COLUMN

【メンバーインタビュー】株式会社ディ・ポップスグループ 社長室 Shane Hetrick

  • INTERVIEW
2026.04.09

① まず始めに、シェーンさんの出身地や簡単な経歴などを教えてください。

私は米国カリフォルニア州で生まれましたが、幼い頃に家族と米国西部の様々な場所に10回ほど引っ越し、また、7か月間韓国で過ごした時期もあります。その結果、両親、そして弟と2人の妹だけが私の人生における唯一の安定した存在でしたので、幼い頃から継続的な変化に慣れなければなりませんでした。これほど多くの変化に適応する方法を学んだことは、私の人生に大きな影響を与えたと断言できます。

ワシントン州立大学に通うためにワシントン州プルマン市に引っ越した後、微生物学と遺伝学・細胞生物学の二つの学位を取得しました。大学1年生のときから、キリスト教の大学生サークルで積極的に活動するようになり、卒業後もプルマンに残ることを決め、そのサークルで2年間インターンとして、その後1年間スタッフとしてボランティア活動をしました。

この間、私は友人との交流を楽しみ、責任をあまり負わずにいられたことで、最終的に自分の人生の情熱を見出すことができました。また、多様な文化を持つ人々との関係構築、個人的な問題への対処戦略を練る上での大学生の指導・ライフコーチング、グループディスカッションの円滑化、そしておそらく最も重要なこととして「学び方」を学ぶこと、といった、今後のキャリアで活かすことのできであろう多くの重要なスキルを習得しました。

② シェーンさんは何年前に日本に来ましたか?来日したきっかけは?

プルマンでの活動が終わりに近づいた頃、私は様々な国の留学生と出会う機会が増え、中には日本の関西外国語大学からの留学生で、一学期間ルームメイトになった一人もいました。彼らは皆、私が優秀な英語講師になれると真剣に提案してくれ、私自身も全く新しい冒険を始めるという考えにとても興味を持つようになりました。今振り返ると、安全で予測可能な自分の生活に、どこか物足りなさを感じていたのかもしれません。

まず、大学付属の英語言語学校で約半年間アルバイトをし、その後、英語講師として海外で生活するための色々な選択肢を探し始めました。最終的に、日本の小規模な英会話派遣会社からフルタイムの派遣社員としてのオファーを受け、2015年8月から東京にいる日本人のご家庭と一緒に住むことになりました。このご家庭の息子さんとは、彼が私の大学に留学中に知り合い、私が日本へ引っ越すことを知ったご両親が、ありがたいことに滞在場所を提供してくださったのです。

私は、東京エリアにある小中学校、専門学校、病院、ホテル、その他様々な企業で英会話授業を担当し始めました。10人から20人の小中学生や専門学生を対象とする大きなクラスもあれば、ビジネスパーソンとの1対1のレッスンもあり、すぐに老若男女の日本人に英語を教えることができるようになりました。

③ ディ・ポップスグループに入社したきっかけを教えてください。

東京で英語講師としてフルタイムで働いていた最初の年に、以前私が関わっていたのと同じキリスト教の大学生サークルが東京に設立した地域支部に出会いました。そこのスタッフが不足していたため、私はボランティアとして協力し、コミュニティハウスに引っ越して、引き続き様々な場所で英語を教える仕事をパートタイムで続けました。このサークルを通じて中国出身の女性と出会い、結婚し、その後、娘が生まれ、さらに2人目の子供を授かりました。

出産のため、妻が産休に入ったのですが、当時妻が主な稼ぎ頭だったため、私は家族の家計を支えるためにフルタイムの職を積極的に探していました。そんな時、ディ・ポップスグループの採用パートナーが、後藤社長と英語を話す運転手として雇うために、英語教師経験と日本の運転免許を持つ人を探している中で私のプロフィールを見つけ、面接をオファーしてくれたのです。

その職務内容には多少興味を引かれましたが、私が探していた仕事とは大きく異なっていました。しかし、面接で後藤社長にお会いした途端、私の心の中で何かが変わりました。私の話に耳を傾け、一人の人間として私に心から関心を持ってくださったことに深く感銘を受け、そして後藤社長が話されたとき、私はすぐに彼のビジョンを信じることができました。こうして、昨年の11月、私はディ・ポップスグループに入社し、子どもたちがリスクを取り・学び・成長を支えてくれる社会を創る上で、たとえ小さな役割でも果たしたいと決意しました。

④ ディ・ポップスグループでの仕事内容を教えてください。

元々、私が運転してる時に自然な会話を通じて、後藤社長の英語力向上をサポートするために採用されました。それが最優先ですが、ベンチャー企業という柔軟で変化の速い環境の中で、自分の役割をそのような狭い業務に限定することはできないとすぐに認識しました。

運転していないときには、このコーポレートサイトの記事を英訳することが主な任務として与えられました。時折、私のネイティブな英語スキルを活かして、外国の来客とのやり取りや、彼らをオフィスに歓迎する際にも役立てています。

できる限り、社長室の他のメンバーもサポートするように心がけています。なぜなら、彼らが私に任せられる仕事が増えれば増えるほど、後藤社長は彼らに、より多くの仕事を任せることができ、結果的に社長は彼にしかできないことにより多くの時間を割くことができるからです。手紙や小包の受け取りと発送、色々な備品の注文、ヒカリエへの入館証の発行、その他の単純な事務作業などを担当しています。

⑤ 後藤社長のドライバー兼英語教師もされているとのことですが、都内の道路の運転にはもう慣れましたか?後藤社長の英語は上達しましたか?(笑)

後藤社長が社用車として選ばれた車種には、都市の渋滞でも安全に運転しやすくなるような多くのプレミアム機能が搭載されています。また、私自身が長年運転していることも助けとなり、東京の道路が米国の道路よりもはるかに混雑していて狭いにもかかわらず、ここでの運転に慣れることができました。そのうえ、後藤社長を車でお送りする際に、彼の賢明な言葉から何かを学べるたびに、いつも嬉しく思っています。

そして、後藤社長がより一貫して英語を使うようになったことで、彼が米国と英国で高校生・大学生時代に築いた基礎を思い出すことができるようになっています。私がしていることは、彼が快適に練習できる雰囲気を提供し、適切なときに正しい単語と自然な言い方を提供することだけです。後藤社長が着実に進歩されて、1年前に比べて英語を話す際により自信を持っているのがはっきりと見えています。しかし、後藤社長はよく「シェーンさんの日本語と同じくらい早く自分の英語が上達すればいいのに」と言って私を励ましてくれます。(笑)

⑥ オフィスで周りの皆さんと積極的に日本語を話している姿を見かけます。いつ日本語を学びましたか?ビジネスの現場で使う日本語は難しいですか?

東京での最初の1年間、日本人のご家族と一緒に住んでいたときに、日常会話の基本を学ぶのを助けてもらい、基本的なコミュニケーションができるようになりました。しかし、その家を出てからは、日常の決まった状況でしか日本語を話さず、日本語能力を学び向上させる機会を積極的に探さなかったため、私の日本語レベルは実質的に停滞してしまいました。

昨年入社した後、人生で初めて日本の職場環境に身を置くことになり、挑戦と成長のチャンスが数え切れないほどありました。ビジネス日本語を学ぶのが難しいというだけでなく、この仕事を始めるまで、業界での経験がほとんどなかったためです。結果として、オフィスで一般的に使われる丁寧な日本語の言い回しを習得しようとする傍ら、それらの言い回しの背後にある概念、状況、仕組みについても同時に学んでいます。

私はディ・ポップスグループにできる限り付加価値を提供したいと考えています。そうすることで、社会により大きく貢献できると理解しているからです。そのため、優秀で寛大な同僚の皆さんたちの忍耐と理解のおかげで、多くの困難に挑戦し、ほとんど同じ数の困難を乗り越えてきましたが、まだ先は長いです。なので、ベンチャーエコシステム内の皆さんと、私はいつでも日本語の練習を喜んでしますので、私を見かけたら、どうぞ遠慮なく声をかけてくださいとお伝えしたいです!

⑦ 日本に住んで、また日本企業に勤めて感じる日米の違いはどんなところですか?

私の考えでは、日本での生活が米国での生活と最も異なる点は、「同調圧力」の捉え方です。過去10年間で見てきた限り、日本人は一般的に、他者に対して非常に配慮が厚く、周りの人々の外側の行動や、さらには言えない感情にまで気を配ろうとしているように見えます。加えて、通常は礼儀、調和、合意形成に対して深い敬意を抱いており、周りの人たちを配慮しながら発言することが多いように思います。一方で、アメリカ人は個人の独立性をとても重視します。幼い頃から、皆がしていることを真似する前に自分で考えるべきだと教えられ、私たちは均一性よりも独自性を尊重します。

これら二つの文化がこれほどまでに正反対である理由には、確かに多くの要因がありますが、一つの主要な根源は、日本の住居スペースの不足と、次々に発生する自然災害の歴史にあるのではないかと思います。地震、津波、その他の危険が常に身近にあり、隣人が非常に近くに住んでいるため、火事がすぐに周囲の建物に広がる可能性がある場合、定期的に交流するすべての人々と友好的な関係を維持することが不可欠になります。そうすれば、緊急時に、助け合えるからです。

また、読者の方々が興味を持つかもしれない、日本と米国の生活のいくつかの小さな違いにも気づきました。一つは、日本人はソーシャルサークルをきれいに区別する傾向があり、家族、知人、同僚が混ざり合うことはアメリカ人と比べて多くはありません。しかし、アメリカ人は、親しい友人や同僚に家族を紹介することにはるかに抵抗が少なく、そのため、私はいつも話してくれているチームメンバーの個人的な人生についてほとんど何も知らないという状況に慣れる必要がありました。もう一つは、日本人がだいたい食事の一部として一日に少なくとも一度はお米を食べるのに対し、アメリカ人は通常、特定の主食に忠実ではなく、主食を全く含まない食事をとることさえあります。

最後に、これは日米の文化の大きな違いというわけではなく、むしろ両方の文化で変化し始めていることなのですが。現在まで、父親が長期の育児休暇を取得することは一般的ではありませんでした。しかし今回、私は日本の育児休業制度を利用して、12月と1月のほとんどを米国の実家で妻子と過ごすことに決めました。ディ・ポップスグループの同僚の皆さんたちはとても協力的でした。日本の会社では、育休から復帰した父親が自分のポジションを異動させられたり、縮小されたりという話を耳にすることもありましたが、ここではそんなことは一切ありませんでした。

⑧ シェーンさんの入社後、ディ・ポップスグループはコーポレートサイトの英語版を作りました。 英訳をする際に大事にしたことなどを教えてください。

まず第一に、これらの英訳を読むであろう読者を想像するようにしています。彼らは、日本への事業拡大を考えている外国企業の役員かもしれませんし、日本のスタートアップから高い投資の収益を期待しているベンチャーキャピタルの投資家かもしれませんし、あるいは単に英語の読解能力を練習したいディ・ポップスグループまたは取引先のメンバーかもしれません。これは、私が英訳する各記事の言葉の選択や全体的なトーンに影響を与え、また、直訳がない言い回しや観念をどのように伝えるかを決定するのにも役立ちます。

次に、ディ・ポップスグループと経営者のMVVが明確に伝わるように、最善を尽くしています。これにより、コーポレートサイトを英語で読む人が、強調されている部分や使用する語彙を通して、それらの価値観を感じ取ることができるようにするためです。結局のところ、私は我々を取り巻くエネルギーは本当に特別だと信じているので、その輝きを可能な限り読者の皆さんと共有したいと思っています。

最後に、私はバイリンガルにはまだ程遠いので、ディ・ポップスグループのアドバイザーである杉原さんのサポートなしには、コーポレートサイトを英訳するという仕事を達成することはできません。杉原さんの知恵、経験、そして特にスタートアップとベンチャーキャピタルに関する深い知識がなければ、読者の皆さんは今この記事を読んでいないはずです。英訳だけでなく、彼は私に日本の会社で働くという不慣れな世界を航海するための貴重なヒントも与えてくれており、言葉にできないほど、心から感謝しています。

⑨ 8月には日米学生会議の皆さんの訪問がありました。シェーンさんは学生向けの資料作成や当日の翻訳など対応されていました。資料を作成するときにこだわったことや当日の印象を教えてください。

日米学生会議は、私が後藤社長とより密接に働く初めての経験であり、彼がすることすべてにいかに多くの思考と努力を注ぎ込んでいるかを直接目撃できたことは、間違いなく畏敬の念を抱かせるものでした。後藤社長はご自身の専門外の分野に身を置かれており、それは彼のプロフェッショナルのレベルからすると珍しいことだと思います。しかし、そのような状況でも、彼は発表前の限られた時間で何ができるか、そして何が不可能かを戦略的に考えることができました。

例えば、私は最初、英語圏の学術的な聴衆には印象的に映るかもしれない原稿を彼のために用意しました。しかし、私がその原稿には彼が慣れていない高度な語彙が大量に含まれてしまったので、後藤社長は、準備に長い時間をかけられないため、多くの新しい単語を学ぶよりも、既に知っている単語を流暢に話す練習に集中した方が良いと指摘されました。その後、二人で数週間にわたってやり取りを繰り返し、彼が納得するまで原稿と発表資料を洗練させました。これは私にとっても教育的な経験であり、締め切りが過ぎてから100%の完成度に到達するよりも、タイムリーに90%の完成度に達することがビジネスの現場ではるかに重要であることを学びました。

学生たちが渋谷ヒカリエに到着した際、私は光栄にも、彼らに当社の印象的なオフィス空間の様々な場所を英語で案内し、それぞれの意味合いを説明させていただきました。その後、後藤社長と杉原アドバイザーの講演を聞いた後、二人と学生たちの通訳を手伝うことになっていましたが、後藤社長の英語力と、一部のアメリカ人学生が持っている日本語能力のおかげで、私が何かを言う必要はほとんどありませんでした。大学生と交流する私の職務経歴からしても、私たちが共に過ごした時間を通じて、彼らの顔にベンチャー精神の価値に対する深い理解が芽生えるのを見ることができて、とても嬉しかったです。

⑩ 今後ディ・ポップスグループでどのように活躍していきたいか教えてください。

ベンチャーキャピタル事業に関する私の知識と経験はまだ初級ですが、いつかベンチャーエコシステムに新しいパートナーを迎え入れる流れにもっと積極的に参加したいと思っています。ここ数か月間、私はディ・ポップスグループのCVCチームのメンバーと、日本でのビジネスをより強固に確立したいと考えている二人の外国人起業家との間のコミュニケーションを円滑にするという役目を拝命しました。これは私にとって非常に刺激的であり、この分野での能力を高めていきたいと考えています。

CVCチーム以外にも、ベンチャーエコシステムのメンバーと日本語ができない方との間で行われるその他の会話もサポートしたいと思っています。ディ・ポップスグループでの個人的な目標の一つは、自分の英語スキルを活用して、我々のグローバル展開に貢献することです。それに伴い、ネイティブの英語話者が必要な際には、いつでも戦力として貢献できるように待機しております。

また、近いうちにディ・ポップスグループで英語関連の活動を始めたいと思っております!ご興味ありましたら、是非お気軽にお問い合わせください。

これらに加えて、私はディ・ポップスグループのプロとしての英訳者であるだけでなく、他の業務でも真に役立つことを証明できるレベルまで、日本語とビジネススキルを向上させ続けたいと強く思っています。ここでさらに1年働いた後の自分がどうなっているか、本当に楽しみにしています!

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-藤本- 世界各国を回る中で、日本の次の強みは何かを常に考えてきました。 その答えの一つは、やはり広い意味でのディープテックにあると確信しています。 日本は研究開発や技術力、シーズのレベルは非常に高いものを持っています。 ただ、現時点ではそれをビジネスとして成立させる力がまだ追いついていない。 その素晴らしい技術をいかにビジネスへと繋げていくかが、今後の日本の大きなチャンスになると考えています。 以前、韓国の支援者と話した際にも、「日本人はいいものを作れば認められると思っているよね。言わなきゃ良さは伝わらないのに」と指摘されたことがありました。 日本の奥ゆかしさかもしれませんが、ことスタートアップにおいては、それでは通用しません。 ただ、今の日本に伝える力やビジネスにする力が欠けているということは、逆に言えばそこを強化できれば、もっと大きなチャンスがあるということでもあります。 SaaSなどのサービス系ビジネスについても、同様で、世界の動きが早いです。 今の日本のサービスは、どうしても日本国内だけに閉じてしまいがちですが、先ほどお話ししたスケールという観点でこの壁を突破できれば、十分にチャンスはあるはずです。 -杉原- その壁を突破するためにも、初期の頃からチームを多国籍な構成にすることで、この国とこの国で同時にスタートするという感覚を当たり前に持つことが重要になりそうですね。 -藤本- まさにその通りだと思います。 諸外国ではそれが当たり前になっています。 まずは日本でと考えている間に、世界からは周回遅れになってしまうという危機感を持つべきです。 全てのサービスが海外展開すべきとは思いませんが、日本だけで閉じていると見えないことが多すぎます。 チームに多様な国籍のメンバーがいれば、自ずとスピード感や視点が変わり、グローバルな変化にも気づけるようになる。 そうした組織のあり方が、これからの日本のスタートアップの成長を左右するのだと感じています。 -杉原- 非常に参考になるお話です。続いては少し時流に合わせた質問なのですが、最近よくニュースや本でAIによって特定の職業がなくなるといった議論を耳にします。これについてはどう思われますか? -藤本- 生成AIの影響は確かにわかりやすいものですが、これまでの歴史を振り返っても、なくなる職種もあれば、新しく生まれる職種も常にあったはずですよね。 ですが、今回は「AIに奪われる」「人間じゃない何かに取って代わられる」という感覚が強く、皆さん不安を感じているのだと思います。 ただ、大前提として全ては常に変化しているということが重要だと思います。 同時に、AIの台頭は今まで人間にしかできなかったこととは何なのかを改めて問い直すきっかけをくれているのではないでしょうか? 人間しかできないことに気づき、自分は何で貢献していくのか、どんなスキルを身につけるべきかを見極める良いタイミングだと思います。 ですから、別に怖いことは何もありません。どう使いこなすかにワクワクした方が楽しいですし、まずは使ってみればいいんです。 これはAIに限らず、新しいものに対する拒否反応を和らげていく必要があります。 「とりあえずやってみて、違ったらやめればいい」くらいの感覚でいい。 食わず嫌いで新しい可能性を自分から縮めてしまうのは、一番もったいないことだと思います。 ◆支援者に必要な資質:誰よりも自らが成長し続けること -杉原- 社会環境が激しく変化し、未来が刻々と書き換わっていく中で、個人もスタートアップもその変化に適応し、生き残っていくことが求められています。そうした中で、社会課題を解決し、成長を加速させるエコシステム作りを担う側、つまりアクセラレーターではなく、スケールアップを支援するスケーラーレーター(支援者)に求められる役割とは、どのようなものだと思われますか? -藤本- はい。インキュベーターであろうがスケーラレーターであろうが、共通して最も大切なのは自分たち自身が、誰よりも成長し続けることを徹底することだと思っています。 スタートアップの成長を支援している側が、自分自身は全く成長していなかったとしたら、支援を受ける側からすれば嫌ですよね。 残念ながら支援者の中には、新しいツールを一度も触ったことがなかったり、最新の情報を取りに行って勉強することを怠っていたりする層も一定数存在します。 ですが、支援者だからといって偉いわけでも、万能なわけでもありません。職種もスタートアップのあり方もどんどん変わっていく中で、支援者はスタートアップを超えるスピードで成長していることが非常に大事なのではないでしょうか。 同じことを続けていては、スタートアップからダサいと見放されてしまいます。私たちも「3年後には今とは全然違う話をしているはずだ」と言っていますが、それは決してブレているわけではなく、ポジティブな進化です。 変化を恐れず、自分自身を常に更新し続けること。それが、これからの時代のエコシステムを支える支援者に必要な資質だと思っています。 ◆スタートアップエコシステムとは:全員が当事者として相互に作用し合う -杉原- 最後に、藤本さんが考えるスタートアップエコシステムについて伺えますか? -藤本- 本来、エコシステムという言葉には、有機的・無機的なものが相互に作用し合うという意味があります。 支援というのは、ともすれば支援する側からされる側への一方通行になりがちですが、真のエコシステムには相互作用が不可欠です。 スタートアップが真ん中にいて、周りがそれをお客様扱いして支援するのではなく、全員がエコシステムの当事者・構成者として動くこと。 全員が相互に影響を与え合いながら、エコシステム自体がどんどん成長していく。 つまり、構成員一人ひとりが成長し続けることが、エコシステムを豊かにしていく唯一の道なのだと考えています。 -杉原- その思想は、まさに弊社の代表やメンバーが掲げているビジョンと完全に一致します。 私たちはベンチャーエコシステムの実現を掲げ、一方的な出資や管理ではなく、同じ目線で共に成長する仲間作りを目指しています。 グループ25社の事業で得た利益を次の世代へ投資し、出資先とも対等に学び合う。この私たちの取り組みについて、共感いただける点や協業の可能性などはありますか? -藤本- 素晴らしい取り組みだと思います。私が取り組むスタートアップも、御社が掲げるベンチャーも、根底では重なり合って日本全体のエコシステムを形作っています。 大切なのは、誰が偉いかではなく、全員がビジネスを通じて社会に貢献し、共に発展していくという姿勢です。 そして、エコシステムによって支えられた人が、次は支援する側に回るペイ・フォワード(恩送り)の連鎖が生まれることが、あるべき姿だと思っています。 実は今、政府の支援が手厚くなったことで、一部では補助金をもらうためのビジネスをしてしまう、本来のポテンシャルよりも成長を抑えてしまうようなケースも見受けられます。 それは、世界のエコシステムのスピード感を知らないことで、自分の可能性を狭めてしまっている情報の損失です。 だからこそ、エコシステム同士が相互に作用し、豊かな知見が伝播していくことが重要なのです。 御社のような強い思想を持ったプレイヤーと私たちが手を取り合い、互いに成長しながら良い社会を作っていく。その思想の伝播こそが、これからの日本をアップデートしていく一番の原動力になると信じています。 ☆インタビューアー D-POPS GROUP アドバイザー 杉原 眼太   【一般社団法人スタートアップエコシステム協会】 代表理事:藤本 あゆみ 所在地:東京都港区虎ノ門1-17-1 虎ノ門ヒルズビジネスタワー15階 設 立:2022年3月30日 U R L:https://startupecosystem.org/
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2026.04.07
スタートアップからスケールアップへ! 共に成長し、進化し続けるエコシステムの実現 スタートアップエコシステム協会 代表理事 藤本あゆみさん【Part 2】
今回は、一般社団法人スタートアップエコシステム協会 代表理事の藤本さんにインタビューさせて頂きました。 (このインタビューは2026年1月に実施いたしました。) Part1はこちらからご確認ください。 ◆成果と多様性:500名以上が集う『スタートアップエコシステムサミット』 -杉原- 政府や自治体もスタートアップ支援を掲げていますが、自治体が直接スタートアップの株式に投資することは難しい側面もありますよね。 ですが、確かに採用という形であれば支援が可能です。 また、金融機関が資金提供だけでなく、営業活動にまで伴走しているケースもあり、そうした動きは素晴らしいと感じます。 お話にあった活動の中でも、特に「情報の格差をなくす」という2番目の取り組みには非常に興味がありますが、これまでの活動全体を通して、具体的な事例や成果があれば教えていただけますか? -藤本- はい。やはり『スタートアップエコシステムサミット』が一番の成果であり、事例になるのかなと思っています。 すでに4年ほど継続して開催していますが、昨年は初めてグローバル・ラウンドテーブルを実施しました。 日本には海外のエコシステム関係者もたくさん来ていますが、意外と一堂に会して一緒に取り組むような場がなかったので、そこに集まってもらう機会を作ったんです。 Summit全体では昨年は500人から600人ほどの方々が参加されました。 国内のあらゆるプレイヤーが混じり合っている、その参加者自体の多様さこそが、まさにエコシステムを体現している成果だと言えるのではないでしょうか。 -杉原- 数百人もの各方面の人たちが一つの場に集まるだけでも、本当にすごいことですよね。 -藤本- そうですね。毎年どんどん広がっている実感があります。 最初の頃はとにかく支援者だけで100人ほどから始めたのですが、そこから「やはりスタートアップにも参加してほしい」「地方自治体とも情報を連携したほうがいい」「全省庁にも来てほしい」と、どんどん触れ合いが増えて、毎年多様性が増しています。 同じことを繰り返すのではなく、参加する皆さんがエコシステムの成長を体験できる場であってほしいという想いがあるからこそ、私たちは毎年、違うことに挑戦したいと考えています。 確実に規模が大きくなり、多様さが増していることは参加されている方も実感してくださっています。 ある種同窓会のような側面もありつつ、エコシステムの進化を感じ、スタートアップが新しい情報をすべて見つけられるような場所でありたいですね。 現在は、東京都に支援いただいている有楽町のTokyo Innovation Base(TIB)を活用したり、運営面でも連携したりしながら活動を広げています。 ◆海外との連携:支援者同士が繋がるグローバルな場 -杉原- スタートアップエコシステム協会は一般社団法人ですので、利益を出すことが目的ではなく、非常に純度の高い、志のある活動をされていますよね。 運営メンバーも、Google出身の方など非常に優秀な方々が集まって活動されている印象です。 先ほどのスタートアップエコシステムサミットですが、特に前回、昨年10月に開催されたイベントについてお伺いします。ホームページを拝見したのですが、こちらは東京都が主催し、協会が深く関わったグローバル向けのイベントですよね。 開催の経緯や、実際の反響はいかがでしたか? -藤本- そうですね、昨年のイベントは特にグローバルの視点が非常に良かったと感じています。 通常、ベンチャーキャピタルなどが主催するイベントや、東京都の『SusHi Tech Tokyo』などには海外からも多くの人が来ますが、意外と支援者同士がじっくり話す機会は少ないんです。 その時は、アジア、アメリカ、ヨーロッパなど各国の支援関係者方々や、大規模な施設運営、アクセラレーションプログラムを担当している当事者たちに来ていただきました。 「シンガポールでは今、どのようなスタートアップ支援がメインなのか」「フランスではどのような変化が起きているのか」といった話を、本人の口から直接聞く機会を作れたのは非常に意義があったと思います。 また、私は毎年新しい取り組みをするのが好きなので、去年は『トライアングルセッション』という、登壇者3名とモデレーター1名で行う形式を導入しました。 法務・アクセラレーター・起業家教育等といった特定のテーマを決め、1セッション15分という短時間で、鋭く当事者の取り組みを話してもらいます。 一昨年までは、10名ほどが登壇する大きな単位でセッションを行っていましたが、それだとどうしても内容が広くなりすぎてしまいます。 参加者からは「もっとこの部分が聞きたい」「同じテーマで3社の異なる知見を聞いて、その違いを知りたい」というニーズがありました。 当初、この形式を提案した時は、登壇者の方々も東京都の担当者も「15分で何ができるのかイメージがわかない」と困惑されていました。 しかし、実際にやってみると非常に好評でした。 その場で全てを語り尽くすのではなく、そこでエッセンスを掴んでもらって、その後で直接話をしたり情報を見に行ったりするためのきっかけを作ること。 それこそが一番大事だと考えていたので、それが実現できたのが昨年の大きな進化でした。 -杉原- 15分という短時間のセッション形式は、他の講演の場でも活用できそうですね。 -藤本- はい、もちろんです。よかったら他の人たちにもどんどん使ってもらいたいと思っています。 私たち協会では、昨年から今年にかけて『エコシステム調査』を継続しており、昨年は20か国ほど現地を回って調査を行いました。 そこで目にした各国のカンファレンス、ワークショップ、様々なプログラムの取り組みなどは、私たちだけが知っていても意味がないと考えています。 「自分たちはやらなかったけれど、海外にはこんな運営の仕方があったよ」といったアイデアを出し、それを他の誰かが実行してくれることが大切なんです。 -杉原- 登壇の依頼をする際などは、相手が多忙な方だと躊躇することもあるかと思いますが、スムーズに進むものなのですか? -藤本- はい、そこはやはりこれまでの積み重ねの賜物だなと感じています。 皆さん「協会がやるイベントだから間違いない」と恐らく信頼してくださっていて、登壇を依頼するとすぐに決まることが多いですね。「検討します」というよりは、「その方向で行きましょう」と快諾してくださいます。 設立時のサポーターの方々をはじめ、皆さんがこの活動の必要性を感じてくださっているからこそだと思います。 またこうして依頼に応じてくださるのは、私たちが非営利で活動していることも大きいと思います。 これを事業として儲けたいわけではなく、純粋にエコシステムのために動いている。協会のイベントを通じて、それぞれの事業者がやっている取り組みが外に広まるきっかけになればと考えています。 これがもし、特定の民間企業の事業としての協力依頼だったら、なかなかこうはいかないでしょうね。 ◆世界の潮流:スタートアップからスケールアップへ -杉原- 協会のレポートも拝見しましたが、世界を回られた中で感じた大きな潮流について伺いたいです。 その中で、これまでのスタートアップ支援から『スケールアップ支援』へと変化が起きているという指摘がありました。 この潮流は、今まさに起きていることなのでしょうか? -藤本- はい、この2年ほどで世界的に『スケールアップ』という言葉が非常に増えています。 以前はスタートアップというカテゴリーの中に含まれていましたが、今は『スタートアップス』と『スケールアップス』という2つの名詞として切り分けられるようになっています。 いろんな国で、スタートアップ政策とスケールアップ政策の2つが語られるようになっているのが現状です。 -杉原- なぜ、そのように切り分けて支援する必要が出てきたのでしょうか? -藤本- 例えば、スタートアップ政策を始めて10年ほど経つフランスでは、いわゆるユニコーンと呼ばれる急成長企業が出てきました。 税金を投入して支援する期待として、雇用や税収を最大化するには、やはり一定規模まで会社を育てきる必要があります。 スタートアップは裾野を広げる活動ですが、スケールアップはGoogleのような巨大企業を目指す高さを出す活動です。 この両者では必要な支援策が全く異なるため、あえて切り出して議論されるようになりました。 -杉原- 日本でいうグロースとはまた違うニュアンスなのでしょうか? -藤本- 日本ではよくグロースと言われますが、世界で言われるスケールアップとの違いは成長の角度です。 グロースが線形の成長を指すのに対し、スケールアップは非線形(Jカーブ)の急成長を指します。 長い時間をかけて成長するのではなく、今必要とされているのは、爆発的な急成長を遂げるスケールアップスをどう作るか、という議論です。 日本もこの1年ほどで、名前こそ違えど高さを出す(急成長させる)ことの重要性に気づき始めています。 まだ政策として完全に落とし込まれてはいませんが、先行する数か国の事例を見ながら、日本でもこれから変わっていくはずです。 実は、東京都はここでも先行していました。 昨年の10月の戦略発表の際、すでにスタートアップス、スケールアップスという言葉を初めて並べて使っていたんです。 ◆新会社設立の背景:日本が世界に負けないためのスピード感 -杉原- 素晴らしいですね。そのスケールアップにフォーカスした取り組みを行うべく、名倉さんと新たに『FoundersNation』という会社を設立されましたよね。 この新会社は、一般社団法人スタートアップエコシステム協会とどのように住み分けをされているのでしょうか? -藤本- スタートアップエコシステム協会は、特定の業界や特定のスタートアップを個別に支援することはしません。 あくまでエコシステムの発展のために活動する組織であり、もっと全体感を重視した取り組みを行っています。 ただ、活動を続ける中で、個別のスタートアップや特定の業界に関する相談もたくさんいただくようになりました。 ですが、協会の立場としては「特定の個別支援はできない」とお断りせざるを得ず、動けないことへのジレンマをずっと感じていたんです。 特にスケールアップの潮流が顕著になってからは、より強く危機感を抱くようになりました。 というのも、エコシステムという土壌を作るのには非常に長い時間がかかります。 スケールアップを生み出すためのエコシステムを構築することはもちろん可能ですが、それを待っていたら、日本は世界に負けてしまうという切実な思いがありました。 今、その領域のプレイヤーが圧倒的に少ない中で、時間を待っている余裕はありません。 それならば、協会とはまた別の組織として、営利企業という形でスケールアップ支援に特化した活動を行うべきだと考え、新会社を設立しました。 ~Part3へ続く~ ☆インタビューアー D-POPS GROUP アドバイザー 杉原 眼太   【一般社団法人スタートアップエコシステム協会】 代表理事:藤本 あゆみ 所在地:東京都港区虎ノ門1-17-1 虎ノ門ヒルズビジネスタワー15階 設 立:2022年3月30日 U R L:https://startupecosystem.org/ 次回Part3のインタビューでは、 ・Googleで知ったゼロから作る楽しさ ・ジェンダーギャップの解消 ・日本の次の強み:技術を「ビジネスにする力」と「伝える力」 ・スタートアップエコシステムとは などについてお伺いしています。 Part3もぜひご覧ください!
  • INTERVIEW
2026.04.02
スタートアップからスケールアップへ! 共に成長し、進化し続けるエコシステムの実現 スタートアップエコシステム協会 代表理事 藤本あゆみさん【Part 1】
D-POPS GROUPでは、日本のベンチャーエコシステムの発展を支援するため、多角的な活動を展開しています。2026年1月、その志を同じくする一般社団法人スタートアップエコシステム協会の代表理事、藤本あゆみさんへのインタビューを実施しました。 全3回にわたるインタビューのPart1では、協会の設立秘話や、現場の調査から見えてきた「資金調達よりも切実なスタートアップの課題」について深く掘り下げます。 (このインタビューは2026年1月に実施いたしました。) ◆協会の設立経緯:3年越しの構想と「宣言」 -杉原- 今回は、当社が目指す「ベンチャーエコシステムの実現」と非常に近い活動をしておられる、一般社団法人スタートアップエコシステム協会を4年前の2022年3月に設立した、代表理事の藤本あゆみさんにインタビューいたします。 まず初めに、この一般社団法人スタートアップエコシステム協会(以下、協会)を設立された経緯を教えていただけますか?CMOとしてPlug and Play Japan社に在籍中に設立されたのですよね。 -藤本- はい。設立したのは2022年ですが、実は構想自体は2019年、私がPlug and Play Japanに入ってすぐの頃から持っていました。 当時はアクセラレーターというカテゴリーが認知され始め、様々なプレイヤーが登場していた時期です。「1社でできることは限られているけれど、もっと横が繋がって広く連携すれば、スタートアップが成長する土壌(エコシステム)ができるのではないか」と考え、当時はまだ協会という名前ではありませんでしたが、ネットワーク化の企画書を書いていました。 ただ、当時は社内でも「意義はわかるけれど、今は難しいよね」という話になり、一度その案は寝かせることにしたんです。 それが再び動き出したのは、CIC Tokyoの1周年記念イベントに呼んでいただいたことがきっかけでした。そこで東京都副知事の宮坂さんや、CICの名倉さんたちとパネルディスカッションを行ったんです。 そのパネルの最中、何の文脈だったか「もっとスタートアップが育つ土壌として、こういう横の繋がりがあった方がいいですよね」と団体の構想があったという話をした際に、宮坂副知事「それはやったほうがいいよ」とコメントをもらい、セッションの最後に「というわけで、私がやることになると思うんですが」と、半分冗談、半分本気のような勢いで宣言してしまったんです(笑)。 その夜すぐに企画書を掘り起こして修正し、その日のうちにセッションの参加者の皆さんに送りました。特に名倉さんが「一緒にやりましょう」と強く背中を押してくださったので、「やります」と決断することができました。 それが2021年の後半。コロナ禍で先行きが見えない時期でしたが、だからこそ支援者同士が繋がって、日本のエコシステムを強くしようという目的が固まりました。 ◆支援側のネットワーク化 -杉原- 横の繋がりというのは、スタートアップ同士というより、支援側のネットワークを指しているのでしょうか? -藤本- 私たちは後者ですね。政府や自治体、事業会社、そして個人に至るまで、皆が動いているのになぜかバラバラで、連携しにくいという課題がありました。そこを繋ぎ合わせるのが私たちの役割です。 同時期に砂川さん(一般社団法人スタートアップ協会 代表理事)に声をかけたら、「実は僕たちも同じことを考えていた」と仰っていて。結果としてスタートアップ協会を含めて、4つほどの支援団体がほぼ同時期に誕生しました。それぞれ目的は違えど、スタートアップが育ち、日本経済に貢献する環境を作るというゴールは共通しており、今でも連携を続けています。 -杉原- Plug and Play社としては、最終的には別組織として活動することに合意されたのですね。 -藤本- はい。あらためて経営陣に話をしたら「今はやはり(業界全体のために)必要だよね」と理解してくれました。ただし、自社の事業としてではなく、中立な立場の一般社団法人としてやるべきだということで合意形成がなされました。 -杉原- 名倉さんや宮坂さんとは、そのパネルディスカッションの前から深いお知り合いだったのですか? -藤本- 数回お会いしたことがある程度でした。ただ、名倉さんとは以前テレビ番組でご一緒した縁があり、その時に「CIC Tokyoの1周年イベントに来てください」と声をかけてくださったんです。あのお誘いがなければ協会はできていなかったので、本当に感謝しています。 ◆協力体制の構築 -杉原- 協会の公式サイトを拝見すると、東京都をはじめとする自治体、著名な連続起業家、投資家、さらには政治家の方々まで、そうそうたる顔ぶれが名を連ねています。これほどのコネクションを、どのようにして築き上げられたのでしょうか? -藤本- 実を言うと、2019年の構想時点ではこれほどの方々を巻き込むことは難しかったと思います。2022年というタイミングだからこそ実現できたことですね。 活動を続ける中で、エコシステムに関わる多くのプレイヤーが連携や意見交換の必要性を感じ始めていました。そこで、名倉さんと私の二人で、このエコシステムに必要だと思う方々を知りうる限り全員書き出したんです。 そこから「こういう仕組みを作りたいので、ぜひ後押ししてください」と一人ひとりにお話ししました。当時はまだ具体的な活動内容まで決まっていなかったのですが、皆さん「それはぜひやるべきだ」と快諾してくださり、サポーターとして加わっていただけることになりました。 サポーターの皆さんは、政治家、経済団体、事業会社など、それぞれが異なる角度からスタートアップを支援している方々です。そうした方々の知見やネットワークが一箇所に集まるだけでも、エコシステム全体にとって大きな価値があると考えています。 -杉原- サポーターの方々には、具体的にどのような役割を期待されているのですか? 例えば総会でのスピーチや、特定の課題へのアドバイスなど、名前が載っている以上の具体的な活動についても伺いたいです。 -藤本- もちろん、イベントに登壇いただくこともありますが、あえて関わりを重くしすぎないことも大切にしています。 「サポーターになったからには、これをしなければならない」という義務を課すのではなく、必要な時にお互いに情報交換ができ、助言をいただけるような、フラットで風通しの良い関係を目指しました。 皆さん、深いコミットメントを強要しなくても、エコシステムの発展に対して非常にポジティブです。ここが必要な場所だと信じてくださっているからこそ、緩やかでありながらも強い協力体制が築けているのだと感じています。 ◆活動の3つの柱:情報共有・格差是正・海外連携 -杉原- スタートアップエコシステム協会が具体的にどのような活動をされているのか、その内容を教えていただけますか? -藤本- はい。主に3つの柱があります。 1つ目は、国内の情報を集めて共有することです。 いわばGoogleのエコシステム版のように、情報を集めて整理し、使いやすくすることを目指しています。(注:Googleのミッションは「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること」) 具体的な活動としては、『スタートアップエコシステムサミット』を毎年1回開催しています。 通常、スタートアップ関連のイベントといえばスタートアップが登壇するものですが、このサミットではスタートアップは一切登壇せず、支援者側が全員登壇するのが特徴です。 企業や政府、自治体などの機関が、「私たちはスタートアップに対して、今このような支援プログラムを提供しています」という内容を話します。 これはスタートアップ向けでもありますが、どちらかというとエコシステム内の情報共有を強化する狙いがあります。 意外と「隣の組織が何をやっているか知らない」ということが多いので、年に一度こうした場を持つことで、「あそこは今こんな風に進化したんだ」「この間はやっていなかったのに」といった気づきや、「ここが連携すると面白いよね」という機会を作る活動をしています。 これが国内向けの1つ目の柱です。 2つ目は、特にスタートアップに向けた情報の格差をなくすための活動です。 スタートアップの成長過程では様々なことが起こりますが、一番足りていないのは情報の格差だと感じています。 「本当は知っていれば、その障害につまずかずに済んだ」というものがたくさんあるので、それをなくしたい。 そのために、サミットに登壇する方々以外も含めたあらゆる支援情報を網羅したデータベースを作成しています。 また、スタートアップが非常に困っている採用の支援も企画しました。 採用のためのキャリアフェアなどは最初にお金がかかりますよね。 良い人が採れるかどうかもわからない段階で、スタートアップが40万円、50万円という費用を払うのは難しい。 そこで東京都と連携してキャリアフェアを開催し、採用イベントを行っています。 その中でも、例えば「学生がインターンをしたいけれど、大人が話しているブースに割り込んで『インターンやってますか?』と聞きに行くのは怖い」という声がありました。 そこから派生して、学生しか参加できないインターンシップフェスというイベントも生まれました。 こうしたスタートアップのための情報共有と活動が2つ目です。 3つ目がグローバルとの連携です。 エコシステムは日本国内だけで完結するものではありません。 海外のあらゆるエコシステムと繋がりたいと思っています。 日本に海外のスタートアップを連れてきたいというニーズもあれば、日本のスタートアップを海外に呼んでほしいというニーズもあります。 そうしたニーズの架け橋になるような活動をしています。 主にこれら3つの軸で活動を展開しています。 ◆現場の課題解決:資金よりも「採用と営業」 -杉原- 確かにスタートアップ関連のイベントというと、スタートアップがピッチをして投資家が審査するような関係性のものが多いですよね。 VCファンドや金融機関などが主催するイベントも、そうした形が一般的だと思います。 スタートアップを応援する側の人たちをすべて可視化して、支援者が主役になるという取り組みは、他ではあまり見かけません。 -藤本- そうですね。他ではやっていないと思います。 一般社団法人として非営利でしかできない活動だとも感じています。 ビジネスにはなりづらいけれど、みんなが必要だと思っていたことの一つなのかな、と思っています。 また、もう一つの活動として、政府への政策提言も行っています。 政府側にはなかなかスタートアップの現場の声が届きにくいという現状があるため、私たちがメインとなって調査を行い、スタートアップが今何に困っているのかという声を直接政府に届けるようにしています。 -杉原- 先ほどのお話にもあった、情報の格差や採用に関する課題などは、まさにそうですよね。 スタートアップにとって、採用は最も難しいことの一つだと思います。 -藤本- はい。実はそれも調査から導き出された答えなんです。 資金調達に関する支援は世の中にたくさんありますが、実際に調査をしてみると、資金面で困っているのは全体の30%ほどでした。 残りの多くが何に困っているかというと、採用と営業の2つなんです。 ここに関しては、支援プログラムが全然ありませんでした。 「具体的に何をすればいいのか」という場所もなかなかなかったので、東京都と一緒にキャリアフェアを作り上げてきました。 実は今年からは、私たちの手を少し離れて、独自に東京都の事業として自走してもらう形に移行しています。 私たちはそのきっかけとなる初めの仕組みを作った、という形ですね。 ~Part2へ続く~ ☆インタビューアー D-POPS GROUP アドバイザー 杉原 眼太 【一般社団法人スタートアップエコシステム協会】 代表理事:藤本 あゆみ 所在地:東京都港区虎ノ門1-17-1 虎ノ門ヒルズビジネスタワー15階 設 立:2022年3月30日 U R L:https://startupecosystem.org/   次回Part2のインタビューでは、 ・スタートアップエコシステムサミットについて ・海外との連携 ・世界の潮流:スタートアップからスケールアップへ ・新会社設立の背景 などについてお伺いしています。 Part2もぜひご覧ください!
  • INTERVIEW
2026.03.26
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