COLUMN

採用DXで人事を刷新。HRクラウド中島社長と「採用一括かんりくん」の挑戦 ~Part2~

  • INTERVIEW
2026.06.18

Part 1では、中島社長の起業家としての原点と、27歳での創業に至るまでのストーリーをお届けしました。Part 2では、採用DXを革新する主力サービス「採用一括かんりくん」の誕生秘話と驚きの機能、コロナ禍を追い風に変えた成長戦略、そしてAI活用の最前線についてお届けします。

◆ 中堅・中小企業の「採用三重苦」を解決するサービスへ

-杉原-
人材業界のプラットフォーマーになることをミッションとして掲げていらっしゃいますが、具体的にはどんな顧客向けにどのような製品を展開されているんでしょうか?

-中島-
今の現状でいくと、新卒採用を5名以上されている中堅・中小企業様向けに、採用のAIエージェントサービスを提供しています。

中堅・中小企業様の悩みは、母集団が集まらないということと、辞退されてしまうということと、人手が足りないという三重苦です。

楽天や学情で営業をやっていて、いろんな中堅・中小の企業様の経営者や人事と話をするたびに、この悩みを共通でおっしゃっていました。それをクリティカルに解決するサービスが世の中になかなかない。そこから最初は人材紹介事業からスタートして、今に至るという流れです。

-杉原-
人材紹介に加えて、採用業務をロボットとAIが自動化するサービスも提供していたということですね。

◆「採用一括かんりくん」――人事の仕事を8割削減する仕組み

-杉原-
主力サービスの「採用一括かんりくん」について改めて教えていただけますか?

-中島-
人事の方って、ほとんどの会社がExcelかスプレッドシートなどで採用管理されています。マイナビとかリクナビ、オファーボックスやその他人材紹介会社など、いろんな媒体を使って応募者を集めますよね。

集まってきた応募者情報をExcelに転記して、説明会のご案内の有無、参加の有無、アンケート回収、一次選考の案内…ということをスプレッドシートで何千人という管理をする。とにかく手間がかかって大変なんです。

しかも1人1人に個別にメール送ったり電話をしたりとか。面接の評価の後、面接官にどうだったか聞いて、やり取りが発生して。最近は面接がオンラインなので、面接日程が確定したらオンラインのURLも発行して送って…みたいなことを何千人ってやらなきゃいけないんです。

-杉原-
確かにこうやって並べるとかなり大変ですね。それをどう自動化するんですか?

-中島-
我々のシステムは、まずクラウド上で管理ができる、かつ自動化が強いシステムです。応募者がまず媒体に集まってくると、自動的にかんりくんに登録されます。登録されたら、応募者に自動的に説明会の案内を送信します。

しかも応募者はその案内がLINE上に届くので、LINEのメッセージをタップするだけで予約ができる。予約をすると説明会の詳細案内が来て、オンラインのURLも自動的に発行される。説明会が終わったら、かんりくんの機能でアンケートを送る。

そのアンケート上で求職者の方が「次回選考に進みたい」ボタンをポチっと押すと、またLINEに次の選考案内が届く。学生はLINEで次の選考の予約が完了して、オンラインのURLも勝手に送信されるという、人事の方が何もしなくても全部回っていく仕組みです。

そして実際、人事の仕事は8割減るんです。実際にインタビューさせていただいた株式会社ボールド様は、年間300名の新卒採用をされているんですが、人事は1人で回しているんですよ。
☆株式会社ボールド様の導入事例
https://www.career-cloud.asia/lp/interview/bold

300名の採用ということは、1,000人ぐらいの応募者がいるわけじゃないですか。それを人事1人で回すのは、普通ならありえないですよね。弊社も中途採用でかんりくんを使っていて、人事がゼロの状態で年間20名の採用ができています。

でも人事担当者にしかできないことがあります。面接と面談はやはり人がやるべき業務です。それ以外のプロセス管理は「採用一括かんりくん」が勝手に自動的に動きますので、人事担当者は人がやるべき業務に集中してほしいという思いでシステムを作っています。

◆ なぜ「採用一括かんりくん」というネーミングなのか

-杉原-
ところで、このサービスのネーミングがいいですよね。「採用一括かんりくん」って、ひらがなで「かんりくん」ですし、CMもライトな印象で。
これにはどんな意図があるのでしょうか?

-中島-
そうですね。大手であればかっこいい横文字のサービス名にして、PRにコストをかけて、ようやく大衆が名前を覚え始めるんですが、我々はそんなに多額のPRコストをかけられない。

だから1回聞いたら何をやっているサービスかわかる、かつ勝手に広まっていく、というのが大事だなと思ったんです。「採用一括かんりくん」って聞いたら、採用を一括で管理できるシステムなんだなとわかる。人事の方の間で「何使ってるんですか?」という会話になると、「うち、かんりくん使ってます」とすぐ出てくる。それが横文字のサービス名だったら、「あ、なんだっけ…」ってなっちゃいますよね。

-杉原-
言われてみれば、確かにそうですね。これは社長のアイデアなんですか?

-中島-
私のサーフィン仲間でよくしていただいている先輩経営者がいまして、よく経営の相談をさせて頂いているんです。このサービスを立ち上げるときに、「サービス名は何がいいですかね」と相談したら、「採用一括かんりくんがいいんじゃないか」とアドバイスをいただいたんです。

社名も、もともとはRootsという社名だったんですが、その方に「何をやっているかわからないから、HRクラウドにしたらどうか」とアドバイスいただきました。

-杉原-
中島社長が素直な性格だからこそ、素晴らしい先輩経営者に囲まれているんですね。ネーミングを取り入れるところもまさにそうですね。

◆ コロナ禍を転機に――追い風を掴んだ「勝負の判断」

-杉原-
「採用一括かんりくん」の利用アカウント数が1800社を突破されていますが、ここまでの過程に転換期はありましたか?

-中島-
まずコロナの時が大きかったですね。コロナまでは100社ぐらいまでしか伸びていなかったんです。営業にちゃんと力を入れられておらず、そのころはまだ人材紹介に力を入れていたということもあって、100社ぐらいで止まっていました。

それが2020年のタイミングでコロナが来て、一旦企業の採用が縮小になったんですが、その後やっぱり採用が必要だねということで採用が動き始めた。コロナ禍なのでリモートで採用するという企業さんが増え始めたんですね。そうすると、リモートで採用するにはクラウド上で管理しないといけないよね、採用管理システムはどこだ、ということで「採用一括かんりくん」への問い合わせが急に増え始めました。

そのタイミングで、「これはチャンスだ」ということでタレントを起用してCMを打ったという流れなんですが、裏話もあって。

実は弊社は人材紹介業をやりながら、システムへの投資もずっとしてきたので、2億円の債務超過にまでいっていたんです。かなり危機的な状態になっていたタイミングでコロナが来て、人材紹介業の売り上げも半減してしまって。これはまずいなと。

そのときに国のセーフティーネットで2億円ぐらいの借り入れができた。そこへ「採用一括かんりくん」の問い合わせが増え始めて、「いや、これは勝負に出よう」と、借り入れた2億円を使ってPRを打ちました。私の中で、人生最大の勝負でしたね。

1年で300社ぐらい一気に導入企業が増えて、そこから現在1800社になりました。NewsPicksにも広告を出して、また今回CMを打ったりもして、ここ数ヶ月は昨年対比倍の勢いで導入していただいています。

◆ AI活用の最前線――ChatGPT・Claudeを活用した採用DX

-杉原-
昨年来、続々とAIスカウト、アトラクトAIなどのAI機能がリリースされていますが、これは明確な戦略の一環ですか?

-中島-
そうですね。人事の業務をなくしていくということと、採用に転換させるということ。先ほどお伝えした三重苦を解決するために必要なことを考えた時に、とにかく多すぎる人事の業務をAIとロボットで自動化させていかなきゃいけない。

あと、辞退されてしまうという課題に対して、本来人事の方がきちんと面接フィードバック文を作って、「ぜひ次回の選考においでください」という愛のある文章を作って送らなきゃいけないんですが、人事の方々が多忙すぎてなかなかできていないんです。それをAIが代替していく。人事の作業を軽減しつつ、集まってきた応募者の志望度を上げていく、『アトラクトする』ことに焦点を当ててサービスを開発してきました。

-杉原-
生成AIが大ブームになる前から考えていたんですか?

-中島-
RPA(注:Robotic Process Automation)に関しては、かなり他社よりも1歩先に進んでいるシステムになっていましたね。自動化というロボットの機能はすごくありました。ただAIは全然着手できていなかったんです。

技術的には、Claude(アンソロピック)やChatGPTにデータを飛ばして、返ってきたものを「採用一括かんりくん」上で表示するという形です。我々の方でプロンプトを組ませていただいて、人事専門の辞退率を下げる愛のあるメッセージを自動生成するノウハウがあるのがこのサービスの肝ですね。

☆インタビューアー
D-POPS GROUP アドバイザー 杉原 眼太

【HRクラウド株式会社】
代表者:代表取締役社長 中島 悠揮
所在地:東京都千代田区紀尾井町3-6 紀尾井町パークビル7階
設 立:2014年4月
コーポレートサイト:https://hr-cloud.co.jp/

 

Part 3では、
・組織づくりの危機と成長
・CESでの未来体験
・D-POPS GROUPとの関係
・ベンチャーエコシステムについて共感すること
などについて伺っています。Part3もお楽しみに!

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  • INTERVIEW
2026.07.27
auプランに組み込まれた子どもの安全を守るアプリ「コドマモ」の挑戦|Adora株式会社・冨田社長インタビュー~Part2~
全3回にわたるインタビューの第2回となるPart2では、「コドマモ」がauだけにとどまらず、ドコモ・ソフトバンクを含む3大キャリア全てとの協業へと広がった経緯、さらには韓国・台湾への海外展開の現状、「コドマモ for School」という学校向けサービスの取り組み、そして大人の詐欺対策という新たなフロンティアへの挑戦を紹介します。(このインタビューは2026年6月に実施しました。) ◆ 「コドマモ」加入後の状況と反響 ―杉原― サービスプラン組み込み後の「コドマモ」の評判はいかがですか?加入状況や現場の声などを、差し支えない範囲でご紹介いただけますか? ―冨田― 店頭でご案内いただいた結果、コドマモを利用し始める率がコツコツと上がってきています。使ってくださったユーザーが使い続けてくださっているということも数字に表れてきています。良いものとして受け止めていただけているという実感がありますね。 まだ改善できる余地はたくさんあります。営業現場の方が売りやすくなるための新機能開発や改善も続けていますし、現場へのインタビューも今後どんどんやっていく予定です。より本格的なユーザーの声、営業現場の声はこれから届いてくる感じですが、数字面ではすでにかなり良い傾向が出ています。 U12バリュープランに加入した人の中でコドマモにきちんとログインID登録している人の割合が、サービスリリース直後よりもだんだん上がってきています。 ―杉原― それはおそらく、営業現場でだんだん説明に慣れてきたこと、個人として使っている営業担当者が現れてきたことで、勧めやすくなってきたという面もあるのでは? ―冨田― そのような側面はあると思います。また、微力ながら弊社側でも改善を行なってまいりました。最初は店頭でご案内いただいて加入しようとしたときに、間違って有料プランに加入してしまうというケースが初期にありました。プランに組み込まれているので本来は無料で使えるはずなのに、通常のアプリストアの有料プランに入ってしまうという混乱です。 そのユーザーの声を受けて、オンボーディングの中でどちらから来たのかを確認し、auから来たユーザー向けの独自の導線を用意して、わかりやすく整理しました。その改善の結果、そういった声はだいぶ減ってきました。走りながら改善を繰り返してきたということですね。 ―杉原― アプリの完成度だけでなく、オペレーションの改善が利用者数を増やすために重要ですよね。 ◆ 3大キャリア全てとの協業へ拡大 ―杉原― KDDI様のauショップ各店で紹介されていることはもちろん素晴らしいのですが、NTTドコモ様、ソフトバンク様の系列ショップでも取り次ぎが広がっているそうですね。他の2社との協業状況はいかがでしょうか? ―冨田― 我々は大きな社会課題を解決するという意識でやっているので、複数の通信キャリア様とご一緒できることは、最初から目指していたことでもあります。最初にドコモショップでのお取り扱いが始まり、次にauで料金プランに組み込んでいただき、その後ソフトバンク様のショップでも全店取り扱いいただいています。 もちろん始まるまでにはいろいろな運用の調整があり、現場の方々が大変頑張ってくださいました。今では利用者数もしっかり増えてきていて、本当にありがたいですね。 ―杉原― ソフトバンクさんの販売店の取り次ぎ数、急激に伸びていますよね。 ―冨田― ものすごく伸びています。ソフトバンクC&Sの皆様のご尽力と、代理店の皆さんの頑張りで、今年の頭からぐっと勢いが出てきました。 ―杉原― au様との取り組みで経験したオペレーション上の課題以外に、NTTドコモ様、ソフトバンク様特有の課題にぶつかったりはしましたか? ―冨田― それぞれのキャリアがすでに展開されているサービスと競合しないようにするという点は特に意識しました。例えばソフトバンクさんには独自のセキュリティサービスがあるので、そういったものと競合しないか、互いに悪影響を与えないかということをテストしながら進めました。ただ一方的に「売ってください」というのではなく、お互いのために細かな調整をしながら進めているという感じです。 現場でバグやトラブルが出てしまうと、忙しい店頭の皆さんが案内したくなくなってしまいますから、そういったことが起きないよう、何かあればすぐに対応できる体制は常に整えています。 ◆ 韓国・台湾への海外展開の現状 ―杉原― 昨年にはコドマモの海外展開も開始されています。どの国に進出済みで、どのような状況か、簡単にご紹介いただけますか? ―冨田― 韓国と台湾に展開しています。実際にやってみて難しいことも色々ありましたが、モバイルアプリの良いところは、翻訳して広告を打って小さく検証するということが50〜100万円程度の予算でできるという点です。 韓国については、出してみた上でしっかりニーズがあることが確認されてきました。危険なチャットの検知機能が思った以上に刺さっています。最初は位置情報機能のほうがメインかと思っていたのですが、蓋を開けてみると最初から危険チャットの検知が購入の最大の理由になっていました。ユーザーインタビューをしていると、韓国の親御さんが「子どもがドラッグに関わっていないか心配」とおっしゃるケースもあり、日本では聞かないような声もあって、ローカルな課題感の違いを感じます。 ただ韓国ではLINEよりカカオトークが主流なのですが、カカオトークへの本格対応がまだできていない部分があります。これをやれば伸びるという感触はあるので、もう少しバージョンアップしてから本格的に広告費などを投じていきたいと考えています。 台湾はLINEが広く使われているので、今出してみて非常に低いコストでユーザーを獲得できています。市場ニーズも高く、日本以上にしっかり使ってくれる方もいらっしゃいます。これからさらに力を入れていきたいと思っています。台湾の次はタイなど、アジア各国へも広げていきたいですし、WhatsAppに対応できればインドネシアやイギリスをはじめとする様々な国への展開も見えてきます。 ―杉原― 本当に積極的ですね。創業した時から世界を見ていらっしゃいますよね。 ―冨田― この事業はグローバルに共通するニーズを解決できるものだと思っています。最初からそこを見据えています。日本からグローバルに頑張る事業が出てくると、やはり応援したくなりますよね。そうなれればいいなと思ってやっています。 ◆ 「コドマモ for School」— 自治体・学校向けの取り組み ―杉原― 足は長いですが、とても興味深い活動として、全国の自治体と連携した学校向けプラン「コドマモ for School」について簡単にご紹介いただけますか? ―冨田― 「コドマモ for School」は、学校で使用されている学習用タブレット端末に入れるサービスです。通常の「コドマモ」が親子のスマホに入れるサービスであるのに対し、「for School」はお子さんたちのタブレット端末の安全な利活用を促進するものです。 機能としては、性的な自撮り写真のやり取りや、いわゆる「裸の画像のやりとり(グルーミング)」を検知してアラートを出す機能や、ウェブサイトの見守り機能などがあります。基本的な機能は通常版と大きくは変わりませんが、ステークホルダーが自治体・教育委員会になるという点が異なります。 ―杉原― これまで通信キャリア3社と折衝してこられたわけですから、会社としての信頼度も大きく上がってきていますね。 ―冨田― 本当にありがたいことだと思っています。 ◆ 次の挑戦 — 大人向け詐欺対策サービスの開発 ―杉原― 続いて、コドマモに続く現在開発中の新サービスや新機能についてご紹介いただけますか? ―冨田― 今作っているのは、より広く一般向けに、SNSを通じた詐欺対策のサービスです。日本のみならず世界中で、特に投資詐欺やロマンス詐欺など、SNSやチャットを通じた詐欺が深刻な社会問題になっています。毎日何億円もの被害が発生している状況です。 電話詐欺は有名ですが、チャット経由の詐欺も非常に大きな問題です。弊社であればSNSにおける詐欺を検知できるという強みがあります。コドマモが子どもを対象にしているのに対し、大人の詐欺被害を検知して守るというサービスを絶賛開発中です。1日でも早くリリースできるように取り組んでいます。 一方で、詐欺被害に遭う方は自分からアプリをインストールしようとはなかなかならないので、子ども以上にステークホルダーの皆さんと一緒に動くことが重要だと考えています。様々な方にご意見をうかがいながら進めているところです。 ―杉原― こういうサービスを考えると、ますます大手企業との連携・提携ができる会社作りが重要になってきますね。 ―冨田― そうですね。弊社は技術力のある小さな開発チームではありますが、大企業さんや自治体さんと一緒に我々ならではの特徴を出しながら社会実装していくことが、大きな社会問題を解決するために不可欠だと思っています。 ☆インタビューアー 株式会社ディ・ポップスグループ アドバイザー 杉原 眼太 【Adora株式会社】 会社名:Adora株式会社 代表者:代表取締役 冨田 直人 設 立:2023年7月 サービスサイト:https://corporate.kodomamo.com/ja Part 3では、 ・平均年齢26〜27歳 — 未来を作るチームの構成 ・「Sunny・System・Solid」 — 3つのバリューを策定 ・ベンチャーエコシステムの実現について などについてお伺いしています。 Part3もぜひご覧ください! Part1の記事はこちらからご確認ください。  
  • INTERVIEW
2026.07.23
auプランに組み込まれた子どもの安全を守るアプリ「コドマモ」の挑戦|Adora株式会社・冨田社長インタビュー~Part1~
全3回にわたるインタビューの第1回となるPart1では、子ども向けSNS見守りアプリ「コドマモ」を開発・運営するAdora株式会社・冨田社長が語る、創業から現在に至るまでの急成長の軌跡に迫ります。株式会社ディ・ポップスグループが2024年7月に出資して以来の約2年間で何が変わったのか。auの新料金プラン「U12バリュープラン」への組み込みという異例の快挙はどのような経緯で実現したのか。泥臭く走り続けてきたスタートアップのリアルな歩みをお伝えします。(このインタビューは2026年6月に実施しました。) ◆ 出資から2年、創業から3年を振り返って ―杉原― 本日は、2024年7月に出資をさせていただき、ベンチャーエコシステムの仲間になっていただいた、Adora株式会社の冨田社長にインタビューさせていただきます。冨田社長には2024年9月にもインタビュー記事の作成にご協力いただいておりますが、その後も急成長を続ける「コドマモ」などについてさらに深掘りをさせていただきます。(前回の記事はこちらをご参照ください。) 冨田社長とは、2024年の5月に出会いましたよね。あれから2年が経ちました。また、2023年7月の創業からは約3年ですね。弊社の出資と協業開始からの約2年、そして創業以来の3年を振り返って、いかがですか?感想をお聞かせください。 ―冨田― そうですね。ご出資いただいたことで、社内のメンバーだけではなく社外の方も含めて「みんなの事業、みんなの会社」だという意識が改めて強くなりました。責任感をより強く持って頑張らなければという気持ちが湧いてきましたし、苦しいときもありながら、一生懸命泥臭くやってきたなと思います。気づけばあっという間でしたね。 ―杉原― 3年って長いですか?短いですか? ―冨田― 短いですね。やばいな、もっと頑張らなきゃなって感じです。 もちろん、できる限りすべてにおいてベストを尽くし続けてきたという自負はあります。ただ、後から振り返ればもっとこうすればよかったということはたくさんあります。でも、その時々のベストを尽くしてきたのは事実なので、仕事していたらあっという間だったというのが率直な感想ですね。 ―杉原― 2年間の事業の進み具合を振り返ると、ちょうど弊社が出資させていただいた頃は、本田圭佑さんのファンドからの資本調達活動を始めたばかりのフェーズでしたよね。そこから加速した感じはありますか? ―冨田― ありますね。あの頃はドコモショップさんとの取り組みも始まった時期で、売り上げもほとんどない状態でした。夢は語っているけれど、まだトラクションが全然ついてきていないという段階で、これはいけるのかなという感じでした。そんな段階で信じてコミットしていただいたことはとても嬉しかったです。 そこからドコモショップとの提携や有料サブスクの販売も始まり、徐々にトラクションが出てきました。出資いただいた時点では売り上げがほぼゼロだったところから、最初の1年はサービスを磨き続けること、ショップとの提携関係を構築することに注力していました。その1年間の下積みがあって、2025年の夏から秋ごろにぐっと売り上げが伸び、一気に10倍どころではない成長を遂げました。 3年間を振り返ると、準備期・資本調達期・加速期という流れがあって、2025年から2026年にかけてグッと実績が出てきたんじゃないかなと思います。 ◆ auの新料金プラン「U12バリュープラン」への組み込みという快挙 ―杉原― この間の最大のイベントといえば、主力サービス「コドマモ」がKDDI様のauスマートフォン向け2025年夏の新料金プラン「U12バリュープラン」に組み込まれたことではないでしょうか。 ―冨田― そうですね。もともとディ・ポップスさんの店舗での取り扱いは走っていたんですが、通信キャリアの料金プランに正式に組み込ませていただくのはこれが初めてのことで、本当に大きなイベントでした。 ―杉原― 創業からまだ2年半ほどの会社のサービスをauが料金プランに組み込むのは、かなり異例のことだと思います。世間にまだ普及していないブランドを大企業が採用するのはリスクもあると思いますが、どのような経緯でこの大きな提携が実現したのでしょうか? ―冨田― KDDIさんのほうで「子どもたちの安全を守るサービス」を探されていた中で、弊社のサービスを発見していただいたのがきっかけです。KDDIさんの社内でも、従来のフィルタリングにとどまらず、「スマホを禁止するのではなく、使わせながら守る」という本質的なアプローチが必要だというディスカッションがあったそうで、その中で弊社のサービスに目を留めていただいたとのことです。(KDDI記事:https://mugenlabo-magazine.kddi.com/list/adora/) ―杉原― KDDIさんが他のサービスも調査した上でAdora社を選んだ要因は何だと思いますか? ―冨田― 利用時間の管理サービスは他にもあるかもしれませんが、LINEをはじめとするSNSのチャットの見守りにしっかり力を入れているのは、今も市場で弊社だけだと思っています。日本で最も普及しているSNSのセキュリティ対策ができるというのは大きなポイントだったと思います。 また、愛知県警と連携していたり、国内のパートナーとの実績も積み上げてきていたことも評価されたのではないかと思います。もちろんKDDIさんとしても、ブランドイメージに関わる話ですから慎重に、本当に任せられるかをじっくり検討していただいた上での提携でした。 ―杉原― 単にサービスを紹介するだけでなく、開発も伴いますよね。 ―冨田― そうです。auのIDでログインできる連携機能なども実装しました。KDDIのユーザーさんがスムーズに加入できる仕組みを開発したというところです。 ◆ 他社には真似できない技術的優位性 ―杉原― コドマモにはAI技術やセキュリティ技術が深く組み込まれていますが、この技術力の高さが評価されたのでしょうか?特に優れていると考える技術的な優位性や、開発において特に工夫・苦労されたポイントを教えてください。 ―冨田― チャットを見守るというのはシンプルに聞こえますが、実際にそれを実現するためには、裏側でさまざまな技術が必要です。従来は分析が難しかったSNSのチャット内容を解析できるようにしたこと自体に大きなイノベーションがあります。 自然言語で危険かどうかを判定するモデルや、画像が不適切かどうかを判定するモデル、それを端末上で軽量に動かす仕組みなども開発しています。チャット自体を分析可能にするという、これまで誰もやってこなかったことを実現したというところが、大きな技術的優位性だと思っています。 それと同時に、使いやすいUI・UXへのこだわりも重要です。私自身も開発チームの中でコミットして、みんなの努力で磨いてきました。どんなに優れた技術でも使いやすくなければ社会実装されないと思っているので、わかりやすく使いやすいアプリにすることを常に意識してきました。 ―杉原― LINEなどのSNSのやりとりを読み取り、分析して危険なチャットを検知するこの仕組みは、他のスタートアップがすぐに作れるものではないという自信がありますか? ―冨田― はい。今ではAIが既存のアプリをさっと作れるようになっていますが、世の中にすでにあるものを作るのとは違います。まだ誰も作っていないものを実現するのはAIだけに任せても難しい。そこに我々の技術チームの強みがあると自負しています。 また、ユーザーインタビューやユーザーデータの分析を細かく積み重ねてきたことで、継続率(リテンションレート)も毎月上がり続けています。 ―杉原― 最近は安定し始めましたね。 ―冨田― 一般的なCtoCのサービスはリテンションレートがどんどん下がっていくことが多いのですが、弊社の場合は6か月ほどでしっかり下げ止まっています。適切なユーザーに刺さっているという検証ができているという意味では、プロダクトマーケットフィットに近い状態に来ているかなと思っています。技術力だけでなく、UXや総合的なブランディングも含めて、親御さんにとって使えるアプリができているということだと思います。 ―杉原― 難しい技術を極めるだけでなく、ユーザー目線で使えるものをという意識が、冨田社長の総合プロデューサーとしての役割なんですね。 ☆インタビューアー 株式会社ディ・ポップスグループ アドバイザー 杉原 眼太 【Adora株式会社】 会社名:Adora株式会社 代表者:代表取締役 冨田 直人 設 立:2023年7月 サービスサイト:https://www.kodomamo.com/about-us Part 2では、 ・「コドマモ」加入後の状況と反響 ・3大キャリア全てとの協業へ拡大 ・「コドマモ for School」— 自治体・学校向けの取り組み などについてお伺いしています。 Part2もぜひご覧ください!
  • INTERVIEW
2026.07.17
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