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坪効率とは?「場所の最適化」が営業利益を最大化する

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2026.01.15

ディ・ポップスグループは、「リアルビジネス × テクノロジー × グループシナジー」を掛け合わせた事業展開をしている会社の集合体で、100年後も社会から必要とされ続けるベンチャーエコシステムの実現を目指しています。

今回は、「リアルビジネス」である店舗経営に必須の、店舗の効率性や収益性を測る上で非常に重要なポイントとなる「坪効率」について解説してまいります。

「坪効率」は一坪当たりの売上高のことで、業態や業種により異なります。来店頻度の高い食品スーパーや高単価商材を扱う百貨店や家電量販店が一般的に一坪当り売上高の高い坪効率の良い業態とされています。今回は同業態かつ同立地での会社比較を行うことかつ、前々回「在庫回転率」、前回「一人当たり売上高」の話をしましたので、話に継続性がでる家電量販店に再度スポットをあて「坪効率」を解説していきたいと思います。

1.店舗経営の3種の神器とも言える指標の1つ

前々回は「在庫回転率」を、前回は「一人当たり売上高」を例にとりました。「在庫回転率」はその名の通り在庫で、主にCFやBSに効いてくるもので、「一人当たり売上高」は主に人件費に絡むもので、PLに効いてくる指標であることは解説しましたが、今回取り上げる「坪効率」は主に家賃に絡み、人件費同様PLに効いてくる指標です。

今回の「坪効率」で店舗経営の3種の神器とも言える指標である、在庫、人件費、家賃の3つが出そろいます。前々回の「在庫回転率」や前回の「一人当たり売上高」をまだお読みでない方は、この機会にぜひご一読いただけると幸いです。ではなぜ「坪効率」が重要か、以下順をおってご説明いたします。

2.坪効率とは

まず、坪効率とは、一坪当りの売上高を指し店舗の生産性を示す指標で、坪効率が高いほど良いとされます。一般的には年間の売上高を売り場面積(坪単位)で割った計算式より算出されます。

例えば
年間500億円の売上高の店舗で売り場面積が4,000坪であれば、坪効率は1,250万円
年間15億円の売上高の店舗で売り場面積が1,000坪であれば、坪効率は150万円
年間4億円の売上高の店舗で売り場面積が80坪であれば、坪効率は500万円
年間2.5億円の売上高の店舗で売り場面積が50坪であれば、坪効率は500万円
となります。

坪効率は業態や業種により平均が大きく異なり、業界平均もあまり公表されておりません。郊外型の家電量販店で150万円程度、ホームセンターで50万円程度、コンビニで500万円程度、ドラックストアで400万円程度が平均とされております。扱い商品の購入頻度、単価、大きさといった商品特性と、都市型か郊外型といった立地により主に変わってきます。

立地に関しては、立地の違いは家賃に違いがでるため、例えば都市型と郊外型の比較では、郊外型の坪効率は悪いけど都市型に比べ家賃が極端に安いという状況が起こりうるので、単純に坪効率だけで効率比較ができないという点を考慮する必要があります。

3.なぜ坪効率が重要か?

では坪効率がなぜ重要か、以下の例を元に解説してみたいと思います。

上記での解説通り、都心型、郊外型等の出店場所と扱い商品が違う会社同士は比較しても家賃と単価が異なり有効な比較対象とならないため、の前回の「1人当り売上高」の時と同様に、同じ商品を販売していて、同じ都市型に立地している家電販売店をモデルケースに解説していきたいと思います。(モデルケースの会社は架空の会社ですが、実際の会社がベースとなっております)

モデルケース

【家電量販店B社】
店舗数24店、売り場面積75,000坪、坪効率10,093千円、売上高7,500億円、経常利益500億円、経常利益率6.7%

【家電販売店C社】
店舗数45店、売り場面積74,000坪、坪効率6,002千円、売上高4,400億円、経常利益40億円、経常利益率0.9%

今回モデルケースとして採用したB社は前回の「1人当たり売上高」で取り上げたB社と同じ会社です。C社は前回の「1人当たり売上高」で取り上げたC社と同じ会社ですが、C社は沢山の屋号をもつグループ経営の会社ですので、今回は都市型店舗の屋号だけを切り抜いて取り上げました。各種数字は坪効率の年度のものに合わせたことと、売り場面積は坪効率と売上から逆算して算出しています。B社とC社はライバル会社として知られる会社で、どちらも都市型に出店しており、新宿等の大都市では隣接して出店している会社です。

今回見比べていただきたいポイントは売り場面積坪効率です。

B社は7,500億円程度の売上を作る為に売り場面積を75,000坪使用し、C社は4,400億円程度の売上を作る為に売り場面積を74,000坪使用しています。坪効率に換算するとB社は10,093千円、C社は6,002千円です。両社とも非常に高い坪効率を誇る会社ですが、B社とC社の売り場面積はほぼ同じ75,000坪程度ですので、B社とC社の坪効率の差額4,091千円を売り場面積75,000坪に換算すると、3,000億円以上の差がでます。

この差が売り上げの差であり、売上総利益率を家電量販店の平均的な数字30%として両社とも計算すると、売上総利益では900億円近い差が出ます。家賃に相当する金額に換算することは非常に困難でここでは行いませんが、どちらも都市型店舗で同じような場所に出店しているため、仮に同じ額の家賃がかかっていいたとすると、この売上総利益の差がそのまま利益の差につながります。B社とC社の経常利益の差が460億円、経常利益率で5.8%の差がありますが、この差の大きな要因の一つが坪効率であることは明確かと思います。

前回の「1人当たり売上高」の時もお話ししましたが、多少の違いはあれども同じ商品を扱っている家電販売店業界ではB社、C社以外をみても売上総利益率は大体30%程度で、どの会社も同じような水準です。業界問わず、同じ商品を扱っている業態で同じような売上規模だと売上総利益率に大きな差は出にくいと思います。

今回のB社、C社の比較の場合で、前述しておりますが、売上総利益率を30%と仮定した坪効率からくる売上総利益で約900億円の差が生じます。同じ商品を扱い、同じような立地に出店し、同じような売り場面積を使用しているにも関わらず、競合他社とこれだけの経営効率の差が出るのは、坪効率以外では「在庫回転率」、「一人当たり売上高」くらいしかでないのではないかと考えます。

今回のモデルケースだけでなく、店舗を構えるビジネスであれば、飲食でもアパレルでも、スーパーでも店舗を構える限り、店舗一坪当たりの売上高(坪効率)から逃げることはできません。同等の立地に出店し競合他社を大きく上回る坪効率を実現することができれば、ビジネスをする上で避けて通れない競合他社との競争において、大きなアドバンテージを持つことに直結していきます。

4.坪効率を上げるポイント

坪効率の重要性はご認識いただけたかと思いますので、坪効率を如何に上げるか?というお話をさせていただきます。坪効率を上げるポイントはいくつかございますので以下に代表例を挙げてみたいと思います。

坪効率を上げるポイント①

購入頻度が高い、又は単価が高い商品を扱うということです。食料品や日用品の様に単価が安くても購入頻度が高いと坪効率は上がりやすく、ブランド品の様に単価が高い商品は、購入頻度が低くても購入頻度の低さをはじき返すだけの購入単価があるので坪効率が上がりやすいです。地域密着型のドラックストアが品揃えとしてドラックより購入頻度が高い食品や日用品の扱いをしているのは、坪効率の観点から考えると当を得た商品展開と言えますし、家電量販店が品揃えを増やし購入頻度が高い消耗品と単価が高いハード品をMIXさせて扱うということも坪効率の観点から考えると当を得た商品展開と言えます。

坪効率を上げるポイント②

扱う商品の大きさとお店全体を無駄にしないということです。要は小型の商品を隙間なく展示することです。ドンキホーテやコンビニ、ドラックストア、都市型家電量販店をみれば一目瞭然で、一部の店には大型商品がありますが、小型商品が中心で隙間なくそれこそ天井までびっしり並べられています。

このような展開は坪効率の観点から考えると当を得た商品展開です。家電量販店がわかりやすいので例にとりますと、現状家電量販店は都市型が○○カメラで郊外型が○○電機という屋号に大きくは分類されるわけですが、なぜこうなったかというと、昔の都市型店舗はどの店舗も非常に小さく、冷蔵庫や洗濯機を置いたら数台で店舗が埋まってしまう店舗でした。結果、都市型店舗はカメラや時計、ポータブル機器、理美容機器、小型のOA機器等が販売の中心になり、郊外型店舗は家賃が安い為、坪効率の悪さを跳ね返せるので冷蔵庫や洗濯機等の大型商品が中心になったことは、坪効率の観点から考えると必然の結果と言えます。

ちなみに昔は都市型で冷蔵庫や洗濯機等の大型商品中心の店がたくさんありました。秋葉原を見ればわかりますが、現状では体力のある大型店に集約され、0ではありませんがほとんど残っていません。これも坪効率の観点から考えると必然の結果と言えます。

坪効率を上げるポイント③

クロスセル、アップセルを行い購入単価を上げることです。クロスセル、アップセルは店舗の努力で大きく変えることができます。スーツを買いに行けば多くの店でスーツにあったワイシャツやネクタイを進められますし、パソコンを買いに行けば多くの店でセレロンの様な安いCPUを搭載した安いモデルではなく、コアiシリーズの様な性能の高いCPUを搭載したモデルを勧められます。

全社がクロスセルで後者がアップセルです。アップセルで購入単価は変えることができ、単価が上がれば坪効率が上がります。また、クロスセルで購入点数を増やすことができ、購入点数が増えれば一人当たりの購入単価が上がり坪効率は上がります。

上記が坪効率を上げるための代表的な例です。もちろん坪効率を上げるためのポイントは他にもございますが、最大のポイントは「在庫回転率」、「一人当たり売上高」と同様に坪効率の重要性の教育が従業員になされており、常に会社と従業員が坪効率を高めるための仕入れや、展示、接客に創意工夫をし続ける血の通った経営を在庫や売上点数/売上単価の可視化がきるテクノロジーを使い実現させることだと思います。

結果的には、経営効率を飛躍させる坪効率の向上も、ヒト × テクノロジー × 経営戦略の掛け算の上に成り立つということになると思います。

5.まとめ

今回は、坪効率のお話をさせていただきました。店舗ビジネスで場所を使わないビジネスは存在しません。この場所の最適化こそが、坪効率として数値化され営業利益の最大化につながり、同じような場所に出店する競合他社との大きなアドバンテージポイントになります。

坪効率は、商品の単価、大きさ、購入頻度といった商品特性、品揃えを増やしお店に隙間なく陳列すると品揃えと陳列手法、クロスセル/アップセルに代表される接客技術で大きく変えることができます。つまりは、扱い商品のコンセプトを決める会社と仕入れ、陳列、接客を具体的に行う従業員が常に生産性を高めるための創意工夫をし続けることが坪効率を上げるポイントになるということです。

今回の坪効率で、店舗経営の3種の神器とも言える指標である、在庫、人件費、家賃の3つが出そろいました。前々回の「在庫回転率」前回の「一人当たり売上高」から一連の流れとしてご一読いただきますと店舗経営ポイントがより見えてくると思います。

ディ・ポップスグループとして、「在庫回転率」「一人当たり売上高」「坪効率」の3部作を通じお伝えしたいことは、ビジネスはヒトにより成り立っているということです。商品を購入いただくお客様もヒトであり、経営戦略を考えるもの、テクノロジーを使うのもすべてはヒトであります。

AIをはじめとするテクノロジーを使いこなさなければ、ビジネス上で競争に勝ち生き残ることはできないと思いますが、テクノロジーだけでも生き残ることはできないと思います。テクノロジーが良いから、経営戦略が良いから、ビジネスが成功するのではなく、ヒト × テクノロジー × 経営戦略の掛け算が大切であるとディ・ポップスグループは考えます。

この考えの元、ディ・ポップスグループはヒトが輝くために、また社会課題解決のためにベンチャー企業に対して、出資を通じた支援と効率という数字だけではない価値を通じたベンチャーエコシステムの実現を目指しています。

これからもご支援、応援の程よろしくお願いします。

D-POPS GROUP 常務執行役員 渡辺哲也

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2026.05.20
名経営者からの学び ー ”考え方が人生を分かつ”(中村天風)
ベンチャーエコシステムの実現のためには、起業から世界的大企業に育てるまでを行ってきた、過去の名経営者から謙虚に学ぶ姿勢が欠かせません。 「名経営者からの学び」シリーズでは、筆者が影響を受けた名経営者や思想家らの言葉をご紹介し、実体験からの想い、事業や実生活で活かされた事例などをご紹介していきます。 第三回目は、グループのアドバイザー、杉原が担当致します。 1. ”考え方が人生を分かつ”(中村天風) 心が、積極的か、あるいは消極的かで、人生に対する考え方がぜんぜん両極端に相違してきてしまう。心が積極的であれば、人生はどんな場合も明朗、颯爽溌剌(さっそうはつらつ)、勢いの満ちみちたものになりますけれども、反対に消極的だと、人生のすべてがずっと勢いをなくしてしまいます。人生を考える自分の心が消極的だと、すべてが哀れ惨憺(さんたん)、光のない、惨めなものに終わりはしませんか。 人生がたった一回かぎりである以上、たった今からでき得るかぎり完全な状態でいかされなければいけません。 ーー「中村天風 一日一話」(財団法人天風会 [編]、PHP研究所発行)より、原文のまま引用 2. この言葉を選んだ理由 私事ですが、1990年からこれまで一貫して、それぞれの時代において、”ベンチャー”と言われていた企業に勤めてきました。その中でも特に、現在のKDDIの前身にあたる第二電電での経験が、その後の仕事人としての基礎を作り、また、長年挑戦を続ける心の土台となった、”ベンチャー精神”を鍛えてくれたのだと、今でもあの時の経験に感謝をしています。 その、第二電電の創業者の稲盛和夫氏は、名経営者として、日本のみならず、中国や世界でも名が知られており、経営者らに尊敬されています。その稲盛和夫氏が影響を受けた思想家の一人が、この中村天風氏です。当時、上司や事業部長から、(当時流行った)ランチェスター戦略本やMBA本を読むことを勧められましたが、それよりも何よりも、真っ先に読むように言われたのが、この天風の書籍でした。 天風自身のロングセラー書籍には、「心を磨く」と「運命を拓く」ですが、一日一話形式で編集されたこの書物、「中村天風 一日一話」は、天風書籍のエッセンスを一話ごとに短く簡潔にした、非常に読み易い本です。”中村天風”という名前は聞いたことはあるが、まだ手にしたことがない、改めて読み返したいがどの本を読み返そうか、という方々には、まずこの本をと、お勧めしたい一冊として選びました。 ちなみに、今世界で最も名が知られたスポーツ選手の一人であり、日本人として誇らしいスーパースターである、大谷翔平選手がメジャーに行く前に天風の書籍を熟読していた、と話題になりました。 3. 自らの経験とこの思想への想い 90年代から2000年にかけて、社会人としてのイロハもまだ身に付いていない20代に、いきなり新規事業の立ち上げ部門(後にPHS事業となるDDIポケット電話準備室)に配属され、わずか6人の営業戦略の立ち上げ部隊の一員として、昼夜土日の境のないような激務をしていました。今だから言えますが、パワハラやワークライフバランスなどという言葉がまだ無くて、上司の命令は絶対、理不尽がまかり通る職場でした。 そのような、ややもすると不平不満を抱えたり、逃げ出したくなったりするような環境に放り込まれた身でも、私は物事の明るい面を見るように心掛け、困難を避けず、積極的な姿勢を保ち、人が見ていないところでも努力を続けることができました。それはひとえに、この天風本をバイブルにしていたから、と言っても過言ではありません。 この中村天風の書籍の中で度々触れられる、そして天風の代表的な思想である、”常に心を積極的に保つ”、という習慣を得たことで、あの時代だけでなく、その後の仕事人生に長く影響を与え、困難を乗り越える力を付け、チャンスを得て、数々の貴重な経験を積むことができました。 この「一日一話」の中には、表現は違えども、数々の積極思考の重要性、心の在り方の重要性を説く一節が散りばめられています。 いくつか挙げると、 ”心の思考が人生を創る” 「人間の健康も、運命も、心一つの置きどころ」心が積極的方向に動くのと、消極的方向に動くのとでは、天地の相違がある。 ”意志の力” 極限すれば、人生を幸福にするのも不幸にするのも、心の統制にかかっていると言ってもいいくらいなのである。この心に対する絶対の統制力を有する意志の力というものこそは、広い意味で、人を美しく向上させる原動力だと言える。 ”尊く、強く、正しく、清く” 自然法則にそむかないようにするには一体どうすればいいかというと、第一に「心」の態度を終始一貫いかなる場合があろうとも積極的であらしめることです。積極的であらしめるということは、尊く、強く、正しく、清く生きることなんであります。およそこのことぐらい人生および生命に対して大事なことはないのであります。 ”不平不満を口にしない” どんな場合があっても不平不満を口にしないこと。この不平不満が心の中にあると、どうしてもその言葉が積極的になりません。不平不満のある人は、始終上ばかり見て、下を見ないでいる。はたはみんな幸福で、自分だけがこの世の中で一番不幸な人間のように考えている。 ーー「中村天風 一日一話」より引用 これらの言葉に励まされ、自らを奮い立たせ、前向きに仕事に取り組んだおかげで、冷静に物事に対処し時代の流れを読むことができました。その後、PHSのモバイルインターネットサービスの立ち上げ、AOL社でのブロードバンドの立ち上げ、Napster社での音楽配信事業の立ち上げ、Google社での検索シェア向上の仕組み作りなどに従事して、インターネット業界の歴史と共に歩んでこられました。 現代のビジネスパーソンは、日々変化する、そして溢れる程の情報の洪水に揉まれています。日々の仕事で必要な知識だけでなく、生成AIやAIエージェント、AIロボティクス等、世界の最新の技術情報を追いかけなければなりません。また、自分の仕事が「AIに代替されてしまう職業」になるのではないか、と不安な気持ちを持たざるを得ないような環境に置かれています。 知識や情報を詰め込むことも、技術力を備えることも大事です。しかし、人間がAIと根本的に異なるもの、人間としての資産は、情報や知識ではなく、”心”です。技術や知識はその時代ごとに変わりますし、後から身に付けられます。しかし、前向きな心や積極的な考え方というものこそが、土台となり、時代の変化に関係なく自分の内面に積み重なる財産になるのだな、と私は思います。 今、私の手元に、もう20年程ずっと財布にしまっている、御守のような小さな紙の切れ端があります。そこには、自分でしたためた「生活信条七ヶ条」が記されています。 そのうちの最初の3条、 一、常に物事を前向きに考える 二、常に向上心を保ち勤勉を心掛ける 三、力の及ばぬことに不平不満を言わない は、すっかり自分の言葉、信条になりましたが、今思えば、この中村天風の書籍(及びカール・ヒルティの「幸福論」)から引用して簡素化した言葉だったということを思い出しました。 このような積極的思考法を世に広めてくれた、実業家であり、また思想家でもある中村天風氏に感謝します。 4. 読者の方々へのメッセージ 今回は、少し古い人物の著書を挙げさせていただきました。また、著名な経営者ではない、しかし、著名な経営者に影響を与えた思想家、という観点で選ばせていただきました。 筋違いな書籍ではないかな、と最初は思いましたが、誰もが知る大谷翔平選手が読んでいる、と聞いた時は、やっぱり普遍的な思想なんだな、と嬉しく思ったと同時に、スポーツ選手にも、そして経営者の皆さんにも響く言葉がたくさん詰め込まれているなと思ってご紹介致しました。 益々先が読めない時代になっていますが(ちなみに人類の歴史ではいつの時代もそう言われていた)、ここで紹介した中村天風氏の書籍を手に取っていただくことで、積極的な心の持ち方を保ち、前向きに元気はつらつとして、新規事業や起業した事業に取り組んでいく原動力になれば幸いです。 皆さんの仕事、事業、そして人生そのものが、明るく、幸福に満ち溢れたものでありますように! ディ・ポップスグループでは、「ベンチャーエコシステム作りを目指す」をビジョンに掲げ、エコシステム内の企業群が持続的に成長できる仕組みづくりと、アドバイザー陣による伴走支援に取り組んでいます。 ※詳しくはこちらをお読みください。「ベンチャーエコシステムとは?」 こちらの記事が、ベンチャー創業者および事業責任者の皆様にとって少しでもお役に立てたら大変嬉しく思います。 D-POPS GROUP アドバイザー 杉原眼太
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2026.05.13
名経営者からの学び ー ”キャッシュベースで経営する”(稲盛和夫)
ベンチャーエコシステムの実現のためには、起業から世界的大企業に育てるまでを行ってきた、過去の名経営者から謙虚に学ぶ姿勢が欠かせません。 「名経営者からの学び」シリーズでは、筆者が影響を受けた名経営者や思想家らの言葉をご紹介し、実体験からの想い、事業や実生活で活かされた事例などをご紹介していきます。 第二回目は、グループのアドバイザー、米谷が担当致します。 1. ”キャッシュベースで経営する”(稲盛和夫) 「キャッシュベースの経営」というのは「お金の動き」に焦点をあてて、物事の本質にもとづいたシンプルな経営を行うことを意味している。会計はキャッシュベースで経営をするためのものでなければならないというのが、私の会計学の第一の基本原則である。 ーー「稲盛和夫の実学 経営と会計」(稲盛和夫著、日本経済新聞社発行)より、原文のまま引用 2. この言葉を選んだ理由 本作『実学』の初版が刊行された1998年当時、日本経済は「平成バブル」崩壊後の長いトンネルの中にありました。 このバブルの本質は所説あると思いますが、「キャッシュという現実から乖離した虚構」にほかならないと私は考えます。当時の社会は、不動産価格は永遠に上がり続けるという「土地神話」に踊らされ、実態のない不動産価格の膨張を背景に、手元にキャッシュを生む力(収益力)がなくても、虚構の資産価格さえあれば、それを担保として銀行借入という名のキャッシュを生み出すことができました。そして、キャッシュを生む力のない不動産を購入するために銀行借入をするという投機という逆回転の行きつく先に、虚構は崩壊し、膨大な借金(不良債権)を残して、この「平成バブル」は終焉を迎えます。 「実学」とは、単なる机上の論理ではなく、「現実に裏打ちされた学問」を意味します。 稲盛和夫氏がこの著書をあえて『実学』と名付けた背景には、こうした虚業に走った日本経済への強い危機感があったと思っています。 また、稲盛和夫氏は、商売の本質を「経営の要諦」の中で、「入るを量って、出ずるを制する」という言葉で表現されています。氏は、「入ってくるお金を最大限に増やし、出ていくお金を最小限に抑える。その差額が手元に残る。ただそれだけのことです」と語り、中学生でもわかるようなこの単純明快な事実こそが、経営の原点であると説いています。 しかし、社会が発展し、商取引や社会制度が高度に複雑化するにつれて、それらを映し出す鏡である「会計制度」もまた、「発生主義」や「時価会計」と難解なものへと姿を変えていき、時に現実の「お金の動き」を不透明にしてしまいます。 私は、監査法人での上場企業の監査、そして、上場企業での財務報告担当者という経歴を経て、そのような財務報告における「会計制度」の遵守は企業ガバナンスにおいては重要ではあるものの、企業の成長のためには商売の本質である「お金の動き」に沿った極力シンプルな管理会計こそが重要であると考えています。 そこで、今回は財務会計と管理会計の違いを整理しつつ、『実学』から私が学んだ管理会計のポイントをお伝えできればと思います。 3. 財務会計はステークホルダーのための会計、管理会計は経営者のための会計 財務会計は、株主や銀行、投資家といった外部の「読者(ステークホルダー)」に対して、自社の状況を報告するためのものです。そのため、そこには厳格なルールが存在し、目的が多くなればなるほど、ルールは複雑化していきます。 上場企業には、もっとも厳格なルールが適用されます。これは海外を含めた投資家という多数のステークホルダーが存在し、また「比較可能性」も重視されるからです。この「比較可能性」というのは、投資家が異なる企業同士を同じ尺度で比較できるようにするためのものです。例えば、同業種のA社とB社がバラバラな基準で利益を計算していては、投資家はどちらが優良な投資先か判断できません。だからこそ、非常に細かな厳格なルールに基づいた決算書の作成が求められ、その遵守状況を監査法人が厳格にチェックするのです。 上場企業ではない場合においても、財務会計が共通ルールに基づく、ステークホルダーという読者に対する自社の状況の報告であることには変わりません。 ・投資家に対しては、他社との比較のなかで収益性が高く、投資リターンの高い魅力的な企業であることの報告 ・株主に対しては、投資資本がいかに企業成長へ利用され、どれだけ効率よくリターンを生み出しているかの報告 ・銀行(債権者)に対しては、借りたお金を確実に返済できることを信頼性をもった報告 しかし、ここに一つの課題が生じます。これらの目的を果たすためにルールを精緻化すればするほど、財務会計は複雑なものになっていくのです。 結果として、商売の本質であるシンプルな「お金の動き」が見えにくくなってしまう。財務会計は、そのようなジレンマを常に抱えているのです。 一方で管理会計は、ルールに縛られることなく、経営者が採算を向上させ、自社を成長へと導くために自由に設計できる会計です。 財務会計が「外からの信頼」を支えるインフラであるならば、管理会計は、「ビジネスの成長の源泉や課題がどこにあり、採算を向上させるために資源をどこに集中的に投下すべきか」を判断し、自ら舵を切るための経営における「コックピットの計器」なのです。 では、経営者が把握するべき「コックピットの計器」を正しく機能させ、採算向上へと導くためには、どのような視点が必要なのでしょうか? 4. 『実学』から私が学んだ管理会計の4つのポイント 私が『実学』から学んだ管理会計のポイントは、以下の4点です。 ①「全員参加」を可能にする採算の見える化 稲盛和夫氏が提唱する「アメーバ経営」のように、組織の採算を細分化し、売上をあげる人から費用を使用する人に至るまで、全員が当事者意識を持って採算向上に取り組める状態をつくることです。 採算を責任者レベルまで細分化し、数字を「自分たちのこと」として捉えられるようにすれば、自ずと課題は明確になります。それこそが、限られた経営資源をどこに投下すべきかという「選択と集中」の判断を可能にする、管理会計の1つめのポイントなのです。 ②「土俵の真ん中で相撲をとる」ための今使える資金の管理 稲盛和夫氏の説く「土俵の真ん中で相撲をとる」経営とは、常に余裕を持った状態で冷静な判断を下すことです。そのために、「今、実際に使えるお金(余剰資金)がいくらあるのか」をその増減要因を含め把握できるキャッシュ・フロー管理こそが、管理会計の2つめのポイントです。 通常のキャッシュ・フロー計算書を作成するだけでは不十分だと私は考えています。事業の「利益」が、どのように「キャッシュ」へと結びついているのかを明確にしなければなりません。 また、売掛金、買掛金、未払金、および在庫の変動といった「運転資金」の動きを追い、賞与や法人税、配当金の支払いといった「将来の支出」に対して、今どれだけの資金を確保できているのかを可視化することです。 いわば、コックピットの「残燃料計」を常に正しく、かつ予測精度高く機能させること。それによって初めて、経営者は不測の事態に動じず、攻めの投資判断へと踏み出すことができるのです。 ③「筋肉質の経営」を支える投資回収の徹底 管理会計の3つめのポイントとして、単に投資効率(ROI)を計算するだけでなく、「これまで投じたお金が、澱みなく循環して戻ってきているか」を厳しく見極めることです。 稲盛和夫氏の有名な言葉に、製品であっても売れなくなったセラミックは「石ころ」と同じである、という「セラミック石ころ論」があります。これに倣えば、たとえ財務会計では「資産」として計上されていても、キャッシュ・フローを生み出さないものは、管理会計上は資産として捉えるべきではありません。 例えば、未完成のプロジェクトや製品に費やした労務費は、 財務会計上は「資産」として蓄積され、利益を押し上げる要因となりますが、それが現金化(売上の回収)されないのであれば、経営の実態としては単にキャッシュが流出した状態にある「贅肉」に他なりません。こうした「贅肉」を排除し、健全な循環を取り戻すためには、投資したキャッシュの動きを実数で追いかけなければなりません。 つまり、投資したキャッシュが「どれくらいの期間」で「どれほどの額」回収されたのか。そしてそれが「どれくらいの利益率(利回り)」を実現しているのかを常に把握することです。この徹底した管理こそが、重荷となる会社の「贅肉」を削ぎ落とし、会社を常に筋肉質な体質に保ち続けます。それが結果として、持続可能な成長へと繋がっていくのです。 ④「一対一対応の原則」を貫き「お金の動き」と整合させること 管理会計を機能させるための最後のポイントは、扱うすべての数字を「お金の動き」という事実と整合させることです。稲盛和夫氏は、これを「一対一対応の原則」と呼びました。私は、これは管理会計のみならず、財務会計の信頼性を支えるうえでも、本質的な重要なポイントであると考えます。 現代の財務会計は減損会計、時価会計など将来のキャッシュ・フローを見積りで織り込む複雑なものとなっています。しかし、どれほど会計制度が高度化しても、商売の本質がシンプルな「お金の動き」にあることに変わりはありません。「お金の動き」という事実の徹底した把握こそが、経営者が採算を向上させ、自社を成長へと導くための多くの洞察のスタートとなると私は思います。 5.読者の方へのメッセージ 経営という長距離飛行の中で、現在地を把握し、目的まで飛び続ける。そのために必要なのは、複雑な会計やファイナンスの理論ではなく、「お金の動き」という事実を映し出す「コックピットの計器」としての管理会計です。 たとえ激しい時代の変化の中で、視界が悪くなったときでも、この正確な計器さえあれば、迷うことなく成長への最適な航路を選び取り、加速し続けることができると思います。 ディ・ポップスグループでは、「ベンチャーエコシステム作りを目指す」をビジョンに掲げ、エコシステム内の企業群が持続的に成長できる仕組みづくりと、アドバイザー陣による伴走支援に取り組んでいます。 ※詳しくはこちらをお読みください。「ベンチャーエコシステムとは?」 こちらの記事が、ベンチャー創業者および事業責任者の皆様にとって少しでもお役に立てたら大変嬉しく思います。 D-POPS GROUP 執行役員 公認会計士 米谷好弘
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2026.03.04
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