
ディ・ポップスグループでは、ベンチャーエコシステムを、「共通のアイデンティティと理念の元に集まり、革新性の高い事業モデルにより、社会課題解決に挑戦し続ける企業群の集合体を支える、成長と永続のためのプラットフォームのこと」と捉え、その理想の形の実現に向けて日々挑戦と努力を続けています。
※詳しくはこちらをお読みください。「ベンチャーエコシステムとは?」
その活動の一貫として、年間で産み出された利益を元手に、ベンチャー企業への支援、すなわちCVC投資活動を行っています。以下、その活動についてご説明致します。
1. 投資基準
多くの事業会社がCVC投資活動を行っていますが、一般的にはその利益への貢献や投資先の成功確率は低いものです。ただ、当グループとしては、単なる利益追求のための投資ではなく、エコシステムの仲間作りである事と、20社以上の事業会社から構成されるグループ(投資会社を含めると50社以上のグループ)と共に成長する事を重視して基本方針を立て、それに基づいた活動をしています。
(1)事業領域
①「リアルビジネス x テクノロジー x グループシナジー」そして何よりもその土台となる「x ヒト」これらの要素が複数あることを大切にしています。
グループの祖業が、携帯ショップ事業やそこから派生した人材ビジネス、そしてさらにソリューション事業、テクノロジー事業と発展してきたため、当グループでは祖業であるリアル、つまり実店舗や土地に関わり形ある物を扱うというような経済活動に、他社にはない強みを持っています。AIがどれだけ普及しても、最後のチューニング部分は人が必要です。むしろ未来は人間力がより重要になってくるでしょう。AIはあくまでも人の能力を最大限に活かすツールであると考え、人を活かす取り組みを応援したいと考えています。そして最後に、それらのベースにはテクノロジーを活用していることを重視しています。
これら全てが揃う必要はありませんが、複数ある、もしくはこのいずれかに強烈な強みがあるかどうかを、まず最初に確認しております。
②ICT・DX領域に注力していることが望ましい
必須条件ではありませんが、グループ各社とのシナジーの産み出し易さを考慮すると、情報通信業に関連する事業、DX領域に取り組んでいる企業であれば、知見の共有やグループ内での協業、そして、タッグを組んで営業活動をするといったシナジーが期待できます。
③取り組むべき社会課題であるか、また市場成長性の高さ
当グループは、”企業は社会の公器である”と考え、ただ儲かりさえすればいい、という考え方でビジネスを行っていません。それが本当に取り組むべき社会課題なのかどうかは重要な検討項目になります。また、その市場が成長しているかどうか、その成長領域の中で対象企業の競争優位性が明確にあるか、は当然のこととして検討の対象となります。
(2)理想とする創業者像
エコシステムの成長のためには、多様性はもちろん重要ですが、多様性を尊重しつつも、外してはいけない「人物像」というものがあります。D-POPS GROUPでは、投資対象企業の創業者と経営陣の方々が、次のような人物像であるかどうかを、仲間に入って頂く上で、重要な判断材料としています。
①社会貢献意識、社会を変革する志の高い起業家
②何事にも挑戦する、アントレプレナー精神がある
③誠実、謙虚、感謝、正直、倹約、粘り強さ、という姿勢
(3)ステージとモデル
一般的なVCファンドが明確に規定する、資金調達のステージや事業モデルには強い拘りはありません。シードからシリーズA、B、そしてレイターまで、幅広く支援しています。また、B2CかB2Bかについても、グループ内にはいずれのモデルの企業もあり、またアドバイザー陣も様々な経験を積んできているので、希望に応じて伴走することが可能です。
ただ一つモデルに関して拘りがあるとすれば、ストック型の収益モデルであり、尚且つプラットフォーム型のビジネスモデルであるかどうかはチェックさせて頂いています。グループの、人を大切にする、顧客との長期的な関係作りを重視する文化、そしてエコシステム全体の安定成長のためには、積み上げ式 且つ プラットフォーム型の事業モデルであることが望ましいと考えているからです。
2. 2024年度の投資実績
2024年以前からもディ・ポップスグループではCVC投資活動を行ってきましたが、特に2024年度からは、投資委員会を設け、この投資方針に準ずる形で活動を進めています。すなわち、全ての候補企業につき、投資委員会で審議をし、全員一致した場合のみ代表取締役に申請をし、適切なデューデリジェンスを実施し、全て合格となった場合のみ、出資契約を締結する、というプロセスを踏みました。その結果、2024年度は以下の8社のベンチャー企業に出資を実施しました。(2024年3月~2025年2月末)
①(株)フラクトライト
https://fluctlight.ai/
「人々の豊かな暮らしを実現するために、AIをつかった便利なサービスを開発し、日本の人材不足を解決します」を社是とし、生成AI技術を用いた新サービスの開発に取り組んでいます。
②The Salons Japan(株)(※資本業務提携)
https://www.thesalons.co/
「美容師に、真の独立を」を社是とし、完全個室美容モール『THE SALONS』を展開・運営する、正にリアルなビジネスであり、また専門スキルを持つ人を応援する企業です。
③Adora(株)
https://www.kodomamo.com/
AIを活用したペアレンタルコントロールアプリ「コドマモ」の開発及び運営を行うベンチャー企業で、子供を守る、AIを駆使している、という点で投資方針に合致しました。
④クロスロケーションズ(株)
https://www.x-locations.com/
「多種多様な位置情報や空間情報を意味のあるかたちで結合・解析・可視化し、誰でも活用できるようにすること」を掲げ、既に多くの顧客を抱え、投資基準にも合致しました。
⑤(株)Lezily
https://corp.lezily.com/
「脱”気合いと根性”を目指した日本初のメンタル版パーソナルトレーニング」により、世の中からメンタル不調者を無くす事を目指しています。人を大切にする想いに共感しました。
⑥(株)BLUEISH
https://www.blueish.co.jp/
「AIで未来を創造し、ビジネスの可能性を無限に広げる」を理念に掲げ、業務プロセスの効率化を支援します。経営陣の人柄とAIに関する知見の深さに惹かれ出資を決めました。
⑦(株)Payke
https://payke.co.jp/
訪日外国人向けショッピングサポートアプリ「Payke」の開発・運営を行う企業。そのアプリは最も訪日外国人に使われているアプリの一つで正にリアルと人を象徴する事業です。
⑧(株)ワークポート
https://www.workport.co.jp/
「限りなく誠実に、極めて合理的に。人と企業をありたい未来へつなぐ。」をパーパスに掲げる人材紹介・育成の企業です。”働く人の頼れる港”作りを応援します。
これまでの投資ポートフォリオ企業はこちらをご覧ください。
https://d-pops-group.co.jp/group/
https://d-pops-group.co.jp/press-release/
3. 出資後の伴走活動
当グループのCVC活動においては、特に出資先への伴走、すなわち事業運営のサポートを大事にしています。ほんの一端ですが、そのような伴走活動の一部をご紹介します。
(1)グループ会社での試験的導入
Lezily社、クロスロケーションズ社、BLUEISH社のサービス・商品をグループ会社の一部でテスト利用させていただき、その使用感のフィードバックをしたり、営業開拓先のヒントを得たりして、協業の準備をしました。
(2)グループ会社との協業
Adora社とはディ・ポップスが運営するTOP1ショップ全店で契約取次をする他、グループのアドバンサーの支援により、全国のキャリアショップや量販店スマホショップでの取り扱いの交渉をしています。また、BLUEISH社とは、グループのA社とB社とで新ソリューションを開発する取り組みも行っています。
(3)新規顧客と協業先の開拓
ほぼ全ての投資先に関して、その新規顧客候補となる企業や、代理店候補となる大手企業をご紹介してきました。アドバイザー陣の幅広い人脈と、エコシステム内で同じ社会課題に取り組む企業があるおかげで、比較的スムーズにお繋ぎ活動が進んでいます。
(4)その他経営相談
一見するとシナジーが無さそうに見えるThe Salons Japan社ですが、その店舗(美容モール)の開拓とサブリースモデルは、正に不動産業です。そしてディ・ポップスが行ってきた携帯ショップ網の拡大も同じく不動産業とも言えます。その経営者同士の定期的な壁打ちがブランド力を高める店舗開発に活かされています。
このようにして、ベンチャー企業にはやや足りない、人的リソース、顧客基盤、組織力、人脈、経験といったものを注ぐことで、新たにエコシステムの仲間入りした企業の支援に心血を注いでいます。ディ・ポップスグループのCVC投資活動では、資金支援だけでなく、むしろそれ以上に、この伴走活動を重視しています。
4. 未来構想
「ベンチャーエコシステムとは?」のコラム記事で記載したように、ディ・ポップスグループでは、エコシステム内でのコラボレーションや、学び合いと助け合いをとても大事にしています。その具現化として、最近では次のような活動も始めました。
(1)事業紹介&懇親会イベント
新たに出資したスタートアップの創業者の方に登壇いただき、その事業説明と質疑応答のイベント、それに続く夜の懇親会、というパッケージを始めました。当グループの各社のリーダー達は、アントレプレナー精神に溢れる人ばかりなので、躍進中のベンチャーのモデル、凄まじい苦境を乗り越えた逸話、個性豊かな起業家達の話は大いに興味を持ちます。彼らの話から刺激を受け、また、良い質問により新しいアイデアの種をお互いに見つける、良いきっかけとなりました。そして夜は居酒屋に移り、参加者皆で囲んで更に質問責めとなり(笑)、二度盛り上がりました。
これまでにBLUEISH社の為藤社長とPayke社の古田社長にご登壇いただきましたが、できればこのような勉強会を毎月一回程度開催していき、数多くのエコシステム内の企業に登壇して頂き、様々な軸で勉強会を開いていきたいと考えています。
また、エコシステム全体が成長し永続するための施策として、出資比率に関わらず、将来的には以下のような活動も加えていきたいと考えます。
(2)交流
CxOやエンジニア、マーケターなど、異なる企業の同じ立場や職種のメンバー同士で人材の交流や情報交換を行い、刺激し合う。エコシステム内での短期留学や出向、そして人材の転籍なども可能な仕組み作りをしていきたいと考えます。
(3)互助
経理部門や営業部門など、ノウハウの伝授と吸収目的、また、新チャネルや新システムの立ち上げ期など、一時的に企業Aで人員が不足する時に、その時期に人員に余裕がある企業Bから人材を送り、レスキューをすることもあります。企業Bが同じ状況になった時には、企業Cがヘルプ要員を送り込む、”お互い様”な関係が、エコシステム内では成り立ちます。
(4)OB・OG
いずれグループ内には、上場や前向きな事業譲渡によりexitに成功する経営者も現われるでしょう。中にはその会社を卒業するメンバーもいます。しかし、企業理念や誠実・謙虚・感謝といった人としての理念が一致していればこそ、卒業してもOB・OGは共通の仲間です。先ほどの勉強会に講師として登壇してもらったり、成績が振るわない企業の再建に一時的な代打経営者として取り組んでもらうなどができます。
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以上、(株)ディ・ポップスグループが取り組むベンチャーエコシステムを実現する活動の一環として、CVC投資活動のその方針と2024年度の実績について、簡単にご紹介させていただきました。
これからもご支援、応援の程よろしくお願いします。
D-POPS GROUP アドバイザー 杉原眼太