費計上区分の変更」に関する要望が、日本の会計基準の設定主体であるASBJ(会計基準委員会)にテーマ受付表として提出されました。この要望は、経済同友会、スタートアップ関連13団体、スタートアップ有志35社、企業経営者有志138名の連名で提出され、首相の諮問機関である規制改革推進会議もこれをフォローし、さらにASBJの議論においても、スタートアップ関係者の問題意識が十分くみ取られ、適切な議論が行われるよう、検討プロセスも含めフォローする旨を公表しています。このことは、日経新聞にも「のれん償却の見直し、民間13団体など会計基準機構に提案」という見出しでニュースになりました。

1.「のれんの非償却の導入およびのれん償却費計上区分の変更」の要旨

なお、今回提出された要望の要旨は、以下のとおりです。

①のれんの非償却を導入(選択制)
のれんの償却と併せてのれんの非償却も認める選択制を適用する。
(遅くともスタートアップ育成5か年計画の終期である2027年度までに結論・措置に至るよう検討を要望)

②のれん償却費の計上区分変更
現在、販売費及び一般管理費として営業費用に計上しているのれんの償却費を営業外費用もしくは特別損失に計上する。
(2026年度の結論・措置の可能性も含めて検討を要望)

2.現在の日本の会計基準における「のれん」の定義と取り扱い

現在の日本の会計基準において、M&Aの代金のうち、対象企業の純資産額を上回る金額については、「のれん」として無形固定資産に計上したうえで、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、規則的に償却するとしています。例えば、純資産3億円の対象企業を10億円の代金でM&Aする場合、7億円が「のれん」として無形固定資産となります。またその際に、投資回収期間を7年と想定していたならば、この7億円の「のれん」を毎年1億円づつの定額、7年間で費用化(償却)することになります。

一方で、IFRS(国際会計基準)、米国会計基準においては、「のれん」について規則的な償却は行わず、「のれん」の価値が損なわれた時に減損処理を行う方法が採用されています。これが、今回提出された要望における「のれんの非償却」です。なお、減損処理とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合に、将来において確実に回収可能な額を除き、資産を費用化することをいいます。先ほどの例でいうと、7億円の無形固定資産が計上されていたが、対象企業が赤字決算続きとなり回復が見込めない場合には、価値が損なわれた、つまり投資額の回収が見込めなくなったとして、7億円の全額を一時に費用化することになります。

これまで、日本の会計基準は、企業の財務報告の透明性と比較可能性の向上を目的として、IFRSとの整合性を目指し基準の改訂を行ってきましたが、このように「のれん」の会計処理についてはIFRSと相違しています。そのため、M&Aを積極的に行っている上場企業では、この相違を理由として、IFRSに移行している企業も多くあると考えられます。IFRSへの移行には、会計コンサルティングの導入、会計監査報酬の増加といった追加コストはあるものの、それを上回るメリットがあると経営判断した上場企業もあるのではないでしょうか。

3.今回提出された要望の背景

政府は2022年に「スタートアップ5カ年計画」を策定していますが、この計画において、M&Aは、スタートアップのエグジット戦略(出口戦略)のみとしてだけではなく、既存の大企業とのオープンイノベーションの推進策として、その重要性について触れられています。(スタートアップを成長させるM&A)

今回提出された要望は、このスタートアップを成長させるM&Aの促進において、日本の会計基準における「のれん」の償却が、阻害要因になっているということを背景としています。すなわち、「のれん」が償却される場合には、営業費用(販売費及び一般管理費)に計上されるため営業利益がのれん償却による費用額の分、減少することとなりますが、これがM&A検討の障害や、M&Aを断念する理由となっているということを背景としています。

特にスタートアップについては、企業価値(M&A代金)に占める純資産額の割合が小さいことが多く、「のれん」は比較的多額となるケースがあります。また、日本の多くの成長企業において、企業価値の源泉であるコアコンピタンスが、人的資本(従業員の知識やスキル、経験)、知識資本(特許、商標、企業ノウハウ)で構成されていることが多いと考えられますが、スタートアップにおいては、その傾向はさらに強いと考えられます。今後ますますAI領域におけるスタートアップの増加が加速すれば、その傾向も加速的に強まっていくと考えられます。

このように人的資本、知識資本は、企業価値の源泉として極めて重要ですが、現在の会計基準では、これらの「自社で生み出された」無形資産は、原則として資産計上することが認められていません。これは、その価値を客観的に測定することが困難であること、また将来の収益の獲得への貢献が不確実であることなどが理由とされています。

このこともあり、非常に価値の高い人的資本、知識資本を有する企業は、企業価値(M&A代金)は高く評価されるものの、会計上の純資産額は小さいというケースが増加していくと考えられます。この結果、これらを対象企業とするM&Aにおいては、「のれん」は多額となっていく可能性は極めて高いと考えられますし、M&Aを行う企業は、その「のれん」の償却により、営業利益も圧迫される可能性も極めて高いと考えられます。

ところで、営業利益は、企業の本業における収益力を示す重要な指標であり、企業価値に大きな影響を与えるものではありますが、「のれん」の償却、非償却による営業利益の増減は、理論的には企業価値に直接的な影響を与えるものではありません。これは、理論的には企業が将来生み出すキャッシュ・フローにより企業価値は評価されますが、「のれん」の償却は現金支出を伴わない営業費用の計上であり、実際の事業活動から生じるキャッシュ・フローには影響しないためです。

それでもなお、「のれん」の償却による営業利益の圧迫が、M&A検討の障害や、M&Aを断念する理由となるのは、営業利益が企業の本業における収益力を示す重要な指標であり、実務においては理論を超えて企業価値評価に大きな影響を与えているということだと思います。

IFRSではこれまで、営業利益の明確な定義がなく、表示も義務付けされていなかったのですが、今後はその定義を明確化して、表示を義務付けすることを検討しています。このことも、営業利益という指標が、実務においては投資家にとって重要な情報であるということを示唆していると思われます。また、日本においては、IFRS適用企業の多くが、「営業利益」あるいはそれに類する項目を損益計算書に表示しています。

4.ベンチャーエコシステムの実現を目指すディ・ポップスグループが考える「のれん」とは

ディ・ポップスグループも、財務状況や経営状況をステークホルダーに説明する義務を果たすうえで、「のれん」の償却、非償却の双方にメリット、デメリットがあることを十分に理解したうえで、「のれん」の非償却、もしくは、その選択制に賛同いたします。ディ・ポップスグループは、ベンチャーエコシステムの実現、成長の戦略の1つとして、M&Aも積極的に行ってきましたが、やはり「のれん」の償却による営業利益の圧迫が、ディ・ポップスグループが実現している企業成長を含めた経営状況の実態を適切に説明する阻害要因になっていると感じているからです。

また、「のれん」を償却する場合には、決算期ごとに「のれん」の額は償却により減少していきますが、一方で営業利益が圧迫されることにより純資産額の積み上げは少額となります。一方で、「のれん」を非償却とする場合には、減損処理を行うような経営状況にさえならなければ、「のれん」は多額のままとなり総資産額も多額となりますが、営業利益は圧迫されないため純資産額の積み上げも早くなります。

財務状況を表す貸借対照表における資産の本質は、平易にいうと、「企業が現在持っている、将来の稼ぐ力のもとになるもの」であり、そして、純資産額は、株主からの出資を除くと、「企業が獲得した利益の蓄積」を表していると考えます。

ディ・ポップスグループにおいては、M&Aでグループ企業としてベンチャーエコシステムに参画してもらう際には、投資額よりも多く将来の稼ぎ、つまり投資回収としてのキャッシュ・フローをもたらすことに確信をもっています。それは、戦略の1つであるコングロマリット・プレミアムによるグループシナジーがあるからであり、そして、ベンチャーエコシステムという共存共栄関係のなかでの事業成長により、このキャッシュ・フローが年々増加していくことを目指しています。

そのため、「のれん」が多額となったとしても、それは、M&A投資による将来の稼ぐ力を適切に表し、そのM&Aの投資回収が純資産の積み上げとなることは、獲得した利益の蓄積を適切に表すと考えるため、財務状況のステークホルダーへの説明においても適切であると考えます。

最後に、ディ・ポップスグループでは、M&Aを行う際に優れたビジネスモデルに着目する場合もありますが、多くの場合には優れた経営戦略を着実に実行する経営者の能力、ノウハウにより重点をおいています。これはディ・ポップスグループが目指すベンチャーエコシステムが、自立支援を重視し、独立した経営者集団であることを目指していることと関連しています。

つまり、コングロマリットプレミアムなビジネス環境を提供し、グループシナジーのなかで更なる自社の成長を望む経営者のためのエコシステムであり、そのため、基本的にはグループジョイン後も継続して自社の経営、成長にリードしていただきたいと考えています。

このような経営者が創ってきた企業は、ディ・ポップスグループにジョインする段階で、研究開発費、人材育成費、マーケティング投資など、将来の収益拡大や競争優位性の構築を目指すための戦略的な投資により、非常に価値の高い人的資本、知識資本が構築されています。

資産の本質は、「企業が現在持っている、将来の稼ぐ力のもとになるもの」であり、画期的な技術を開発するための研究開発費や、優秀な人材を育成するための研修費も、将来の収益増加に貢献するはずであるのに、前述のように、これらの「自社で生み出された」無形資産は、原則として資産計上することが認められていません。このことは、特に無形資産が企業価値の大部分を占める現代の知識集約型社会において、企業の財務諸表がその企業の真の価値や投資の実態を十分に反映していないという課題を生んでいると考えます。

このような状況下で、M&Aによってグループ参画した企業の「のれん」を償却することは、ある種の二重費用計上のような側面を持つ可能性があると考えています。なぜならば、「のれん」の大部分は、グループ企業が過去に人的資本や知識資本に投じた費用、「将来の企業成長のための投資となる費用」であり、資産として計上されなかったものが、M&Aによってようやく「のれん」という形で資産計上されたものと考えられるからです。つまり、過去に一度費用として処理された投資が、「のれん」の償却で再度費用となりかねないという問題があります。

これまで述べてきたように、ベンチャーエコシステムの実現を目指すディ・ポップスグループにとって、「のれん」の大部分の本質は、人的資本、知識資本であり、コングロマリットプレミアムのコアとなる重要な資産であると考えています。そして、これがグループシナジーに拍車をかけ、エコシステム内により多くのキャッシュ・フローが創出され、それがまた将来のエコシステムの成長のために投資されていくという好循環を生み出すことでイノベーションを加速し、日本の未来に貢献したいと考えています。

東京証券取引所のグロース市場の見直しにより、M&Aは、成長戦略の重要な柱として、エグジット戦略の1つとして、その重要性はますます高まっていくと考えられます。「M&A」と関わりの深い「のれん」の会計処理について、これから行われるASBJの検討内容に注目していきたいと思います。

これからもご支援、応援の程よろしくお願いします。

D-POPS GROUP 執行役員 公認会計士 米谷好弘

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2026.07.21
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ディ・ポップスグループは、「社会に変革をもたらす多数の成長ベンチャー(ユニコーン企業)を輩出する」というミッションを掲げ、「誠実・謙虚・感謝の心で、共に学び、共に成長する」をバリューとしています。 アドバイザーとして従事する杉原は、昨年の夏に立山へ登ったことをきっかけに、「ユニコーンTシャツを着て日本百名山100座を踏破する」という目標を掲げ、仕事の合間を縫って全国の山々を登り続けています。 本連載では、「共に学び、共に成長する」というバリューを体現する取り組みとして、その挑戦の中で経験した成功や失敗、計画や準備、判断や撤退の大切さなどを、ベンチャー経営や組織運営になぞらえながら考察していきます。 登山も経営も、目指す頂を定め、計画(戦略)と準備を整え、一歩ずつ前進していく営みです。この連載が、皆様自身の仕事や挑戦を考えるきっかけになれば幸いです。 今回は第一部として、ベンチャー経営を登山に例えながら、ビジョンの重要性と、その実現に向けて必要な準備について考えてみたいと思います。 1. 登るべき頂(ビジョン)を決める ~ ビジョンなき挑戦は続かない ~ ダイエットのために何となくウォーキングを始める。観光で訪れた街で、旅先で小高い山に登って市内を展望する。健康や観光のためにはもちろんいい運動にはなります。しかし、それだけでは「挑戦」と呼ぶには少し物足りません。目指す頂や、一連の山を明確に設定した挑戦の方が、達成した時の喜びは大きく、学びも多く、経験としても深く残ります。 ベンチャー経営も似ているのではないでしょうか?何となく「社長をやりたい」「お金持ちになりたい」という動機だけでは、社会に価値を生む大きな事業を育てることは難しいでしょう。 事業を興すには、明確なビジョンと具体的な目標を描く必要があります。 経営者だけでなく、ビジネスパーソンや職人も同じ。将来こういうキャリアを歩みたい、◯◯のプロになりたい。そうした目標を明確に持つことで、人は必要な学びや経験を自ら取りに行くようになります。 私事ですが、一年前までは体脂肪燃焼のためくらいの気持ちで高尾山や大山などに登る、軽いハイカーでした。しかし、昨年の夏、初めて訪れた富山県で、その険しさを知らないまま立山の最高峰に登った時に、人生が変わりました。 薄い酸素でふらふらになりながら辿り着いた山頂で、360度に広がる山々を見た時、「もっと難しい山にも挑戦したい」という感情が一気に湧き上がりました。 そしてある日、「日本百名山」という書籍に出会い、一気に読み終えた頃には、私の中のベンチャー魂に再び火が付いていました。 「アラカンで日本百名山を完登する」 という、明確な目標を持つに至ったのです。 (立山の雄岳頂上からの眺めと目指すきっかけとなった日本百名山の本) 昨年8月のその日以来、コツコツ登り続けて、執筆現在で41座(山の数え方)に登頂しました。当時は全くの素人でしたので、低い山でもクタクタになっていましたが、徐々に体力が付いて、高い山、険しい山にも登れるようになりました。 今でもまだまだ体力にも登山技術にも課題はありますが、登頂を重ねるに連れ、登山への情熱は高まるばかりです。百名山という目標を持たなければ、私はここまで登れなかったと思います。 ベンチャー経営も同じ。創業時のビジョンが明確であるほど、必要な準備をする原動力になりますし、困難に立ち向かう力になります。 また、ビジョンは、ただ掲げるだけでは不十分です。「創業◯年までに売上◯◯億円」「◯年までに会員数◯百万人」といった、具体的で挑戦的、かつ現実的な目標に落とし込むことで、人も組織も初めて動き出します。 2. 目指す山に必要な体力と技術を備える 〜資本と差別化要素が肝となる〜 山に登り慣れていない素人が、最難関の奥穂高岳や剱岳、何日もかかる幌尻岳などにいきなり挑戦しても、登頂できないどころか命に関わる危険を招き、結果として周囲にも大きな負担をかけてしまいます。 目指す頂に立つには、相応の体力を備える必要があります。そして、岩場の歩き方、鎖場の登り方などの登山技術も必要です。それらを準備せず挑戦するのは、勇気や大胆さとして称賛されることではなく、未熟さや無謀さの表れです。 ビジネスパーソンにも体力や気力が必要です。しかしここでは起業という視点で例えたいと思います。事業会社、特に立ち上げ間もない会社にとっての体力とは、運転資金に例えられます。 小さな個人事業主ならば自己資金だけで起業できるでしょう。しかし、社会課題を解決する大きな事業やプラットフォーム事業を興すには、巨額の運転資金を集めなければなりません。優れた技術やサービスを持っていても、資金が尽きれば事業は継続できません。 高い山に挑むには強い体力が必要なように、大きな事業に挑むには大きな資金が必要となるのです。資本政策を計画し、必要なタイミングで必要な資金を確保すること。それは創業期の経営者にとって極めて重要な仕事です。 (阿蘇山の岩場・木曽駒ケ岳 宝剣岳の岩場・西日本最高峰 石鎚山の鎖場) 一方、登山技術は、経営者個人で言えば「経営能力」、企業全体で見れば「競争優位性」にあたります。 市場ニーズがあるとしても、他社が簡単に模倣できるような製品やサービスでは生き残れません。ましてや新しい価値を提供するサービスを立ち上げる(険しい山に登る)となれば、これまでにない、そして他社が容易に追随できないような特別な何かを持っていなければなりません。 「その特別な何か」は事業領域や製品カテゴリ毎、企業毎に異なりますが、創業期のベンチャーは、自社にしかない強みを見極め、磨き、守り続けること。それが、高い山に挑むための「技術」を身につけることに相当するのです。 3. 目指す山に必要十分な装備を備える 〜経営に必要十分なリソースを揃える〜 登山において重要なのは、目指す山に応じた装備を用意することです。冬山には冬山に、岩山には岩山に必要な装備がありますし、万が一に備えて救急セットや常備薬、防寒具、雨具、行動食、非常食…とたくさんあります。また山では水はとても貴重です。 ところが、装備は多ければ多い程良いというものでもありません。 何でもかんでも積んで何十キロにもなっては、それを背負う自分の体力が持ちません。目指す山のレベルに十分以上の装備を背負う必要はないのです。 (三連座登山に向けての装備品) ベンチャー経営にとっても経営リソースの確保は最重要課題の一つです。そして、経営リソースに大きく占めるのが人員です。また、モノ作りの事業であれば工場や製造機械などもそれにあたります。人材や設備だけでなく、制度や仕組みもまた、事業を支える重要なリソースです。 開発、営業、財務、法務、カスタマーサクセス、セキュリティ。事業が成長すればするほど、必要な機能は増えていきます。製造業であれば設備投資も必要になりますし、制度設計のために外部専門家の力を借りたくなる場面もあるでしょう。 ところが、欲しいだけ、どんどんと採用したり購入したり外注したら、運転資金が尽きてしまいます。それは、重すぎる装備を背負って体力を消耗する登山にも似ています。 回している事業の規模、目指す目標に”必要かつ十分な”リソースの確保、というバランス感覚が重要です。 創業間もないベンチャーに必要なのは、何でも抱え込むことではありません。同じ船に乗る信頼できる人材を集め、それぞれが得意分野を持つ少数精鋭のチームをつくることなのです。 ———————— 以上、【百名山から学ぶベンチャー経営】の第一部でした。 私自身、「日本百名山100座踏破」という目標に向かって、まだ道半ばです。 だからこそ、この連載では完成された成功談ではなく、挑戦の途中で感じた迷いや失敗、判断や学びを、できるだけ率直にお伝えしていきたいと思います。 また、日本百名山への挑戦を題材に、ベンチャー経営や組織運営に通じる考え方や判断のあり方について考察していきたいと思います。 次回は「計画は綿密に、実行は地道に」をテーマに、目標達成のための戦略と計画の必要性と、一方で日々の地道な仕事の重要性について考えてみたいと思います。 【百名山から学ぶベンチャー経営論】 第二部「計画は綿密に、実行は地道に」 D-POPS GROUP アドバイザー 杉原眼太 注:以前執筆した「登山と経営」はダイジェスト版で、本連載では、百名山挑戦の進捗に合わせてより詳しく書いていきます。また登頂した山々の写真も順次掲載していきます。
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2026.06.10
アップセルとは? ~売上総利益を劇的に改善する方法② アップセルとクロスセルの違い~
アップセルとは、顧客が購入しようとしている商品やサービスよりも、高機能だったり高品質だったりする高単価の商品を提案し顧客単価を上げ売上を上げる手法です。家電量販店などでより高性能のCPUを搭載したパソコンを勧めたりすることが最も一般的なアップセルの事例と言えます。 今回も小売業の事例を元に、企業の基本的な収益力を示す売上総利益に着目し、売上総利益の上げ方 その②として「アップセル」について解説してまいります。 1.経費も時間もかからずに絶大な効果が得られる手法 前回は「クロスセル」を取り上げ、会社経営の本丸である売上総利益に着目したわけですが、今回も売上総利益の上げ方 その②として「アップセル」を取り上げ、引き続き売上総利益に着目して参ります。 以下復習ですが、売上総利益は非常に単純な指標で、売上高から原価を差し引いた利益のことで粗利と言ったりもします。アップルや任天堂の様に商品やサービスそのものが、独自性があり差別化されていれば競争の非常に少ない世界で高い売上総利益を上げることができます。 今回も独自性があり差別化された商品やサービスの作り方で売上総利益を上げる方法ではなく、同じような商品を扱う競争環境の中で、如何に売上総利益を上げるか?ということを取り上げて参ります。今回取り上げるアップセルは、前回のクロスセル同様経費も時間もかからずに売上総利益に対し絶大な効果が得られる手法です。 ではなぜアップセルが重要か?クロスセルとの違いは何か?を以下順を追ってご説明いたします。 2.アップセルとは まず、アップセルとは、顧客が購入しようとしている商品やサービスに対し、高機能・高品質などの高単価の商品を提案し顧客単価を上げ売上を上げる手法です。 【例】 スーツを購入しようとすれば、 ブランド品や、良い生地を使った高単価のスーツを勧められる スマホを購入しようとすれば、 メモリの大きいモデルやカメラ機能の高い高単価のPROモデルを勧められる エアコンを購入しようとすれば、 省エネ性能の高いモデルやセンサー機能の付いた高単価モデルを勧められる 車を購入しようとすれば、 SUVやミニバンタイプ、ハイブリット車といった高単価車を勧められる といった様なことが代表的で、このほかにもアップセルの事例は枚挙にいとまがありません。上記の様に直接的に勧められなくても、例えば洗剤などの日用品の様に、大容量商品や2個セットの様に、通常品より1個単価を安くしてまとめて量や数を売ることもアップセルと言えます。 アップセルとなりえる商品やサービスは、リアル店であれWEB店であれメインの位置におかれ、メーカーとしては広告を行うメイン商品になり、店員のオススメやWEBのリコメンド商品となり、一般の普及モデルから高機能や高品質をうたい提案される商品やサービスになります。 商品やサービスを販売する業態や業種であれば、ほとんどの企業でアップセルとなりえる商品やサービスをもち、アップセルを実践していると思います。アップセルは成功させれば、売上総利益に対し絶大な効果を及ぼします。 次項ではなぜアップセルは効果があるのかを、クロスセルとの違いを含めて見ていきたいと思います。 3.なぜアップセルが重要か? 売上と売上総利益から見るアップセル そもそもアップセルは売上を上げ、売上総利益を上げることを目的とした手法の一つです。なぜアップセルが重要か?と考える際には、売上の構成要素と売上総利益の構成要素に着目する必要があります。 売上を構成する要素は2つあり、1つが数量、もう1つが単価です。以下の例を見てみましょう。 【例】 1台10万円のPCが100台売れると売上は1000万円 これを1台20万円のPCにアップセルできると100台売って売上は2000万円 これを1台20万円のPCに60台アップセルでき60台しか売れなくても売上は1200万円 売上を上げるには、顧客に商品を購入いただく必要があるわけですが、同じ数を販売してもアップセルにより単価が向上していれば売上は高くなります。アップセルの結果として販売数が低くなっても単価が向上しているため売上が高くなります(上記の例では単価が倍なので、販売数が元の単価の50%以上売ることができれば、売上が上がります。) 数量と単価が売上を構成する要素であり、この組み合わせが売上になっているということを理解すると効率的に売上を上げることが出来ます。 よくあることですが、販売数だけをみて販売数を上げようとすると、思いつく対策の1番はディスカウント、つまり安売りですが、10万円のPCを2割引きの8万で売り、20万円のPC100台の売上を稼ぐには250台を売らなければなりません。 さらに重要になるのが売上総利益を構成する要素で、売上から原価を引いたものが売上総利益なわけですが、上記の例を売上総利益にしたものを見てみましょう(以下は利益率を同じ30%として例にしています) 【例】 1台10万円で原価7万円のPCが100台売れると売上は1000万円、利益は300万円 1台20万円の原価14万円のPCが100台売れると売上は2000万円、利益は600万円 上記の10万円のPCを8万円で250台売れると売上は2000万円、利益は250万円 売上を上げるためにディスカウントをして販売をした結果、仮に売れて販売数が上がり売上が上がっても利益はディスカウントする前より減ってしまいます。売上から原価を引いたものが売上総利益の構成要素なわけで、この組み合わせが売上総利益になっているということを理解すると効率的に売上総利益を上げることが出来るわけです。 では、ディスカウントすると利益が下がるから違う方法で販売数を上げようとすると、ECなら広告費を追加したり、店舗なら出店をしたり、法人営業なら営業マンを増強したりすることが一般的な対策になると思いますが、この対策だと売上総利益は増えますが、経費が増えるのでその先の営業利益が減ってしまう可能性が非常に高くなります。 上記の例でおわかりいただけたと思いますが、結局機能や品質をしっかり顧客に伝えるアップセルをしっかりやることが、売上を上げ、売上総利益を上げる最も有効な手段の1つといえるわけです。 4.アップセルとクロスセルの違いとは ではアップセルで顧客にどんどん単価の高い商品を提案すればいいのか?そういうわけではありません。例えば軽自動車を買いに来た人にレクサスをお勧めしてもまず売れないでしょう。顧客の予算に合わせ的確なメリットを提示したアップセルで無ければ単なる無理やり販売になってしまい購入体験における顧客満足を落とす結果になり経営としてマイナスの結果になってしまいます。 高機能、高品質をお勧めするアップセルに限界がでた場合に、売上を上げる力を発揮するのが前回解説したクロスセルです。 クロスセルは、前回解説しており詳細は省きますが、顧客が購入した商品やサービスに対し、関連する商品やサービスを追加で提案することで、買い上げ点数を増やし顧客単価を上げることで売上を上げる手法です。 【前章の例を使い説明すると】 1台10万円のPCを100台売ると売上は1000万円、利益率が30%で利益が300万円 これを1台20万円のPCに60台アップセル、10万のPCが40台売れ合計100台で売上は1600万円、利益率が30%で利益が480万円 アップセルだけだとここで終了になりますが ここに、無線ルーター、記憶装置、マウス、セキュリティソフト等の周辺機器が一緒に売れ 合計単価が3万円で販売数の50%に添付、利益率50%とすると 50組×3万円=売上150万円、利益75万円となり PCの売上にプラスすると売上1750万円、利益が555万円になります 1台10万円のPCをただ100台売るだけと比べ、アップセルとクロスセルを組み合わせることで、売上が1.75倍、利益では1.85倍にすることができます。 前章で売上を構成する要素は単価と数量である旨解説いたしましたが、単価を上げることに効果があるのがアップセル、数量を上げることに効果があるのがクロスセルというわけです。 単価と数量の組み合わせが売上になっており、アップセルとクロスセルで単価と数量を最大化しかつ無理が無いように最適化できると、ただ販売するだけにくらべ飛躍的かつ効率的に売上を上げることが出来ます。さらにどちらの手法もディスカウントをして数量を上げる手法ではないため売上だけでなく売上総利益も確実に上げることが出来るわけです。 アップセルとクロスセルは経費も時間もかからずに売上だけでなく売上総利益に対しても絶大な効果が得られる手法であることはご理解いただけたかと思います。ここでアップセルとクロスセルの違いを以下にまとめてみます。 【アップセル】 目的 顧客単価の向上により売上を上げる 提案 高機能/高品質/大容量等による価値のある商品/サービスの提案 【クロスセル】 目的 顧客購入点数の向上により購入数を増やし売上を上げる 提案 関連性の高い商品/サービス等を追加で購入することにより価値を生む提案 上記の様にまとめられます。 アップセル、クロスセルは売上を構成する要素の単価と数量にそれぞれ違う手法で効果を発揮することで売上をあげ、ディスカウントをする手法ではないため、売上総利益の構成要素にも影響せず、さらに広告費や人件費、家賃といった経費も増えないため売上増加が営業利益まで直結して増加する利益を上げるための最も有効な手段の1つです。どちらも地味ですが経営に及ぼす効果は絶大と言い切ってよいと思います。 5.まとめ 今回は、アップセルの効果とクロスセルとの違いについてお話をさせていただきました。 アップセルもクロスセルも非常に地味ではありますが、それぞれの重要性の教育が従業員になされ、無理やり販売にならないように顧客メリットを明確に提示でき、いろいろなテクノロジーを使いこなすことで売上や利益の最大化に絶大な効果が得られる手法であります。 広告出稿、出店、営業人員を増やす等の経費を伴う行動をする前に、アップセルとクロスセルで売上、利益を最大化しておくことが効率的に利益を出すための経営ポイントになります。 今回のアップセルと前回のクロスセルは、過去にお話しした「在庫回転率」「一人当たり売上高」「坪効率」として取り上げた、在庫、人件費、家賃のCFや経費の後にあえて取り上げております。1番最初の「在庫回転率」から一連の流れとしてご一読いただきますと経営のポイントがより見えてくると思います。まだお読みでない方は是非ご一読いただけますと幸いです。 今回のアップセルを通してディ・ポップスグループとしてお伝えしたいことは、これまで同様ビジネスはヒトにより成り立っているということです。商品を購入いただくお客様もヒトであり、商品を販売する販売員も、テクノロジーを使うのもすべてはヒトであります。 AIをはじめとするテクノロジーを使いこなさなければビジネス上で競争に勝ち生き残ることはできないと思いますがテクノロジーだけでは生き残ることはできないと思います。テクノロジーが良いから、経営戦略が良いから、ビジネスが成功するのではなく、ヒト × テクノロジー × 経営戦略の掛け算が大切であるとディ・ポップスグループは考えます。 この考えの元、ディ・ポップスグループはヒトが輝くために、また社会課題解決のためにベンチャー企業に対して、出資を通じた支援と効率という数字だけではない価値を通じたグループエコシステムの実現を目指しています。 これからもご支援、応援の程よろしくお願いします。 D-POPS GROUP 常務執行役員 渡辺哲也
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2026.05.20
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