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在庫回転率とは?~小売業の隠れたプラットフォーム~

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2025.02.28

ディ・ポップスグループは、「リアルビジネス × テクノロジー × グループシナジー」を掛け合わせた事業展開をしている会社の集合体で、100年後も社会から必要とされ続けるベンチャーエコシステムの実現を目指しています。今回は、その中でも最初に掲げている「リアルビジネス」を行う上での重要なポイントとなる「在庫回転率」について解説してまいります。

「リアルビジネス」といっても多種多様なビジネスがあります。今回は「在庫回転率」のお話になるため「リアルビジネス」の中でも、在庫をもちビジネスを行う小売業にスポットをあて解説していきたいと思います。

 

1.小売業を経営する上で着目してもらいたいポイント
小売業を経営する上で大切にするポイントは沢山あります。売上高、利益率、販売点数、販売単価、等など、、、、数あるポイントがあるなかで、小売業を経営する上で着目すべきポイントとは何か?ズバリ在庫回転率ではないかと思います。なぜ在庫回転率が重要か、以下順をおってご説明いたします。

2.在庫回転率とは
まず、在庫回転率とは、商品の在庫が売上に対して適性であるかを判断する指標で、限界値はありますが回転率が高ければ高いほど良いとされます。一般的には年間の売上高を期末の在庫高で割った計算式により算出されます。

例えば
年間6000億円の売上高の会社で在庫が2000億円あれば、在庫回転率は3回転/年
年間400億円の売上高の会社で在庫が20億円であれば、在庫回転率は20回転/年
となります。

小売業の中でも業態により違いますが、一般的には年間12回転以上が(1ヶ月の売上で在庫の金額が賄える水準)標準的と言われています。

3.なぜ在庫回転率が重要か?
在庫回転率がなぜ重要か、以下の例を元に解説してみたいと思います。

扱い商品や業界が違う会社同士は比較がしにくくわかりづらいので、比較がしやすい様に同じ商品を販売していて、売上規模が同程度の家電販売店をモデルケースに解説していきたいと思います。(モデルケースの会社は架空の会社ですが、実際の会社がベースとなっております。)

【モデルケース】
・家電販売店A社 店舗数550店 従業員数16000人(内臨時従業員8500人)
売上高7300億円、売上総利益2080億円、利益率28.5%、経常利益350億円、
経常利益率4.8%、在庫高1600億円、在庫回転率4.6回転/年
・家電量販店B社 店舗数24店 従業員数5000人
売上高7500億円、売上総利益2250億、利益率30%、経常利益550億円、
経常利益率7.3%、在庫高380億円、在庫回転率18回転/年

家電販売店業界の中で収益ベースでは1位、2位の会社といっても過言ではない非常に優秀な会社がA社、B社です。A社は郊外型、B社は都市型で主な違いは立地による店舗数となりますが、見比べていただき一番違うポイントとしてみていただきたいのが、在庫高とそれに伴う在庫回転率です。

どちらも売り上げは7000億円程度ですが、A社は7000億円程度の売上を作る為に保持している在庫が1600億円、B社は7000億円程度の売上を作る為に保持している在庫が380億円で在庫高が1220億円も違います。在庫が1220億円違うということは、単純に考えればA社は在庫で、B社は現金で持っていると考えることができます。在庫回転率の4倍程度の差が、が大きなキャッシュフローの差につながっています。

ちなみにA社の時価総額は2600億円程度ですのでB社との在庫回転率から生み出される在庫の差額(1220億円)が時価総額の半分くらいになるというと、この差がどれだけ大きいかということがお分かりいただけると思います。

多少の違いがあれど、同じ商品をあつかっている家電販売店業界ではA社、B社以外をみても、売上総利益率は大体28-30%程度でどの会社も同じような水準となっています。家電販売店だけでなく、他の業態もそうかと思いますが、同じ商品をあつかっている業態で同じような売上規模だと売上総利益率に大きな差は出にくいです。

A社、B社の比較の場合でも売上総利益率の差は1.5%程度、額で100億円/年程度の差となりこれも非常に大きな数字ではあるものの、在庫回転率からでる差である1220億と比べると売上総利益率の差は、10分1以下のインパクトであると考えることが出来ると思います(在庫回転率でのキャッシュの差を売上総利益の差で解消するには単純に考えて12年かかるためです)。

今回はわかりやすい例として、同じ商品を販売していて、売上規模が同程度の家電販売店をモデルケースとして解説いたしましたが、店舗を作り、在庫を仕入れ、従業員を雇う等、キャッシュが先行してかかる業態である小売業で重要な指標の1つは間違いなく在庫回転率です。今回のモデルケースの様に同じ商品を扱っている業界はもちろん、商品そのもので差別化ができ、売上総利益で大きく差をつけることができるアパレルや製造小売でも、小売業では在庫は必要で在庫から逃げることはできません。

業界水準を大きく上回る在庫回転率を実現することができれば、ビジネスをする上で避けて通れない競合他社との競争上において、大きなアドバンテージを持つことに直結していきます。

4.在庫回転率の上げ方
在庫回転率の重要性はご認識いただけたかと思いますので、在庫回転率を如何に上げるか?というお話をさせていただきます。単純に在庫を減らせば在庫回転率が上がるのか?というとそうではありません。当たり前ですがただ在庫減らすだけだと売れる商品からなくなり売上が減るので在庫も減りますが、在庫回転率は上がりません。それどころかお客様の欲しい商品が無いお店となり、店舗存続の危機になりかねません。

「言うは易く行うは難し」なことではありますが、売れる商品を売れるタイミングで売れるだけ仕入れるという当たり前なことを実現することが在庫回転率の向上につながります。

在庫回転率の高い会社は例外なく、テクノロジーにより在庫数や販売数の可視化が出来ており、自動化も進みタイムリーに売れる商品を売れるだけ仕入れています。また、物流網に投資がなされており店舗で商品が売れてから次の商品が入荷するまでのリードタイムをできる限り短くすることも実現しています。

そして最大のポイントはテクノロジーや物流の様な仕組みだけでなく、会社全体にキャッシュフローで経営していくための在庫回転率の重要性の教育がなされており、テクノロジーや物流を教育の行き届いた従業員が血の通った運営をしています。

ヒト×テクノロジー×仕組みの掛け算こそが、在庫回転率を向上させるポイントなります。

5.まとめ
今回は「リアルビジネス」の中で、小売業を行う上でのポイントなる在庫回転率のお話をさせていただきました。小売業を経営されている方の多くは、売上や売上総利益率を追いかけているかと思います。もちろん売上が無ければそもそも収入がないので成り立ちませんし、売上総利益率1%ではさすがにビジネスを成り立たせるのは難しいと思います。

こういった極端な例はさておき、小売業は商品をお客様に購入いただき成り立っています。お客様の欲しい商品が欲しい時にあるということが必須でその為に商品を先に購入し在庫として店舗に置いています。この在庫の最適化こそが、在庫回転率として数値化され、キャッシュフローの最大化につながり、他のポイントとは比べ物にならないほどの競合他社とのアドバンテージポイントになります。

売上や売上総利益率と比べ表に出てくることが少ない、まさに小売業の隠れたプラットフォームといえると思います。

現在「リアルビジネス」を生かすためには、テクノロジーや仕組みは必須です。ただ、テクノロジーや仕組みを使うのはヒトであり、「リアルビジネス」の最後のお客様接点もヒトであります。結局「リアルビジネス」を生かすためには、1人1人のヒトの力を最大限に生かした、ヒト×テクノロジー×仕組みの掛け算であると、ディ・ポップスグループは考えます。

その考えの元、ヒトが輝くため、また社会課題解決のために「リアルビジネス」を行っているベンチャー企業に対して、出資を通じた支援と「リアルビジネス」の価値を通じたグループエコシステムの実現を目指しています。

これからもご支援、応援の程よろしくお願いします。

D-POPS GROUP 常務執行役員 渡辺哲也

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2026.06.10
アップセルとは? ~売上総利益を劇的に改善する方法② アップセルとクロスセルの違い~
アップセルとは、顧客が購入しようとしている商品やサービスよりも、高機能だったり高品質だったりする高単価の商品を提案し顧客単価を上げ売上を上げる手法です。家電量販店などでより高性能のCPUを搭載したパソコンを勧めたりすることが最も一般的なアップセルの事例と言えます。 今回も小売業の事例を元に、企業の基本的な収益力を示す売上総利益に着目し、売上総利益の上げ方 その②として「アップセル」について解説してまいります。 1.経費も時間もかからずに絶大な効果が得られる手法 前回は「クロスセル」を取り上げ、会社経営の本丸である売上総利益に着目したわけですが、今回も売上総利益の上げ方 その②として「アップセル」を取り上げ、引き続き売上総利益に着目して参ります。 以下復習ですが、売上総利益は非常に単純な指標で、売上高から原価を差し引いた利益のことで粗利と言ったりもします。アップルや任天堂の様に商品やサービスそのものが、独自性があり差別化されていれば競争の非常に少ない世界で高い売上総利益を上げることができます。 今回も独自性があり差別化された商品やサービスの作り方で売上総利益を上げる方法ではなく、同じような商品を扱う競争環境の中で、如何に売上総利益を上げるか?ということを取り上げて参ります。今回取り上げるアップセルは、前回のクロスセル同様経費も時間もかからずに売上総利益に対し絶大な効果が得られる手法です。 ではなぜアップセルが重要か?クロスセルとの違いは何か?を以下順を追ってご説明いたします。 2.アップセルとは まず、アップセルとは、顧客が購入しようとしている商品やサービスに対し、高機能・高品質などの高単価の商品を提案し顧客単価を上げ売上を上げる手法です。 【例】 スーツを購入しようとすれば、 ブランド品や、良い生地を使った高単価のスーツを勧められる スマホを購入しようとすれば、 メモリの大きいモデルやカメラ機能の高い高単価のPROモデルを勧められる エアコンを購入しようとすれば、 省エネ性能の高いモデルやセンサー機能の付いた高単価モデルを勧められる 車を購入しようとすれば、 SUVやミニバンタイプ、ハイブリット車といった高単価車を勧められる といった様なことが代表的で、このほかにもアップセルの事例は枚挙にいとまがありません。上記の様に直接的に勧められなくても、例えば洗剤などの日用品の様に、大容量商品や2個セットの様に、通常品より1個単価を安くしてまとめて量や数を売ることもアップセルと言えます。 アップセルとなりえる商品やサービスは、リアル店であれWEB店であれメインの位置におかれ、メーカーとしては広告を行うメイン商品になり、店員のオススメやWEBのリコメンド商品となり、一般の普及モデルから高機能や高品質をうたい提案される商品やサービスになります。 商品やサービスを販売する業態や業種であれば、ほとんどの企業でアップセルとなりえる商品やサービスをもち、アップセルを実践していると思います。アップセルは成功させれば、売上総利益に対し絶大な効果を及ぼします。 次項ではなぜアップセルは効果があるのかを、クロスセルとの違いを含めて見ていきたいと思います。 3.なぜアップセルが重要か? 売上と売上総利益から見るアップセル そもそもアップセルは売上を上げ、売上総利益を上げることを目的とした手法の一つです。なぜアップセルが重要か?と考える際には、売上の構成要素と売上総利益の構成要素に着目する必要があります。 売上を構成する要素は2つあり、1つが数量、もう1つが単価です。以下の例を見てみましょう。 【例】 1台10万円のPCが100台売れると売上は1000万円 これを1台20万円のPCにアップセルできると100台売って売上は2000万円 これを1台20万円のPCに60台アップセルでき60台しか売れなくても売上は1200万円 売上を上げるには、顧客に商品を購入いただく必要があるわけですが、同じ数を販売してもアップセルにより単価が向上していれば売上は高くなります。アップセルの結果として販売数が低くなっても単価が向上しているため売上が高くなります(上記の例では単価が倍なので、販売数が元の単価の50%以上売ることができれば、売上が上がります。) 数量と単価が売上を構成する要素であり、この組み合わせが売上になっているということを理解すると効率的に売上を上げることが出来ます。 よくあることですが、販売数だけをみて販売数を上げようとすると、思いつく対策の1番はディスカウント、つまり安売りですが、10万円のPCを2割引きの8万で売り、20万円のPC100台の売上を稼ぐには250台を売らなければなりません。 さらに重要になるのが売上総利益を構成する要素で、売上から原価を引いたものが売上総利益なわけですが、上記の例を売上総利益にしたものを見てみましょう(以下は利益率を同じ30%として例にしています) 【例】 1台10万円で原価7万円のPCが100台売れると売上は1000万円、利益は300万円 1台20万円の原価14万円のPCが100台売れると売上は2000万円、利益は600万円 上記の10万円のPCを8万円で250台売れると売上は2000万円、利益は250万円 売上を上げるためにディスカウントをして販売をした結果、仮に売れて販売数が上がり売上が上がっても利益はディスカウントする前より減ってしまいます。売上から原価を引いたものが売上総利益の構成要素なわけで、この組み合わせが売上総利益になっているということを理解すると効率的に売上総利益を上げることが出来るわけです。 では、ディスカウントすると利益が下がるから違う方法で販売数を上げようとすると、ECなら広告費を追加したり、店舗なら出店をしたり、法人営業なら営業マンを増強したりすることが一般的な対策になると思いますが、この対策だと売上総利益は増えますが、経費が増えるのでその先の営業利益が減ってしまう可能性が非常に高くなります。 上記の例でおわかりいただけたと思いますが、結局機能や品質をしっかり顧客に伝えるアップセルをしっかりやることが、売上を上げ、売上総利益を上げる最も有効な手段の1つといえるわけです。 4.アップセルとクロスセルの違いとは ではアップセルで顧客にどんどん単価の高い商品を提案すればいいのか?そういうわけではありません。例えば軽自動車を買いに来た人にレクサスをお勧めしてもまず売れないでしょう。顧客の予算に合わせ的確なメリットを提示したアップセルで無ければ単なる無理やり販売になってしまい購入体験における顧客満足を落とす結果になり経営としてマイナスの結果になってしまいます。 高機能、高品質をお勧めするアップセルに限界がでた場合に、売上を上げる力を発揮するのが前回解説したクロスセルです。 クロスセルは、前回解説しており詳細は省きますが、顧客が購入した商品やサービスに対し、関連する商品やサービスを追加で提案することで、買い上げ点数を増やし顧客単価を上げることで売上を上げる手法です。 【前章の例を使い説明すると】 1台10万円のPCを100台売ると売上は1000万円、利益率が30%で利益が300万円 これを1台20万円のPCに60台アップセル、10万のPCが40台売れ合計100台で売上は1600万円、利益率が30%で利益が480万円 アップセルだけだとここで終了になりますが ここに、無線ルーター、記憶装置、マウス、セキュリティソフト等の周辺機器が一緒に売れ 合計単価が3万円で販売数の50%に添付、利益率50%とすると 50組×3万円=売上150万円、利益75万円となり PCの売上にプラスすると売上1750万円、利益が555万円になります 1台10万円のPCをただ100台売るだけと比べ、アップセルとクロスセルを組み合わせることで、売上が1.75倍、利益では1.85倍にすることができます。 前章で売上を構成する要素は単価と数量である旨解説いたしましたが、単価を上げることに効果があるのがアップセル、数量を上げることに効果があるのがクロスセルというわけです。 単価と数量の組み合わせが売上になっており、アップセルとクロスセルで単価と数量を最大化しかつ無理が無いように最適化できると、ただ販売するだけにくらべ飛躍的かつ効率的に売上を上げることが出来ます。さらにどちらの手法もディスカウントをして数量を上げる手法ではないため売上だけでなく売上総利益も確実に上げることが出来るわけです。 アップセルとクロスセルは経費も時間もかからずに売上だけでなく売上総利益に対しても絶大な効果が得られる手法であることはご理解いただけたかと思います。ここでアップセルとクロスセルの違いを以下にまとめてみます。 【アップセル】 目的 顧客単価の向上により売上を上げる 提案 高機能/高品質/大容量等による価値のある商品/サービスの提案 【クロスセル】 目的 顧客購入点数の向上により購入数を増やし売上を上げる 提案 関連性の高い商品/サービス等を追加で購入することにより価値を生む提案 上記の様にまとめられます。 アップセル、クロスセルは売上を構成する要素の単価と数量にそれぞれ違う手法で効果を発揮することで売上をあげ、ディスカウントをする手法ではないため、売上総利益の構成要素にも影響せず、さらに広告費や人件費、家賃といった経費も増えないため売上増加が営業利益まで直結して増加する利益を上げるための最も有効な手段の1つです。どちらも地味ですが経営に及ぼす効果は絶大と言い切ってよいと思います。 5.まとめ 今回は、アップセルの効果とクロスセルとの違いについてお話をさせていただきました。 アップセルもクロスセルも非常に地味ではありますが、それぞれの重要性の教育が従業員になされ、無理やり販売にならないように顧客メリットを明確に提示でき、いろいろなテクノロジーを使いこなすことで売上や利益の最大化に絶大な効果が得られる手法であります。 広告出稿、出店、営業人員を増やす等の経費を伴う行動をする前に、アップセルとクロスセルで売上、利益を最大化しておくことが効率的に利益を出すための経営ポイントになります。 今回のアップセルと前回のクロスセルは、過去にお話しした「在庫回転率」「一人当たり売上高」「坪効率」として取り上げた、在庫、人件費、家賃のCFや経費の後にあえて取り上げております。1番最初の「在庫回転率」から一連の流れとしてご一読いただきますと経営のポイントがより見えてくると思います。まだお読みでない方は是非ご一読いただけますと幸いです。 今回のアップセルを通してディ・ポップスグループとしてお伝えしたいことは、これまで同様ビジネスはヒトにより成り立っているということです。商品を購入いただくお客様もヒトであり、商品を販売する販売員も、テクノロジーを使うのもすべてはヒトであります。 AIをはじめとするテクノロジーを使いこなさなければビジネス上で競争に勝ち生き残ることはできないと思いますがテクノロジーだけでは生き残ることはできないと思います。テクノロジーが良いから、経営戦略が良いから、ビジネスが成功するのではなく、ヒト × テクノロジー × 経営戦略の掛け算が大切であるとディ・ポップスグループは考えます。 この考えの元、ディ・ポップスグループはヒトが輝くために、また社会課題解決のためにベンチャー企業に対して、出資を通じた支援と効率という数字だけではない価値を通じたグループエコシステムの実現を目指しています。 これからもご支援、応援の程よろしくお願いします。 D-POPS GROUP 常務執行役員 渡辺哲也
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2026.05.20
名経営者からの学び ー ”考え方が人生を分かつ”(中村天風)
ベンチャーエコシステムの実現のためには、起業から世界的大企業に育てるまでを行ってきた、過去の名経営者から謙虚に学ぶ姿勢が欠かせません。 「名経営者からの学び」シリーズでは、筆者が影響を受けた名経営者や思想家らの言葉をご紹介し、実体験からの想い、事業や実生活で活かされた事例などをご紹介していきます。 第三回目は、グループのアドバイザー、杉原が担当致します。 1. ”考え方が人生を分かつ”(中村天風) 心が、積極的か、あるいは消極的かで、人生に対する考え方がぜんぜん両極端に相違してきてしまう。心が積極的であれば、人生はどんな場合も明朗、颯爽溌剌(さっそうはつらつ)、勢いの満ちみちたものになりますけれども、反対に消極的だと、人生のすべてがずっと勢いをなくしてしまいます。人生を考える自分の心が消極的だと、すべてが哀れ惨憺(さんたん)、光のない、惨めなものに終わりはしませんか。 人生がたった一回かぎりである以上、たった今からでき得るかぎり完全な状態でいかされなければいけません。 ーー「中村天風 一日一話」(財団法人天風会 [編]、PHP研究所発行)より、原文のまま引用 2. この言葉を選んだ理由 私事ですが、1990年からこれまで一貫して、それぞれの時代において、”ベンチャー”と言われていた企業に勤めてきました。その中でも特に、現在のKDDIの前身にあたる第二電電での経験が、その後の仕事人としての基礎を作り、また、長年挑戦を続ける心の土台となった、”ベンチャー精神”を鍛えてくれたのだと、今でもあの時の経験に感謝をしています。 その、第二電電の創業者の稲盛和夫氏は、名経営者として、日本のみならず、中国や世界でも名が知られており、経営者らに尊敬されています。その稲盛和夫氏が影響を受けた思想家の一人が、この中村天風氏です。当時、上司や事業部長から、(当時流行った)ランチェスター戦略本やMBA本を読むことを勧められましたが、それよりも何よりも、真っ先に読むように言われたのが、この天風の書籍でした。 天風自身のロングセラー書籍には、「心を磨く」と「運命を拓く」ですが、一日一話形式で編集されたこの書物、「中村天風 一日一話」は、天風書籍のエッセンスを一話ごとに短く簡潔にした、非常に読み易い本です。”中村天風”という名前は聞いたことはあるが、まだ手にしたことがない、改めて読み返したいがどの本を読み返そうか、という方々には、まずこの本をと、お勧めしたい一冊として選びました。 ちなみに、今世界で最も名が知られたスポーツ選手の一人であり、日本人として誇らしいスーパースターである、大谷翔平選手がメジャーに行く前に天風の書籍を熟読していた、と話題になりました。 3. 自らの経験とこの思想への想い 90年代から2000年にかけて、社会人としてのイロハもまだ身に付いていない20代に、いきなり新規事業の立ち上げ部門(後にPHS事業となるDDIポケット電話準備室)に配属され、わずか6人の営業戦略の立ち上げ部隊の一員として、昼夜土日の境のないような激務をしていました。今だから言えますが、パワハラやワークライフバランスなどという言葉がまだ無くて、上司の命令は絶対、理不尽がまかり通る職場でした。 そのような、ややもすると不平不満を抱えたり、逃げ出したくなったりするような環境に放り込まれた身でも、私は物事の明るい面を見るように心掛け、困難を避けず、積極的な姿勢を保ち、人が見ていないところでも努力を続けることができました。それはひとえに、この天風本をバイブルにしていたから、と言っても過言ではありません。 この中村天風の書籍の中で度々触れられる、そして天風の代表的な思想である、”常に心を積極的に保つ”、という習慣を得たことで、あの時代だけでなく、その後の仕事人生に長く影響を与え、困難を乗り越える力を付け、チャンスを得て、数々の貴重な経験を積むことができました。 この「一日一話」の中には、表現は違えども、数々の積極思考の重要性、心の在り方の重要性を説く一節が散りばめられています。 いくつか挙げると、 ”心の思考が人生を創る” 「人間の健康も、運命も、心一つの置きどころ」心が積極的方向に動くのと、消極的方向に動くのとでは、天地の相違がある。 ”意志の力” 極限すれば、人生を幸福にするのも不幸にするのも、心の統制にかかっていると言ってもいいくらいなのである。この心に対する絶対の統制力を有する意志の力というものこそは、広い意味で、人を美しく向上させる原動力だと言える。 ”尊く、強く、正しく、清く” 自然法則にそむかないようにするには一体どうすればいいかというと、第一に「心」の態度を終始一貫いかなる場合があろうとも積極的であらしめることです。積極的であらしめるということは、尊く、強く、正しく、清く生きることなんであります。およそこのことぐらい人生および生命に対して大事なことはないのであります。 ”不平不満を口にしない” どんな場合があっても不平不満を口にしないこと。この不平不満が心の中にあると、どうしてもその言葉が積極的になりません。不平不満のある人は、始終上ばかり見て、下を見ないでいる。はたはみんな幸福で、自分だけがこの世の中で一番不幸な人間のように考えている。 ーー「中村天風 一日一話」より引用 これらの言葉に励まされ、自らを奮い立たせ、前向きに仕事に取り組んだおかげで、冷静に物事に対処し時代の流れを読むことができました。その後、PHSのモバイルインターネットサービスの立ち上げ、AOL社でのブロードバンドの立ち上げ、Napster社での音楽配信事業の立ち上げ、Google社での検索シェア向上の仕組み作りなどに従事して、インターネット業界の歴史と共に歩んでこられました。 現代のビジネスパーソンは、日々変化する、そして溢れる程の情報の洪水に揉まれています。日々の仕事で必要な知識だけでなく、生成AIやAIエージェント、AIロボティクス等、世界の最新の技術情報を追いかけなければなりません。また、自分の仕事が「AIに代替されてしまう職業」になるのではないか、と不安な気持ちを持たざるを得ないような環境に置かれています。 知識や情報を詰め込むことも、技術力を備えることも大事です。しかし、人間がAIと根本的に異なるもの、人間としての資産は、情報や知識ではなく、”心”です。技術や知識はその時代ごとに変わりますし、後から身に付けられます。しかし、前向きな心や積極的な考え方というものこそが、土台となり、時代の変化に関係なく自分の内面に積み重なる財産になるのだな、と私は思います。 今、私の手元に、もう20年程ずっと財布にしまっている、御守のような小さな紙の切れ端があります。そこには、自分でしたためた「生活信条七ヶ条」が記されています。 そのうちの最初の3条、 一、常に物事を前向きに考える 二、常に向上心を保ち勤勉を心掛ける 三、力の及ばぬことに不平不満を言わない は、すっかり自分の言葉、信条になりましたが、今思えば、この中村天風の書籍(及びカール・ヒルティの「幸福論」)から引用して簡素化した言葉だったということを思い出しました。 このような積極的思考法を世に広めてくれた、実業家であり、また思想家でもある中村天風氏に感謝します。 4. 読者の方々へのメッセージ 今回は、少し古い人物の著書を挙げさせていただきました。また、著名な経営者ではない、しかし、著名な経営者に影響を与えた思想家、という観点で選ばせていただきました。 筋違いな書籍ではないかな、と最初は思いましたが、誰もが知る大谷翔平選手が読んでいる、と聞いた時は、やっぱり普遍的な思想なんだな、と嬉しく思ったと同時に、スポーツ選手にも、そして経営者の皆さんにも響く言葉がたくさん詰め込まれているなと思ってご紹介致しました。 益々先が読めない時代になっていますが(ちなみに人類の歴史ではいつの時代もそう言われていた)、ここで紹介した中村天風氏の書籍を手に取っていただくことで、積極的な心の持ち方を保ち、前向きに元気はつらつとして、新規事業や起業した事業に取り組んでいく原動力になれば幸いです。 皆さんの仕事、事業、そして人生そのものが、明るく、幸福に満ち溢れたものでありますように! ディ・ポップスグループでは、「ベンチャーエコシステム作りを目指す」をビジョンに掲げ、エコシステム内の企業群が持続的に成長できる仕組みづくりと、アドバイザー陣による伴走支援に取り組んでいます。 ※詳しくはこちらをお読みください。「ベンチャーエコシステムとは?」 こちらの記事が、ベンチャー創業者および事業責任者の皆様にとって少しでもお役に立てたら大変嬉しく思います。 D-POPS GROUP アドバイザー 杉原眼太
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2026.05.13
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