
アップセルとは、顧客が購入しようとしている商品やサービスよりも、高機能だったり高品質だったりする高単価の商品を提案し顧客単価を上げ売上を上げる手法です。家電量販店などでより高性能のCPUを搭載したパソコンを勧めたりすることが最も一般的なアップセルの事例と言えます。
今回も小売業の事例を元に、企業の基本的な収益力を示す売上総利益に着目し、売上総利益の上げ方 その②として「アップセル」について解説してまいります。
1.経費も時間もかからずに絶大な効果が得られる手法
前回は「クロスセル」を取り上げ、会社経営の本丸である売上総利益に着目したわけですが、今回も売上総利益の上げ方 その②として「アップセル」を取り上げ、引き続き売上総利益に着目して参ります。
以下復習ですが、売上総利益は非常に単純な指標で、売上高から原価を差し引いた利益のことで粗利と言ったりもします。アップルや任天堂の様に商品やサービスそのものが、独自性があり差別化されていれば競争の非常に少ない世界で高い売上総利益を上げることができます。
今回も独自性があり差別化された商品やサービスの作り方で売上総利益を上げる方法ではなく、同じような商品を扱う競争環境の中で、如何に売上総利益を上げるか?ということを取り上げて参ります。今回取り上げるアップセルは、前回のクロスセル同様経費も時間もかからずに売上総利益に対し絶大な効果が得られる手法です。
ではなぜアップセルが重要か?クロスセルとの違いは何か?を以下順を追ってご説明いたします。
2.アップセルとは
まず、アップセルとは、顧客が購入しようとしている商品やサービスに対し、高機能・高品質などの高単価の商品を提案し顧客単価を上げ売上を上げる手法です。
【例】
スーツを購入しようとすれば、
ブランド品や、良い生地を使った高単価のスーツを勧められる
スマホを購入しようとすれば、
メモリの大きいモデルやカメラ機能の高い高単価のPROモデルを勧められる
エアコンを購入しようとすれば、
省エネ性能の高いモデルやセンサー機能の付いた高単価モデルを勧められる
車を購入しようとすれば、
SUVやミニバンタイプ、ハイブリット車といった高単価車を勧められる
といった様なことが代表的で、このほかにもアップセルの事例は枚挙にいとまがありません。上記の様に直接的に勧められなくても、例えば洗剤などの日用品の様に、大容量商品や2個セットの様に、通常品より1個単価を安くしてまとめて量や数を売ることもアップセルと言えます。
アップセルとなりえる商品やサービスは、リアル店であれWEB店であれメインの位置におかれ、メーカーとしては広告を行うメイン商品になり、店員のオススメやWEBのリコメンド商品となり、一般の普及モデルから高機能や高品質をうたい提案される商品やサービスになります。
商品やサービスを販売する業態や業種であれば、ほとんどの企業でアップセルとなりえる商品やサービスをもち、アップセルを実践していると思います。アップセルは成功させれば、売上総利益に対し絶大な効果を及ぼします。
次項ではなぜアップセルは効果があるのかを、クロスセルとの違いを含めて見ていきたいと思います。
3.なぜアップセルが重要か? 売上と売上総利益から見るアップセル
そもそもアップセルは売上を上げ、売上総利益を上げることを目的とした手法の一つです。なぜアップセルが重要か?と考える際には、売上の構成要素と売上総利益の構成要素に着目する必要があります。
売上を構成する要素は2つあり、1つが数量、もう1つが単価です。以下の例を見てみましょう。
【例】
1台10万円のPCが100台売れると売上は1000万円
これを1台20万円のPCにアップセルできると100台売って売上は2000万円
これを1台20万円のPCに60台アップセルでき60台しか売れなくても売上は1200万円

売上を上げるには、顧客に商品を購入いただく必要があるわけですが、同じ数を販売してもアップセルにより単価が向上していれば売上は高くなります。アップセルの結果として販売数が低くなっても単価が向上しているため売上が高くなります(上記の例では単価が倍なので、販売数が元の単価の50%以上売ることができれば、売上が上がります。)
数量と単価が売上を構成する要素であり、この組み合わせが売上になっているということを理解すると効率的に売上を上げることが出来ます。
よくあることですが、販売数だけをみて販売数を上げようとすると、思いつく対策の1番はディスカウント、つまり安売りですが、10万円のPCを2割引きの8万で売り、20万円のPC100台の売上を稼ぐには250台を売らなければなりません。
さらに重要になるのが売上総利益を構成する要素で、売上から原価を引いたものが売上総利益なわけですが、上記の例を売上総利益にしたものを見てみましょう(以下は利益率を同じ30%として例にしています)
【例】
1台10万円で原価7万円のPCが100台売れると売上は1000万円、利益は300万円
1台20万円の原価14万円のPCが100台売れると売上は2000万円、利益は600万円
上記の10万円のPCを8万円で250台売れると売上は2000万円、利益は250万円

売上を上げるためにディスカウントをして販売をした結果、仮に売れて販売数が上がり売上が上がっても利益はディスカウントする前より減ってしまいます。売上から原価を引いたものが売上総利益の構成要素なわけで、この組み合わせが売上総利益になっているということを理解すると効率的に売上総利益を上げることが出来るわけです。
では、ディスカウントすると利益が下がるから違う方法で販売数を上げようとすると、ECなら広告費を追加したり、店舗なら出店をしたり、法人営業なら営業マンを増強したりすることが一般的な対策になると思いますが、この対策だと売上総利益は増えますが、経費が増えるのでその先の営業利益が減ってしまう可能性が非常に高くなります。
上記の例でおわかりいただけたと思いますが、結局機能や品質をしっかり顧客に伝えるアップセルをしっかりやることが、売上を上げ、売上総利益を上げる最も有効な手段の1つといえるわけです。
4.アップセルとクロスセルの違いとは
ではアップセルで顧客にどんどん単価の高い商品を提案すればいいのか?そういうわけではありません。例えば軽自動車を買いに来た人にレクサスをお勧めしてもまず売れないでしょう。顧客の予算に合わせ的確なメリットを提示したアップセルで無ければ単なる無理やり販売になってしまい購入体験における顧客満足を落とす結果になり経営としてマイナスの結果になってしまいます。
高機能、高品質をお勧めするアップセルに限界がでた場合に、売上を上げる力を発揮するのが前回解説したクロスセルです。
クロスセルは、前回解説しており詳細は省きますが、顧客が購入した商品やサービスに対し、関連する商品やサービスを追加で提案することで、買い上げ点数を増やし顧客単価を上げることで売上を上げる手法です。
【前章の例を使い説明すると】
1台10万円のPCを100台売ると売上は1000万円、利益率が30%で利益が300万円
これを1台20万円のPCに60台アップセル、10万のPCが40台売れ合計100台で売上は1600万円、利益率が30%で利益が480万円
アップセルだけだとここで終了になりますが
ここに、無線ルーター、記憶装置、マウス、セキュリティソフト等の周辺機器が一緒に売れ
合計単価が3万円で販売数の50%に添付、利益率50%とすると
50組×3万円=売上150万円、利益75万円となり
PCの売上にプラスすると売上1750万円、利益が555万円になります
1台10万円のPCをただ100台売るだけと比べ、アップセルとクロスセルを組み合わせることで、売上が1.75倍、利益では1.85倍にすることができます。

前章で売上を構成する要素は単価と数量である旨解説いたしましたが、単価を上げることに効果があるのがアップセル、数量を上げることに効果があるのがクロスセルというわけです。
単価と数量の組み合わせが売上になっており、アップセルとクロスセルで単価と数量を最大化しかつ無理が無いように最適化できると、ただ販売するだけにくらべ飛躍的かつ効率的に売上を上げることが出来ます。さらにどちらの手法もディスカウントをして数量を上げる手法ではないため売上だけでなく売上総利益も確実に上げることが出来るわけです。
アップセルとクロスセルは経費も時間もかからずに売上だけでなく売上総利益に対しても絶大な効果が得られる手法であることはご理解いただけたかと思います。ここでアップセルとクロスセルの違いを以下にまとめてみます。
【アップセル】
目的 顧客単価の向上により売上を上げる
提案 高機能/高品質/大容量等による価値のある商品/サービスの提案
【クロスセル】
目的 顧客購入点数の向上により購入数を増やし売上を上げる
提案 関連性の高い商品/サービス等を追加で購入することにより価値を生む提案
上記の様にまとめられます。
アップセル、クロスセルは売上を構成する要素の単価と数量にそれぞれ違う手法で効果を発揮することで売上をあげ、ディスカウントをする手法ではないため、売上総利益の構成要素にも影響せず、さらに広告費や人件費、家賃といった経費も増えないため売上増加が営業利益まで直結して増加する利益を上げるための最も有効な手段の1つです。どちらも地味ですが経営に及ぼす効果は絶大と言い切ってよいと思います。
5.まとめ
今回は、アップセルの効果とクロスセルとの違いについてお話をさせていただきました。
アップセルもクロスセルも非常に地味ではありますが、それぞれの重要性の教育が従業員になされ、無理やり販売にならないように顧客メリットを明確に提示でき、いろいろなテクノロジーを使いこなすことで売上や利益の最大化に絶大な効果が得られる手法であります。
広告出稿、出店、営業人員を増やす等の経費を伴う行動をする前に、アップセルとクロスセルで売上、利益を最大化しておくことが効率的に利益を出すための経営ポイントになります。
今回のアップセルと前回のクロスセルは、過去にお話しした「在庫回転率」「一人当たり売上高」「坪効率」として取り上げた、在庫、人件費、家賃のCFや経費の後にあえて取り上げております。1番最初の「在庫回転率」から一連の流れとしてご一読いただきますと経営のポイントがより見えてくると思います。まだお読みでない方は是非ご一読いただけますと幸いです。
今回のアップセルを通してディ・ポップスグループとしてお伝えしたいことは、これまで同様ビジネスはヒトにより成り立っているということです。商品を購入いただくお客様もヒトであり、商品を販売する販売員も、テクノロジーを使うのもすべてはヒトであります。
AIをはじめとするテクノロジーを使いこなさなければビジネス上で競争に勝ち生き残ることはできないと思いますがテクノロジーだけでは生き残ることはできないと思います。テクノロジーが良いから、経営戦略が良いから、ビジネスが成功するのではなく、ヒト × テクノロジー × 経営戦略の掛け算が大切であるとディ・ポップスグループは考えます。
この考えの元、ディ・ポップスグループはヒトが輝くために、また社会課題解決のためにベンチャー企業に対して、出資を通じた支援と効率という数字だけではない価値を通じたグループエコシステムの実現を目指しています。
これからもご支援、応援の程よろしくお願いします。
D-POPS GROUP 常務執行役員 渡辺哲也
