COLUMN

【グループ会社インタビュー】株式会社フェイスフル 加藤 貴博 社長 ~前編~

  • INTERVIEW
2026.03.12

D-POPS GROUPでは、現在約25社のグループ会社が仲間となっています。
今回は、株式会社ディ・ポップスグループ 常務執行役員 経営企画室室長 及び 株式会社フェイスフル 代表取締役の加藤さんへインタビューいたしました。
(このインタビューは2025年12月に実施しました。)

◆入社の経緯

-杉原-
今回は、ディ・ポップスグループ 経営企画室室長でM&Aを担当されている加藤さんにお話を伺います。加藤さんは、グループ会社である株式会社フェイスフルの代表も務められています。本日はよろしくお願いいたします!

加藤さんは2006年8月にご入社されたと伺っていますが、それまでのご経歴と、入社の経緯を教えていただけますか?

-加藤-
前職は仙台の会計事務所で、財務コンサルタントとして医療法人の設立支援やメディカルモールの開業支援などを担当していました。そこで5年ほどがむしゃらに働きました。

当時は、成果を出せば出すほど給与に反映される報酬形態の会社で、23歳という若さで地方企業に関わらず、年収500万円ほど稼いでいたんです。今から20年前の物価感覚で言えば、かなり破格の待遇だったと思います。

ただ、若くして稼げるようになった分、いつの間にか意識の矢印が「お客様」ではなく「自分の収入」に向いてしまっていました。「このお客様なら、この位の保険を契約してもらえるな」と、自分の利益を優先して考えてしまう。そんな慢心があったのだと思います。

そんな時、学生時代のアルバイトから大変お世話になり、恩人が独立して事業を始められたんです。その社長は「加藤が頑張っているなら」と私の最初のお客様になってくれました。しかし、私が昇進したことで、直接その方を担当するポジションから外れてしまい、気持ちが離れてしまいました。しばらくして、彼の事業が行き詰まり、廃業してしまったんです。

普通高校で簿記を学び始めた頃、私は「将来、社長の役に立ちたい」という純粋な志を持っていました。それなのに、目先の利益に目が眩み、大切な恩人の変化にも気づけなかった。自分の慢心が招いた結果だと、激しい後悔に苛まれました。

「社長を外部コンサルタントとして遠くから支えるよりも、近くの1人の社長の右腕になったら、どれだけ社長を支え、事業をスケールできるだろう」と思って転職活動をはじめしました。

-杉原-
そのときに後藤社長に出会われたんですか。

-加藤-
はい。当時、ディ・ポップスともう一社の2社を受けていました。

もう一社の方は、内定後すぐに「今すぐ入社してほしい」という条件でした。しかし、当時の私はまだ仙台に住んでおり、娘が生まれる直前というタイミング。どうしても「3ヶ月待ってほしい」と伝えましたが、それでは難しいと断られてしまったんです。

一方、後藤社長は違いました。私の事情を正直に伝えると、「分かった。3ヶ月待つよ」と言ってくださったんです。その懐の深さに触れ、ディ・ポップスへの入社を決めました。

今でも忘れられないのは、面接の密度です。1次・2次と2回を行ったのですが、すべて後藤社長が自ら面接対応してくださり、それぞれ3時間以上、計6時間以上も将来の目標や想いを聞き、できる事をお伝えしました。あの濃厚な対話があったからこそ、この人の元で再出発しようと確信できました。

◆入社当時のディ・ポップスについて

-杉原-
3時間!すごいですね。加藤さんが2006年に入社した当時の役割は何だったんでしょうか?

-加藤-
当時の私の役割は「バックオフィス全般を任せたい」ということで、幹部候補として管理部採用でしたが、いざ入ってみると驚くような状態でした(笑)。

たとえば、全店舗の売上入金を私一人で担当していたんです。当時はまだ割賦販売(ローン)が普及していなかったので、各店舗の金庫には毎日何百万円もの現金が貯まっていました。それを回収して、店舗から一番近い銀行のATMまで運んで、後で分かる様に1日分ずつ入金するということをひたすらやっていました。5-6店舗回ると夕方になり、そこから帰社して、現金照合したり経理処理する日々です。

組織の雰囲気も、まさに戦場です。「生き残るためには隣の競合店を蹴落としてでも、結果を出す」という強烈な雰囲気を感じる競争の中にいました。正社員もアルバイトも派遣スタッフも関係なく、全員がひたすら目の前の販売台数(売上)だけを追いかけている、そんな時代でした。

-杉原-
管理体制も今とは全く違ったのでしょうね。

-加藤-
そうですね。当時は勤怠確認を出社FAXという仕組みでやっていました。スタッフが店舗に出勤したら本社にFAXを送る。そうしないと店が開いているかどうかも把握できなかったんです。それでも、お客様から本社に「今日、店が開いてないんだけど?」と電話がかかってくることがありました(笑)。

その後、ITシステムを導入しましたが、今度は店舗の外から勝手に打刻してしまうスタッフが出てきてしまって。結局打刻だけでは意味がないということになったんです。

そこで次に導入したのが、店舗のFAXを使って「朝のクレドテスト」に回答させるという方法でした。ところが、これも知恵が働く人がいて、なんとFAXのタイマー送信機能を使って不正をしようとする。まさに不正アクセスや不正打刻とのいたちごっこで、制度そのものを根底から考え直さなければならない時代でした。

-杉原-
そこからどのように今のような組織へと変わっていったのでしょうか。

-加藤-
大きく変わったのは、2007年から2008年頃にかけて新卒採用を始めたあたりからだと思います。それまでの数字さえ出せれば何をしてもいいという文化から、教育を受けた新卒社員が入ってくることで、組織の意識がガラッと変わっていきました。今振り返ると、あれが大きな転換点だったと思います。

-杉原-
加藤さん自身の考え方が変わったのはいつ頃だったのでしょうか。

-加藤-
はい、人生観が変わるような大きな変化がありました。 昔から後藤代表は、経営状況の報告で銀行などを訪問する際にも常に「誠実・謙虚・感謝」という言葉を聞かされていました。当時は正直なところ、私にとってはただの呪文のようにしか聞こえていなかったんです。でも、長年組織に向き合ってきた今では、あの言葉が本当に腹落ちして、深く納得できるようになりました。

◆組織の土台づくり

-杉原-
2017年のグループ経営移行前、ディ・ポップス時代には、経営企画としてありとあらゆる業務を担われていたそうですね。

-加藤-
はい。M&Aを本格化させるまでの約10年間は、とにかく組織の土台づくりに奔走しました。当時はまだ社労士さんとの契約もなく、労務管理も後藤代表のお母様が担当されていたような状態でしたから、まずはそこを専門的な制度に切り替えることから始めました。

他にも、現金管理のタイムラグをなくしてキャッシュフローを可視化したり、当時は存在しなかった実績管理の仕組みを作ったり。季節係数を盛り込んで店舗別の精緻な数字を算出したり、店舗別損益を管理したりと、経営判断をするための数字を一つずつ整備していったんです。

-杉原-
そうした緻密な制度設計がないと、現在の規模での経営は不可能ですよね。

-加藤-
おっしゃる通りです。ただ、一方で仕組みを整えながらも、ずっと大切にしてきたのは「店舗スタッフの感情移入接客」という現場の熱量と想いでした。 入社直後に、後藤代表と1週間かけて一緒に全店舗を回るオリエンテーションがあったんです。店舗の前で1時間ほど接客の様子を見ながら、後藤代表とディスカッションさせていただきました。。

後藤代表は、「あの店長は数字こそ平凡かもしれないけれど、お客様から圧倒的な支持を得ているんだ。見てごらん、お客様があんなに笑顔で帰っていく。店舗によって笑顔の形は違うけれど、あれがうちの強みなんだ」と教えてくれました。

ただ数字を管理するだけでなく、その裏側にある現場の温度感やお客様との絆を肌で感じさせてもらった。その経験があったからこそ、管理のための制度づくりだけでなく、心の通った組織運営の制度を意識できたのだと思います。

-杉原-
店舗の運営や、事業の現場に直接関わることはあったのでしょうか?

-加藤-
店舗のオペレーションを正確に把握するために、2週間だけ現場に入ったことがあります。現場でどこにどのような課題があるのか、その流れを一通り理解した上で、再び本社の業務に戻りました。

入社時は管理部という所属でしたが、私の出す提案が企画寄りであったり、工夫や改善を求められる内容が多かったりしたこともあって、「『経営企画』という名前に変えて、もっと外に出て動きなさい」とアドバイスをいただいたんです。そこから約10年間、経営企画として長く務めることになりました。

◆M&A戦略の始動とフェイスフルとの出会い

-杉原-
2017年にフェイスフルの代表取締役に就任されていますが、ここにはどのような背景があったのですか?

-加藤-
グループが売上100億円を達成した2015〜16年頃、販売制度の変更という大きな逆風が吹いたんです。3ヶ月で1億円の赤字を出すという、グループにとって2度目の大きな危機でした。

この時、当時の幹部メンバーたちが「守りに入るのではなく、挑戦する姿勢を見せよう」と、それぞれが新しい領域へ踏み出すことになりました。人事を担当していた堀さんが、グッド・クルーの社長として牽引したり、岩間さんがM&Aで譲受したジーネクストの社長に就任したり。藤田さんがアドバンサーを、保坂さんがSTAR CAREERを設立したりと、当時の幹部から大きく動き出しました。

その中で、私はM&Aの責任者を任されることになりました。

-杉原-
M&A戦略へと舵を切ったのは、必然だったのでしょうか。

-加藤-
そうですね、私が担当したのは自然な流れでした。後藤代表は以前からM&Aをやりたいと仰っていましたし、自社内のリソースだけで積み上げるビジネス(オーガニック成長)だけでは、成長の角度を劇的に上げることはできないという危機感がありました。労働集約型のモデルだけでは、成長を逆算して描くのが難しかった。そこで、M&Aを成長戦略の柱に据えることになったんです。

実はフェイスフルという会社も、私がM&A担当として譲り受けた会社の一つでした。

-杉原-
自らM&Aを決めた会社の代表に、そのまま就任されたわけですね。

-加藤-
はい。M&Aの1号案件はgraphDという会社で、そして2社目に買収したのがフェイスフルでした。自分で買収を提案して推した会社ですから、その後の舵取りも自ら引き受けることになったというのが代表就任の経緯です。

-杉原-
2015年から16年にかけて、組織のあり方が激変したのですね。

-加藤-
まさに、今のグループ経営の土台が作られたスタートの時期でした。

-杉原-
M&A担当として2社目に買収したのがフェイスフルとのことですが、当時の事業概要を教えてください。

-加藤-
実は、M&Aした直後数ヶ月でピボット(事業転換)を余儀なくされたんです。

当初、フェイスフルは記事制作代行の事業をメインで行っていました。ところが、そのタイミングでキュレーションメディアの信頼性問題が社会的に発生し、業界全体に激震が走ったんです。その煽りを私達も受けて、私たちの手がけていた記事も炎上してしまいました。

売上の7〜8割を占めていた主力事業が続けられない状況になり、一気に大赤字に転落。普通ならM&Aは失敗だったと諦めてしまうような局面でしたが、ここで撤退してしまえば次の一手が打てなくなります。そこで、不採算となった旧事業を切り離し、再起を図ることにしたんです。

◆持続可能なBtoBモデルの構築へ

-杉原-
そこからどうやって、現在の事業へと作り替えていったのですか?

-加藤-
現在に至るまでの事業は、買収したときの中身を引き継いだのではなく、完全にゼロから作り上げたものです。

当時、弊社の社外取締役でファインドスターグループの内藤社長が、取締役会で「既存のビジネスを少しずつずらしていくと、新しいビジネスチャンスが見つかるよ」というアドバイスをいただいていました。そこで、「もし自分たちが携帯電話を店舗販売していなかったら、何ができるだろう?」と考え、ターゲットを法人(BtoB)に絞った通信コンサルティングに振り切ることにしたんです。

新規事業を立ち上げたわけですが、当時、私はずっとディ・ポップスグループの役員で銀行担当も兼務していました。周囲からは「現場が疲弊しない、持続可能なビジネスを作ってくれ」という期待もあり、それなら「銀行をリファラルパートナー(紹介者)に迎えたモデル」がベストだと思い付き、ご提案してパートナーになっていただきました。

◆フェイスフルの強みと「働く仲間」への想い

-杉原-
現在のフェイスフルの事業を一言で表すと、どのような事業になりますか?

-加藤-
一言で言えば中小企業の支援事業です。もともとはメディア事業を譲り受けたわけですが、それをピボットし、全く新しい形で中小企業の課題解決を行う現在のコンサルティングモデルを構築しました。

-杉原-
数あるコンサルティング企業の中で、フェイスフルの強みはどこにあるのでしょうか。

-加藤-
やはり、長年携帯ショップを経験を積んできたスタッフがコンサルティング提案するので、ノウハウをすべて活かせることが、圧倒的な強みですね。 他社の法人向けOA機器サービス会社は、商材を売って終わりの売りっぱなしになりがちです。その後のフォローが難しいし、キャリアさんとの深い付き合いがないので、踏み込んだ調整も難しい。

私たちはキャリアさんとの強固なリレーションを背景に、公正中立な比較提案ができますし、何より現場を熟知したメンバーがそのまま移籍して活躍できる環境があります。

-杉原-
働くメンバーの環境という視点も、事業立ち上げの背景にあったのですね。

-加藤-
実は、そこには裏の目標もありました。店舗業務はどうしても土日がメインになりますが、BtoB(法人向け)事業であれば平日メインの働き方を作ってあげられる。

メンバーがキャリアアップしていく中で、より高い専門性を身につけ、付加価値を乗せていける。そんなBtoBの領域を深掘りすることで、働く仲間の将来の選択肢を広げたかったという想いがあります。

-杉原-
店舗での店舗営業(BtoC)から、法人営業(BtoB)への転換は、メンバーにとってかなり高いハードルだったのではないでしょうか?

-加藤-
そこはもう、今でも大きな葛藤があり、試行錯誤の連続です。営業スタイルも必要な知識も全く違いますから、その超えられない壁は想像以上に大きいものでした。

フェイスフルのメンバーは圧倒的にグループ内からの転籍組が多いのですが、最初から法人営業として募集し、専門特化して作られた組織とは立ち上がりの性質が異なります。いかにして店舗で培った接客力を、法人の課題解決力へと昇華させるか。そこは常に組織としての課題であり、挑戦でもありますね。

~後編に続く~

☆インタビューアー
D-POPS GROUP アドバイザー 杉原 眼太

 

【株式会社ディ・ポップスグループ】
常務執行役員 経営企画室室長 加藤 貴博

【株式会社フェイスフル】
代表者:(共同)代表取締役 加藤 貴博
所在地:東京都渋⾕区渋⾕2-21-1 渋⾕ヒカリエ32階

次回後編のインタビューでは、
・M&A責任者としての奔走
・「人」を重視するD-POPS GROUPのM&A
・後藤代表が大切にする「気の流れ」
・「ベンチャーエコシステムの実現」に向けて
・5年後の理想の姿
などについてお伺いしています。

後編もぜひご覧ください!

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  • INTERVIEW
2026.06.02
「健康は最高の投資」40年のキャリアが語る、経営者の体と姿勢の真実|青山一丁目カイロプラクティック・山口博院長インタビュー【Part2】
全3回にわたるインタビュー Part2では、経営者の孤独と精神的ストレスが体に与える深刻な影響をテーマに掘り下げます。施術前に患者の「歩き方」「表情」「声質」を観察するプロの視点と、投資家として起業家を評価する際の「人物のOS」チェックの共通点が明かされます。カイロプラクティック院長が語る「姿勢と表情は相互に影響し合う」という身体の真実、そして山口先生がカイロプラクティックの道へ進んだ原点のエピソードもお届けします。(このインタビューは2026年4月に実施しました。) Part1はこちらからご覧ください。 ■ スタートアップ経営者の体は「OS」— 姿勢は生産性を最大化するための投資 -杉原- IT業界やテック業界に勤める若い起業家にとっても、この話は非常に重要だと思います。起業家も物心ついた頃からスマホが当たり前の世代が多くなっているので、彼らにもわかりやすく「姿勢が悪いと何が起きるか」を説明していただけますか。 -山口- 先ほど申しましたように、姿勢を正すということは単なる健康法ではなく、今行っている事業を成功させるための投資、生産性を最大化するための投資と考えていただきたいです。経営者やスタートアップのみなさんなどにとって、体というのは「OS」です。 どんなに優れたアプリ(スキルや戦略)があっても、OSがちゃんと動かなければ意味がありませんよね。そのOSが、まさに経営者ご自身の体なんです。 -杉原- OSがバグっていたら、いいアプリがあっても、頭の中にある構造を具現化できないですよね。 -山口- まさにそうです。健康と姿勢はもちろん姿勢だけではありませんが、姿勢も深く関係しています。そういうことをぜひお伝えしたいと思っています。 ■ ストレスは体を固くする — 精神的疲労のメカニズム -杉原- 当ディ・ポップスグループのグループ会社は25社、また出資をしている会社は30社ほどあります。みんな経営者で、様々なフィールドで社会課題の解決に向けて頑張っています。 ただ、資金繰り問題や人事問題など、経営者になると様々なプレッシャーがあり、それを人に言えない立場の方も多いんですよね。経営者の孤独というか、誰にも話せない悩みを抱えながら頑張っています。そういう状態は、やはり体に不調をきたしやすいものなのでしょうか。 -山口- 何かを支えたり持ったりする肉体的な疲労というものがありますよね。そして、もう1つは気を使うこと、問題を解決しなければならないプレッシャー、人の間に挟まれて困ることなど、そういったメンタル的・精神的な疲労も筋肉を固くさせます。 むしろ、運動性の疲労は体を動かせばある程度解消できますが、精神的な疲労の方が体への影響が大きいことも多いんです。 昔の言葉に「借金で首が回らない」という表現がありますよね。思い悩むことが続いたり、辛いことが重なったりすると、首が硬くなって眠れなくなったり、頭痛がしたりする。昔の人はこういった身体症状を的確に言語化していたんです。「借金で首が回らない」は、ストレスによる典型的な身体症状なんですね。 この言葉が生まれた頃は「ストレス」という言葉自体がまだなかった。今の言葉で言えば、まさに「ストレスで首が回らなくなる」ということです。 以前、外資系企業の社長さんで日本語があまりわからない方が来られたことがあります。その方の頭痛や首の痛みはストレスから来ていると思いましたので、英語で「How do you like your new boss?(新しい上司はどうですか?)」と聞いた後に、英語の表現「He's a pain in the neck(あいつが首を痛めている、つまり"あいつには頭が痛い")」の話をしたんです。日本語でも英語でも、ストレスは首を痛める。これは普遍的な事実なんですね。 ■ 脳神経が首・肩を直撃する — ストレスの身体メカニズム -杉原- 抱え込み続けると体に来るんですね。 -山口- 一番気を使う人や、全く気が合わない人と1日仕事をすると、座っていなくても夕方になると首が硬くなって頭痛がすることがよくありますよね。それは肉体的な疲労ではなく、精神的な疲労から来るものです。 なぜかというと、肩より下の多くの動きは「脊髄」という感情のない部位から出る神経の影響が多く、感情がない部位から出ているので、どれほど気を遣っても足が動かなくなる、手が動かなくなるということは起きません。ところが、首から上(特に頭や首、肩)は「脳神経」という、感情を処理する脳から直接出る神経が関係しています。脳のストレス状態、気疲れやイライラ、心配が脳神経を通じて、首や肩の筋肉を一気に緊張させてしまうんです。 脳神経は12対ありますが、その中でも11番目の「副神経」が、肩や首を動かす「胸鎖乳突筋」などの筋肉に影響します。この神経がストレスの影響を受けると、首が回らなくなったり、肩がガチガチに固まったりします。 また、神経は左右のどちらか一方に出る特性があります。右利きなのに左の肩や首だけが特にきつい、という場合は、スマホの持ち方などの習慣的な問題だけでなく、神経から来ている可能性もあるんです。 ■ 蒸気機関車好きの青年が、カイロプラクティックの道へ -杉原- さすがプロの先生ですね(笑)。 ところで、先生は学生時代からこの道を目指されていたんですか? -山口- いえ、全然そんなことはないんです(笑)。学生時代は蒸気機関車が大好きで、日本中を北海道から九州まで写真を撮りに歩き回っていました。いわゆる「撮り鉄」ですね。 ただ、とにかくお金がないものですから、夜中の12時に出発して深夜3時頃に乗り換え、朝6時頃着くような、ハードなスケジュールで移動していました。家に帰ってくると体がかなりきつかったんです。実家が新宿にあったので、紀伊國屋書店に行って、立ち読みしながらストレッチの本を参考にしていたんです。 大学を卒業してからも、紀伊國屋書店に通う習慣が続いていたのですが、ある日、整形外科のコーナーに「背骨の歪みがこんな病気を引き起こす」というタイトルのカイロプラクティックの先生が書いた本があったんです。なぜそこにあったのかはわかりませんが、手に取ったのが、この世界に入るきっかけになりました。 その本の内容が非常に面白かった。それまで私は、痛みというのは無理をしたり、どこかにぶつけたりすることで生じるものだと思っていました。ところがその本には、悪い姿勢だけでも体のさまざまな部分に不調が出ると書かれていた。これは面白いと思って、すぐに問い合わせの電話をしたら、「カイロプラティックを教えてくれるところがある」と教えていただきました。 ■ 会社を辞め、深夜アルバイトをしながら朝まで勉強した日々 -山口- 数カ月悩みましたが、思い切って会社を辞め、アルバイトをしながら勉強することにしました。当時は赤坂プリンスホテルの「ポトマック」という喫茶店で働いていて、夕方4時頃から深夜12時半頃まで仕事をして、送迎で早稲田まで帰る。そして夜が明けるまでずっと勉強する生活でした。 ところが、その勉強が全く苦にならなかったんです。アルバイトで交感神経が緊張した状態が続いていたせいか、深夜でもものすごく集中できた。大学受験の時のように、頭がフル回転していました。解剖学の本を見ながら、夜明けまで没頭して勉強し、外が明るくなって人が歩き始める気配がすると眠り、午後に起きてアルバイトへ行く日々でした。 後から考えると、父親が戦時中に衛生兵として負傷した兵士の治療に携わっていたことも、何かのDNAとして自分の中にあるのかなと思うことがあります。父は軍医ではありませんでしたが、衛生兵として多くの方の治療をしていました。私も医師ではありませんが、多くの方々の健康に携わるこの仕事を続けているのは、そういうつながりを感じるからかもしれません。 -杉原- 独立は何年前のことですか? -山口- 最初の独立は40年くらい前ですね。 若かったので、自宅の住所をカイロ研究所として、四季報に掲載されている会社数十社に案内を送りました。お酒を飲みながら「どのくらい返事が来るかな」と待っていましたが、もちろん来るはずがないですよね(笑)。当時はパソコンがなかったのでワープロで作ったテキストだけの文書で、図版もなく、紹介者もいない。「御社の社員の方々の健康のために、ぜひ役立ちたいです」というだけの手紙でした。 ただ、この話を大学の恩師や友人にしたところ、3名の方が会社と交渉してくださって、「週に1回、または月に2回なら医務室や社員休憩所を使っていいですよ」という許可を正式にいただきました。勝手に行くのではなく、きちんと会社を通して活動することができました。 その後、渋谷の著名な先生から声をかけていただき、日本でもトップクラスのカイロプラクティック院に入ることになりました。そこには総理大臣経験者が3名、プロスポーツ選手、大手商事会社・大手不動産会社・航空業界の役員の方々、著名な芸能人など、各界の著名人が多数来院されていました。 -杉原- それは修行時代と言っていいんですか?(笑) -山口- そうですね、独立する前の修行時代でした。 そこで、自分にまったく注意を払ってくれない患者さんもいらっしゃいました。ところが院長が来ると、本当に嬉しそうにニコニコとお話しになる。それを見て「よし、頑張るぞ」と闘志が燃えましたね。自分の体を守ってくれる先生の前に来た若造に、わざわざ話しかけてくれなくても当然です。でも、いつか自分もそうなろうと強く思いました。 ■ 歩き方・表情・声質から読み解くプロの観察眼 -杉原- やはり施術する上で、会話は大事なんでしょうか。 -山口- 絶対に必要です。入ってきたときの歩き方、話したときの反応、普段と比べた変化など、施術だけでなく、こうした観察全体が治療の一部です。 うつ状態に近い方は、入ってきたときにもう背中が丸まってうつむいているんですね。「こんにちは」と声をかけたときの反応でも、この方は何かあるなとわかります。歩き方、座り姿、表情、声質、そういったものを総合的に踏まえて施術に向かっています。 -杉原- すごく共感します。ビジネス開発の仕事をしていた時代も、投資家として起業家と面談する時も同じで、事業モデルはどうか、事業領域はどうか、技術的にどう解決したか、といった質問はもちろんしますが、実はそれよりも、部屋に入ってきた時の表情、質問に答える時の自信の溢れ方、面談者にとって「当たり」の質問をされた時の目の輝きなどをを見ています。まずOSとしての人物をしっかり見ようと思って。人物チェックという意味で同じですね。 -山口- 背中が丸まった人の印象について、以前早稲田の学生にアンケートを取ったことがあります。「自信がなさそう」「弱々しい」「人生うまくいっていなさそう」といった回答が多く集まりました。また、猫背は老けて見える一因でもあります。 反対に、背筋が伸びていると若々しく見えるだけでなく、表情筋が上がり、脳の血流も改善します。逆に姿勢が崩れると脳の血流が悪くなって不活性化してしまいます。姿勢を正すことは、まさに内面と外面の両方に影響を与える「投資」なんです。 -杉原- 確かに猫背だと自信がなさそうに見えますよね。あと、面談した時に表情を見ます。どうしても悪い予感がする人がいて、気がマイナスだなとか。どれだけ言葉で語られても、深く付き合うのはどうかなと思ってしまう。 あるいは同じ人でも久しぶりに会った時に「元気ですよ」と言う時の姿勢や目力と表情を見て、なんか調子が悪いな、もう少し深く何かあれば相談してねというように、寄り添い方を変えたりもしますね。 -山口- 表情は体に影響しますし、また体も表情に影響する。これは双方向なんです。たとえば、胃が荒れると背中にも症状が出ることがあります。胃の内部を直接触ることは私たちにはできませんが、背中を緩めることで胃の状態を間接的に改善できることもある。うつ状態も同じで、背中を緩めることで気持ちが少し楽になることもある。体と心はしっかりつながっているんです。 ~Part3へ続く~ ☆インタビューアー D-POPS GROUP アドバイザー 杉原 眼太 【青山一丁目カイロプラクティック】 院 長:山口博 所在地:東京都港区南青山2-2-15 ウィン青山740 公式サイト:https://aoyama1.jp/ 次回・Part3では、 ・青山一丁目への移転と、テレビ出演につながった「利他の精神」 ・本田宗一郎氏が語った「経営者が健康でなければならない本質的な理由」 ・ベンチャーエコシステムとの共通点 などについてお伺いしています。Part3もぜひご覧ください!  
  • INTERVIEW
2026.05.29
「健康は最高の投資」40年のキャリアが語る、経営者の体と姿勢の真実|青山一丁目カイロプラクティック・山口博院長インタビュー【Part1】
今回は、カイロプラクティック歴約40年のプロフェッショナル・山口博院長にインタビューいたしました。 まず初めに、山口先生の経歴を簡単にご紹介させていただきます。 -------------------------------------------------- 山口先生は、一冊の本との出会いを機に、それまでの仕事を辞め、夜間バイトをしながらカイロプラクティックの勉強をし、そして1987年(昭和62年)にカイロ院での勤務を始められました。そしてより自分の考えを出して治療をしたいという思いから独立し、現在も続く、「青山一丁目カイロプラクティック院」を開業され、これまでに延べ9万人を超える治療経験があります。また、日本姿勢教育協会理事として、放送大学で講座を担当されたり、各種メディアに登壇したりと、長年この分野での重鎮として貢献してこられました。 -------------------------------------------------- 今回は、ベンチャーエコシステム作りの参考として、企業経営者にとって、体は資本であるということを学ぶ、「プロフェッショナル」へのインタビューということで、山口先生にお時間をいただきました。 (このインタビューは2026年4月に実施しました。) ■ 「健康ブレーカー」とは何か — 突然、体が限界を迎える瞬間 -杉原- 事前に先生からいただいたレポートで印象的な言葉がありました。「一生懸命頑張っている方が、病気ではないのに突然体調を崩されてしまうことがあります。これは健康ブレーカーが落ちたような状態だと考えています。電気ブレーカーに例えてご説明しますと、容量ギリギリで電気を使っている時に電子レンジを使用してブレーカーが落ちた状況です」とのことでした。自分の身に起きたり、同僚に起きたりなど、意外と当てはまることがあるのではないかと思います。この言葉の意図について詳しく教えてください。 -山口- 一生懸命仕事をされていると、体が疲れていることは自覚できると思うんです。ただ、そのとき痛みがないとどうですか。「痛みがなければセーフ、大丈夫」だと思いますよね。 この「痛みがなければ大丈夫」という考え方でいると、健康ブレーカーは突然落ちやすくなります。なぜかというと、体はかなりの疲労状態にあっても、関節の動きが硬くなっていたり、筋肉に乳酸などの疲労物質が溜まっていても、アドレナリンなどの「頑張るホルモン」が分泌されてパフォーマンスを維持できるからです。また、脳には少しの異変信号が入ってきても、仕事に差し支えないよう情報を遮断する機能があります。そうでないと、私たちは仕事ができないんですね。 電気に例えると、通常の方が30アンペアの容量だとすると、アドレナリンが出ている経営者の方は60アンペア近くまで容量が上がっているイメージです。ですから、たくさんの電気を使っていてもブレーカーは落ちない。ところが、そのギリギリの状態で何か些細なきっかけがあった瞬間にブレーカーが落ちてしまうんです。ぜひ、そうなる前に対処していただきたいと思っています。 ■ 体は「言葉」ではなく「張り・凝り」でサインを出している -山口- 電気に例えると「使いすぎかな」と感じる段階が、体でいうと「張り」や「凝り」なんです。その段階でキャッチして、何か手を打ってほしいんですね。 体は言葉では話せません。だから、凝りや張りで「しんどいよ」と教えてくれているんです。たとえば「あと30分座り続けたら立った時に腰が痛くなる」とは言えない。でも、座っているうちに腰が重だるくなる。そういう形でサインを出しています。 危険なのは、その痛みを薬だけで抑えて無理をし続けることです。腰痛を薬で止めながらゴルフをし続けた結果、気がついたら激痛になり、病院に行ったら圧迫骨折だった、というケースも実際にあります。 これは、家の中でボヤが起きて火災報知器が鳴ったのに、うるさいからと止めて放置してしまうようなものです。そのまま放置すれば家が燃えてしまう。薬は決して否定しません、絶対に必要なものです。ただ、薬で痛みを抑えながら無理をし続けることは、体を壊す原因になります。 -杉原- 結構、経営者の皆さんやハードワークをしてきた方々には心当たりがあるんじゃないかと思います。病院に行っても「先生には伝わらないだろうな」という背中の鈍い痛みがずっと続いていて、でもストレスがなくなったら自然に消えてしまった。そういう経験をされた方も多いのではないでしょうか。ストレスが多かった時代の私の事ですが。(笑) ■ 来院者は会社員から大型客船の船長まで 多彩なリーダーたちの共通点 -杉原- 2つ目の質問ですが、青山一丁目カイロプラクティックにはどんな職業の方々が訪れているんでしょうか? -山口- 一番多いのは会社員の方や主婦の方ですね。ただ、経営者の方やリーダーの方もたくさんいらっしゃいます。 たとえば、日本で最も大きな客船の船長さんもいらっしゃっています。大型客船の航路はあらかじめ決まっていますが、そのときどきの波や風の状況に応じて、少し手前を行くか大回りするかを判断し、乗客ができる限り安全で快適な船旅ができるように導くのが船長の役割です。 つまり、大勢の命を預かる最高責任者なんです。ですから、自分の体が健康でなければならない。そういう思いで来院されています。 -杉原- 確かに、企業に例えると、大型客船のクルーたちは従業員で、乗船しているお客様たちはサービスを受けるお客様ですよね。そしてキャプテンは社長やCEOにあたります。そのトップが健康でなければ、安全なサービスは提供できません。 -山口- そうですね。企業もまったく同じです。また、世界的なテーマパークで責任者を務めていた女性の方も来院されています。テーマパーク、ショップ、ミュージック、映画といった部門の責任者を担われており、素晴らしい業績を残されています。ご自身もトレーニングを真剣に取り組まれながら、体のメンテナンスとして定期的に来てくださっているんです。 ある時、その方の友人のテレビ局の社長さんに「自分がこの仕事をちゃんとできているのは、カイロプラクティックで体を見てもらっているからだ」とおっしゃったと伺いました。私たちの仕事は、その方が「うまくいってよかった」と笑顔になる瞬間を支える黒子の仕事ですから、本当に嬉しかったですね。 また、今でも定期的に来院されているのが、アナログからデジタルへのテレビ移行を推進したテレビ局の重鎮の方です。アナログからデジタルへの切り替えには受像機をはじめすべての機器を変える必要があり、大手家電メーカーに「これからテレビ局はこういう仕様にするので対応した製品を作ってください」と交渉されていた。家電メーカー側も先行きが見えない中で大きな投資をして工場を作るのは容易ではない。その交渉がどれほど大変だったか、その方の部下の局長がうちに来られた際に「私にはとてもあんな交渉はできません」とおっしゃっていたほどです。 私たちが今、当たり前のようにデジタル放送を使えているのは、そうした方々の努力があったからです。その方が体が非常に辛かった時期に来てくださって、少しでも役に立てたことが本当に嬉しかったです。ベンチャーエコシステムの皆さんも、ぜひ体を大事にしてください。 ご来院される経営者の方々は、お忙しい中、ゴルフ、テニス、登山、楽器、他にもいろいろありますが、何かのスポーツや趣味をされている方が多いです。私が、運動や趣味で使用した道具、演奏された楽器など、使われた後はどうされますかとお尋ねしますと、ほとんどの方が、勿論、きれいにしてからしまいますよと仰られます。 自分の使った道具がきれいになるのは気持ちがいいですよね。その大切に扱う、思うというお気持ちを、わずかで結構ですのでご自身のお体にも向けていただけますかとお願いしています。道具は大切にしていても、ご自身のお体は無理をされたままの方が多いのです。 疲れた体をそのままにして次々と仕事をしたり、疲れたまま寝てしまうと、体の中に疲労がどんどん積み重なって症状に結びつく事があります。短時間で結構ですので、仕事の間や帰宅後、関節や筋肉をゆっくり動かされると、血流も改善する事ができて健康に役立ちます。 ■ 定期的に来院する経営者に共通する「ひどい経験」と姿勢への認識 -杉原- 今、何人かの経営者の方の事例をあげていただきましたが、きっかけは体の不調だったとして、その後は定期的に来られるようになっているんでしょうか。どんな通い方をされているんですか? -山口- もちろんブレーカーが落ちてから来られる方もたくさんいらっしゃいますが、会社の経営者の方は、ブレーカーが落ちないように定期的に来院される方が多いです。 その理由は、そういった方々はどこかで一度、ひどい経験をされているからです。ブレーカーが落ちてから来ると、痛みはきつい、回復までの時間は長い、費用もかかる。だから定期的にケアをしていれば、症状が出ても軽く済む、あるいは出ないようにできる。それを経験的に知っているんですね。 ベテランの経営者ほど、定期的にチェック・修正することの重要性を理解されています。ただ、その理解に至る前には、たいていひどい経験をされているわけですが。 骨折のように疾患の場所が明確にわかるものはわかりやすい。でも、正しい姿勢の維持や体の調子を整え続けることの重要性については、なかなか認識されにくい部分があります。 よく「姿勢を正す」というと健康法の一種と捉えられがちですが、実は姿勢を正すということは「今やっていることを成功に導くための投資」と考えていただきたいんです。会社のトップがいて、役員がいて、社員がいて、家族がいて、取引先がいて、株主がいる。そのトップの体調は組織全体に影響します。だから、健康というのは「やりたいことを実現するための投資」なんです。 ■ 悪い姿勢が体に与えるメカニズム 「動物」である私たちが動かないとどうなるか -杉原- 役職や業界によって立ちっぱなしの仕事、座りっぱなしの仕事、様々ありますが、経営者の方は会議室で5時間会議、というのもよくある話ですよね。悪い姿勢が続くと体にどのような悪影響が出るのでしょうか。そのメカニズムを教えてください。 -山口- まず基本的なことをお伝えすると、私たちは「動物」です。文字通り、動く物なんです。 座りっぱなしで関節を動かさない、筋肉を使わないでいると、血流が悪くなります。血液は酸素と栄養を運び、老廃物を取り除く役割を持っています。それが滞ってしまうとどうなるか。たとえば、朝から晩まで働いてもらうのに食事も出さない、トイレも使わせない、という状態を想像してください。誰でも倒れてしまいますよね。座りっぱなしで血流を悪くしてしまうと、それと同じことが体の中で起きているんです。 具体的には、足を組む姿勢、低い位置のモニターなど、こういったものが問題になります。私が一番申し上げたいのは、長い時間過ごす椅子の高さ、デスクの高さ、モニターの位置、キーボードの配置、これらが非常に重要だということです。5分10分ではなく、何時間も同じ姿勢でいるわけですから、そのセッティングがいかに体に影響するかは計り知れません。 -杉原- 意識はしているんですが、良い姿勢をなかなか長く続けられないんですよね。気づくと崩れてしまっていて。あと、現代のビジネスパーソンはスマホ1台で仕事ができてしまう部分もありますが、うつむいた姿勢はやはりよくないですか? -山口- スマホの操作で頭が15度、20度、30度と前に傾くと、肩にかかる負担は大きく増加します。スマホを操作する姿勢だと、体重の約3分の1が肩にかかるとも言われています。頭の重さは体重のおよそ10パーセント。仮に2リットルのペットボトルを2本として計算したとき、胸の前で持つのと腕を伸ばして持つのとでは、負担が全然違いますよね。5分も持てないほど疲れる。その疲れが肩に蓄積されることで、肩こりや集中力の低下につながるんです。 ~Part2へ続く~ ☆インタビューアー D-POPS GROUP アドバイザー 杉原 眼太 【青山一丁目カイロプラクティック】 院 長:山口博 所在地:東京都港区南青山2-2-15 ウィン青山740 公式サイト:https://aoyama1.jp/ 次回・Part2では、 ・スタートアップ経営者の体は「OS」— 姿勢は生産性を最大化するための投資 ・ストレスは体を固くする — 精神的疲労のメカニズム ・カイロプラティックの道へ進んだ理由 などについてお伺いしています。Part2もぜひご覧ください!
  • INTERVIEW
2026.05.27
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