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D-POPS GROUPが考える「のれん」とは?「のれん償却」見直しの考察

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2025.06.25

ディ・ポップスグループは、「リアルビジネス × テクノロジー × グループシナジー」を掛け合わせた事業展開をしている会社の集合体で、100年後も社会から必要とされ続けるベンチャーエコシステムの実現を目指しています。また、このベンチャーエコシステムの成長のために、既存事業のオーガニック成長、新規事業・新会社の設立、M&A、CVC、資本業務提携の5つの基本戦略を推進しております。

今回は、この5つの基本戦略の1つである「M&A」と関わりの深い会計における「のれん」について、その会計処理についてニュースとなっていることもあり、取り扱いたいと思います。特に、「のれん」の「非償却」の可能性についても、言及できればと思います。

「のれん」に関しては、2025年5月30日に「のれんの非償却の導入およびのれん償却費計上区分の変更」に関する要望が、日本の会計基準の設定主体であるASBJ(会計基準委員会)にテーマ受付表として提出されました。この要望は、経済同友会、スタートアップ関連13団体、スタートアップ有志35社、企業経営者有志138名の連名で提出され、首相の諮問機関である規制改革推進会議もこれをフォローし、さらにASBJの議論においても、スタートアップ関係者の問題意識が十分くみ取られ、適切な議論が行われるよう、検討プロセスも含めフォローする旨を公表しています。このことは、日経新聞にも「のれん償却の見直し、民間13団体など会計基準機構に提案」という見出しでニュースになりました。

1.「のれんの非償却の導入およびのれん償却費計上区分の変更」の要旨

なお、今回提出された要望の要旨は、以下のとおりです。

①のれんの非償却を導入(選択制)
のれんの償却と併せてのれんの非償却も認める選択制を適用する。
(遅くともスタートアップ育成5か年計画の終期である2027年度までに結論・措置に至るよう検討を要望)

②のれん償却費の計上区分変更
現在、販売費及び一般管理費として営業費用に計上しているのれんの償却費を営業外費用もしくは特別損失に計上する。
(2026年度の結論・措置の可能性も含めて検討を要望)

2.現在の日本の会計基準における「のれん」の定義と取り扱い

現在の日本の会計基準において、M&Aの代金のうち、対象企業の純資産額を上回る金額については、「のれん」として無形固定資産に計上したうえで、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、規則的に償却するとしています。例えば、純資産3億円の対象企業を10億円の代金でM&Aする場合、7億円が「のれん」として無形固定資産となります。またその際に、投資回収期間を7年と想定していたならば、この7億円の「のれん」を毎年1億円づつの定額、7年間で費用化(償却)することになります。

一方で、IFRS(国際会計基準)、米国会計基準においては、「のれん」について規則的な償却は行わず、「のれん」の価値が損なわれた時に減損処理を行う方法が採用されています。これが、今回提出された要望における「のれんの非償却」です。なお、減損処理とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合に、将来において確実に回収可能な額を除き、資産を費用化することをいいます。先ほどの例でいうと、7億円の無形固定資産が計上されていたが、対象企業が赤字決算続きとなり回復が見込めない場合には、価値が損なわれた、つまり投資額の回収が見込めなくなったとして、7億円の全額を一時に費用化することになります。

これまで、日本の会計基準は、企業の財務報告の透明性と比較可能性の向上を目的として、IFRSとの整合性を目指し基準の改訂を行ってきましたが、このように「のれん」の会計処理についてはIFRSと相違しています。そのため、M&Aを積極的に行っている上場企業では、この相違を理由として、IFRSに移行している企業も多くあると考えられます。IFRSへの移行には、会計コンサルティングの導入、会計監査報酬の増加といった追加コストはあるものの、それを上回るメリットがあると経営判断した上場企業もあるのではないでしょうか。

3.今回提出された要望の背景

政府は2022年に「スタートアップ5カ年計画」を策定していますが、この計画において、M&Aは、スタートアップのエグジット戦略(出口戦略)のみとしてだけではなく、既存の大企業とのオープンイノベーションの推進策として、その重要性について触れられています。(スタートアップを成長させるM&A)

今回提出された要望は、このスタートアップを成長させるM&Aの促進において、日本の会計基準における「のれん」の償却が、阻害要因になっているということを背景としています。すなわち、「のれん」が償却される場合には、営業費用(販売費及び一般管理費)に計上されるため営業利益がのれん償却による費用額の分、減少することとなりますが、これがM&A検討の障害や、M&Aを断念する理由となっているということを背景としています。

特にスタートアップについては、企業価値(M&A代金)に占める純資産額の割合が小さいことが多く、「のれん」は比較的多額となるケースがあります。また、日本の多くの成長企業において、企業価値の源泉であるコアコンピタンスが、人的資本(従業員の知識やスキル、経験)、知識資本(特許、商標、企業ノウハウ)で構成されていることが多いと考えられますが、スタートアップにおいては、その傾向はさらに強いと考えられます。今後ますますAI領域におけるスタートアップの増加が加速すれば、その傾向も加速的に強まっていくと考えられます。

このように人的資本、知識資本は、企業価値の源泉として極めて重要ですが、現在の会計基準では、これらの「自社で生み出された」無形資産は、原則として資産計上することが認められていません。これは、その価値を客観的に測定することが困難であること、また将来の収益の獲得への貢献が不確実であることなどが理由とされています。

このこともあり、非常に価値の高い人的資本、知識資本を有する企業は、企業価値(M&A代金)は高く評価されるものの、会計上の純資産額は小さいというケースが増加していくと考えられます。この結果、これらを対象企業とするM&Aにおいては、「のれん」は多額となっていく可能性は極めて高いと考えられますし、M&Aを行う企業は、その「のれん」の償却により、営業利益も圧迫される可能性も極めて高いと考えられます。

ところで、営業利益は、企業の本業における収益力を示す重要な指標であり、企業価値に大きな影響を与えるものではありますが、「のれん」の償却、非償却による営業利益の増減は、理論的には企業価値に直接的な影響を与えるものではありません。これは、理論的には企業が将来生み出すキャッシュ・フローにより企業価値は評価されますが、「のれん」の償却は現金支出を伴わない営業費用の計上であり、実際の事業活動から生じるキャッシュ・フローには影響しないためです。

それでもなお、「のれん」の償却による営業利益の圧迫が、M&A検討の障害や、M&Aを断念する理由となるのは、営業利益が企業の本業における収益力を示す重要な指標であり、実務においては理論を超えて企業価値評価に大きな影響を与えているということだと思います。

IFRSではこれまで、営業利益の明確な定義がなく、表示も義務付けされていなかったのですが、今後はその定義を明確化して、表示を義務付けすることを検討しています。このことも、営業利益という指標が、実務においては投資家にとって重要な情報であるということを示唆していると思われます。また、日本においては、IFRS適用企業の多くが、「営業利益」あるいはそれに類する項目を損益計算書に表示しています。

4.ベンチャーエコシステムの実現を目指すディ・ポップスグループが考える「のれん」とは

ディ・ポップスグループも、財務状況や経営状況をステークホルダーに説明する義務を果たすうえで、「のれん」の償却、非償却の双方にメリット、デメリットがあることを十分に理解したうえで、「のれん」の非償却、もしくは、その選択制に賛同いたします。ディ・ポップスグループは、ベンチャーエコシステムの実現、成長の戦略の1つとして、M&Aも積極的に行ってきましたが、やはり「のれん」の償却による営業利益の圧迫が、ディ・ポップスグループが実現している企業成長を含めた経営状況の実態を適切に説明する阻害要因になっていると感じているからです。

また、「のれん」を償却する場合には、決算期ごとに「のれん」の額は償却により減少していきますが、一方で営業利益が圧迫されることにより純資産額の積み上げは少額となります。一方で、「のれん」を非償却とする場合には、減損処理を行うような経営状況にさえならなければ、「のれん」は多額のままとなり総資産額も多額となりますが、営業利益は圧迫されないため純資産額の積み上げも早くなります。

財務状況を表す貸借対照表における資産の本質は、平易にいうと、「企業が現在持っている、将来の稼ぐ力のもとになるもの」であり、そして、純資産額は、株主からの出資を除くと、「企業が獲得した利益の蓄積」を表していると考えます。

ディ・ポップスグループにおいては、M&Aでグループ企業としてベンチャーエコシステムに参画してもらう際には、投資額よりも多く将来の稼ぎ、つまり投資回収としてのキャッシュ・フローをもたらすことに確信をもっています。それは、戦略の1つであるコングロマリット・プレミアムによるグループシナジーがあるからであり、そして、ベンチャーエコシステムという共存共栄関係のなかでの事業成長により、このキャッシュ・フローが年々増加していくことを目指しています。

そのため、「のれん」が多額となったとしても、それは、M&A投資による将来の稼ぐ力を適切に表し、そのM&Aの投資回収が純資産の積み上げとなることは、獲得した利益の蓄積を適切に表すと考えるため、財務状況のステークホルダーへの説明においても適切であると考えます。

最後に、ディ・ポップスグループでは、M&Aを行う際に優れたビジネスモデルに着目する場合もありますが、多くの場合には優れた経営戦略を着実に実行する経営者の能力、ノウハウにより重点をおいています。これはディ・ポップスグループが目指すベンチャーエコシステムが、自立支援を重視し、独立した経営者集団であることを目指していることと関連しています。

つまり、コングロマリットプレミアムなビジネス環境を提供し、グループシナジーのなかで更なる自社の成長を望む経営者のためのエコシステムであり、そのため、基本的にはグループジョイン後も継続して自社の経営、成長にリードしていただきたいと考えています。

このような経営者が創ってきた企業は、ディ・ポップスグループにジョインする段階で、研究開発費、人材育成費、マーケティング投資など、将来の収益拡大や競争優位性の構築を目指すための戦略的な投資により、非常に価値の高い人的資本、知識資本が構築されています。

資産の本質は、「企業が現在持っている、将来の稼ぐ力のもとになるもの」であり、画期的な技術を開発するための研究開発費や、優秀な人材を育成するための研修費も、将来の収益増加に貢献するはずであるのに、前述のように、これらの「自社で生み出された」無形資産は、原則として資産計上することが認められていません。このことは、特に無形資産が企業価値の大部分を占める現代の知識集約型社会において、企業の財務諸表がその企業の真の価値や投資の実態を十分に反映していないという課題を生んでいると考えます。

このような状況下で、M&Aによってグループ参画した企業の「のれん」を償却することは、ある種の二重費用計上のような側面を持つ可能性があると考えています。なぜならば、「のれん」の大部分は、グループ企業が過去に人的資本や知識資本に投じた費用、「将来の企業成長のための投資となる費用」であり、資産として計上されなかったものが、M&Aによってようやく「のれん」という形で資産計上されたものと考えられるからです。つまり、過去に一度費用として処理された投資が、「のれん」の償却で再度費用となりかねないという問題があります。

これまで述べてきたように、ベンチャーエコシステムの実現を目指すディ・ポップスグループにとって、「のれん」の大部分の本質は、人的資本、知識資本であり、コングロマリットプレミアムのコアとなる重要な資産であると考えています。そして、これがグループシナジーに拍車をかけ、エコシステム内により多くのキャッシュ・フローが創出され、それがまた将来のエコシステムの成長のために投資されていくという好循環を生み出すことでイノベーションを加速し、日本の未来に貢献したいと考えています。

東京証券取引所のグロース市場の見直しにより、M&Aは、成長戦略の重要な柱として、エグジット戦略の1つとして、その重要性はますます高まっていくと考えられます。「M&A」と関わりの深い「のれん」の会計処理について、これから行われるASBJの検討内容に注目していきたいと思います。

これからもご支援、応援の程よろしくお願いします。

D-POPS GROUP 執行役員 公認会計士 米谷好弘

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2025.06.20
会長の千本が、フロリダ大学で祝辞スピーチを行いました!
弊社の会長である千本 倖生が、5月1日にフロリダ大学の博士課程学位記授与式の祝辞スピーチを行いました。 千本は25歳の時に、フルブライト奨学生としてフロリダ大学へ留学し、電子工学の修士・博士(Ph.D.)の学位を取得しました。 未来あるフロリダ大学の学生に向けて、リスクをとることの重要性についてスピーチいたしました。 https://news.ufl.edu/2025/05/doctoral-ceremony-speech/?fbclid=IwY2xjawKOm6VleHRuA2FlbQIxMABicmlkETE2bUtYcE5BMldtaTM4V2xUAR6eVUiZ_6809OzFhN0O2hof0GXnh_D7zacVYurg6aJ0Wr7BXcsKhFNki7_9BQ_aem_Xwc2ax6JOlvX9ot15MbtaQ 【スピーチ内容 日本語訳】 フックス学長、ありがとうございます。 博士課程修了生の皆さん、本日は皆さんの輝かしい功績を称えることを光栄に思います。 履修課程を修了し、研究に打ち込み、学位論文審査に合格したことで、皆さんは思想的リーダー、革新者、そしてクリエイターへと成長しました。 皆さんの研究は、人工知能の発展、重力波の解明、詩への理解の深化、ハリケーン予報の向上、柑橘類のグリーニングの撲滅、そして想像を絶する方法で人類の生活の向上に貢献するでしょう。 世界は皆さんを必要としています。皆さんのアイデア、革新、そして創造力を必要としています。そして、皆さんが今、それらを共有する準備が整ったことを、大変嬉しく思います。 おめでとうございます! 皆さんの中には、私と同じように、故郷や家族から遠く離れて暮らしながら博士号を取得した留学生もいらっしゃるでしょう。子育てをしながら、あるいは高齢の両親の介護をしながら学位を取得した方もいらっしゃるでしょう。皆さんは皆、個人的な困難を乗り越えてここまで来られたのです。 卒業式のスピーチでは、皆さんに励ましの言葉やアドバイスを与えることが求められます。しかし、皆さんの今日の偉業に、私は大きな感銘を受けています。 そこで、アドバイスではなく、私自身の人生で学んだ3つの教訓を皆さんの参考になればと思い、お話ししたいと思います。 私の人生における最初の教訓は、自分を信じ、疑念を抱く人を無視することです。 キャリアの初期には、日本の国営通信事業者であるNTTで安定した職に就いていました。しかし、視野を広げたいと思い、NTTを辞め、フロリダ大学で修士号と博士号を取得しました。 それはリスクのある決断で、同僚たちも疑問を抱きました。 しかし、フロリダ大学で、人生を変える出来事が起こりました。電気工学とコンピュータ工学の優れた教授陣のおかげで、私は起業家精神とリスクを取る意欲を開花させました。そして、NTTに挑戦し、その独占状態を打破するスタートアップ企業を立ち上げるというアイデアを思いつきました。 卒業して日本に帰国してから数年後、私はそのスタートアップ企業を立ち上げる勇気を奮い起こしました。 当時の日本の企業文化は、終身雇用を重視していました。同僚たちは私がスタートアップ企業を立ち上げるなんて狂気の沙汰だと思って、そう言いました。 後にKDDIと改名された私のスタートアップ企業は、日本初の通信系スタートアップ企業となりました。NTTの独占状態に挑戦し、KDDIは時価総額800億ドル、従業員数6万人を超える企業へと成長しました。今日では、日本で2番目に大きな通信会社であり、アメリカのAT&Tに匹敵する存在です。 卒業生の皆さん、皆さんの中には、かつての私のように起業家になる人もいるでしょう。また、学者、科学者、企業経営者、あるいは公職に就く人もいるでしょう。 しかし、皆さんは皆、成功するリーダー、イノベーター、そしてクリエイターになれるのです。 自分を信じ、疑う者を無視しましょう。あなたの大胆さを批判する人たちは、あなたを愚か者と呼ぶかもしれません。しかし、後になって、彼らはあなたを英雄と呼ぶでしょう! 私の人生における二つ目の教訓です。 二つ目の教訓は、他人の言うことに耳を傾け、学び、力を得ることです。 これまでのキャリアの中で、私はしばしば誤解され、時には嘲笑されることもありました。しかし、私を支えてくれた人たちのおかげで、私は粘り強く頑張ることができました。 フロリダ大学を卒業する準備をしていた頃、アメリカの一流企業から魅力的なオファーを数多く受けました。通信事業のスタートアップのアイデアを夢見ていましたが、リスクが大きすぎると感じました。そこで、教授のドン・チャイルダース博士に、素晴らしい企業からオファーを受けたいと伝えました。 博士はこう言いました。「倖生、日本に帰って自分の国に貢献したいと思いませんか?」 チャイルダース博士は、私自身が気づいていなかった、私と私の未来の可能性を見出してくれました。そして、私を信じてくれました。 彼のおかげで、私はアメリカでの安全で平凡な企業生活ではなく、成功した起業家となり、日本で意義深く革新的な影響を与えることができました。 私生活でも励みになりました。 妻のフランシスに、とても快適で安全で、ありきたりな生活を捨てて、小さな会社を立ち上げる覚悟ができたと伝えた時、彼女はきっと嫌な顔をするだろうと思っていました。 しかし、彼女はこう言いました。「自分を信じて。リスクを取って。私はいつもあなたを応援しているわ。」 それは、これまで誰からも受けたことのない最高の励ましでした。卒業生の皆さん、成功への道はシンプルです。必要なのは、私の妻フランシスのようなパートナーを持つことです!パートナーは人生において最も重要な要素です。 ですから、もう一度、私の2つ目の教訓は、あなたを信じてくれるメンターや愛する人を見つけることです。彼らの話に耳を傾け、彼らから学び、彼らに頼りましょう。 この教訓にはもう一つの側面があります。それは、誰かがあなたを必要としている時に、その恩恵を他の人に還元することです。受け取ることばかり考える人ではなく、価値あるアドバイスと安心感を率先して与える人になりましょう。 「否定派」ではなく「賛成派」になりましょう。 私の3つ目、そして最も重要な教訓です。リスクを負いましょう。リスクを取ることは、あなた自身と世界にとって有益です。 私は、大きな成功のチャンスを見出したからこそ、KDDIを設立しました。 しかし同時に、イノベーションを阻害し、消費者の選択肢を制限し、価格を高騰させていたNTTの独占状態を打破したいとも思っていました。 コミュニケーションは、オープンで多様性に富み、可能性に満ち、貧困層や苦境に立たされている人々に寄り添うものであるべきだと信じています。 KDDIは、日本で貧困に苦しむ何百万人もの人々を支援しました。情報格差を埋め、必要な情報通信サービスを提供できない人々に不可欠なサービスを提供しました。企業としての機会を増やすことで、人々の機会も増やしました。収益を向上させることで、人々の生活も向上させました。 KDDIを退社後、私は複数の会社を立ち上げました。そして70歳の時、再生可能エネルギーのスタートアップ企業であるレノバに入社しました。レノバは、日本で先駆的なグリーンエネルギー企業の一つです。 なぜレノバを選んだのか?それは、財務的に優良な企業だったからです。 しかし、太陽光、風力、水力、地熱といった再生可能エネルギーは、私たちの未来の鍵となると信じています。再生可能エネルギーは、貴重な天然資源を枯渇させたり、気候変動を悪化させたりすることなく、増大する電力需要を満たすことができます。それは、地球を守ることを意味します。 私は10年間、レノバの会長を務めました。レノバでの勤務を通して、同社は日本を代表する再生可能エネルギー企業へと成長しました。さらに重要なのは、私たちの活動が化石燃料への依存度を低下させ、環境汚染を削減し、日本のエネルギー自給率の向上に貢献し続けていることです。 卒業生の皆さん、リスクを取ることは、金銭や名声、あるいは個人的な満足感のためだけではありません。社会と人類のよりよい未来を築くためです。社会の暗く苦しむ側面に、新鮮で力強い風を吹き込むことなのです。 なぜ82歳という年齢でリスクを取り続けるのでしょうか? それは、私をワクワクさせるからです。 たとえ失敗しても、新しいものを作ることが不可欠だと感じるからです。自分の肺を使って、世界に新鮮でより健全な空気を届けているのです。 つまるところ、私はより良い世界のためにリスクを取っています。社会に革命的な変化をもたらしたいのです。 卒業生の皆さん、博士号やその他の最終学位は、皆さんにとって価値のあるものです!皆さんは、聴覚学から動物学に至るまで、様々な分野で重要な貢献者となるでしょう。ビジネスマン、学者、公共政策の専門家、産業界のプロジェクトマネージャー、NGOのソーシャルワーカーなど、様々な分野で活躍するでしょう。 どんな道を歩むにせよ、皆さんには、世界をより良くするための大胆なアイデアを追求し、リーダーとなるためのツール、ネットワーク、そしてマインドセットが備わっています。 アイデアを追求してください。疑念を抱く人は無視してください。信じる人たちに囲まれ、彼らの話に耳を傾け、学び、頼ってください。 「否定派」ではなく「肯定派」になりましょう。 そして何よりも、リスクを恐れないでください。あなたのリスクは、他者、そして最終的にはあなた自身の利益になります。 未来は「待つ」ものではありません。「創造する」ものです。博士課程修了者の皆さん、私は心から、皆さんがより良い未来を創造してくれると信じています。 ありがとうございます。おめでとうございます。そして、頑張れゲイターズ! おめでとうございます!本当に誇りに思います!頑張ってください! 2025年5月1日(木)午前9時 スティーブン・C・オコンネル・センター フロリダ大学 アメリカ合衆国フロリダ州ゲインズビル
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2025.06.03
D-POPS GROUPのCVC投資活動について~エコシステムの仲間探し~
ディ・ポップスグループでは、ベンチャーエコシステムを、「共通のアイデンティティと理念の元に集まり、革新性の高い事業モデルにより、社会課題解決に挑戦し続ける企業群の集合体を支える、成長と永続のためのプラットフォームのこと」と捉え、その理想の形の実現に向けて日々挑戦と努力を続けています。 ※詳しくはこちらをお読みください。「ベンチャーエコシステムとは?」 その活動の一貫として、年間で産み出された利益を元手に、ベンチャー企業への支援、すなわちCVC投資活動を行っています。以下、その活動についてご説明致します。 1. 投資基準 多くの事業会社がCVC投資活動を行っていますが、一般的にはその利益への貢献や投資先の成功確率は低いものです。ただ、当グループとしては、単なる利益追求のための投資ではなく、エコシステムの仲間作りである事と、20社以上の事業会社から構成されるグループ(投資会社を含めると50社以上のグループ)と共に成長する事を重視して基本方針を立て、それに基づいた活動をしています。 (1)事業領域 ①「リアルビジネス x テクノロジー x グループシナジー」そして何よりもその土台となる「x ヒト」これらの要素が複数あることを大切にしています。 グループの祖業が、携帯ショップ事業やそこから派生した人材ビジネス、そしてさらにソリューション事業、テクノロジー事業と発展してきたため、当グループでは祖業であるリアル、つまり実店舗や土地に関わり形ある物を扱うというような経済活動に、他社にはない強みを持っています。AIがどれだけ普及しても、最後のチューニング部分は人が必要です。むしろ未来は人間力がより重要になってくるでしょう。AIはあくまでも人の能力を最大限に活かすツールであると考え、人を活かす取り組みを応援したいと考えています。そして最後に、それらのベースにはテクノロジーを活用していることを重視しています。 これら全てが揃う必要はありませんが、複数ある、もしくはこのいずれかに強烈な強みがあるかどうかを、まず最初に確認しております。 ②ICT・DX領域に注力していることが望ましい 必須条件ではありませんが、グループ各社とのシナジーの産み出し易さを考慮すると、情報通信業に関連する事業、DX領域に取り組んでいる企業であれば、知見の共有やグループ内での協業、そして、タッグを組んで営業活動をするといったシナジーが期待できます。 ③取り組むべき社会課題であるか、また市場成長性の高さ 当グループは、”企業は社会の公器である”と考え、ただ儲かりさえすればいい、という考え方でビジネスを行っていません。それが本当に取り組むべき社会課題なのかどうかは重要な検討項目になります。また、その市場が成長しているかどうか、その成長領域の中で対象企業の競争優位性が明確にあるか、は当然のこととして検討の対象となります。 (2)理想とする創業者像 エコシステムの成長のためには、多様性はもちろん重要ですが、多様性を尊重しつつも、外してはいけない「人物像」というものがあります。D-POPS GROUPでは、投資対象企業の創業者と経営陣の方々が、次のような人物像であるかどうかを、仲間に入って頂く上で、重要な判断材料としています。 ①社会貢献意識、社会を変革する志の高い起業家 ②何事にも挑戦する、アントレプレナー精神がある ③誠実、謙虚、感謝、正直、倹約、粘り強さ、という姿勢 (3)ステージとモデル 一般的なVCファンドが明確に規定する、資金調達のステージや事業モデルには強い拘りはありません。シードからシリーズA、B、そしてレイターまで、幅広く支援しています。また、B2CかB2Bかについても、グループ内にはいずれのモデルの企業もあり、またアドバイザー陣も様々な経験を積んできているので、希望に応じて伴走することが可能です。 ただ一つモデルに関して拘りがあるとすれば、ストック型の収益モデルであり、尚且つプラットフォーム型のビジネスモデルであるかどうかはチェックさせて頂いています。グループの、人を大切にする、顧客との長期的な関係作りを重視する文化、そしてエコシステム全体の安定成長のためには、積み上げ式 且つ プラットフォーム型の事業モデルであることが望ましいと考えているからです。 2. 2024年度の投資実績 2024年以前からもディ・ポップスグループではCVC投資活動を行ってきましたが、特に2024年度からは、投資委員会を設け、この投資方針に準ずる形で活動を進めています。すなわち、全ての候補企業につき、投資委員会で審議をし、全員一致した場合のみ代表取締役に申請をし、適切なデューデリジェンスを実施し、全て合格となった場合のみ、出資契約を締結する、というプロセスを踏みました。その結果、2024年度は以下の8社のベンチャー企業に出資を実施しました。(2024年3月~2025年2月末) ①(株)フラクトライト https://fluctlight.ai/ 「人々の豊かな暮らしを実現するために、AIをつかった便利なサービスを開発し、日本の人材不足を解決します」を社是とし、生成AI技術を用いた新サービスの開発に取り組んでいます。 ②The Salons Japan(株)(※資本業務提携) https://www.thesalons.co/ 「美容師に、真の独立を」を社是とし、完全個室美容モール『THE SALONS』を展開・運営する、正にリアルなビジネスであり、また専門スキルを持つ人を応援する企業です。 ③Adora(株) https://www.kodomamo.com/ AIを活用したペアレンタルコントロールアプリ「コドマモ」の開発及び運営を行うベンチャー企業で、子供を守る、AIを駆使している、という点で投資方針に合致しました。 ④クロスロケーションズ(株) https://www.x-locations.com/ 「多種多様な位置情報や空間情報を意味のあるかたちで結合・解析・可視化し、誰でも活用できるようにすること」を掲げ、既に多くの顧客を抱え、投資基準にも合致しました。 ⑤(株)Lezily https://corp.lezily.com/ 「脱”気合いと根性”を目指した日本初のメンタル版パーソナルトレーニング」により、世の中からメンタル不調者を無くす事を目指しています。人を大切にする想いに共感しました。 ⑥(株)BLUEISH https://www.blueish.co.jp/ 「AIで未来を創造し、ビジネスの可能性を無限に広げる」を理念に掲げ、業務プロセスの効率化を支援します。経営陣の人柄とAIに関する知見の深さに惹かれ出資を決めました。 ⑦(株)Payke https://payke.co.jp/ 訪日外国人向けショッピングサポートアプリ「Payke」の開発・運営を行う企業。そのアプリは最も訪日外国人に使われているアプリの一つで正にリアルと人を象徴する事業です。 ⑧(株)ワークポート https://www.workport.co.jp/ 「限りなく誠実に、極めて合理的に。人と企業をありたい未来へつなぐ。」をパーパスに掲げる人材紹介・育成の企業です。”働く人の頼れる港”作りを応援します。 これまでの投資ポートフォリオ企業はこちらをご覧ください。 https://d-pops-group.co.jp/group/ 3. 出資後の伴走活動 当グループのCVC活動においては、特に出資先への伴走、すなわち事業運営のサポートを大事にしています。ほんの一端ですが、そのような伴走活動の一部をご紹介します。 (1)グループ会社での試験的導入 Lezily社、クロスロケーションズ社、BLUEISH社のサービス・商品をグループ会社の一部でテスト利用させていただき、その使用感のフィードバックをしたり、営業開拓先のヒントを得たりして、協業の準備をしました。 (2)グループ会社との協業 Adora社とはディ・ポップスが運営するTOP1ショップ全店で契約取次をする他、グループのアドバンサーの支援により、全国のキャリアショップや量販店スマホショップでの取り扱いの交渉をしています。また、BLUEISH社とは、グループのA社とB社とで新ソリューションを開発する取り組みも行っています。 (3)新規顧客と協業先の開拓 ほぼ全ての投資先に関して、その新規顧客候補となる企業や、代理店候補となる大手企業をご紹介してきました。アドバイザー陣の幅広い人脈と、エコシステム内で同じ社会課題に取り組む企業があるおかげで、比較的スムーズにお繋ぎ活動が進んでいます。 (4)その他経営相談 一見するとシナジーが無さそうに見えるThe Salons Japan社ですが、その店舗(美容モール)の開拓とサブリースモデルは、正に不動産業です。そしてディ・ポップスが行ってきた携帯ショップ網の拡大も同じく不動産業とも言えます。その経営者同士の定期的な壁打ちがブランド力を高める店舗開発に活かされています。 このようにして、ベンチャー企業にはやや足りない、人的リソース、顧客基盤、組織力、人脈、経験といったものを注ぐことで、新たにエコシステムの仲間入りした企業の支援に心血を注いでいます。ディ・ポップスグループのCVC投資活動では、資金支援だけでなく、むしろそれ以上に、この伴走活動を重視しています。 4. 未来構想 「ベンチャーエコシステムとは?」のコラム記事で記載したように、ディ・ポップスグループでは、エコシステム内でのコラボレーションや、学び合いと助け合いをとても大事にしています。その具現化として、最近では次のような活動も始めました。 (1)事業紹介&懇親会イベント 新たに出資したスタートアップの創業者の方に登壇いただき、その事業説明と質疑応答のイベント、それに続く夜の懇親会、というパッケージを始めました。当グループの各社のリーダー達は、アントレプレナー精神に溢れる人ばかりなので、躍進中のベンチャーのモデル、凄まじい苦境を乗り越えた逸話、個性豊かな起業家達の話は大いに興味を持ちます。彼らの話から刺激を受け、また、良い質問により新しいアイデアの種をお互いに見つける、良いきっかけとなりました。そして夜は居酒屋に移り、参加者皆で囲んで更に質問責めとなり(笑)、二度盛り上がりました。 これまでにBLUEISH社の為藤社長とPayke社の古田社長にご登壇いただきましたが、できればこのような勉強会を毎月一回程度開催していき、数多くのエコシステム内の企業に登壇して頂き、様々な軸で勉強会を開いていきたいと考えています。 また、エコシステム全体が成長し永続するための施策として、出資比率に関わらず、将来的には以下のような活動も加えていきたいと考えます。 (2)交流 CxOやエンジニア、マーケターなど、異なる企業の同じ立場や職種のメンバー同士で人材の交流や情報交換を行い、刺激し合う。エコシステム内での短期留学や出向、そして人材の転籍なども可能な仕組み作りをしていきたいと考えます。 (3)互助 経理部門や営業部門など、ノウハウの伝授と吸収目的、また、新チャネルや新システムの立ち上げ期など、一時的に企業Aで人員が不足する時に、その時期に人員に余裕がある企業Bから人材を送り、レスキューをすることもあります。企業Bが同じ状況になった時には、企業Cがヘルプ要員を送り込む、”お互い様”な関係が、エコシステム内では成り立ちます。 (4)OB・OG いずれグループ内には、上場や前向きな事業譲渡によりexitに成功する経営者も現われるでしょう。中にはその会社を卒業するメンバーもいます。しかし、企業理念や誠実・謙虚・感謝といった人としての理念が一致していればこそ、卒業してもOB・OGは共通の仲間です。先ほどの勉強会に講師として登壇してもらったり、成績が振るわない企業の再建に一時的な代打経営者として取り組んでもらうなどができます。 —- 以上、(株)ディ・ポップスグループが取り組むベンチャーエコシステムを実現する活動の一環として、CVC投資活動のその方針と2024年度の実績について、簡単にご紹介させていただきました。 これからもご支援、応援の程よろしくお願いします。 D-POPS GROUP アドバイザー 杉原眼太
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2025.05.12
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