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【来訪レポート】経営の原点「企業は社会の公器」を学ぶ|パナソニック ミュージアム 松下幸之助歴史館

  • MEDIA
2026.08.18

2026年7月29日、ブランド戦略室の杉原、川口の両名で大阪府門真市にある「パナソニック ミュージアム 松下幸之助歴史館」を訪問してきました。

【パナソニック ミュージアム 松下幸之助歴史館】

松下幸之助氏94年の生涯で、幾多の苦難を乗り越える中に見出した、「行き方・考え方」。その“道”をたどりながら、松下幸之助の経営観や人生観を学ぶことができます。
※パナソニック ミュージアム内には「松下幸之助歴史館」のほか、歴代家電の進化を体験できる「ものづくりイズム館」なども併設されています。
公式サイト:https://holdings.panasonic/jp/corporate/about/history/panasonic-museum/facility/konosuke-museum.html

【松下幸之助氏について】

パナソニック(旧・松下電器産業)の創業者。わずか3名でスタートした小さな工場を一代で世界的電機メーカーへと成長させ、「経営の神様」と称された日本を代表する実業家です。

経営思想家としても数々の著作を残したほか、出版・研究機関である「PHP研究所」や、次世代のリーダーを育てる「松下政経塾」を設立するなど、日本の産業界・社会の発展に深く貢献しました。
彼のあらゆる活動の根本にあったのが、「会社は社会のためにある」という『企業は社会の公器』という強い哲学です。

訪問のきっかけ―グループ理念の原点を訪ねて

今回、私たちがパナソニック ミュージアムを訪れた背景には、弊社(ディ・ポップスグループ)代表・後藤の起業における「原点」があります。

ディ・ポップスグループ フィロソフィー
【企業は社会の公器】
パナソニック(旧・松下電器産業)を一代で世界的企業へ育て上げ、後進の育成(松下政経塾など)や思想発信(PHP研究所)を通じて「経営の神様」と称された松下幸之助氏。代表の後藤が25歳で起業を決意した最大のきっかけは、学生時代に幸之助氏の著書に出会い、強い衝撃と影響を受けたことにあります。そこで初めて「会社経営を通じて社会に貢献する」という生き方・道があることを知りました。

後藤は現在でも大阪を訪れるたび、時間を見つけては本ミュージアムに足を運び、何度も幸之助氏の理念に立ち返っています。
ディ・ポップスグループの根底にある想いをより深く理解するためには、その原点である松下幸之助氏の教えを学ぶ必要があると考え、今回の来訪が実現しました。

「ナショナルランプ」に見る、挑戦と情熱の原点

展示の中で特に目を引くのが、パナソニックのブランドの礎となった「砲弾型自転車用ランプ(ナショナルランプ)」の展示です。

当時、自転車のライトはローソクや石油が主流で、消えやすく危険なものでした。幸之助氏は「安くて安全で、長持ちするライトを作りたい」と執念を持って開発を重ね、従来数時間しか持たなかった電池寿命を10時間以上に伸ばす画期的な製品を完成させました。

当初は問屋に相手にされなかったものの、販売店に点灯させたまま置いてもらう大胆な実演展示を実施。その品質が評判を呼び、爆発的なヒットへと繋がりました。『ナショナル』ブランドの起点であり、諦めずに工夫を重ねて道を切り拓く松下経営の真髄を感じられる貴重な展示です。

館内では、松下幸之助氏の歩んだ人生とともに、数々のエピソードが紹介されています。

「経営の神様」と称される松下幸之助氏ですが、展示を通して見えてきたのは、決して特別な存在として遠くにいるわけではなく、私たちと同じ一人の人間として目の前の課題に向き合い続けた姿でした。
どのような状況にあっても「企業は社会の公器」という軸をぶらさず、常に社会のためになる選択をし、愚直にやり続けたことこそが、偉大な功績に繋がったのだと実感させられます。

心に刻みたい松下幸之助氏の名言

松下幸之助氏には数々の言葉が残されています。その中で何点かご紹介します。

~企業は社会の公器~

一般に、企業の目的は利益の追求にあるといわれる。たしかに利益は健全な事業経営を行う上で欠かすことができない。しかし、それ自体が究極の目的かというと、そうではない。根本はその事業を通じて共同生活の向上をはかることであって、その根本の使命を遂行していくうえで利益が大切になってくるのである。
そういう意味で、事業経営は本質的には私の事ではなく、公事であり、企業は社会の公器なのである。だから、たとえ個人企業であろうと、私の立場で考えるのではなく、常に共同生活にプラスになるかマイナスになるかという観点からものを考え、判断しなければならないと思う。
*出典「実践経営哲学」

~好況よし、不況さらによし~

好況時には、少々の不勉強であっても、サービスが不十分であっても、まあどこでも注文してくれます。だから経営の良否というのはそう吟味されなくてすみます。
ところが不景気になってくると、買うほうは、十分に吟味して買う余裕ができてきます。そこで、商品が吟味され、経営が吟味され、経営者が吟味されて、そして事が決せられることになるわけです。ですから、非常にいい経営のもとに、いい人が育っている会社や店は、好景気にはもちろん結構ですが、不景気にさらに伸びるということになる。そのことを事業にたずさわる者としては、日ごろ常に心にとめておかなければならないと思います。
*出典「道は無限にある」

~道は無限にある~

お互い人間というものは、常にみずから新しいものをよび起しつつ、なすべきことをなしてゆくという態度を忘れてはならないと思います。お互いが、日々の生活、仕事の上において、そういう心構えを持ち続けている限り、一年前と今日の姿にはおのずとそこに変化が生まれてくるでしょうし、また一年先、五年先にはさらに新たな生活の姿、仕事の進め方が生まれ、個人にしろ事業にしろ、そこに大きな進歩向上が見られるでしょう。
大切なことは、そういうことを強く感じて、熱意をもって事に当たるという姿勢だと思います。そうすればまさに”道は無限にある”という感じがします。
*出典「道は無限にある」

パナソニック ミュージアムはパナソニック本社の敷地内にあり、入館無料で見学が可能です(一部を除き写真撮影も許可されています)。

訪問した平日の午前中も、ビジネスパーソンと思われる方が一人で静かに見学されている姿を多く見かけました。自社社員のみならず、社外の働く人々にとっても学びの場としてひらかれていること自体が、まさに「企業は社会の公器」を体現した素晴らしい社会貢献だと感じます。

ディ・ポップスグループは、「リアルビジネス × テクノロジー × グループシナジー」を掛け合わせた事業展開をしている会社の集合体で、100年後も社会から必要とされ続けるベンチャーエコシステムの実現を目指しています。
ディ・ポップスグループも、この「企業は社会の公器」という原点を胸に刻み、事業を通じてより良い社会の実現に貢献してまいります。

企業の経営に携わる方はもちろん、日々仕事に向き合うすべての働く社会人の皆様に、ぜひ一度足を運んでいただきたい素晴らしい施設でした。

ディ・ポップスグループ ブランド戦略室 川口遥

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2026.08.12
【百名山から学ぶベンチャー経営論】 第二部「計画は綿密に、実行は地道に」
ディ・ポップスグループは、「社会に変革をもたらす多数の成長ベンチャー(ユニコーン企業)を輩出する」というミッションを掲げ、「誠実・謙虚・感謝の心で、共に学び、共に成長する」をバリューとしています。 アドバイザーを務める杉原は、「ユニコーンTシャツを着て日本百名山100座を踏破する」という目標を掲げ、働きながら週末は全国の山々を巡り、執筆時点で46座まで登りました。本連載では、その挑戦の中で経験した成功や失敗、判断や学びを、ベンチャー経営や組織運営になぞらえながら考察しています。 第一部では、目指す頂を定めることの大切さと、その実現に向けた準備についてお話ししました。(第一部の記事はこちら) 今回は第二部として、「計画」「実行」「仲間」という三つの視点から、挑戦を前に進めるために必要なことを考えてみたいと思います。 4. 計画は綿密に立てる ~事業の計画段階から心血を注げ~ 一つの山の頂に向かうのには、複数のルートがあります。短いけれども険しいルートを選ぶか、緩い勾配だが長いルートを選ぶか、自分の技術や体力を考慮して、頂上にアタックする計画を練ります。 日本百名山は、最北端の北海道・利尻山から、最南端の屋久島・宮之浦岳まで、全国に広がります。そのため、登山口に向かうまでのアプローチも様々です。飛行機や電車などの公共交通機関とレンタカーを組み合わせて行くのか、自家用車で高速道路を走って向かうのか。かかる時間やコスト、そして疲労度合いも考慮して決めます。 また、アプローチまでにかかる時間、登山開始から下山までのコースタイムの予測、当日の季節や気温に適した水分や行動食の目安なども計画の一部です。 さらには、登山口近くの宿で泊まるのか、山小屋泊にするのか。朝昼の食事はどのタイミングで、何を食べるのか。複数の山を連続で登る場合は、次の山へのアプローチや疲労回復のための温泉をどこにするのか…。 あらゆることを計算に入れて、綿密に計画を練ります。この時間も楽しい作業ですが、この作業が登頂成功の鍵を握るので、真剣に取り組まなければなりません。 (アプローチ計画は地図帳やガイドブックで、詳細な登山計画は登山アプリで作成) 振り返れば、ベンチャー経営も同じだと思います。経営者がまずするべきは、対象マーケットを綿密に調査し、そこに参入する戦略を立て、事業計画を立てることです。 商品戦略、価格戦略、販売チャネル戦略、マーケティング戦略を立て、これらの中でどこで競争優位性を作り上げるのか。この戦略を実行に移すために必要な人材の採用計画や、資金調達計画を練り、実際に実行可能なレベルまで掘り下げます。 この計画が、経営者の魂が込められ、より具体的であればあるほど、事業は思い描いたビジョンに近づくのではないでしょうか。 登山も経営も、計画段階からその挑戦は始まっているのだと思います。 5. 登り始めたら、足元の一歩一歩に集中 〜小さな油断が生死を分ける〜 そして、いざ登り始めたら、地道な一歩一歩の積み重ねに集中しなければなりません。多くの山は、頂上に近づくまでは全くその頂が見えないまま、森に囲まれた長い登山道を歩いたり、岩場や鎖場の難所や川を何度も通らなければならないこともあります。 山頂への道のりをイメージしつつも、木の根、岩、ぬかるみなどに目を配りながら、滑り、つまずき、足首を捻ったり、そして転倒しないよう、細心の注意を払って歩みを進めます。 ベンチャー経営においても、同じです。 大きなビジョンを掲げていても、日々の取り組みは地味な仕事の積み重ねです。創業社長自らが、昼は営業開拓をし、時に採用面接にも関わり、夜中にはコードも書く、といったことはざらです。 また、売上ばかりに目を向け、資金繰りの管理を怠る。採用ばかりに力を入れ、組織づくりを後回しにする。新機能開発に夢中になり、既存顧客の声を聞かなくなる。 こうした状態は、足元の仕事を疎かにしているサインです。そして、その積み重ねが、やがて大きな問題へと発展します。 私自身、前回の記事を執筆した直後、山形県の月山という山に登った時のことです。水っぽくて崩れ易い残雪の山を登り始めて30分後、急な下り坂に差し掛かりました。そこで、慎重さを欠いた一歩を踏んでしまい、足を滑らせ滑落、坂の下にあった岩に激しく足をついてしまいました。 幸い着地した岩が平面だったため、片足の捻挫で済みましたが、岩の形状によっては足首を複雑骨折するところでした。登山の継続は断念し、必死で下山して、無事治療できましたが、もしあの滑落が谷底に向かっていたら…と思うとゾッとします。 (雪が積もった急坂で足を滑らせ滑落し、岩に着地して左足を捻挫してしまった) ベンチャー経営も登山も、失敗の原因は壮大なビジョン不足ではなく、むしろ日々の小さな油断であることが少なくありません。気の緩み、確認不足、手抜き、地味な仕事の軽視。そうした小さな油断の積み重ねが、遭難や転落、あるいは会社の倒産へとつながります。 険しくて高い頂上を目指す人ほど、足元の一歩一歩に集中しなければならないのです。 6. 同じ頂を目指す仲間と登れ 〜信頼と価値観の共有が組織を強くする〜 登山では、パーティー(グループ)を組んで登る場合には、各人の経験度や体力レベルを事前に確認します。自信のない人には時間をかけて体力を付けたり、低山で経験を積んでもらったりするなどの対策が必要となります。場合によっては、参加の可否を判断することがあります。 参加メンバーの体力や経験レベルが違い過ぎると、遅い人が無理をしてしまう、危険箇所を通過できない、ということが起きます。 また、気心知れた関係のメンバーでない場合には、道迷い、危険箇所に遭遇、天候の悪化、怪我人の発生、などの重要な局面において、意見がなかなかまとまらなかったり、判断が二分してしまうなどという問題も起きかねません。 より険しく、高い山に登る場合、目指す頂に登りたい、挑戦したい、というその気持ちがバラバラでは困難に直面した時の粘り強さもバラバラになります。 前章で触れた、「地道な一歩一歩」の重み、慎重さが同じであることが望ましいのです。 (上段:当社メンバーと仙丈ヶ岳に挑戦。下段:気心の知れた友人との登山) これは、ベンチャー経営にも通じることです。 共同創業者や創業期の初期メンバー、いわゆる同じ船に乗る仲間たちが、同じ志を持ち、各々の専門領域で同じような深い経験を重ねてきて、そしてお互いを信じ合える関係であることが望ましいのです。 事業推進や製品開発において、スピード重視なのか、クオリティ重視なのかで進め方が異なります。また財務戦略では、借金をして赤字を深く掘ってでも大化けを狙うのか、短期に黒字化を目指して無借金経営をするのかによって計画が変わります。 これらの「企業としての性格」は、創業メンバーらの性格を表すものです。メンバーの考え方が大きく異なると、やがて意見の対立が生まれ、一人辞め、二人辞め…という事態にもなりかねません。 つまり、ベンチャー経営の、特に初期において重要なのは、「能力レベルの一致」に加えて、「価値観や判断軸の一致」であり、この初期メンバーが中心となって徐々に企業文化を形成していくのです。 私自身、これまで、創業間もない頃の第二電電、ネット黎明期のAOL、上場前後のGoogle、そして現在第二創業期のディ・ポップスグループなど、成長途上の企業や変革期にある数々の企業を渡り歩いてきました。いずれも参画した企業を選んだ基準は、その創業者の理念や企業文化が自分の考えと一致しているか、そして面接でお会いした方々と一緒に働きたいと思えるかどうかでした。 逆に、辞退した会社も多数ありますが、その理由は、企業文化が自分と合わないと感じたからです。極限での仕事の頑張りが効かないと予想できたからとも言えます。 登山においても経営においても、一人で辿り着ける頂には限界があります。信頼できる仲間と同じ頂を目指すこと。それが、より高い山、険しい山への挑戦を可能にするのです。 ———————— 以上、【百名山から学ぶベンチャー経営】の第二部でした。 私自身、日本百名山100座踏破という目標に向かって、まだ半ばです。 これからは徐々に険しい山にも挑戦していきます。その途中で感じた迷いや失敗、判断や学びを、できるだけ率直にお伝えしていきたいと思います。 次回は「戦略・戦術・戦闘」をテーマに、百名山の挑戦における戦略・戦術・戦闘と、ベンチャー経営におけるそれとを照らし合わせながら、この三つの違いについて理解を深めたいと思います。 D-POPS GROUP アドバイザー 杉原眼太
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2026.07.21
【百名山から学ぶベンチャー経営論】 第一部「頂を決め、準備する」
ディ・ポップスグループは、「社会に変革をもたらす多数の成長ベンチャー(ユニコーン企業)を輩出する」というミッションを掲げ、「誠実・謙虚・感謝の心で、共に学び、共に成長する」をバリューとしています。 アドバイザーとして従事する杉原は、昨年の夏に立山へ登ったことをきっかけに、「ユニコーンTシャツを着て日本百名山100座を踏破する」という目標を掲げ、仕事の合間を縫って全国の山々を登り続けています。 本連載では、「共に学び、共に成長する」というバリューを体現する取り組みとして、その挑戦の中で経験した成功や失敗、計画や準備、判断や撤退の大切さなどを、ベンチャー経営や組織運営になぞらえながら考察していきます。 登山も経営も、目指す頂を定め、計画(戦略)と準備を整え、一歩ずつ前進していく営みです。この連載が、皆様自身の仕事や挑戦を考えるきっかけになれば幸いです。 今回は第一部として、ベンチャー経営を登山に例えながら、ビジョンの重要性と、その実現に向けて必要な準備について考えてみたいと思います。 1. 登るべき頂(ビジョン)を決める ~ ビジョンなき挑戦は続かない ~ ダイエットのために何となくウォーキングを始める。観光で訪れた街で、旅先で小高い山に登って市内を展望する。健康や観光のためにはもちろんいい運動にはなります。しかし、それだけでは「挑戦」と呼ぶには少し物足りません。目指す頂や、一連の山を明確に設定した挑戦の方が、達成した時の喜びは大きく、学びも多く、経験としても深く残ります。 ベンチャー経営も似ているのではないでしょうか?何となく「社長をやりたい」「お金持ちになりたい」という動機だけでは、社会に価値を生む大きな事業を育てることは難しいでしょう。 事業を興すには、明確なビジョンと具体的な目標を描く必要があります。 経営者だけでなく、ビジネスパーソンや職人も同じ。将来こういうキャリアを歩みたい、◯◯のプロになりたい。そうした目標を明確に持つことで、人は必要な学びや経験を自ら取りに行くようになります。 私事ですが、一年前までは体脂肪燃焼のためくらいの気持ちで高尾山や大山などに登る、軽いハイカーでした。しかし、昨年の夏、初めて訪れた富山県で、その険しさを知らないまま立山の最高峰に登った時に、人生が変わりました。 薄い酸素でふらふらになりながら辿り着いた山頂で、360度に広がる山々を見た時、「もっと難しい山にも挑戦したい」という感情が一気に湧き上がりました。 そしてある日、「日本百名山」という書籍に出会い、一気に読み終えた頃には、私の中のベンチャー魂に再び火が付いていました。 「アラカンで日本百名山を完登する」 という、明確な目標を持つに至ったのです。 (立山の雄岳頂上からの眺めと目指すきっかけとなった日本百名山の本) 昨年8月のその日以来、コツコツ登り続けて、執筆現在で41座(山の数え方)に登頂しました。当時は全くの素人でしたので、低い山でもクタクタになっていましたが、徐々に体力が付いて、高い山、険しい山にも登れるようになりました。 今でもまだまだ体力にも登山技術にも課題はありますが、登頂を重ねるに連れ、登山への情熱は高まるばかりです。百名山という目標を持たなければ、私はここまで登れなかったと思います。 ベンチャー経営も同じ。創業時のビジョンが明確であるほど、必要な準備をする原動力になりますし、困難に立ち向かう力になります。 また、ビジョンは、ただ掲げるだけでは不十分です。「創業◯年までに売上◯◯億円」「◯年までに会員数◯百万人」といった、具体的で挑戦的、かつ現実的な目標に落とし込むことで、人も組織も初めて動き出します。 2. 目指す山に必要な体力と技術を備える 〜資本と差別化要素が肝となる〜 山に登り慣れていない素人が、最難関の奥穂高岳や剱岳、何日もかかる幌尻岳などにいきなり挑戦しても、登頂できないどころか命に関わる危険を招き、結果として周囲にも大きな負担をかけてしまいます。 目指す頂に立つには、相応の体力を備える必要があります。そして、岩場の歩き方、鎖場の登り方などの登山技術も必要です。それらを準備せず挑戦するのは、勇気や大胆さとして称賛されることではなく、未熟さや無謀さの表れです。 ビジネスパーソンにも体力や気力が必要です。しかしここでは起業という視点で例えたいと思います。事業会社、特に立ち上げ間もない会社にとっての体力とは、運転資金に例えられます。 小さな個人事業主ならば自己資金だけで起業できるでしょう。しかし、社会課題を解決する大きな事業やプラットフォーム事業を興すには、巨額の運転資金を集めなければなりません。優れた技術やサービスを持っていても、資金が尽きれば事業は継続できません。 高い山に挑むには強い体力が必要なように、大きな事業に挑むには大きな資金が必要となるのです。資本政策を計画し、必要なタイミングで必要な資金を確保すること。それは創業期の経営者にとって極めて重要な仕事です。 (阿蘇山の岩場・木曽駒ケ岳 宝剣岳の岩場・西日本最高峰 石鎚山の鎖場) 一方、登山技術は、経営者個人で言えば「経営能力」、企業全体で見れば「競争優位性」にあたります。 市場ニーズがあるとしても、他社が簡単に模倣できるような製品やサービスでは生き残れません。ましてや新しい価値を提供するサービスを立ち上げる(険しい山に登る)となれば、これまでにない、そして他社が容易に追随できないような特別な何かを持っていなければなりません。 「その特別な何か」は事業領域や製品カテゴリ毎、企業毎に異なりますが、創業期のベンチャーは、自社にしかない強みを見極め、磨き、守り続けること。それが、高い山に挑むための「技術」を身につけることに相当するのです。 3. 目指す山に必要十分な装備を備える 〜経営に必要十分なリソースを揃える〜 登山において重要なのは、目指す山に応じた装備を用意することです。冬山には冬山に、岩山には岩山に必要な装備がありますし、万が一に備えて救急セットや常備薬、防寒具、雨具、行動食、非常食…とたくさんあります。また山では水はとても貴重です。 ところが、装備は多ければ多い程良いというものでもありません。 何でもかんでも積んで何十キロにもなっては、それを背負う自分の体力が持ちません。目指す山のレベルに十分以上の装備を背負う必要はないのです。 (三連座登山に向けての装備品) ベンチャー経営にとっても経営リソースの確保は最重要課題の一つです。そして、経営リソースに大きく占めるのが人員です。また、モノ作りの事業であれば工場や製造機械などもそれにあたります。人材や設備だけでなく、制度や仕組みもまた、事業を支える重要なリソースです。 開発、営業、財務、法務、カスタマーサクセス、セキュリティ。事業が成長すればするほど、必要な機能は増えていきます。製造業であれば設備投資も必要になりますし、制度設計のために外部専門家の力を借りたくなる場面もあるでしょう。 ところが、欲しいだけ、どんどんと採用したり購入したり外注したら、運転資金が尽きてしまいます。それは、重すぎる装備を背負って体力を消耗する登山にも似ています。 回している事業の規模、目指す目標に”必要かつ十分な”リソースの確保、というバランス感覚が重要です。 創業間もないベンチャーに必要なのは、何でも抱え込むことではありません。同じ船に乗る信頼できる人材を集め、それぞれが得意分野を持つ少数精鋭のチームをつくることなのです。 ———————— 以上、【百名山から学ぶベンチャー経営】の第一部でした。 私自身、「日本百名山100座踏破」という目標に向かって、まだ道半ばです。 だからこそ、この連載では完成された成功談ではなく、挑戦の途中で感じた迷いや失敗、判断や学びを、できるだけ率直にお伝えしていきたいと思います。 また、日本百名山への挑戦を題材に、ベンチャー経営や組織運営に通じる考え方や判断のあり方について考察していきたいと思います。 次回は「計画は綿密に、実行は地道に」をテーマに、目標達成のための戦略と計画の必要性と、一方で日々の地道な仕事の重要性について考えてみたいと思います。 【百名山から学ぶベンチャー経営論】 第二部「計画は綿密に、実行は地道に」 D-POPS GROUP アドバイザー 杉原眼太 注:以前執筆した「登山と経営」はダイジェスト版で、本連載では、百名山挑戦の進捗に合わせてより詳しく書いていきます。また登頂した山々の写真も順次掲載していきます。
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2026.06.10
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