
「エンジニアが足りない」「1社では大手案件に手が届かない」——IT業界で深刻化する人材不足と案件の大規模化。この課題に対し、ディ・ポップスグループに参画するIT企業3社が、互いの強みを活かした開発アライアンス「ワンテックワールド」を2024年5月に結成しました。
参画企業は、システム開発・AIソリューションを強みとし、AIリーディングカンパニーを標榜しシステム開発を強みとする株式会社テックビーンズ、システム開発・インフラ・モバイルアプリ・コンサルティングに強みを持ち、本アライアンスの発起人でもある株式会社アットマーク・ソリューション、そしてWebサービス開発・デザイン・クリエイティブに強みを持つ株式会社アイデアランプの3社です。
本記事では、この3社がいかにしてグループシナジーを発揮し、1社では叶えられなかった大手企業へのアプローチを実現しているのかをまとめます。
1. 中小IT企業の「壁」——1社では届かない領域がある
①人材不足という慢性的な課題
IT業界では、慢性的なエンジニア不足が続いています。中小規模のIT企業にとって、大型案件の引き合いがあっても、1社単独ではリソースが足りず断らざるを得ないケースは珍しくありません。大手企業の案件は必要人員数が多く、参入障壁が高いのが現実です。
②「何でもできる」は難しい
案件規模が大きくなるほど、求められるスキルセットも多様化します。PM、デザイン、フロントエンド、バックエンド、インフラ——これらすべてを1社で高いレベルで揃えることは容易ではありません。各社に得意分野があるものの、それだけでは対応しきれない領域が必ず出てきます。
③社内だけでは育てきれない
若手エンジニアを成長させたくても、社内だけでは経験できる案件の幅に限界があります。他社のベテランエンジニアから学ぶ機会も少なく、成長の場を社内だけで用意することの限界を感じている企業は多いのではないでしょうか。
2. 「3本の矢」という発想——束になれば折れない
①1社の限界を3社で超える
上記の課題を解決するため、私たちは考えました。それは、グループ内のIT企業3社がアライアンスを組むことで、1社では対応できない大型案件にも柔軟に対応できるのではないかというものです。3本の矢のように、1社では折れてしまう案件も、3社が束になれば対応できる——発起人であるアットマーク・ソリューションの呼びかけにより、この構想が動き出しました。
②必要な時に、必要な人材を
アライアンスを組むことで、各社のエンジニアを横断的にアサインでき、1社では受けられない規模の案件にも対応可能になります。IT人材不足が叫ばれる中、必要な時に一気に動員できることは大きな強みです。
③得意分野を持ち寄る
PM・ディレクション、デザイン・クリエイティブ、フロントエンド、バックエンド、AI活用など、各社の専門性を掛け合わせることで総合力を発揮できます。1社では揃えきれないスキルセットも、3社が協力すればカバーできる領域が大きく広がります。
④会社を超えて、人が育つ
他社のベテランと若手が同じプロジェクトで協働することで、社内だけでは得られない成長機会を創出できます。異なる会社の文化や技術に触れることは、エンジニアにとって貴重な経験となります。

3. 3社が揃った——ワンテックワールドの誕生
①なぜ「アライアンス」という形を選んだのか
3社が単なる外注関係ではなく、アライアンスという形を選んだのには理由があります。それは、案件ごとに都度パートナーを探すのではなく、日常的に連携できる関係性を築くことで、スピードと品質の両立を実現したかったからです。お互いの強み・弱みを理解し、信頼関係のある仲間と組むことで、クライアントに対してより高い価値を提供できる——そう考え、アライアンスという形を選びました。
②横並びだからこそ動きやすい
3社横並びで案件を受けることで、商流を複雑にせずコストを抑えつつ、柔軟なチーム編成が可能になっています。一次受け会社が窓口となり、プロジェクト全体を管理する体制を整えました。
③「話しやすさ」が連携を加速させる
Slack等のツールを活用し、3社間のコミュニケーションを円滑化しています。定例MTGによる情報共有と課題解決の仕組みづくりにも注力しており、これが連携スピード向上の鍵となっています。
④共通言語としての開発ルール
アライアンスとしての開発ルール策定、責任分界点の明確化、プロジェクト管理の標準化を進めています。異なる会社が協働する上で、共通のルールを持つことは品質担保に欠かせません。
⑤AIで全員をアップデート
テックビーンズを中心としたAI関連の勉強会を実施し、3社の社員がAI活用スキルを習得できる環境づくりに取り組んでいます。AIリーディングカンパニーとして、ブログやインタビュー掲載も積極的に行い、アライアンス全体のAI活用を後押ししています。
4. 発足までの道のり——偶然ではなく、必然だった
〜2020年:協業の土壌は、すでにあった
ワンテックワールドの発足に至るまでには、グループ内での協業の歴史がありました。2020年頃から、ディ・ポップスのCRMシステム「DAMO」開発に、テックビーンズとアットマーク・ソリューションが参画。この頃からグループ会社間での協業実績が蓄積され、連携の土壌が育まれていきました。
2023年12月:クリエイティブの力が加わった
デザイン・クリエイティブに強みを持つアイデアランプがディ・ポップスグループにジョインしました。これにより、グループ内IT企業が3社体制となり、開発からデザインまでをカバーできる布陣が整いました。
2024年5月:そして、アライアンスが動き出す
アットマーク・ソリューションの呼びかけにより、3社による開発アライアンス「ワンテックワールド」を正式に結成しました。同時期にアイデアランプがディ・ポップスグループのHP刷新を担当するなど、早速グループシナジーを発揮した取り組みが始まりました。
2024年〜2025年:1年半で20件以上の連携案件へ
アライアンス発足から約1年半で、グループ内連携案件が20件程度にまで達しました。コミュニケーション基盤の整備により、これまでにないスピードでの連携が実現しています。正直、今までにはなかったスピード感を感じております。
2025年11月:外への一歩——DXPO出展
ワンテックワールドとして展示会に共同出展しました。AIを活用したプロダクトや多数の人材を持つアライアンスとしての強み等をアピールし、対外的な認知向上に努めています。

5. これからの挑戦——AI時代を、3社で駆け抜ける
①開発現場の「転機」に立ち向かう
アライアンス発足から20件以上のグループ内連携案件を推進してきました。コミュニケーションを取りやすくする工夫を重ねた結果、今までにない連携スピードが生まれていると実感しています。1社では難しかった規模・領域の案件への対応も可能になりました。
②AIで開発を加速させる
開発現場は今、大きな転機を迎えています。AIの活用による開発スピードの促進が図られる中、テックビーンズはAIリーディングカンパニーとしてAI関連のブログ・インタビュー掲載や、アライアンス内での勉強会を実施しています。3社の社員のAI活用を後押しし、アライアンス全体の開発力強化につなげています。
③クリエイティブで「選ばれる存在」へ
アイデアランプは3社の中でもデザインやクリエイティブの部分が強く、外部へアプローチする際に強力な存在となっています。発足から1年半が経ち、少し遅めではありますが、2026年はインバウンド戦略を強化していきたいと考えています。3社の強みを活かした市場獲得を目指します。
④大手案件への扉を開く
発起人であるアットマーク・ソリューションの力によって集められた3社。これは3本の矢のように、1社では叶えられない大手企業へのアプローチを現実化したものです。IT人材不足の中、必要な時に一気に動員できるというのは大きな強みとなっています。
⑤グループ外パートナーとの連携拡大
今後は、ディ・ポップスグループ外のパートナー企業にも参画いただくことを予定しています。ただし、誰でも参加できるわけではありません。ワンテックワールドが定める一定の条件を満たしたパートナーのみに参画いただく形を取ります。私たちが目指すのは、単に大きなIT組織ではなく、強いIT人材が集まり、何より信頼できるIT会社の組織です。規模の拡大と品質の担保を両立させながら、アライアンスの価値を高めていきます。
6. まとめ|「束になる」という選択肢
本記事では、ディ・ポップスグループのIT企業3社が結成した開発アライアンス「ワンテックワールド」の取り組みについてまとめました。
ITが加速する時代において、1社だけでは対応しきれない課題が増えています。3本の矢のように、グループ内のシナジーを活かし、リソース・専門性・人材育成を相互に補完し合う——ワンテックワールドは、これからのIT企業に求められる新しい協業モデルの一つの形です。
ディ・ポップスグループは、引き続きベンチャーエコシステムの可能性を活用し、IT人材の共有と育成を通じて、社会に貢献する新たな価値を創出し続けます。
株式会社テックビーンズ 前川和浩
