COLUMN

auプランに組み込まれた子どもの安全を守るアプリ「コドマモ」の挑戦|Adora株式会社・冨田社長インタビュー~Part2~

  • INTERVIEW
2026.07.23

全3回にわたるインタビューの第2回となるPart2では、「コドマモ」がauだけにとどまらず、ドコモ・ソフトバンクを含む3大キャリア全てとの協業へと広がった経緯、さらには韓国・台湾への海外展開の現状、「コドマモ for School」という学校向けサービスの取り組み、そして大人の詐欺対策という新たなフロンティアへの挑戦を紹介します。(このインタビューは2026年6月に実施しました。)

◆ 「コドマモ」加入後の状況と反響

―杉原―
サービスプラン組み込み後の「コドマモ」の評判はいかがですか?加入状況や現場の声などを、差し支えない範囲でご紹介いただけますか?

―冨田―
店頭でご案内いただいた結果、コドマモを利用し始める率がコツコツと上がってきています。使ってくださったユーザーが使い続けてくださっているということも数字に表れてきています。良いものとして受け止めていただけているという実感がありますね。

まだ改善できる余地はたくさんあります。営業現場の方が売りやすくなるための新機能開発や改善も続けていますし、現場へのインタビューも今後どんどんやっていく予定です。より本格的なユーザーの声、営業現場の声はこれから届いてくる感じですが、数字面ではすでにかなり良い傾向が出ています。

U12バリュープランに加入した人の中でコドマモにきちんとログインID登録している人の割合が、サービスリリース直後よりもだんだん上がってきています。

―杉原―
それはおそらく、営業現場でだんだん説明に慣れてきたこと、個人として使っている営業担当者が現れてきたことで、勧めやすくなってきたという面もあるのでは?

―冨田―
そのような側面はあると思います。また、微力ながら弊社側でも改善を行なってまいりました。最初は店頭でご案内いただいて加入しようとしたときに、間違って有料プランに加入してしまうというケースが初期にありました。プランに組み込まれているので本来は無料で使えるはずなのに、通常のアプリストアの有料プランに入ってしまうという混乱です。

そのユーザーの声を受けて、オンボーディングの中でどちらから来たのかを確認し、auから来たユーザー向けの独自の導線を用意して、わかりやすく整理しました。その改善の結果、そういった声はだいぶ減ってきました。走りながら改善を繰り返してきたということですね。

―杉原―
アプリの完成度だけでなく、オペレーションの改善が利用者数を増やすために重要ですよね。

◆ 3大キャリア全てとの協業へ拡大

―杉原―
KDDI様のauショップ各店で紹介されていることはもちろん素晴らしいのですが、NTTドコモ様、ソフトバンク様の系列ショップでも取り次ぎが広がっているそうですね。他の2社との協業状況はいかがでしょうか?

―冨田―
我々は大きな社会課題を解決するという意識でやっているので、複数の通信キャリア様とご一緒できることは、最初から目指していたことでもあります。最初にドコモショップでのお取り扱いが始まり、次にauで料金プランに組み込んでいただき、その後ソフトバンク様のショップでも全店取り扱いいただいています。

もちろん始まるまでにはいろいろな運用の調整があり、現場の方々が大変頑張ってくださいました。今では利用者数もしっかり増えてきていて、本当にありがたいですね。

―杉原―
ソフトバンクさんの販売店の取り次ぎ数、急激に伸びていますよね。

―冨田―
ものすごく伸びています。ソフトバンクC&Sの皆様のご尽力と、代理店の皆さんの頑張りで、今年の頭からぐっと勢いが出てきました。

―杉原―
au様との取り組みで経験したオペレーション上の課題以外に、NTTドコモ様、ソフトバンク様特有の課題にぶつかったりはしましたか?

―冨田―
それぞれのキャリアがすでに展開されているサービスと競合しないようにするという点は特に意識しました。例えばソフトバンクさんには独自のセキュリティサービスがあるので、そういったものと競合しないか、互いに悪影響を与えないかということをテストしながら進めました。ただ一方的に「売ってください」というのではなく、お互いのために細かな調整をしながら進めているという感じです。

現場でバグやトラブルが出てしまうと、忙しい店頭の皆さんが案内したくなくなってしまいますから、そういったことが起きないよう、何かあればすぐに対応できる体制は常に整えています。

◆ 韓国・台湾への海外展開の現状

―杉原―
昨年にはコドマモの海外展開も開始されています。どの国に進出済みで、どのような状況か、簡単にご紹介いただけますか?

―冨田―
韓国と台湾に展開しています。実際にやってみて難しいことも色々ありましたが、モバイルアプリの良いところは、翻訳して広告を打って小さく検証するということが50〜100万円程度の予算でできるという点です。

韓国については、出してみた上でしっかりニーズがあることが確認されてきました。危険なチャットの検知機能が思った以上に刺さっています。最初は位置情報機能のほうがメインかと思っていたのですが、蓋を開けてみると最初から危険チャットの検知が購入の最大の理由になっていました。ユーザーインタビューをしていると、韓国の親御さんが「子どもがドラッグに関わっていないか心配」とおっしゃるケースもあり、日本では聞かないような声もあって、ローカルな課題感の違いを感じます。

ただ韓国ではLINEよりカカオトークが主流なのですが、カカオトークへの本格対応がまだできていない部分があります。これをやれば伸びるという感触はあるので、もう少しバージョンアップしてから本格的に広告費などを投じていきたいと考えています。

台湾はLINEが広く使われているので、今出してみて非常に低いコストでユーザーを獲得できています。市場ニーズも高く、日本以上にしっかり使ってくれる方もいらっしゃいます。これからさらに力を入れていきたいと思っています。台湾の次はタイなど、アジア各国へも広げていきたいですし、WhatsAppに対応できればインドネシアやイギリスをはじめとする様々な国への展開も見えてきます。

―杉原―
本当に積極的ですね。創業した時から世界を見ていらっしゃいますよね。

―冨田―
この事業はグローバルに共通するニーズを解決できるものだと思っています。最初からそこを見据えています。日本からグローバルに頑張る事業が出てくると、やはり応援したくなりますよね。そうなれればいいなと思ってやっています。

◆ 「コドマモ for School」— 自治体・学校向けの取り組み

―杉原―
足は長いですが、とても興味深い活動として、全国の自治体と連携した学校向けプラン「コドマモ for School」について簡単にご紹介いただけますか?

―冨田―
「コドマモ for School」は、学校で使用されている学習用タブレット端末に入れるサービスです。通常の「コドマモ」が親子のスマホに入れるサービスであるのに対し、「for School」はお子さんたちのタブレット端末の安全な利活用を促進するものです。

機能としては、性的な自撮り写真のやり取りや、いわゆる「裸の画像のやりとり(グルーミング)」を検知してアラートを出す機能や、ウェブサイトの見守り機能などがあります。基本的な機能は通常版と大きくは変わりませんが、ステークホルダーが自治体・教育委員会になるという点が異なります。

―杉原―
これまで通信キャリア3社と折衝してこられたわけですから、会社としての信頼度も大きく上がってきていますね。

―冨田―
本当にありがたいことだと思っています。

◆ 次の挑戦 — 大人向け詐欺対策サービスの開発

―杉原―
続いて、コドマモに続く現在開発中の新サービスや新機能についてご紹介いただけますか?

―冨田―
今作っているのは、より広く一般向けに、SNSを通じた詐欺対策のサービスです。日本のみならず世界中で、特に投資詐欺やロマンス詐欺など、SNSやチャットを通じた詐欺が深刻な社会問題になっています。毎日何億円もの被害が発生している状況です。

電話詐欺は有名ですが、チャット経由の詐欺も非常に大きな問題です。弊社であればSNSにおける詐欺を検知できるという強みがあります。コドマモが子どもを対象にしているのに対し、大人の詐欺被害を検知して守るというサービスを絶賛開発中です。1日でも早くリリースできるように取り組んでいます。

一方で、詐欺被害に遭う方は自分からアプリをインストールしようとはなかなかならないので、子ども以上にステークホルダーの皆さんと一緒に動くことが重要だと考えています。様々な方にご意見をうかがいながら進めているところです。

―杉原―
こういうサービスを考えると、ますます大手企業との連携・提携ができる会社作りが重要になってきますね。

―冨田―
そうですね。弊社は技術力のある小さな開発チームではありますが、大企業さんや自治体さんと一緒に我々ならではの特徴を出しながら社会実装していくことが、大きな社会問題を解決するために不可欠だと思っています。

☆インタビューアー
株式会社ディ・ポップスグループ アドバイザー 杉原 眼太

【Adora株式会社】
会社名:Adora株式会社
代表者:代表取締役 冨田 直人
設 立:2023年7月
サービスサイト:https://corporate.kodomamo.com/ja

Part 3では、
・平均年齢26〜27歳 — 未来を作るチームの構成
・「Sunny・System・Solid」 — 3つのバリューを策定
・ベンチャーエコシステムの実現について
などについてお伺いしています。

Part3もぜひご覧ください!
Part1の記事はこちらからご確認ください。

 

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  • INTERVIEW
2026.07.17
「起業したくなる国へ」一般社団法人スタートアップ協会・砂川大氏インタビュー|連続起業家が語る、スタートアップが自由に挑戦できるエコシステムの作り方~Part3~
全3回にわたるインタビューの最終回となるPart3では、砂川大氏が日本のスタートアップ環境の「今」を率直に語ります。かつて三菱商事を辞めてベンチャーをやると批判された時代から、東大生が普通に起業する時代への変化。しかし日本がアメリカとの差をキャッチアップできていない構造的な理由。さらに、生成AIの台頭で全ての職業が変わっていく中で、それでも残るものとは何か。最後に、ディ・ポップスグループのベンチャーエコシステムへの共感について語っていただきます。(このインタビューは2026年5月に実施しました。) ◆幅広い人脈の作り方——「Facebookで友達だけど話したことない人とランチ」という企画 —杉原— 砂川さんのFacebookの投稿を拝見すると、幅広い影響力のある各界のリーダーたちとの人脈がおありですね。みなさんとはどのような形で出会い、どうお付き合いを広げてこられたのでしょうか? —砂川— 最初はFacebookに投稿していなかったんですよ。ちなみに全部ランチなんです。ディナーになると大体お酒が入るし、なんか長くグダグダしてしまって非効率だなと思い始めて。ランチだとお互い1時間ぴったりになるし、ものすごく要点だけの話で効率的だし、むしろランチの方がいいなと思うようになったんです。 —杉原— ランチされている方は元からのお知り合いなんですか? —砂川— 元からです。でも途中から「Facebookで友達になっているけどあまり話したことない人とランチに行く企画」を始めたんです。もったいないじゃないですか、ネットワークに入っているのに。私は実際に会った人しか友達申請を受け付けていないので、過去には会っているんですよ。でもどこで会ったかもよくわからない、誰かもよくわからないという人がいる。その人にメッセージを送って「ちょっと誰かわかんないんですけど、ランチ行きませんか?」って(笑)。 会ってみたら、登山家の人とか占い師とか、面白い人がどんどん出てくる。それをFacebookにアップするようになったら、友達になっている相手から「今度ランチしませんか?」と連絡が来るようになって、どんどん広がっていきました。別にブランディングをやっているわけじゃないんですよ。 —杉原— この活動は、ご自身の会社や協会の活動にもいい影響はありますか? —砂川— 狙ってはいないんですが、やはり何かしらの効果は当然あります。世の中ってストレートなメリットだけじゃないと思っているんですよ。ある人になにかしてあげて、その人がどこかで砂川のことを言ってくれて、面白いじゃんとなって、戻ってくる。そういうことが偶発的に起こる。でも決して狙ってるわけではないですよ。 ◆起業に否定的だった時代から東大生が普通に起業する時代へ — 急速に変わる日本の環境 —杉原— ここ数年、日本政府はスタートアップ支援の本気度が高まり、優秀な学生が大企業に就職せず起業を選んだり、スタートアップにインターンからそのまま転籍するケースが増えています。起業も数社経験し、エグジットにも成功した砂川さんから見て、現在の環境はどう見ていらっしゃいますか? —砂川— めちゃくちゃもり上がっていますよ。ロケーションバリューをやっていた頃は言われましたもん。「三菱商事を辞めてベンチャーで、いいんですか?」「何かしちゃったんですか?」みたいな、犯罪でも犯したかのような扱いでしたよ(笑)。当時の仲間たちを悪く言うつもりはないですが、立ち上げ当初は本当にいろんなハードシングスが起こりましたし、動物園みたいな世界でした。 今は東大卒の人が普通にうちに就職してきますし、在学中に起業する人も多い。むしろこれからそういう人の方が増えてくると思います。本当に起業しやすくなってきています。 —杉原— プレイヤーたちもどんどん変わってきている。起業の道も選びやすくなってきている。日本は他国に対して何年遅れぐらいまでキャッチアップしていますか? —砂川— 残念ながらキャッチアップはできていないです。構造の問題だと思っています。まず人材流動性が異常に低い。 もう一つ、ルールメーキングの話で言うと、アメリカは連邦政府なので会社法は州政府が作っています。各州がスタートアップを奪い合っているんですよ。競争原理が働いて、スタートアップ向けのルールがどんどん良くなっていく仕組みがビルトインされています。イーロン・マスクの会社が全部テキサスに移転したのも、カリフォルニアの税率が上がって企業がどんどん出ていっているのも、競争原理の結果です。 日本は一国一城なので競争原理が働かない。その結果、アメリカがトライアンドエラーで進歩している中で、日本はずっと昔の会社法を堅持したまま動かない。今、ミニマムタックスの問題を議論していて、アメリカで起業すればエクジット時に税金を払わなくていいものが、日本だと何億円も税金払わなければならないというケースもありえるんです。どちらで起業しますかと言ったら明白じゃないですか。スタートアップ育成5か年計画の趣旨に照らせばちぐはぐですよね、ということを、協会としては訴えています。 ◆機会と課題 —「ミクロでは戦える」、でもグローバル展開の壁をどう越えるか —杉原— 端的に言って、現状の日本のスタートアップ環境、スタートアップにとっての機会と課題をどうお考えですか? —砂川— 機会はすごくいっぱいあると思います。ミクロで言えばそれほど競争環境は厳しくない。例えば我々のサービスはアメリカに競合が20社あります。でも日本では今のところスマートラウンドだけ。円換算ではコストも安いし、同じことをやるならまず日本で勝てる可能性は十分にある。人材のクオリティも高い。信頼度も高い。幼少期からフィリピン、メキシコ、アメリカなど、いろんな国に住んで見てきた中で、日本はクオリティが高くて真面目で信用できる人が多い。しっかり成長できるスタートアップを作る機会はあると思います。 一方で大きな壁は、グローバルマーケットに行けないという問題です。日本は中途半端にいいマーケットなので、国内でそれなりに成長できてしまう。それで落ち着いてしまうと、グローバルサービスへはなかなか辿り着かない。ただ、言語の壁は多分あと2〜3年でなくなるんじゃないかと思っています。AIで同時通訳されますから。 グローバルが重要だと言っている人は多いんですが、それは外野の野次みたいなものなんですよ。グローバルに行ったことがある人間が言うならわかりますが、バッターボックスに立ったこともないのに野次を飛ばしているだけでは何も起こらない。本当に成功したアメリカの起業家を連れてきて、日本のスタートアップのアドバイザーになってもらわない限り、変えられないと思います。スマートラウンドは実際にアメリカで成功したゲーム会社の創業者をエンジェル投資家として迎えて、事あるごとにアドバイスをいただいています。目線が全然違います。 ◆「ゴールドラッシュでつるはしを売れ」— AIの時代に日本が狙うべき成長市場 —杉原— 日本のスタートアップ、これからの有望な成長市場はどのような分野だと思われますか? —砂川— 成長市場というのは、そこにあるものじゃなくて、我々が開拓しに行かなければならないものだと思っています。今、全ての世界はAIに設計されている状況の中に入っていて、例えばGeminiが強いと思うのは、Googleとして自前で発電所も持っているし、TPUも自分で作っている。AnthropicもChatGPTも電力は買わなければならないし、GPUはNVIDIAから買わなければならない——垂直統合できていないんです。Googleだけができている。 「ゴールドラッシュの時に金を掘りに行くんじゃなくて、つるはしを売れ」と言うじゃないですか。AIのつるはしって何だろうと考えるべきだと思っていて、それはエネルギーとチップセットです。核融合とか絶対に大事。そこでの優位性を勝ち取るために、色々な分野に少しずつ予算を分散させるのではなく、思いっきりそこに全部ぶち込むくらいのことをやらないといけない。 ◆生成AIで消える職業、残る職業 —「息子の就職アドバイスができない」本音 —杉原— 生成AIの登場と浸透によってビジネス環境が大きく変化しています。どのような職業が消え、どのような職業が残ると思いますか? —砂川— めちゃめちゃ難しいですね。正直、何も残らないんじゃないかとすら思っています。AnthropicがClaudeのFinanceバージョンを出したために、投資銀行でモデルを作っていた若手は基本的に職がなくなったようなものですし、Claude Legalが出て弁護士も青ざめているはず。しかも彼らは儲かりそうなホワイトカラーの高収入な職種をピンポイントで狙ってくる。全部やられたら何も残らないじゃないかという感じです。 すごく悩んだのが、息子への就職アドバイスです。私自身、三菱商事からハーバードMBA、VCインターン、マッキンゼーやUBSのようなインベストメントバンクも少し見てきた。全部なくなっていくんじゃないか、という状況ではまともにアドバイスできないですよね(笑)。 結局商社に行くことになったんですが、なぜそれがいいと思ったかというと、究極的には「人と人を繋ぐ仕事」はAIには作れないから。心を動かす、感動させる、「この人だから信頼できる」という、あの目の合わせ方や雰囲気の違いはAIにはわからない。そこだけは残るんじゃないかと思っています。 ◆「みんなで力を合わせないと何も変わらない」——ベンチャーエコシステムの実現について —杉原— 最後に、ディ・ポップスグループが目指す「ベンチャーエコシステムの実現」について、共感すること、協業できる領域などがあればお願いします。 —砂川— スタートアップ協会として、誰かを出し抜いてどうこうというつもりは一切ないんです。むしろ、みんなで力を合わせないと何も変わらないと思っているので、さっきも話したように、この団体とここでは協力する、全部それだと思っています。 我々は完全フリーハンドでみんなと組みに行きます。志が一緒で、スタートアップのエコシステムを1ミリでも底上げしたいと思っている人たちは「同志」ですから、ぜひ一緒にやりましょう。 ☆インタビューアー D-POPS GROUP アドバイザー 杉原 眼太   【プロフィール】砂川 大 一般社団法人スタートアップ協会 代表理事 / 株式会社スマートラウンド 代表取締役CEO 三菱商事を経てハーバードMBA取得後、米国VCでディレクターとして勤務。帰国後に株式会社ロケーションバリューを創業しNTTドコモへ売却。Googleでアンドロイドの統括部長などを努めた後、、2018年に株式会社スマートラウンドを創業。2022年に一般社団法人スタートアップ協会を設立し代表理事に就任。スタートアップ育成5か年計画の策定にも関与するなど、日本のスタートアップ・エコシステム形成に取り組む。 一般社団法人スタートアップ協会:https://www.startup-kyokai.org/ 株式会社スマートラウンド:https://jp.smartround.com/corporate Part1の記事はこちらからご確認ください。 Part2の記事はこちらからご確認ください。
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2026.07.09
「起業したくなる国へ」一般社団法人スタートアップ協会・砂川大氏インタビュー|連続起業家が語る、スタートアップが自由に挑戦できるエコシステムの作り方~Part2~
全3回にわたるインタビュー Part2(Part1はこちら)では、スタートアップ協会が最も力を入れてきた政策提言の具体的な成果として、「ストックオプション改革」の全貌に迫ります。保管委託要件という知られざる制度の壁が、いかに起業家のリターンを「紙切れ」にしてきたか。そして砂川氏たちがどのようにしてその問題を政府に持ち込み、政策に盛り込むという成果を上げたのか——政策立案の裏側を詳しく語っていただきます。(このインタビューは2026年5月に実施しました。) ◆レピュテーションを積み上げる — 政府に「代表性」を認めてもらうための信用構築 —杉原— 25,000社を代表するとまではいかなくても、代表として政策提言をするためには、それなりの「顔」を見せる必要があると思うんですが、政府に対してどのように説明しているのですか? —砂川— レピュテーション(信用・評判)だと思います。少しずつ積み上げていくしかない。活動していく中で「こいつはまともだな」とみんなが評価していくし、透明性を担保しながら、重要な話をするときは理事会を通してガバナンスをしっかり取っています。会社のようにしっかりした仕組みで運営することで信用を作っていく。 今回、私も少し長期政権になってきたので、今年から共同代表になっていただいた方と一緒に、きちんとバトンパスをしていきたいと思っています。 ◆ストックオプション改革 —「紙切れ」を「リターン」に変えた政策提言 —杉原— 協会の活動として特に「政策提言関連」がユニークだと思います。具体的に日本のスタートアップ政策に影響を与えた、新制度作りに深く関わったという成果の例をご紹介いただけますか? —砂川— ストックオプション関連は非常に頑張って作りました。理由は明確で、スタートアップに優しいエコシステムを作るためには、まず希少性の高いリソースである起業家が、日本で起業したいと思うエコシステムでなければならない。そのためには、起業家たちがチャレンジした分ちゃんとリターンが行くように設計することが非常に大事です。 日本のストックオプションの歴史は「恐る恐る作ってきた」という感じで、アメリカと比べたら全く優遇されていない状況でした。リスクの高い船に乗るということは、それなりのリワードがあって然るべきです。給料も安い、チャレンジしなければならない、ではリターンはどこで得るかといったら、やはりストックオプションですよね。 ところが、設計通りにいかず紙切れになってしまうケースが非常に多かった。例えば、あまり知られていませんでしたが、以前は税制適格ストックオプションに「保管委託要件」という要件があって、それが故に保管委託を受けてくれる金融機関が必要だったんです。でも実態として受けてくれる金融機関がほとんどない。1社だけあったんですが、そこに預けるためには紙で株式発行が必要になり、それが他の全株式の発行も引き起こす。ものすごく大変なオペレーションになるんです。「こんなことやってられない」となりますよね。 こういう実務をやった人間じゃないと問題がわからない。我々が「実は出来ない」ということをちゃんと教えていかなければいけなかったんです。 —杉原— 米国だとIPO前にFacebookなどの株式をファンドに売ってエグジットしている人がいますね。日本ではあまり聞かなくて、みんなIPOを待っているような。 —砂川— それともう一つ、日本では退職するとストックオプションは原則として消えてしまいますが、外資では退職してもそれまで貢献した分は権利として残る(権利確定済みのストックオプションは維持される)んです。スタートアップに賭けて汗を流した時間が報われないというのは、リスクとリターンが全く合っていない。それを一つひとつ直しに行ったのが今回のストックオプション改革です。 —杉原— スタートアップで早い段階から関わっているリーダーたちにとって、ストックオプションによるリターンを得られるよう、4年間で変えてきたということですね。岸田内閣でのスタートアップ支援の動きについてはどうでしたか? —砂川— 岸田内閣の2〜3年目頃に「スタートアップ育成5か年計画」が策定されたんです。スタートアップ協会では、そこに本当に必要な内容を反映すべく働きかけたのです。その結果、140項目あるうちの10項目をドラフトさせていただくことができました。 そういうことを地道にやっていくんです。政策立案担当者もスタートアップのプロではないので、何をやらなければいけないか、何が引っかかっているか、どの条文がいけないか、スタートアップはどう思っているのか、アメリカではどうなっているか。そういったことを全部調べて、我々が持っていって「具体的にこういう風にしてほしい」と説明するわけです。 その後、自民党のスタートアップ議連(議員連盟)に持っていき、骨太の方針の中に反映いただき、骨太の方針が政府の方針として予算配分されるというプロセスをやっています。 —杉原— 今の話を聞いているだけで、協会の仕事はすごいエネルギーがかかりますね。ご自身の会社を経営しながらやっていたんですね。 —砂川— ありがたいことに、スマートラウンドの中に非常に優秀な人間がたくさんいたので、一時期は協会の仕事の方にかなり時間を振り向けたことがあります。かなりの時間を割いてやっていました。 ◆Googleに3日目で「3年で辞める」と宣言した連続起業家の本音 —杉原— 砂川さんは連続起業家ですよね。起業した位置情報サービスの株式会社ロケーションバリューをNTTドコモに売却し、ロックアップ後にGoogleに入社されています。そして早々と退社して2018年5月に起業されています。 —砂川— 実はGoogle入社3日目に中小企業向け営業部門の方々を集めてもらって講演したんですが、その時に「3年で辞める」と宣言しています。では、なぜGoogleに入ったかというと、優秀なエンジニアをスカウトするためだったんです(笑)。Googleの人事担当は苦笑いしていましたが。 最初のスタートアップで最も苦労したのが、優秀なエンジニアを探すことだったんです。ドコモに売却して「次もスタートアップをやろう」と思っていた時に、「Googleに誘われてたな」と思い出して話を聞きに行ったら、PM(プロダクトマネージャー)のポジションだったので、3年だけ行ってみるか、となったんです。 —杉原— そして2018年5月に株式会社スマートラウンドを起業されたと。読者の方のためにサービスについて簡単にご紹介いただけますか? —砂川— smartroundはスタートアップと投資家のための情報共有プラットフォームです。資金調達前と後で目的が異なります。 調達前は、いわゆるCRMです。スタートアップ側からすれば投資家を検索・管理して、交渉状況やデータ共有の状況を把握するツール。投資家側も同じで、スタートアップを発掘し、交渉状況や社内の投資委員会の通過状況を管理するためのツールとなります。 そして資金調達後は「機関決定」のためのツールです。投資契約書・株主間契約書がある場合、取締役会前にリードインベスターから事前承諾を取らなければならないのですが、承諾を取り付け、その後、取締役会にかけて、最後に株主総会にかけて期間決定をするというプロセスを、会社法に基づいてしっかり行うためのツールです。定款、登記簿、株主間契約書などを全てデータとして保持しておき、それを元に法律に準拠して何をしなければならないかを判別していく仕組みです。 最後はデータ共有で、VCは一つのファンドから100〜200社に投資するわけですが、各社の状況や権利関係を把握するのが実は非常に難しい。しかもスタートアップが提出する書類はフォーマットがバラバラだったり間違いがあったりする。それを全部統一して、オンラインプラットフォームでコントロールできるようにしているのがsmartroundです。 ◆smartround以前は全部エクセル — 日本VCエコシステムの遅れ —杉原— smartroundがなかった時代はどうしていたんですか? —砂川— 大手含めてみんなエクセルでした。アメリカでVCをやってきた人間からすると「何十年遅れてるんだ」という感じでしょうか。アメリカはもっとテクニカルにやっていたので。 なぜ日本のVCがそこまでやっていなかったかというと、成り立ちの問題があります。アメリカの場合は機関投資家(エンダウメントやペンションファンド)がVCにLP出資するので、VCも激詰めされてデータをちゃんと見ないといけない緊張感があります。日本の場合は事業会社がLPなので「ざっくりお任せ」的なところがある。そういうツールを作らないと要求に応えられないアメリカと、それほどでもない日本、という差がありました。 —杉原— ニーズはスタートアップにも投資家にもあるわけですね。今はどのくらい普及していますか? —砂川— ベンチャーキャピタルファンドで300近くに使っていただいていますし、スタートアップは7,500社になっています。 —杉原— その数はすごいですね。競合はあるんですか? —砂川— 米国には20社あります。最大手が「Carta(カルタ)」という会社で、それぐらいアメリカは成熟している。日本はスマートラウンドだけです。ただ、部分的にそれぞれに競合はいます。投資家側の投資管理だけをやっている会社、スタートアップ側のツールだけをやっている会社、ストックオプション管理だけをやっている会社など、パーツごとには競合がいますが、当社は全部を包括的にやっている唯一の会社です。 ネットワーク効果が非常に重要で、VCとスタートアップ両方が使っているから便利なんです。電話と一緒で、相手が電話を持っていなければ電話に意味はない。だから両側をやらないといけないと考えています。。 ~Part3へ続く~ ☆インタビューアー D-POPS GROUP アドバイザー 杉原 眼太   【プロフィール】砂川 大 一般社団法人スタートアップ協会 代表理事 / 株式会社スマートラウンド 代表取締役CEO 三菱商事を経てハーバードMBA取得後、米国VCでディレクターとして勤務。帰国後に株式会社ロケーションバリューを創業しNTTドコモへ売却。Googleでアンドロイドの統括部長などを努めた後、、2018年に株式会社スマートラウンドを創業。2022年に一般社団法人スタートアップ協会を設立し代表理事に就任。スタートアップ育成5か年計画の策定にも関与するなど、日本のスタートアップ・エコシステム形成に取り組む。 一般社団法人スタートアップ協会:https://www.startup-kyokai.org/ 株式会社スマートラウンド:https://jp.smartround.com/corporate 次回・Part3では、 ・幅広い人脈の作り方 —「Facebookで友達だけど話したことない人とランチ」という企画 ・起業に否定的だった時代から東大生が普通に起業する時代へ ・ベンチャーエコシステムの実現について などについてお伺いしています。Part3もぜひご覧ください!
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2026.07.07
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