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クロスセルとは?売上総利益を劇的に改善する具体策と成功事例を解説

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2026.02.12

今回は、企業の基本的な収益力を示す売上総利益に着目し、売上総利益の上げ方 その①として「クロスセル」について解説して参ります。

「クロスセル」とは、顧客が購入した商品やサービスに対し、関連する商品やサービスを追加で提案し顧客単価を上げ、売上を上げる手法です。牛丼屋で卵とサラダを、ハンバーガーショップでポテトとドリンクを勧められたりすることが最も一般的なクロスセルの事例と言えます。今回は小売業の事例を元に「クロスセル」を解説していきたいと思います。

1.経費も時間もかからずに絶大な効果が得られる手法

前回までに「在庫回転率」「一人当たり売上高」「坪効率」を取り上げ、会社経営をしていく上で利益を上げる手法として企業の収益力を示す売上総利益ではなく、あえてCFや経費(人件費、家賃)を取り上げました。同じような売上規模、同じような商品を扱う競争環境の中で同業他社と大きな差別化を図るためには売上総利益よりCFや経費に目を向けることが肝要であるからで、前回までに具体的事例をご説明いたしました。今回はCFや経費の重要性を理解いただいた上で、会社経営の本丸である売上総利益に着目して参ります。

売上総利益は非常に単純な指標で、売上高から原価を差し引いた利益のことで、粗利と言ったりもします。商品やサービスそのものが、独自性があり差別化されていれば、高い売上総利益を上げることができます。今回は独自性があり差別化された商品やサービスの作り方で売上総利益を上げる方法ではなく、同じような商品を扱う状況の中で、如何に売上総利益を上げるか?ということを取り上げて参ります。

今回取り上げる「クロスセル」は経費も時間もかからずに売上総利益に対し絶大な効果が得られる手法です。ではなぜ「クロスセル」が重要か、以下順を追ってご説明いたします。

2.クロスセルとは

まず、クロスセルとは、顧客が購入した商品やサービスに対し、関連する商品やサービスを追加で提案したり品揃えをしたりすることで、顧客単価を上げたりリピート購入を増やすことで売上を上げる手法です。

例えば
・スーツを購入すれば、スーツに合ったネクタイを勧められる
・スマホを買えば、フィルム、ACアダプタ、保険、ウイルスソフトを勧められる
・カメラを買えば、レンズ、フィルター、メモリーカードを勧められる
・車を買えば、タイヤ、シート、ドラレコ、カーナビ、保険を勧められる
といった様なことが代表的で、このほかにもクロスセルの事例は枚挙にいとまがありません。

上記の様に直接的に勧められなくても、パソコンやカメラの周辺機器の様に沢山の品揃えをすることで後から購入してもらえる状況を作るということも、広義の意味ではクロスセルと言えます。クロスセルは、リアル店であれば店員のトークで、WEBであれば商品リコメンドとして、商品やサービスを販売する業態や業種であればどの企業でも大なり小なり実践していると思います。

クロスセルは一見非常に地味ですが、売上総利益に対し絶大な効果を及ぼします。次項ではどのくらいの効果があるかを見ていきたいと思います。

3.なぜクロスセルが重要か? クロスセルの及ぼす効果とは

いくつかの事例をもとにクロスセルの及ぼす効果を解説していきたいと思います。最初は、ある会社のある時期でのパソコンの利益をモデルケースに解説します。(モデルケースは架空の事例としていますが、実際の事例がベースとなっております。)

モデルケース

PC本体 売上総利益28億円 利益率20% 売上140億円
PC周辺/アクセサリー/関連商品 売上総利益 44億 利益率40% 売上110億円
(PC周辺/アクセサリー/関連商品とは、プリンター/ルーター/記録装置等の周辺機器、マウス/キーボート/バック等のアクセサリー、インク/紙等の消耗品、ブロードバンドの加入手数料、関連ソフト/関連書籍等を全て合算したものです。)

この事例で見ていただきたいポイントは、利益額、売上高です。
顧客が最初に目的として購入するパソコンの利益は28億円。パソコンを購入と同時、もしくは購入した後に必要となるクロスセル対象商品であるPC関連商品合計の利益は44億円。実に16億円、比率にして157%も利益が違います。売上はPC本体が140億円、PC関連合計は110億円で、クロスセル対象商品であるPC関連商品合計の方が30億円も少ないにも関わらずです。

PCだけではありませんが、顧客が最初に目的として購入する商品の多くは、商品での競合や店舗での競合があり、それほど儲かりません。PC関連商品合計の様なクロスセル対象商品はすべてではありませんが、利益率の高い商品が多く、クロスセル対象商品を顧客が最初に目的として購入する商品の販売時やその後のリピートで一生懸命売ることが利益額的にも、効率を見た利益率の面でも、売上総利益を上げることに対し絶大な効果を発揮していることがお分かりいただけるかと思います。

上記事例はPCの事例だったので、次はスマホの事例を見てみましょう。

以下の事例はある会社のスマホ販売における1ヶ月の利益内訳です。(モデルケースは架空の事例としていますが、実際の事例がベースとなっております。)

モデルケース

スマホ販売総利益 9,000万円
スマホ本体の販売による利益 5,000万円
スマホ関連商品利益 4,000万円
(スマホ本体の販売による利益とは、スマホ本体を販売することにより得られる利益の合計、スマホ関連商品利益とはスマホ本体のクロスセルによりスマホ本体以外から得られる利益の合計です。)

スマホ本体は、スマホの新規加入がPCに比べ利益があるので、顧客が目的として購入するスマホ本体の利益よりクロスセル対象商品であるスマホ関連商品の利益の方が多くなる、というところまでにはなっていませんが、全体の比率の45%が、スマホ関連商品の利益で占めています。顧客が目的として購入する商品の販売時に、クロスセル対象商品を一生懸命売ることで、売上総利益を上げることに対し、絶大な効果を発揮していることがこの事例でもお分かりいただけるかと思います。

上記2つの例からも分かる様に、クロスセルは売上総利益に対し絶大な効果を発揮するわけですが、クロスセルの最大のメリットは、追加の経費がほぼ掛からず、売上総利益の増加分=営業利益の増加につながるということです。

例えば店舗なら、売上を上げるために出店をしますが、家賃や人件費等の経費が追加でかかります。法人営業なら売上を上げるために営業マンを増強したり、広告費を追加したり、営業所を追加したりしますが、この分の経費が追加でかかります。店舗を増やしたり、営業マンを増強したり、広告費を増やしたりすることで、当然売上も売上総利益もいくらかは上がるでしょうが、この経費をかけた分を回収できる売上や売上総利益が上がる保証はありません。経費分が回収できず、営業利益ベースでは赤字だったという事例はたくさんあるのではないかと思います。

これがクロスセルだと追加の経費がほぼ掛かりません。クロスセルにより売上が上がり、売上総利益が上がると、追加の経費がほぼ無いので、上がった売上総利益がそのまま営業利益になるという、利益貢献度が抜群な手法であるわけです。

今回のモデルケースだけでなく、商品やサービスを販売するビジネスであれば、飲食でもアパレルでも、クロスセルを活用することで、顧客が目的として購入する商品やサービスで出す利益と同等か、それ以上の利益を上げることも可能で、全体の売上総利益の10%程度を底上げする程度なら、ハードルの低い取り組みで実現可能です。

さらに前述したように、追加の経費がほぼないので、売上総利益の底上げ分がそのまま営業利益になります。売上総利益や営業利益を上げたいと思うなら、出店や営業マンの増強、広告費の増加で新しい顧客を探すのではなく、最初にクロスセルで顧客単価を上げることをおススメいたします。クロスセルでの売上増加が営業利益まで直結して増加するためです。

同じような商品を扱う競合状況の中では、競合他社を大きく上回るクロスセルを実現すれば、売上総利益だけでなく、営業利益の面でも競合他社に大きなアドバンテージを持つことになります。クロスセルが経営に及ぼす効果が如何に大きいかおわかりいただけたのではないかと思います。

4.クロスセルで売上を上げるポイント

クロスセルの重要性はご認識いただけたかと思いますので、クロスセルで売上を上げるポイントをいくつか紹介させていただきます。

クロスセルで売上を上げるポイント①

クロスセルが成り立ちやすい商品を扱うということと、関連商品の品揃えをしっかりすることです。

分かり易い例でいえば、冷蔵庫や洗濯機は延長保証くらいしかクロスセルが成り立ちませんが、例に出したPCやスマホ、カメラ、車、スーツあたりはクロスセルの宝庫といえます。スーツを例にとると、ワイヤシャツ、ネクタイはもちろんのこと、スーツに合うカバンやベルト、靴等を品揃えすればクロスセルが成り立ちますし、ネクタイピンやシャツずれの防止グッズあたりもクロスセルにつながります。上記は例ですが、クロスセルが成り立つ商品を扱うことと、その関連商品の品揃えをしっかり行うことで、クロスセルによる売上は上がります。

クロスセルで売上を上げるポイント②

クロスセルの重要性の教育が従業員になされており、常に会社と従業員がクロスセルを高めるために商品知識や接客トーク、接客技術を磨き、接客や展示、仕入れ等に対し創意工夫をし続ける血の通った経営をし続けることです。

なぜクロスセルの提案商品が必要なのか?を顧客の目線で説明できるトークを身に着け、提案商品が複数あれば提案の順番とどのタイミングで提案するかを考え、提案商品をどこに置くと効果的かを考え展示をしていく。このような創意工夫ができる会社とできない会社では、圧倒的な差が生まれてきます。

また、クロスセルで提案する商品は利益があればなんでもいいというわけではありません。関連性があり顧客メリットが無ければ、単なる無理やり販売になってしまい、購入体験における顧客満足を落とす結果になり、経営としてマイナスの結果になってしまいます。どの商品のどの部分に関連性があり顧客にメリットがあるのかを顧客の目線でストーリー化する必要があります。このようなことの実現にも、深い商品知識と創意工夫が不可欠であることは言うまでもありません。

クロスセルで売上を上げるポイント③

テクノロジーの活用です。

WEBで買い物をすれば過去の購買状況からレコメンドが出ますし、通信業界では接客中にシステムでレコメンド商品が上がってくるといった取り組みが始まっています。当然、誰がどのくらいクロスセルができているのかを可視化することも、テクノロジーの領域です。テクノロジーの例はこれだけではありませんが、テクノロジーを使いこなすことはクロスセルによる売上アップに欠かせない要素の一つであることは明確です。

以上、クロスセルで売上を上げるための代表的な例を3つほど紹介いたしました。
もちろんクロスセルで売上を上げるためのポイントは他にもございますが、最大のポイントは、クロスセルの重要性の教育がなされたヒトがテクノロジーを使いこなすことです。結果的には、クロスセルで売上を上げ経営効率を飛躍的に向上させることは、ヒト×テクノロジーの掛け算の上に成り立つということになると思います。

5.まとめ

今回は、クロスセルのお話をさせていただきました。クロスセルは経費も時間もかからずに売上総利益だけでなく、営業利益に対しても絶大な効果が得られる手法で、このクロスセルにより、顧客が目的として購入する商品やサービスの売上を最大化することこそが、売上総利益と営業利益の最大化につながり、競合他社との大きなアドバンテージポイントになることをご説明いたしました。

今回のクロスセルは、前回までにお話しした「在庫回転率」、「一人当たり売上高」、「坪効率」として取り上げた、在庫、人件費、家賃のCFや経費の後にあえて取り上げております。1番最初の「在庫回転率」から一連の流れとしてご一読いただきますと、経営のポイントがより見えてくると思います。まだお読みでない方は、是非ご一読いただけますと幸いです。

今回のクロスセルを通してディ・ポップスグループとしてお伝えしたいことは、前回までと同様ビジネスは、ヒトにより成り立っているということです。商品を購入いただくお客様もヒトであり、商品を販売する販売員も、テクノロジーを使うのも、すべてはヒトであります。AIをはじめとするテクノロジーを使いこなさなければビジネス上で競争に勝ち生き残ることはできないと思いますが、テクノロジーだけでは生き残ることはできないと思います。テクノロジーが良いから、経営戦略が良いから、ビジネスが成功するのではなく、ヒト×テクノロジー×経営戦略の掛け算が大切であるとディ・ポップスグループは考えます。

この考えの元、ディ・ポップスグループはヒトが輝くために、また社会課題解決のために、ベンチャー企業に対して、出資を通じた支援と、効率という数字だけではない価値を通じた、グループエコシステムの実現を目指しています。

これからもご支援、応援の程、よろしくお願いします。

D-POPS GROUP 常務執行役員 渡辺哲也

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2026.07.21
【百名山から学ぶベンチャー経営論】 第一部「頂を決め、準備する」
ディ・ポップスグループは、「社会に変革をもたらす多数の成長ベンチャー(ユニコーン企業)を輩出する」というミッションを掲げ、「誠実・謙虚・感謝の心で、共に学び、共に成長する」をバリューとしています。 アドバイザーとして従事する杉原は、昨年の夏に立山へ登ったことをきっかけに、「ユニコーンTシャツを着て日本百名山100座を踏破する」という目標を掲げ、仕事の合間を縫って全国の山々を登り続けています。 本連載では、「共に学び、共に成長する」というバリューを体現する取り組みとして、その挑戦の中で経験した成功や失敗、計画や準備、判断や撤退の大切さなどを、ベンチャー経営や組織運営になぞらえながら考察していきます。 登山も経営も、目指す頂を定め、計画(戦略)と準備を整え、一歩ずつ前進していく営みです。この連載が、皆様自身の仕事や挑戦を考えるきっかけになれば幸いです。 今回は第一部として、ベンチャー経営を登山に例えながら、ビジョンの重要性と、その実現に向けて必要な準備について考えてみたいと思います。 1. 登るべき頂(ビジョン)を決める ~ ビジョンなき挑戦は続かない ~ ダイエットのために何となくウォーキングを始める。観光で訪れた街で、旅先で小高い山に登って市内を展望する。健康や観光のためにはもちろんいい運動にはなります。しかし、それだけでは「挑戦」と呼ぶには少し物足りません。目指す頂や、一連の山を明確に設定した挑戦の方が、達成した時の喜びは大きく、学びも多く、経験としても深く残ります。 ベンチャー経営も似ているのではないでしょうか?何となく「社長をやりたい」「お金持ちになりたい」という動機だけでは、社会に価値を生む大きな事業を育てることは難しいでしょう。 事業を興すには、明確なビジョンと具体的な目標を描く必要があります。 経営者だけでなく、ビジネスパーソンや職人も同じ。将来こういうキャリアを歩みたい、◯◯のプロになりたい。そうした目標を明確に持つことで、人は必要な学びや経験を自ら取りに行くようになります。 私事ですが、一年前までは体脂肪燃焼のためくらいの気持ちで高尾山や大山などに登る、軽いハイカーでした。しかし、昨年の夏、初めて訪れた富山県で、その険しさを知らないまま立山の最高峰に登った時に、人生が変わりました。 薄い酸素でふらふらになりながら辿り着いた山頂で、360度に広がる山々を見た時、「もっと難しい山にも挑戦したい」という感情が一気に湧き上がりました。 そしてある日、「日本百名山」という書籍に出会い、一気に読み終えた頃には、私の中のベンチャー魂に再び火が付いていました。 「アラカンで日本百名山を完登する」 という、明確な目標を持つに至ったのです。 (立山の雄岳頂上からの眺めと目指すきっかけとなった日本百名山の本) 昨年8月のその日以来、コツコツ登り続けて、執筆現在で41座(山の数え方)に登頂しました。当時は全くの素人でしたので、低い山でもクタクタになっていましたが、徐々に体力が付いて、高い山、険しい山にも登れるようになりました。 今でもまだまだ体力にも登山技術にも課題はありますが、登頂を重ねるに連れ、登山への情熱は高まるばかりです。百名山という目標を持たなければ、私はここまで登れなかったと思います。 ベンチャー経営も同じ。創業時のビジョンが明確であるほど、必要な準備をする原動力になりますし、困難に立ち向かう力になります。 また、ビジョンは、ただ掲げるだけでは不十分です。「創業◯年までに売上◯◯億円」「◯年までに会員数◯百万人」といった、具体的で挑戦的、かつ現実的な目標に落とし込むことで、人も組織も初めて動き出します。 2. 目指す山に必要な体力と技術を備える 〜資本と差別化要素が肝となる〜 山に登り慣れていない素人が、最難関の奥穂高岳や剱岳、何日もかかる幌尻岳などにいきなり挑戦しても、登頂できないどころか命に関わる危険を招き、結果として周囲にも大きな負担をかけてしまいます。 目指す頂に立つには、相応の体力を備える必要があります。そして、岩場の歩き方、鎖場の登り方などの登山技術も必要です。それらを準備せず挑戦するのは、勇気や大胆さとして称賛されることではなく、未熟さや無謀さの表れです。 ビジネスパーソンにも体力や気力が必要です。しかしここでは起業という視点で例えたいと思います。事業会社、特に立ち上げ間もない会社にとっての体力とは、運転資金に例えられます。 小さな個人事業主ならば自己資金だけで起業できるでしょう。しかし、社会課題を解決する大きな事業やプラットフォーム事業を興すには、巨額の運転資金を集めなければなりません。優れた技術やサービスを持っていても、資金が尽きれば事業は継続できません。 高い山に挑むには強い体力が必要なように、大きな事業に挑むには大きな資金が必要となるのです。資本政策を計画し、必要なタイミングで必要な資金を確保すること。それは創業期の経営者にとって極めて重要な仕事です。 (阿蘇山の岩場・木曽駒ケ岳 宝剣岳の岩場・西日本最高峰 石鎚山の鎖場) 一方、登山技術は、経営者個人で言えば「経営能力」、企業全体で見れば「競争優位性」にあたります。 市場ニーズがあるとしても、他社が簡単に模倣できるような製品やサービスでは生き残れません。ましてや新しい価値を提供するサービスを立ち上げる(険しい山に登る)となれば、これまでにない、そして他社が容易に追随できないような特別な何かを持っていなければなりません。 「その特別な何か」は事業領域や製品カテゴリ毎、企業毎に異なりますが、創業期のベンチャーは、自社にしかない強みを見極め、磨き、守り続けること。それが、高い山に挑むための「技術」を身につけることに相当するのです。 3. 目指す山に必要十分な装備を備える 〜経営に必要十分なリソースを揃える〜 登山において重要なのは、目指す山に応じた装備を用意することです。冬山には冬山に、岩山には岩山に必要な装備がありますし、万が一に備えて救急セットや常備薬、防寒具、雨具、行動食、非常食…とたくさんあります。また山では水はとても貴重です。 ところが、装備は多ければ多い程良いというものでもありません。 何でもかんでも積んで何十キロにもなっては、それを背負う自分の体力が持ちません。目指す山のレベルに十分以上の装備を背負う必要はないのです。 (三連座登山に向けての装備品) ベンチャー経営にとっても経営リソースの確保は最重要課題の一つです。そして、経営リソースに大きく占めるのが人員です。また、モノ作りの事業であれば工場や製造機械などもそれにあたります。人材や設備だけでなく、制度や仕組みもまた、事業を支える重要なリソースです。 開発、営業、財務、法務、カスタマーサクセス、セキュリティ。事業が成長すればするほど、必要な機能は増えていきます。製造業であれば設備投資も必要になりますし、制度設計のために外部専門家の力を借りたくなる場面もあるでしょう。 ところが、欲しいだけ、どんどんと採用したり購入したり外注したら、運転資金が尽きてしまいます。それは、重すぎる装備を背負って体力を消耗する登山にも似ています。 回している事業の規模、目指す目標に”必要かつ十分な”リソースの確保、というバランス感覚が重要です。 創業間もないベンチャーに必要なのは、何でも抱え込むことではありません。同じ船に乗る信頼できる人材を集め、それぞれが得意分野を持つ少数精鋭のチームをつくることなのです。 ———————— 以上、【百名山から学ぶベンチャー経営】の第一部でした。 私自身、「日本百名山100座踏破」という目標に向かって、まだ道半ばです。 だからこそ、この連載では完成された成功談ではなく、挑戦の途中で感じた迷いや失敗、判断や学びを、できるだけ率直にお伝えしていきたいと思います。 また、日本百名山への挑戦を題材に、ベンチャー経営や組織運営に通じる考え方や判断のあり方について考察していきたいと思います。 次回は「計画は綿密に、実行は地道に」をテーマに、目標達成のための戦略と計画の必要性と、一方で日々の地道な仕事の重要性について考えてみたいと思います。 【百名山から学ぶベンチャー経営論】 第二部「計画は綿密に、実行は地道に」 D-POPS GROUP アドバイザー 杉原眼太 注:以前執筆した「登山と経営」はダイジェスト版で、本連載では、百名山挑戦の進捗に合わせてより詳しく書いていきます。また登頂した山々の写真も順次掲載していきます。
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2026.06.10
アップセルとは? ~売上総利益を劇的に改善する方法② アップセルとクロスセルの違い~
アップセルとは、顧客が購入しようとしている商品やサービスよりも、高機能だったり高品質だったりする高単価の商品を提案し顧客単価を上げ売上を上げる手法です。家電量販店などでより高性能のCPUを搭載したパソコンを勧めたりすることが最も一般的なアップセルの事例と言えます。 今回も小売業の事例を元に、企業の基本的な収益力を示す売上総利益に着目し、売上総利益の上げ方 その②として「アップセル」について解説してまいります。 1.経費も時間もかからずに絶大な効果が得られる手法 前回は「クロスセル」を取り上げ、会社経営の本丸である売上総利益に着目したわけですが、今回も売上総利益の上げ方 その②として「アップセル」を取り上げ、引き続き売上総利益に着目して参ります。 以下復習ですが、売上総利益は非常に単純な指標で、売上高から原価を差し引いた利益のことで粗利と言ったりもします。アップルや任天堂の様に商品やサービスそのものが、独自性があり差別化されていれば競争の非常に少ない世界で高い売上総利益を上げることができます。 今回も独自性があり差別化された商品やサービスの作り方で売上総利益を上げる方法ではなく、同じような商品を扱う競争環境の中で、如何に売上総利益を上げるか?ということを取り上げて参ります。今回取り上げるアップセルは、前回のクロスセル同様経費も時間もかからずに売上総利益に対し絶大な効果が得られる手法です。 ではなぜアップセルが重要か?クロスセルとの違いは何か?を以下順を追ってご説明いたします。 2.アップセルとは まず、アップセルとは、顧客が購入しようとしている商品やサービスに対し、高機能・高品質などの高単価の商品を提案し顧客単価を上げ売上を上げる手法です。 【例】 スーツを購入しようとすれば、 ブランド品や、良い生地を使った高単価のスーツを勧められる スマホを購入しようとすれば、 メモリの大きいモデルやカメラ機能の高い高単価のPROモデルを勧められる エアコンを購入しようとすれば、 省エネ性能の高いモデルやセンサー機能の付いた高単価モデルを勧められる 車を購入しようとすれば、 SUVやミニバンタイプ、ハイブリット車といった高単価車を勧められる といった様なことが代表的で、このほかにもアップセルの事例は枚挙にいとまがありません。上記の様に直接的に勧められなくても、例えば洗剤などの日用品の様に、大容量商品や2個セットの様に、通常品より1個単価を安くしてまとめて量や数を売ることもアップセルと言えます。 アップセルとなりえる商品やサービスは、リアル店であれWEB店であれメインの位置におかれ、メーカーとしては広告を行うメイン商品になり、店員のオススメやWEBのリコメンド商品となり、一般の普及モデルから高機能や高品質をうたい提案される商品やサービスになります。 商品やサービスを販売する業態や業種であれば、ほとんどの企業でアップセルとなりえる商品やサービスをもち、アップセルを実践していると思います。アップセルは成功させれば、売上総利益に対し絶大な効果を及ぼします。 次項ではなぜアップセルは効果があるのかを、クロスセルとの違いを含めて見ていきたいと思います。 3.なぜアップセルが重要か? 売上と売上総利益から見るアップセル そもそもアップセルは売上を上げ、売上総利益を上げることを目的とした手法の一つです。なぜアップセルが重要か?と考える際には、売上の構成要素と売上総利益の構成要素に着目する必要があります。 売上を構成する要素は2つあり、1つが数量、もう1つが単価です。以下の例を見てみましょう。 【例】 1台10万円のPCが100台売れると売上は1000万円 これを1台20万円のPCにアップセルできると100台売って売上は2000万円 これを1台20万円のPCに60台アップセルでき60台しか売れなくても売上は1200万円 売上を上げるには、顧客に商品を購入いただく必要があるわけですが、同じ数を販売してもアップセルにより単価が向上していれば売上は高くなります。アップセルの結果として販売数が低くなっても単価が向上しているため売上が高くなります(上記の例では単価が倍なので、販売数が元の単価の50%以上売ることができれば、売上が上がります。) 数量と単価が売上を構成する要素であり、この組み合わせが売上になっているということを理解すると効率的に売上を上げることが出来ます。 よくあることですが、販売数だけをみて販売数を上げようとすると、思いつく対策の1番はディスカウント、つまり安売りですが、10万円のPCを2割引きの8万で売り、20万円のPC100台の売上を稼ぐには250台を売らなければなりません。 さらに重要になるのが売上総利益を構成する要素で、売上から原価を引いたものが売上総利益なわけですが、上記の例を売上総利益にしたものを見てみましょう(以下は利益率を同じ30%として例にしています) 【例】 1台10万円で原価7万円のPCが100台売れると売上は1000万円、利益は300万円 1台20万円の原価14万円のPCが100台売れると売上は2000万円、利益は600万円 上記の10万円のPCを8万円で250台売れると売上は2000万円、利益は250万円 売上を上げるためにディスカウントをして販売をした結果、仮に売れて販売数が上がり売上が上がっても利益はディスカウントする前より減ってしまいます。売上から原価を引いたものが売上総利益の構成要素なわけで、この組み合わせが売上総利益になっているということを理解すると効率的に売上総利益を上げることが出来るわけです。 では、ディスカウントすると利益が下がるから違う方法で販売数を上げようとすると、ECなら広告費を追加したり、店舗なら出店をしたり、法人営業なら営業マンを増強したりすることが一般的な対策になると思いますが、この対策だと売上総利益は増えますが、経費が増えるのでその先の営業利益が減ってしまう可能性が非常に高くなります。 上記の例でおわかりいただけたと思いますが、結局機能や品質をしっかり顧客に伝えるアップセルをしっかりやることが、売上を上げ、売上総利益を上げる最も有効な手段の1つといえるわけです。 4.アップセルとクロスセルの違いとは ではアップセルで顧客にどんどん単価の高い商品を提案すればいいのか?そういうわけではありません。例えば軽自動車を買いに来た人にレクサスをお勧めしてもまず売れないでしょう。顧客の予算に合わせ的確なメリットを提示したアップセルで無ければ単なる無理やり販売になってしまい購入体験における顧客満足を落とす結果になり経営としてマイナスの結果になってしまいます。 高機能、高品質をお勧めするアップセルに限界がでた場合に、売上を上げる力を発揮するのが前回解説したクロスセルです。 クロスセルは、前回解説しており詳細は省きますが、顧客が購入した商品やサービスに対し、関連する商品やサービスを追加で提案することで、買い上げ点数を増やし顧客単価を上げることで売上を上げる手法です。 【前章の例を使い説明すると】 1台10万円のPCを100台売ると売上は1000万円、利益率が30%で利益が300万円 これを1台20万円のPCに60台アップセル、10万のPCが40台売れ合計100台で売上は1600万円、利益率が30%で利益が480万円 アップセルだけだとここで終了になりますが ここに、無線ルーター、記憶装置、マウス、セキュリティソフト等の周辺機器が一緒に売れ 合計単価が3万円で販売数の50%に添付、利益率50%とすると 50組×3万円=売上150万円、利益75万円となり PCの売上にプラスすると売上1750万円、利益が555万円になります 1台10万円のPCをただ100台売るだけと比べ、アップセルとクロスセルを組み合わせることで、売上が1.75倍、利益では1.85倍にすることができます。 前章で売上を構成する要素は単価と数量である旨解説いたしましたが、単価を上げることに効果があるのがアップセル、数量を上げることに効果があるのがクロスセルというわけです。 単価と数量の組み合わせが売上になっており、アップセルとクロスセルで単価と数量を最大化しかつ無理が無いように最適化できると、ただ販売するだけにくらべ飛躍的かつ効率的に売上を上げることが出来ます。さらにどちらの手法もディスカウントをして数量を上げる手法ではないため売上だけでなく売上総利益も確実に上げることが出来るわけです。 アップセルとクロスセルは経費も時間もかからずに売上だけでなく売上総利益に対しても絶大な効果が得られる手法であることはご理解いただけたかと思います。ここでアップセルとクロスセルの違いを以下にまとめてみます。 【アップセル】 目的 顧客単価の向上により売上を上げる 提案 高機能/高品質/大容量等による価値のある商品/サービスの提案 【クロスセル】 目的 顧客購入点数の向上により購入数を増やし売上を上げる 提案 関連性の高い商品/サービス等を追加で購入することにより価値を生む提案 上記の様にまとめられます。 アップセル、クロスセルは売上を構成する要素の単価と数量にそれぞれ違う手法で効果を発揮することで売上をあげ、ディスカウントをする手法ではないため、売上総利益の構成要素にも影響せず、さらに広告費や人件費、家賃といった経費も増えないため売上増加が営業利益まで直結して増加する利益を上げるための最も有効な手段の1つです。どちらも地味ですが経営に及ぼす効果は絶大と言い切ってよいと思います。 5.まとめ 今回は、アップセルの効果とクロスセルとの違いについてお話をさせていただきました。 アップセルもクロスセルも非常に地味ではありますが、それぞれの重要性の教育が従業員になされ、無理やり販売にならないように顧客メリットを明確に提示でき、いろいろなテクノロジーを使いこなすことで売上や利益の最大化に絶大な効果が得られる手法であります。 広告出稿、出店、営業人員を増やす等の経費を伴う行動をする前に、アップセルとクロスセルで売上、利益を最大化しておくことが効率的に利益を出すための経営ポイントになります。 今回のアップセルと前回のクロスセルは、過去にお話しした「在庫回転率」「一人当たり売上高」「坪効率」として取り上げた、在庫、人件費、家賃のCFや経費の後にあえて取り上げております。1番最初の「在庫回転率」から一連の流れとしてご一読いただきますと経営のポイントがより見えてくると思います。まだお読みでない方は是非ご一読いただけますと幸いです。 今回のアップセルを通してディ・ポップスグループとしてお伝えしたいことは、これまで同様ビジネスはヒトにより成り立っているということです。商品を購入いただくお客様もヒトであり、商品を販売する販売員も、テクノロジーを使うのもすべてはヒトであります。 AIをはじめとするテクノロジーを使いこなさなければビジネス上で競争に勝ち生き残ることはできないと思いますがテクノロジーだけでは生き残ることはできないと思います。テクノロジーが良いから、経営戦略が良いから、ビジネスが成功するのではなく、ヒト × テクノロジー × 経営戦略の掛け算が大切であるとディ・ポップスグループは考えます。 この考えの元、ディ・ポップスグループはヒトが輝くために、また社会課題解決のためにベンチャー企業に対して、出資を通じた支援と効率という数字だけではない価値を通じたグループエコシステムの実現を目指しています。 これからもご支援、応援の程よろしくお願いします。 D-POPS GROUP 常務執行役員 渡辺哲也
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2026.05.20
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