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在庫回転率とは?~小売業の隠れたプラットフォーム~

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2025.02.28

ディ・ポップスグループは、「リアルビジネス × テクノロジー × グループシナジー」を掛け合わせた事業展開をしている会社の集合体で、100年後も社会から必要とされ続けるベンチャーエコシステムの実現を目指しています。今回は、その中でも最初に掲げている「リアルビジネス」を行う上での重要なポイントとなる「在庫回転率」について解説してまいります。

「リアルビジネス」といっても多種多様なビジネスがあります。今回は「在庫回転率」のお話になるため「リアルビジネス」の中でも、在庫をもちビジネスを行う小売業にスポットをあて解説していきたいと思います。

 

1.小売業を経営する上で着目してもらいたいポイント
小売業を経営する上で大切にするポイントは沢山あります。売上高、利益率、販売点数、販売単価、等など、、、、数あるポイントがあるなかで、小売業を経営する上で着目すべきポイントとは何か?ズバリ在庫回転率ではないかと思います。なぜ在庫回転率が重要か、以下順をおってご説明いたします。

2.在庫回転率とは
まず、在庫回転率とは、商品の在庫が売上に対して適性であるかを判断する指標で、限界値はありますが回転率が高ければ高いほど良いとされます。一般的には年間の売上高を期末の在庫高で割った計算式により算出されます。

例えば
年間6000億円の売上高の会社で在庫が2000億円あれば、在庫回転率は3回転/年
年間400億円の売上高の会社で在庫が20億円であれば、在庫回転率は20回転/年
となります。

小売業の中でも業態により違いますが、一般的には年間12回転以上が(1ヶ月の売上で在庫の金額が賄える水準)標準的と言われています。

3.なぜ在庫回転率が重要か?
在庫回転率がなぜ重要か、以下の例を元に解説してみたいと思います。

扱い商品や業界が違う会社同士は比較がしにくくわかりづらいので、比較がしやすい様に同じ商品を販売していて、売上規模が同程度の家電販売店をモデルケースに解説していきたいと思います。(モデルケースの会社は架空の会社ですが、実際の会社がベースとなっております。)

【モデルケース】
・家電販売店A社 店舗数550店 従業員数16000人(内臨時従業員8500人)
売上高7300億円、売上総利益2080億円、利益率28.5%、経常利益350億円、
経常利益率4.8%、在庫高1600億円、在庫回転率4.6回転/年
・家電量販店B社 店舗数24店 従業員数5000人
売上高7500億円、売上総利益2250億、利益率30%、経常利益550億円、
経常利益率7.3%、在庫高380億円、在庫回転率18回転/年

家電販売店業界の中で収益ベースでは1位、2位の会社といっても過言ではない非常に優秀な会社がA社、B社です。A社は郊外型、B社は都市型で主な違いは立地による店舗数となりますが、見比べていただき一番違うポイントとしてみていただきたいのが、在庫高とそれに伴う在庫回転率です。

どちらも売り上げは7000億円程度ですが、A社は7000億円程度の売上を作る為に保持している在庫が1600億円、B社は7000億円程度の売上を作る為に保持している在庫が380億円で在庫高が1220億円も違います。在庫が1220億円違うということは、単純に考えればA社は在庫で、B社は現金で持っていると考えることができます。在庫回転率の4倍程度の差が、が大きなキャッシュフローの差につながっています。

ちなみにA社の時価総額は2600億円程度ですのでB社との在庫回転率から生み出される在庫の差額(1220億円)が時価総額の半分くらいになるというと、この差がどれだけ大きいかということがお分かりいただけると思います。

多少の違いがあれど、同じ商品をあつかっている家電販売店業界ではA社、B社以外をみても、売上総利益率は大体28-30%程度でどの会社も同じような水準となっています。家電販売店だけでなく、他の業態もそうかと思いますが、同じ商品をあつかっている業態で同じような売上規模だと売上総利益率に大きな差は出にくいです。

A社、B社の比較の場合でも売上総利益率の差は1.5%程度、額で100億円/年程度の差となりこれも非常に大きな数字ではあるものの、在庫回転率からでる差である1220億と比べると売上総利益率の差は、10分1以下のインパクトであると考えることが出来ると思います(在庫回転率でのキャッシュの差を売上総利益の差で解消するには単純に考えて12年かかるためです)。

今回はわかりやすい例として、同じ商品を販売していて、売上規模が同程度の家電販売店をモデルケースとして解説いたしましたが、店舗を作り、在庫を仕入れ、従業員を雇う等、キャッシュが先行してかかる業態である小売業で重要な指標の1つは間違いなく在庫回転率です。今回のモデルケースの様に同じ商品を扱っている業界はもちろん、商品そのもので差別化ができ、売上総利益で大きく差をつけることができるアパレルや製造小売でも、小売業では在庫は必要で在庫から逃げることはできません。

業界水準を大きく上回る在庫回転率を実現することができれば、ビジネスをする上で避けて通れない競合他社との競争上において、大きなアドバンテージを持つことに直結していきます。

4.在庫回転率の上げ方
在庫回転率の重要性はご認識いただけたかと思いますので、在庫回転率を如何に上げるか?というお話をさせていただきます。単純に在庫を減らせば在庫回転率が上がるのか?というとそうではありません。当たり前ですがただ在庫減らすだけだと売れる商品からなくなり売上が減るので在庫も減りますが、在庫回転率は上がりません。それどころかお客様の欲しい商品が無いお店となり、店舗存続の危機になりかねません。

「言うは易く行うは難し」なことではありますが、売れる商品を売れるタイミングで売れるだけ仕入れるという当たり前なことを実現することが在庫回転率の向上につながります。

在庫回転率の高い会社は例外なく、テクノロジーにより在庫数や販売数の可視化が出来ており、自動化も進みタイムリーに売れる商品を売れるだけ仕入れています。また、物流網に投資がなされており店舗で商品が売れてから次の商品が入荷するまでのリードタイムをできる限り短くすることも実現しています。

そして最大のポイントはテクノロジーや物流の様な仕組みだけでなく、会社全体にキャッシュフローで経営していくための在庫回転率の重要性の教育がなされており、テクノロジーや物流を教育の行き届いた従業員が血の通った運営をしています。

ヒト×テクノロジー×仕組みの掛け算こそが、在庫回転率を向上させるポイントなります。

5.まとめ
今回は「リアルビジネス」の中で、小売業を行う上でのポイントなる在庫回転率のお話をさせていただきました。小売業を経営されている方の多くは、売上や売上総利益率を追いかけているかと思います。もちろん売上が無ければそもそも収入がないので成り立ちませんし、売上総利益率1%ではさすがにビジネスを成り立たせるのは難しいと思います。

こういった極端な例はさておき、小売業は商品をお客様に購入いただき成り立っています。お客様の欲しい商品が欲しい時にあるということが必須でその為に商品を先に購入し在庫として店舗に置いています。この在庫の最適化こそが、在庫回転率として数値化され、キャッシュフローの最大化につながり、他のポイントとは比べ物にならないほどの競合他社とのアドバンテージポイントになります。

売上や売上総利益率と比べ表に出てくることが少ない、まさに小売業の隠れたプラットフォームといえると思います。

現在「リアルビジネス」を生かすためには、テクノロジーや仕組みは必須です。ただ、テクノロジーや仕組みを使うのはヒトであり、「リアルビジネス」の最後のお客様接点もヒトであります。結局「リアルビジネス」を生かすためには、1人1人のヒトの力を最大限に生かした、ヒト×テクノロジー×仕組みの掛け算であると、ディ・ポップスグループは考えます。

その考えの元、ヒトが輝くため、また社会課題解決のために「リアルビジネス」を行っているベンチャー企業に対して、出資を通じた支援と「リアルビジネス」の価値を通じたグループエコシステムの実現を目指しています。

これからもご支援、応援の程よろしくお願いします。

D-POPS GROUP 常務執行役員 渡辺哲也

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2026.07.21
【百名山から学ぶベンチャー経営論】 第一部「頂を決め、準備する」
ディ・ポップスグループは、「社会に変革をもたらす多数の成長ベンチャー(ユニコーン企業)を輩出する」というミッションを掲げ、「誠実・謙虚・感謝の心で、共に学び、共に成長する」をバリューとしています。 アドバイザーとして従事する杉原は、昨年の夏に立山へ登ったことをきっかけに、「ユニコーンTシャツを着て日本百名山100座を踏破する」という目標を掲げ、仕事の合間を縫って全国の山々を登り続けています。 本連載では、「共に学び、共に成長する」というバリューを体現する取り組みとして、その挑戦の中で経験した成功や失敗、計画や準備、判断や撤退の大切さなどを、ベンチャー経営や組織運営になぞらえながら考察していきます。 登山も経営も、目指す頂を定め、計画(戦略)と準備を整え、一歩ずつ前進していく営みです。この連載が、皆様自身の仕事や挑戦を考えるきっかけになれば幸いです。 今回は第一部として、ベンチャー経営を登山に例えながら、ビジョンの重要性と、その実現に向けて必要な準備について考えてみたいと思います。 1. 登るべき頂(ビジョン)を決める ~ ビジョンなき挑戦は続かない ~ ダイエットのために何となくウォーキングを始める。観光で訪れた街で、旅先で小高い山に登って市内を展望する。健康や観光のためにはもちろんいい運動にはなります。しかし、それだけでは「挑戦」と呼ぶには少し物足りません。目指す頂や、一連の山を明確に設定した挑戦の方が、達成した時の喜びは大きく、学びも多く、経験としても深く残ります。 ベンチャー経営も似ているのではないでしょうか?何となく「社長をやりたい」「お金持ちになりたい」という動機だけでは、社会に価値を生む大きな事業を育てることは難しいでしょう。 事業を興すには、明確なビジョンと具体的な目標を描く必要があります。 経営者だけでなく、ビジネスパーソンや職人も同じ。将来こういうキャリアを歩みたい、◯◯のプロになりたい。そうした目標を明確に持つことで、人は必要な学びや経験を自ら取りに行くようになります。 私事ですが、一年前までは体脂肪燃焼のためくらいの気持ちで高尾山や大山などに登る、軽いハイカーでした。しかし、昨年の夏、初めて訪れた富山県で、その険しさを知らないまま立山の最高峰に登った時に、人生が変わりました。 薄い酸素でふらふらになりながら辿り着いた山頂で、360度に広がる山々を見た時、「もっと難しい山にも挑戦したい」という感情が一気に湧き上がりました。 そしてある日、「日本百名山」という書籍に出会い、一気に読み終えた頃には、私の中のベンチャー魂に再び火が付いていました。 「アラカンで日本百名山を完登する」 という、明確な目標を持つに至ったのです。 (立山の雄岳頂上からの眺めと目指すきっかけとなった日本百名山の本) 昨年8月のその日以来、コツコツ登り続けて、執筆現在で41座(山の数え方)に登頂しました。当時は全くの素人でしたので、低い山でもクタクタになっていましたが、徐々に体力が付いて、高い山、険しい山にも登れるようになりました。 今でもまだまだ体力にも登山技術にも課題はありますが、登頂を重ねるに連れ、登山への情熱は高まるばかりです。百名山という目標を持たなければ、私はここまで登れなかったと思います。 ベンチャー経営も同じ。創業時のビジョンが明確であるほど、必要な準備をする原動力になりますし、困難に立ち向かう力になります。 また、ビジョンは、ただ掲げるだけでは不十分です。「創業◯年までに売上◯◯億円」「◯年までに会員数◯百万人」といった、具体的で挑戦的、かつ現実的な目標に落とし込むことで、人も組織も初めて動き出します。 2. 目指す山に必要な体力と技術を備える 〜資本と差別化要素が肝となる〜 山に登り慣れていない素人が、最難関の奥穂高岳や剱岳、何日もかかる幌尻岳などにいきなり挑戦しても、登頂できないどころか命に関わる危険を招き、結果として周囲にも大きな負担をかけてしまいます。 目指す頂に立つには、相応の体力を備える必要があります。そして、岩場の歩き方、鎖場の登り方などの登山技術も必要です。それらを準備せず挑戦するのは、勇気や大胆さとして称賛されることではなく、未熟さや無謀さの表れです。 ビジネスパーソンにも体力や気力が必要です。しかしここでは起業という視点で例えたいと思います。事業会社、特に立ち上げ間もない会社にとっての体力とは、運転資金に例えられます。 小さな個人事業主ならば自己資金だけで起業できるでしょう。しかし、社会課題を解決する大きな事業やプラットフォーム事業を興すには、巨額の運転資金を集めなければなりません。優れた技術やサービスを持っていても、資金が尽きれば事業は継続できません。 高い山に挑むには強い体力が必要なように、大きな事業に挑むには大きな資金が必要となるのです。資本政策を計画し、必要なタイミングで必要な資金を確保すること。それは創業期の経営者にとって極めて重要な仕事です。 (阿蘇山の岩場・木曽駒ケ岳 宝剣岳の岩場・西日本最高峰 石鎚山の鎖場) 一方、登山技術は、経営者個人で言えば「経営能力」、企業全体で見れば「競争優位性」にあたります。 市場ニーズがあるとしても、他社が簡単に模倣できるような製品やサービスでは生き残れません。ましてや新しい価値を提供するサービスを立ち上げる(険しい山に登る)となれば、これまでにない、そして他社が容易に追随できないような特別な何かを持っていなければなりません。 「その特別な何か」は事業領域や製品カテゴリ毎、企業毎に異なりますが、創業期のベンチャーは、自社にしかない強みを見極め、磨き、守り続けること。それが、高い山に挑むための「技術」を身につけることに相当するのです。 3. 目指す山に必要十分な装備を備える 〜経営に必要十分なリソースを揃える〜 登山において重要なのは、目指す山に応じた装備を用意することです。冬山には冬山に、岩山には岩山に必要な装備がありますし、万が一に備えて救急セットや常備薬、防寒具、雨具、行動食、非常食…とたくさんあります。また山では水はとても貴重です。 ところが、装備は多ければ多い程良いというものでもありません。 何でもかんでも積んで何十キロにもなっては、それを背負う自分の体力が持ちません。目指す山のレベルに十分以上の装備を背負う必要はないのです。 (三連座登山に向けての装備品) ベンチャー経営にとっても経営リソースの確保は最重要課題の一つです。そして、経営リソースに大きく占めるのが人員です。また、モノ作りの事業であれば工場や製造機械などもそれにあたります。人材や設備だけでなく、制度や仕組みもまた、事業を支える重要なリソースです。 開発、営業、財務、法務、カスタマーサクセス、セキュリティ。事業が成長すればするほど、必要な機能は増えていきます。製造業であれば設備投資も必要になりますし、制度設計のために外部専門家の力を借りたくなる場面もあるでしょう。 ところが、欲しいだけ、どんどんと採用したり購入したり外注したら、運転資金が尽きてしまいます。それは、重すぎる装備を背負って体力を消耗する登山にも似ています。 回している事業の規模、目指す目標に”必要かつ十分な”リソースの確保、というバランス感覚が重要です。 創業間もないベンチャーに必要なのは、何でも抱え込むことではありません。同じ船に乗る信頼できる人材を集め、それぞれが得意分野を持つ少数精鋭のチームをつくることなのです。 ———————— 以上、【百名山から学ぶベンチャー経営】の第一部でした。 私自身、「日本百名山100座踏破」という目標に向かって、まだ道半ばです。 だからこそ、この連載では完成された成功談ではなく、挑戦の途中で感じた迷いや失敗、判断や学びを、できるだけ率直にお伝えしていきたいと思います。 また、日本百名山への挑戦を題材に、ベンチャー経営や組織運営に通じる考え方や判断のあり方について考察していきたいと思います。 次回は「計画は綿密に、実行は地道に」をテーマに、目標達成のための戦略と計画の必要性と、一方で日々の地道な仕事の重要性について考えてみたいと思います。 【百名山から学ぶベンチャー経営論】 第二部「計画は綿密に、実行は地道に」 D-POPS GROUP アドバイザー 杉原眼太 注:以前執筆した「登山と経営」はダイジェスト版で、本連載では、百名山挑戦の進捗に合わせてより詳しく書いていきます。また登頂した山々の写真も順次掲載していきます。
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2026.06.10
アップセルとは? ~売上総利益を劇的に改善する方法② アップセルとクロスセルの違い~
アップセルとは、顧客が購入しようとしている商品やサービスよりも、高機能だったり高品質だったりする高単価の商品を提案し顧客単価を上げ売上を上げる手法です。家電量販店などでより高性能のCPUを搭載したパソコンを勧めたりすることが最も一般的なアップセルの事例と言えます。 今回も小売業の事例を元に、企業の基本的な収益力を示す売上総利益に着目し、売上総利益の上げ方 その②として「アップセル」について解説してまいります。 1.経費も時間もかからずに絶大な効果が得られる手法 前回は「クロスセル」を取り上げ、会社経営の本丸である売上総利益に着目したわけですが、今回も売上総利益の上げ方 その②として「アップセル」を取り上げ、引き続き売上総利益に着目して参ります。 以下復習ですが、売上総利益は非常に単純な指標で、売上高から原価を差し引いた利益のことで粗利と言ったりもします。アップルや任天堂の様に商品やサービスそのものが、独自性があり差別化されていれば競争の非常に少ない世界で高い売上総利益を上げることができます。 今回も独自性があり差別化された商品やサービスの作り方で売上総利益を上げる方法ではなく、同じような商品を扱う競争環境の中で、如何に売上総利益を上げるか?ということを取り上げて参ります。今回取り上げるアップセルは、前回のクロスセル同様経費も時間もかからずに売上総利益に対し絶大な効果が得られる手法です。 ではなぜアップセルが重要か?クロスセルとの違いは何か?を以下順を追ってご説明いたします。 2.アップセルとは まず、アップセルとは、顧客が購入しようとしている商品やサービスに対し、高機能・高品質などの高単価の商品を提案し顧客単価を上げ売上を上げる手法です。 【例】 スーツを購入しようとすれば、 ブランド品や、良い生地を使った高単価のスーツを勧められる スマホを購入しようとすれば、 メモリの大きいモデルやカメラ機能の高い高単価のPROモデルを勧められる エアコンを購入しようとすれば、 省エネ性能の高いモデルやセンサー機能の付いた高単価モデルを勧められる 車を購入しようとすれば、 SUVやミニバンタイプ、ハイブリット車といった高単価車を勧められる といった様なことが代表的で、このほかにもアップセルの事例は枚挙にいとまがありません。上記の様に直接的に勧められなくても、例えば洗剤などの日用品の様に、大容量商品や2個セットの様に、通常品より1個単価を安くしてまとめて量や数を売ることもアップセルと言えます。 アップセルとなりえる商品やサービスは、リアル店であれWEB店であれメインの位置におかれ、メーカーとしては広告を行うメイン商品になり、店員のオススメやWEBのリコメンド商品となり、一般の普及モデルから高機能や高品質をうたい提案される商品やサービスになります。 商品やサービスを販売する業態や業種であれば、ほとんどの企業でアップセルとなりえる商品やサービスをもち、アップセルを実践していると思います。アップセルは成功させれば、売上総利益に対し絶大な効果を及ぼします。 次項ではなぜアップセルは効果があるのかを、クロスセルとの違いを含めて見ていきたいと思います。 3.なぜアップセルが重要か? 売上と売上総利益から見るアップセル そもそもアップセルは売上を上げ、売上総利益を上げることを目的とした手法の一つです。なぜアップセルが重要か?と考える際には、売上の構成要素と売上総利益の構成要素に着目する必要があります。 売上を構成する要素は2つあり、1つが数量、もう1つが単価です。以下の例を見てみましょう。 【例】 1台10万円のPCが100台売れると売上は1000万円 これを1台20万円のPCにアップセルできると100台売って売上は2000万円 これを1台20万円のPCに60台アップセルでき60台しか売れなくても売上は1200万円 売上を上げるには、顧客に商品を購入いただく必要があるわけですが、同じ数を販売してもアップセルにより単価が向上していれば売上は高くなります。アップセルの結果として販売数が低くなっても単価が向上しているため売上が高くなります(上記の例では単価が倍なので、販売数が元の単価の50%以上売ることができれば、売上が上がります。) 数量と単価が売上を構成する要素であり、この組み合わせが売上になっているということを理解すると効率的に売上を上げることが出来ます。 よくあることですが、販売数だけをみて販売数を上げようとすると、思いつく対策の1番はディスカウント、つまり安売りですが、10万円のPCを2割引きの8万で売り、20万円のPC100台の売上を稼ぐには250台を売らなければなりません。 さらに重要になるのが売上総利益を構成する要素で、売上から原価を引いたものが売上総利益なわけですが、上記の例を売上総利益にしたものを見てみましょう(以下は利益率を同じ30%として例にしています) 【例】 1台10万円で原価7万円のPCが100台売れると売上は1000万円、利益は300万円 1台20万円の原価14万円のPCが100台売れると売上は2000万円、利益は600万円 上記の10万円のPCを8万円で250台売れると売上は2000万円、利益は250万円 売上を上げるためにディスカウントをして販売をした結果、仮に売れて販売数が上がり売上が上がっても利益はディスカウントする前より減ってしまいます。売上から原価を引いたものが売上総利益の構成要素なわけで、この組み合わせが売上総利益になっているということを理解すると効率的に売上総利益を上げることが出来るわけです。 では、ディスカウントすると利益が下がるから違う方法で販売数を上げようとすると、ECなら広告費を追加したり、店舗なら出店をしたり、法人営業なら営業マンを増強したりすることが一般的な対策になると思いますが、この対策だと売上総利益は増えますが、経費が増えるのでその先の営業利益が減ってしまう可能性が非常に高くなります。 上記の例でおわかりいただけたと思いますが、結局機能や品質をしっかり顧客に伝えるアップセルをしっかりやることが、売上を上げ、売上総利益を上げる最も有効な手段の1つといえるわけです。 4.アップセルとクロスセルの違いとは ではアップセルで顧客にどんどん単価の高い商品を提案すればいいのか?そういうわけではありません。例えば軽自動車を買いに来た人にレクサスをお勧めしてもまず売れないでしょう。顧客の予算に合わせ的確なメリットを提示したアップセルで無ければ単なる無理やり販売になってしまい購入体験における顧客満足を落とす結果になり経営としてマイナスの結果になってしまいます。 高機能、高品質をお勧めするアップセルに限界がでた場合に、売上を上げる力を発揮するのが前回解説したクロスセルです。 クロスセルは、前回解説しており詳細は省きますが、顧客が購入した商品やサービスに対し、関連する商品やサービスを追加で提案することで、買い上げ点数を増やし顧客単価を上げることで売上を上げる手法です。 【前章の例を使い説明すると】 1台10万円のPCを100台売ると売上は1000万円、利益率が30%で利益が300万円 これを1台20万円のPCに60台アップセル、10万のPCが40台売れ合計100台で売上は1600万円、利益率が30%で利益が480万円 アップセルだけだとここで終了になりますが ここに、無線ルーター、記憶装置、マウス、セキュリティソフト等の周辺機器が一緒に売れ 合計単価が3万円で販売数の50%に添付、利益率50%とすると 50組×3万円=売上150万円、利益75万円となり PCの売上にプラスすると売上1750万円、利益が555万円になります 1台10万円のPCをただ100台売るだけと比べ、アップセルとクロスセルを組み合わせることで、売上が1.75倍、利益では1.85倍にすることができます。 前章で売上を構成する要素は単価と数量である旨解説いたしましたが、単価を上げることに効果があるのがアップセル、数量を上げることに効果があるのがクロスセルというわけです。 単価と数量の組み合わせが売上になっており、アップセルとクロスセルで単価と数量を最大化しかつ無理が無いように最適化できると、ただ販売するだけにくらべ飛躍的かつ効率的に売上を上げることが出来ます。さらにどちらの手法もディスカウントをして数量を上げる手法ではないため売上だけでなく売上総利益も確実に上げることが出来るわけです。 アップセルとクロスセルは経費も時間もかからずに売上だけでなく売上総利益に対しても絶大な効果が得られる手法であることはご理解いただけたかと思います。ここでアップセルとクロスセルの違いを以下にまとめてみます。 【アップセル】 目的 顧客単価の向上により売上を上げる 提案 高機能/高品質/大容量等による価値のある商品/サービスの提案 【クロスセル】 目的 顧客購入点数の向上により購入数を増やし売上を上げる 提案 関連性の高い商品/サービス等を追加で購入することにより価値を生む提案 上記の様にまとめられます。 アップセル、クロスセルは売上を構成する要素の単価と数量にそれぞれ違う手法で効果を発揮することで売上をあげ、ディスカウントをする手法ではないため、売上総利益の構成要素にも影響せず、さらに広告費や人件費、家賃といった経費も増えないため売上増加が営業利益まで直結して増加する利益を上げるための最も有効な手段の1つです。どちらも地味ですが経営に及ぼす効果は絶大と言い切ってよいと思います。 5.まとめ 今回は、アップセルの効果とクロスセルとの違いについてお話をさせていただきました。 アップセルもクロスセルも非常に地味ではありますが、それぞれの重要性の教育が従業員になされ、無理やり販売にならないように顧客メリットを明確に提示でき、いろいろなテクノロジーを使いこなすことで売上や利益の最大化に絶大な効果が得られる手法であります。 広告出稿、出店、営業人員を増やす等の経費を伴う行動をする前に、アップセルとクロスセルで売上、利益を最大化しておくことが効率的に利益を出すための経営ポイントになります。 今回のアップセルと前回のクロスセルは、過去にお話しした「在庫回転率」「一人当たり売上高」「坪効率」として取り上げた、在庫、人件費、家賃のCFや経費の後にあえて取り上げております。1番最初の「在庫回転率」から一連の流れとしてご一読いただきますと経営のポイントがより見えてくると思います。まだお読みでない方は是非ご一読いただけますと幸いです。 今回のアップセルを通してディ・ポップスグループとしてお伝えしたいことは、これまで同様ビジネスはヒトにより成り立っているということです。商品を購入いただくお客様もヒトであり、商品を販売する販売員も、テクノロジーを使うのもすべてはヒトであります。 AIをはじめとするテクノロジーを使いこなさなければビジネス上で競争に勝ち生き残ることはできないと思いますがテクノロジーだけでは生き残ることはできないと思います。テクノロジーが良いから、経営戦略が良いから、ビジネスが成功するのではなく、ヒト × テクノロジー × 経営戦略の掛け算が大切であるとディ・ポップスグループは考えます。 この考えの元、ディ・ポップスグループはヒトが輝くために、また社会課題解決のためにベンチャー企業に対して、出資を通じた支援と効率という数字だけではない価値を通じたグループエコシステムの実現を目指しています。 これからもご支援、応援の程よろしくお願いします。 D-POPS GROUP 常務執行役員 渡辺哲也
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2026.05.20
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