COLUMN

【グループ会社インタビュー】株式会社フェイスフル 加藤 貴博 社長 ~後編~

  • INTERVIEW
2026.03.17

D-POPS GROUPでは、現在約25社のグループ会社が仲間となっています。
今回は、株式会社ディ・ポップスグループ 常務執行役員 経営企画室室長 及び 株式会社フェイスフル 代表取締役の加藤さんへインタビューいたしました。
(このインタビューは2025年12月に実施しました。)

前編の記事はこちらからご確認ください。

◆M&A責任者としての奔走

-杉原-
一方で、加藤さんは現在もM&Aの責任者を兼任されています。代表を務めるフェイスフルの事業とM&A業務、その比重はどのようなバランスですか?

-加藤-
心の重さで言えば、M&Aのプレッシャーが9割以上を占めていますが、費やす時間としてはフェイスフルの事業運営の方が長いですね。

特にM&Aに関しては、最初は全くの素人からのスタートでした。今は買い手の数が非常に多いため、普通に待っているだけでは良い案件なんて回ってきません。

-杉原-
コネクションもない状態から、どのように案件を動かせるようになったのですか?

-加藤-
最初の1年間は、とにかく泥臭く動きました。あらゆるM&Aセミナーに足を運ぶのですが、それらは大抵売り手を集めるためのものなんです。でも、私はあえて一番前の席に座って質問を繰り返し、最後に「どうすればあなた(仲介会社)と仲良くなれますか?」と正面からぶつかっていきました。

そうして誰も知り合いのいない懇親会に図々しく入り込んで、いつしか少しずつ仲良くなって。そうした人間関係の構築を1年間ひたすら繰り返す中で、ようやく1件目の案件として繋がったのがgraphDだったんです。

-杉原-
M&Aの第1号案件となったgraphDですが、当時の本業からすると、少し意外なジャンルへの挑戦だったのではないでしょうか?

-加藤-
おっしゃる通りだと思います。1件目にしては「少し領域を広げすぎではないか」という懸念もありました。当初、私がこの案件を提案したときは、後藤代表も最初はそれほど乗り気ではなかったんです。

ところが、面白いように風向きが変わりました。主要な取引先である通信キャリアの方から「POP制作に強い会社と組むのは非常に面白いね」とポジティブな反応をいただいたんです。そこで代表も「やはり面白いかもしれない」と。
(※POP=Point of Purchase、販売促進用の広告物)

さらに驚くべき後日談がありました。このgraphDという会社、実は後にディ・ポップスグループの常務執行役員となる渡辺さんが、かつてヨドバシカメラにいた頃に「こういうPOPの会社を作ったらいい、そうすれば事業が円滑に回るよ」とアドバイスをして立ち上がった経緯のある会社だったんです。

-杉原-
そんな不思議な縁があったのですね。

-加藤-
当時は渡辺さんとの接点も全くありませんでした。そんな背景も知らないまま、私は自分の足で見つけてきた案件として提案していました。後からその事実を知って、点と点が線につながったような感覚でしたね。

私の20年を振り返ると、こうした混乱や偶然のような出来事がたくさんありますが、今になってようやく一つひとつのパズルが繋がり、今のグループの形になっているのだと実感します。

◆「人」を重視するD-POPS GROUPのM&A

-杉原-
graphDのM&Aを皮切りに、これまでグループ入りした会社が15社ほどあるかと思いますが、それだけの数を形にする裏側では、膨大な数の案件を精査されていますよね。

-加藤-
そうですね、数えきれないくらい見ています(笑)。今年だけでリスト化したものを見ても、300〜400件は精査しました。

M&Aの仲介会社さんからは「そんな条件の会社、他には絶対にないですよ」と言われることも多いです。たとえば「年商10億円以上の黒字企業」といった高いハードルを設けて絞り込んでいるので、そんな優良案件がそう簡単に転がっているはずがない、と。それでも私たちは、その中から本当に価値のあるものを絞り込む作業を続けています。

-杉原-
年間300〜400件を書類でレビューし、そこから面談に進むのはどのくらいですか?

-加藤-
面談に進むのは、その中でもさらに厳選した案件だけです。ただ、その厳選するプロセスそのものが非常に重要だと思っています。

-杉原-
膨大な案件の中から、面談しようと決める際の判断基準や観点はどこにあるのでしょうか。

-加藤-
よく仲介会社さんから「具体的な企業名や業種を提示してほしい」と言われるのですが、実はそれは難しいんです。

判断の基準は、取締役会などで議論されるグループの今の課題感と、私たちが持っている既存のリソースの掛け合わせにあります。グループのエコシステムがこれだけ出来上がってくると、業種のマッピングで見れば埋まっている場所が多い。その隙間をどう探しに行くか。 そして、あまりに遠い飛び地の案件は論外ですが、今の事業を補完する垂直統合型だけでも不十分だと思っています。

単に競合をM&Aして規模を大きくするのではなく、既存事業と組み合わせたときに面白い次の展開が描けるかどうか。常に「未来から逆算して、このピースがはまれば新しい価値が立体的に生まれるのではないか」という視点で、案件を見極めるようにしています。

-杉原-
グループのポートフォリオにおいて、欠けているピース(隙間)を埋める案件が見つかったとします。書類審査を通過し、実際に経営者と面会する際、どのようなポイントをチェックされているのでしょうか?

-加藤-
一番は「グループのメンバーと空気(カルチャー)が合うか」を非常に重視しています。 たとえ業種が違っても、言葉選びが違っても、根底にある価値観さえ同じであれば、お互いにリスペクトし合える。その直感を大切にしています。一方で、最初から一方的な話し方をされる方などは、やはり難しいと感じますね。

面談の際に私が気を付けてみていることは、面接天井になっていないか、ということです。 面接がピークで、その場だけお化粧をして自分を良く見せている状態のこと。でも、それは見抜けます。実際にDD(デューデリジェンス)の過程で、そのお化粧が剥がれて破談になったケースも過去にはありますから。

-杉原-
その見極めのために、具体的にどのようなステップを踏んでいるのですか?

-加藤-
私たちは、いわゆる圧迫面接のようなことは絶対にしません。お互いの夢を語り合ったときに、楽しい想像ができるかどうか。それを確かめるために、通常2回に分けてお会いします。 1回目は私一人でお会いし、2回目は後藤代表を交えて、より深い話をします。ただ、机上の話だけでは見えない部分も多いので、やはり夜の会食をご一緒するようにしています。

お酒を飲んだときにふと漏れる一言や、夢を語る熱量。そこまで踏み込んで初めて、相手の本当の姿が見えてくると思っています。

後藤代表の面談や会食は、3時間以上にも及びます。それだけ時間をかけて、相手の人生の背景までを深く理解しようとする。その熱量を受け継ぎながら、最後は「この人と一緒に未来を創りたいか」という、人間としての本質的な部分で判断しています。

-杉原-
これまで手がけたM&Aの中で、特に印象的だった、あるいは苦労したケースについて教えてください。

-加藤-
私たちのM&A戦略は、経営者の成長支援を方針に掲げているので、買収と同時に創業者が引退するケースは非常に稀なんです。基本的には、創業者の方にそのままグループへ参画していただき、共に走り成長するスタイルをとっています。だからこそ、数少ないグループ入りと同時に創業者が引退されるケースのときは、託された想いのメッセージが、どれも非常に強く印象に残っています。

譲渡した後も、その方々に「あの時、このグループに託して本当に良かった」と思い続けてほしい。バトンを受け取った事業を新たな仲間とさらに大きくするのは、当然の義務であり、その対する意識は人一倍強く持っています。

-杉原-
一方で、苦渋の決断を迫られたケースもあったのでしょうか。

-加藤-
そうですね。唯一、自分の中で今でも「あれが正解だったのか」と自問自答し続けているのが、M&Aした会社を最終的に別の会社に売却する形となったケースです。

経営上の判断や、キャッシュを回収できたというビジネス的な観点で見れば、時代の流れに沿った正しい選択だったのかもしれません。しかし、私は常に相手の懐に飛び込み、人の気持ちを大切にしながらクロージングまで伴走するスタイルです。店舗一軒一軒を大切にするのと同じ感覚で向き合っているからこそ、心残りがあります。

-杉原-
それほどまでに人を重視するからこそ、価格以外の部分で選ばれているのですね。

-加藤-
おっしゃる通りです。私たちの提示する買収価格は、他社さんと比べて必ずしも一番ではないと思います。むしろ高くないことの方が多い。それでも「あなたたちに任せたい」と言ってバトンを託してくださる経営者の方がいます。

高い価格を提示したから選ばれた理由ではないからこそ、託された想いに対する責任をより一層重く感じます。その信頼に結果で応え続ける為にグループで連携することが、M&A担当としての私の使命だと考えています。

-杉原-
先ほど非常にまれにバトンパスされる創業者の方もいらっしゃると伺いました。譲渡側の経営者は、あえて「こう育ててくれ」といった具体的な要望は口にされないとのことですが、加藤さんはどうやってその想いを受け止めているのでしょうか。

-加藤-
直接的な言葉として語られるわけではありません。ただ、最終的に私たちを選んでくださるまでの過程で、「なぜ他社さんを断ったのか」という理由は必ず伺うようにしています。仲介会社さんを通じて入ってくる情報も含め、その積み重ねが、経営者の方の言葉にできない想いとして大事にしていこうと思っています。

最も心に響くのは、引き継ぎ式の会食です。経営者の方が、残る社員の皆さんに向けて「今までありがとう。これからはこのグループで頑張ってね」と声をかける姿。その言葉は、私たちに対する「(この人たちなら)大丈夫だよ」という信頼の証でもある。その背中を見ていると、絶対に裏切れないという強い責任感を感じます。

◆後藤代表が大切にする「気の流れ」

-杉原-
M&Aのプロセスにおいて、後藤代表から言われた言葉で印象的だったものはありますか?

-加藤-
これはもう、一言「気の流れが悪い」ですね。これが一番大変です(笑)。 仲介会社さんも、1年に1件決まるかどうかという案件を必死で進めてきて、ようやくここまで漕ぎ着けた。そこで代表から「気の流れが悪い」と言われてしまうと、返す言葉がありません(笑)。

-杉原-
加藤さん自身は、精査を重ねて提案した案件に対してそう言われた時、納得感はあるのでしょうか。

-加藤-
正直なところ、昔は納得感は全くありませんでした。当時はまだ私自身、数字や事業シナジー、業界内でのポジショニングといった数字的な側面ばかりを見ていて、本質の人の部分が完全に見えていなかったんだと思います。

でも、何度もその答え合わせをしていくうちに、少しずつ理解できるようになってきました。「ああ、代表はここを気にされていたんだな」と。今では、感覚的に納得できる確率がかなり増えてきましたね。それでも時々、「この案件でもダメなんだ」と、自分の思い入れとの間で悲しくなることもありますけれど(笑)。

-杉原-
後藤代表は「気の流れ」以外にも、財務や業績などの面で、どのような視点を持って案件を見ていると感じますか?

-加藤-
代表が最も鋭く見ているのは、「その経営者が、どのように意思決定をしてきたか」という点だと思います。

代表はよく「積み木が一つだけ突出して伸びることはない」と仰います。一人の人がすべてにおいてトップである必要はない、と。一方で、私自身は経営企画として、自分がグループの足かせにならないよう必死に努力してきた自負があります。

実務的な数字や条件面の交渉は私に任せていただいていますが、最終意思決定する取締役会での判断では、ボードメンバーの視点も非常に重要になります。大きな案件の際は、後藤代表が自ら内藤社長や千本会長に対して事前ディスカッションを行い、この案件はどう思うかと徹底的な壁打ちを行う。私はその連携のプロセスを聞きながら、フィードバックを事業計画や譲渡契約に落とし込んで調整してきました。そうした厳しいプロセスを経て仲間になったのが、今リストにある各社の経営者たちなんです。

-杉原-
長年M&Aを担当してきて、最もよかったと感じる瞬間はいつですか?

-加藤-
M&Aというのは、多くの経営者にとって人生に一度の、命をかけた大勝負です。その極めて重要な場に立ち会えること自体、本当に光栄なことだと思っています。

実はディ・ポップスグループでやってきた業務のすべてが、私が会計事務所に入る前からずっと抱いていた想いなんです。「経営者の想いに寄り添い、支えたい」という。今、M&Aを通じて経営者の人生の決断を支援できていることは、私にとって仕事のやりがいのど真ん中にいる実感がありますね。

-杉原-
フェイスフルの社長・グループ全体のM&Aという大役。この二足のわらじを履く上で心がけていることはありますか?

-加藤-
自分自身が事業会社の代表を務めるようになって、他のグループ会社の社長たちに対する尊敬の念がより一層強くなりました。これは、M&Aの担当だけをしていたら決して分からなかった感覚だと思います。

経営者としての本当の課題と向き合う事や孤独感は、当事者になって初めて肌身で感じられる。かつて入社したての頃、管理部門の立ち上げに注力していた時に、現場から「いきなり幹部候補って何だよ」と冷ややかな目で見られたこともありました。しかし今なら、セクションや立場の違いをどう理解し全うすべきかが、経営者の視点を持って理解できます。

グループ全体を俯瞰する立場と、現場の経営を担う立場。その両方を経験させてもらっている今の環境は、非常に贅沢で、挑戦しがいのあるものだと思っています。

-杉原-
複数の顔を持つ多忙な日々の中で、プライベートとの両立や、人生において大切にされていることはありますか?

-加藤-
私が社長を目指した大きなきっかけの一つに、EOへの入会がありました。入社した2007年頃から、ずっと先輩方から「あのEOは凄い場所だ」と聞かされてきた、憧れの場所だったんです。

そこで学んだのは、経営のノウハウだけではありません。もっと根源的な人生観のようなものです。「人はいつか死ぬ」という現実と向き合ったとき、自分は最期をどう迎えたいか。仲間と深く語る機会がよくあります。

私の理想は、死ぬときに「あの当時は本当に頑張ったよね」と思い出を振り返り語り合える仲間が、周りにたくさんいてくれること。そして「ありがとうの輪」を広げていくことが、今の私の生きる指針になっています。

また、プライベートでは19歳の時に知り合った妻と今でも仲が良く、今年で共に歩んで30年目になります。家族が円満であることは、私の大きな支えです。

私生活は、順風満帆だったわけではありません。41歳のときに癌を患い、その後100万人に1人と言う病気を併発しました。先日「もう薬を飲まなくていい」とお医者さんに言われて、やっと病気との戦いが落ち着き、少し安堵しました。この経験があるからこそ、家族と仲間の大切さが身に沁みてわかるようになりました。

病気になり自分の弱さを知ったことで、本当の意味で「誠実、謙虚、感謝」という言葉が自分の中で一つに繋がった気がします。これからは、自分が支えてもらったように、今度は自分が誰かの支えになれるような、そんな人間でありたいです。

◆「ベンチャーエコシステムの実現」に向けて

-杉原-
D-POPS GROUPでは、「ベンチャーエコシステムの実現を目指す」をスローガンにしていますが、その目標に共感する部分はどんなところですか?共にベンチャーエコシステム作りを目指す上での意識や活動などはありますか?

-加藤-
実は、20年前の入社面接の際、後藤代表が3時間にわたって熱く語ってくれたのがデパートの構想でした。同じ建物の中にカフェがあり、携帯ショップがあり、香水ショップがある。それらが相乗効果を生んで顧客満足を作れたら最高だよね、という内容でした。

当時の内容は形こそ違いますが、それが今私たちが目指しているベンチャーエコシステムの原型だと思っています。

20年経ち、ビジネスモデルは変わりましたが、「人に喜びと輝きを提供する」という根底の想いは全く変わっていません。昔は自分たちが食べていくための仕事プラスアルファという感覚でしたが、今は教育支援など、より広い社会へ影響を及ぼせるほど遠心力がついてきた。その進化を肌で感じています。

-杉原-
そのエコシステムをより強固なものにするために、加藤さんが日々意識していることは何でしょうか。

-加藤-
これまで約5年おきに、決まって適度な「逆境」がやってきました(笑)。どんな追い風、向かい風が吹こうとも、私が意識しているのは、「持ち場を守れ」「常に挑戦」「3倍速成長」ずっと以前から掲げられてきたこの3つです。

私たちの社名(D-POPS GROUP:Dream-Produce One’s Pleasure and Shining)にある喜びや輝きは、現状維持では決して生まれません。自分たちに心地よいストレッチをかけ、ありえないような高い目標にみんなで挑んでいく。その挑戦のプロセスこそが、3倍速の成長を生み、結果として誰かの喜びや自分たちの輝きに繋がっていく。

これを回し続けることが、私にとってのエコシステム作りそのものだと思っています。

◆5年後の理想の姿

-杉原-
加藤社長、そしてフェイスフル社の「5年後の理想の姿」を教えてください。

-加藤-
「D-POPS GROUPの中で、ダイレクトマーケティングといえばフェイスフル(URIZO)」と誰もが想起するような状態に持っていきたいですね。

私はこれまで、入社から10年弱は「財務戦略」を、その後の期間は「M&A戦略」を担ってきました。ここに「マーケティング戦略」という3本目の柱をしっかりと確立できれば、グループの基盤として大きな貢献ができると考えています。過去に作った仕組みを次に引き継いだ人がブラッシュアップし、より強固なものにしていく。そんな理想を描いています。

-杉原-
新しく加わったURIZOというサービスは、今後の鍵になるのでしょうか。

-加藤-
はい、鍵と思われるようにしていきたいです。2024年、上場企業の子会社を譲り受けての事業ですが、グループ全体のマーケティング戦略において極めて重要な役割を担うと考えています。今はまだ種の段階ですが、これをいち早く大きな芽に育て上げることが私の今の使命です。

-杉原-
AIが普及する中で、マーケティングのあり方も変わってきています。今後の課題をどう捉えていますか?

-加藤-
今はAIを使えば誰でも簡単に一次情報を入手し、マーケティング施策を打てる時代です。だからこそ、AIには真似できない差別化が不可欠です。

実は、そこにはかつての携帯電話と同じようなリテラシーの差があると感じています。デジタルが普及すればするほど、あえてお手紙のようなアナログなマーケティングが再び注目されたり、AI任せではない人の気持ちが乗った提案が価値を持ったりします。最新のツールと、人間ならではの工夫や熱量。この二つをどう掛け算していけるかが、これからの勝負だと思っています。

-杉原-
最後に、この記事を読んでいる方々へメッセージをお願いします。

-加藤-
これまでの経験を振り返ると、成功よりも大きな失敗の方が強く印象に残っています。それでも、失敗の中から学び、そして再びチャンスをもらい、何とか形にして、みんなが喜んでくれるものをいくつか作ってこれた。私にとってこのグループのステージは、何度でも挑戦させてくれる「フェアチャンス」と「リチャレンジ」の場です。
これからも失敗を恐れずに挑戦し続け、グループの中に新しい楽しさや価値を作っていきたい。もし、この記事を読んで私たちのエコシステムに共感してくれる仲間が増えてくれたら、これほど嬉しいことはありません。一緒に、世界が変わるような楽しい挑戦をしていきましょう。

☆インタビューアー
D-POPS GROUP アドバイザー 杉原 眼太

 

【株式会社ディ・ポップスグループ】
常務執行役員 経営企画室室長 加藤 貴博

【株式会社フェイスフル】
代表者:(共同)代表取締役 加藤 貴博

所在地:東京都渋⾕区渋⾕2-21-1 渋⾕ヒカリエ32階

関連記事

英語嫌いから5,000時間の学習へ。スピークバディ立石社長がAI英会話で実現する「真の言語習得」~Part3~
全3回にわたるインタビューの最終回となるPart3では、創業から13年の歩みの中で直面した最大の危機を振り返ります。 キャッシュ残り3ヶ月という極限状態を、全社員への正直な告白でどう乗り越えたのか。そして、10カ国以上の多国籍チームが体現する自律と規律を両立した組織文化、さらにはアジアのグローバル化を牽引するという壮大な未来ビジョンまでをお聞きしました。 D-POPS GROUPとの出会いが、同社の「ユニコーンへの挑戦」をどう加速させるのか。その全貌を公開します 。 (このインタビューは2026年3月に実施しました 。) ◆ 起業して分かった「1年がものすごく長い」という感覚 -杉原- 設立からちょうど13年が経ちますが、この間にはコロナ禍などもありました。この13年の中で、立石社長ご自身や会社として、どのような成長や壁があったのでしょうか? -立石- 設立自体は結構前になりますが、最初の3年ほどはAI英会話以外の英語学習アプリを作っていましたし、自分の個人資本で運営していました。AI英会話を本格的に始めて、ベンチャーキャピタルの方々からご出資いただいた2016年頃から、状況がガラッと変わったという感覚があります。 そういう意味では、道のりとしては結構長かったなと思いますし、起業して驚くのは「1年がものすごく長い」ということですね。年を取ると1年が短く感じるというジャネーの法則がありますよね。私も投資銀行で7年目ぐらいになった時は、同僚と「もう1年終わっちゃうね」と話していました。それは、それまで経験してきたことで大体の仕事がこなせるようになってしまい、新しい刺激が減っていたからだと思うんです。 ところが起業すると、次から次へと新しい課題が出てきます。その都度、新しいスキルを身につけたり解決策を考えたりしなければならないので、本当に1年がものすごく長く感じます。それを10年以上続けてきたので、非常に長く、かつ面白いプロセスでした。 コロナ禍についても、始まった当初は、いわゆる巣ごもり需要で、AI英会話もすごく恩恵を受けたんです。ただ、海外に行けない時間が長く続くと、悲しいことに日本人は英語学習をしなくなってしまった。「出張もない、外国人も日本に来ない、旅行にも行けない」という状況で、英語について考える機会が激減してしまった。その時期は英語学習業界全体が低迷し、我々にとっても非常に大変な時期でした。でも、今はしっかり需要が戻っています。 ◆ 最大の危機 ─ キャッシュ残り3ヶ月で全社員に「正直な告白」 -杉原- これまでの歴史の中で、あえて一つ挙げるとすれば、最も苦労した大きな壁は何でしたか? また、その壁をどう乗り越えたのでしょうか? -立石-  やはり、資金調達の前段階で、会社のランウェイ(資金が尽きるまでの期間)が限られているという状況ですね。そうなると私自身もそうですし、社員もみんな焦るわけです。ベンチャーの場合、成長のためにどんどん採用を加速させている中で、「資金を集めなければならない」という課題と「組織をまとめなければならない」という課題が一気に押し寄せた時は、本当に大変でしたね。 AIサービスの開発というのは、最初はなかなか人間を超えられないので、数年間は鳴かず飛ばずの時期が続くんです。でもある時、急に「人間を超え始めたな」というポイントが来て、ググッと伸びる。その転換点だった2019年頃が、一番苦労した時期でした。 ちょうどシリーズAの資金調達をする直前で、会社のキャッシュが残り3ヶ月ほどになっていたんです。私は資金調達に奔走して死に物狂いなのですが、当時のメンバーはどこかのほほんとしているように見えて。その温度差に、当時は耐えられなくなってしまったんです。 それまでは、メンバーに財務的な心配をさせたくないという思いから、具体的な数字や資金繰りの話は共有していませんでした。でも、もう限界だと思い、全員を集めて正直に話しました。「今、会社にキャッシュがいくらあって、毎月これだけ減っている。割り算するとあと3ヶ月だ」と。「うちは25日が支払い日だから、この月までは払える。けれど、3ヶ月後のこの日の給料は払えません」ということも正直に伝えました。 話す前は、リスクも感じていました。蜘蛛の子を散らすように、みんな去っていくかもしれないなと。でも、このままの温度差で続けることはできないと思ったので、すべてを共有してみることにしたんです。 結果として、残念ながら一人は辞めてしまいましたが、残りの10名のメンバーは「なんとか乗り切りましょう」と言って頑張ってくれたんです。あの時は本当に、みんなものすごく踏ん張ってくれました。そこで温度差がなくなり、私自身も「みんなこれで頑張ってくれるんだ」と勇気をもらいました。まずは自分の元上司の方に頭を下げてブリッジ融資をお願いし、ランウェイを3ヶ月ほど延ばしました。そして、その3ヶ月の間に新しく開発した機能が、見事に当たったんです。 そこからKPIがぐわっと伸びて、売上も上がりました。そうなると「これなら出資するよ」と言っていただけるようになり、シリーズAで約3億円を調達することができました。あの時が一番しんどかったですね。それ以来、今は細かい費用についてもできるだけ共有するようにしています。キャッシュが今いくらあるのか、といったことも含めてですね。 -杉原- そうすることで、社員の皆さんも「同じ船に乗っている」という実感を持てるのではないでしょうか。 -立石-  そうですね。結局、同じ情報を持っていないと同じ意思決定にはたどり着けません。情報をオープンにすれば、最終的には認識が合うと信じています。 ◆ 社員の3分の1が外国籍 ─ 10カ国以上の多国籍チームが生む強みと苦労 -杉原- ところで、スピークバディさん自体、社内が非常にグローバルですよね。この多国籍チームであることのメリットや楽しさ、そこから生まれる独自の文化などはありますか?また、逆に苦労されていることなどもあれば教えてください。 -立石-  今、社員の3分の1ほどが外国籍で、出身国でいうと10カ国以上のメンバーが在籍しています。かなりバラバラですね(笑)。ダイバーシティと言うと聞こえはいいのですが、実際にまとめるのはものすごく大変です。考え方も価値観も、みんなバラバラですから。そこは本当に苦労するところではあります。 ただ、メリットとしては、自分たちにはなかったような考え方が自然と入ってくるという点があります。日本人の常識にとらわれない発想や、海外の進んでいる部分を柔軟に取り入れられるのは一つの魅力ですね。あとは、やはり語学の会社ですので、入社する日本人のメンバーも「英語を学んできた」「国際的なチームで働きたい」という志向の人間が多いんです。そういったメンバーにとって、外国籍のメンバーと国際的なチームで働ける環境があることは、一つの喜びになっていると感じます。 また、先ほどのデザイナーもそうですが、エンジニアなどの日本国内では人口が少ない職種についても、外国籍まで視野を広げることで優秀な人材を採用できるというのは、経営上の大きな強みだと思っています。全社会議なども英語と日本語の両方で行う必要があるので、同時通訳を入れたりして運営は結構大変ですが(笑)。 ◆ D-POPS GROUPとの出会い -杉原- 先日、弊社での事業説明会と懇親会にご参加いただきました。あの日のイベントはいかがでしたか? (事業説明会の様子はこちらから) -立石- まずは、あれだけの人数の方々が集まってくださったことに、すごく驚きました。皆さん経営者ですからね。そのレベルの方々があれだけ集まって、我々の話をしっかりと聞いて質問をしてくださったり、協業の提案やアイデアをたくさんくださったりしたのが印象的でした。 説明会の時はまだ少し距離があるように感じた部分もあったのですが、懇親会になってお酒も入り、こちらの身の上話や皆さんの考えを聞き出してから、一気に仲間に入れていただいたような感覚になりました。御社はすごくファミリー感のある会社なのだなと強く感じました。 実は今、研究開発段階にあるリリース前の機能があるんです。説明会でそのアイデアをお話ししたところ、皆さんの反響がものすごく強かった。一緒に参加した執行役員の森本とも「あれは当たるね」と話していました。あれだけ強い反応が返ってくるということは、この方向性は間違いないぞ、とありがたい確信に変わったんです。 -杉原- スピークバディさんには、すでに数多くの支援者や出資企業がいらっしゃる中で、今回私たちの出資を受け入れていただいた理由と、実際に受け入れて良かったと思われる点があれば教えてください。 -立石- やはり後藤社長や杉原さんはじめ、関わる方々が我々の話を非常に真剣に聞いてくださる方々だなと感じ、一緒に成長していきたいと思えたのが一番の理由です。それと、ディ・ポップスグループさんは非常にユニークな会社ですよね。私自身も「こういう会社を作りたい」と思わせてくれる要素がすごく多いんです。 資金調達の際、チームのメンバーにも「自分が心から尊敬できる経営者の方に株主になっていただきたいし、そういう会社を目指していきたいから、ディ・ポップスグループさんからの出資は絶対に受けたい」と伝えていました。素直に「ぜひ出していただきたい、学びがある」と思えました。 ◆ 「自律も高く、規律も高い」偉大な会社へ -杉原- 弊社が目指している「ベンチャーエコシステムの実現」というビジョンについて、共感する部分や思うところはありますか? -立石-  何よりも「ユニコーンを作る」という志に強く共感しています。実は私、もともとPCにステッカーを貼るタイプではないんですよ(笑)。「せっかくの綺麗なパソコンが汚れてしまう」と思っていたのですが、御社のユニコーンのステッカーはデザインが純粋にかっこいいですし、何より「ユニコーンになってくれ」という期待を込めていただいている。その志を忘れないためのリマインダーとして、今は大切に手元(PC)に貼っています。 -杉原-  自社のステッカーすら貼っていない綺麗なPCなのに、有難いです(笑)。 では、スピークバディさんが目指す5年後、10年後の未来の姿を教えてください。 -立石-  最近、特に意識しているのは「偉大な会社を作りたい」ということです。抽象的ではありますが、「この会社があってよかった」と皆さんに言っていただけるような存在になりたい。そのために、自分たちのミッションやビジョン、バリューを改めて信じ抜くことが大事だと、一周回って感じています。 先ほどお話しした『アジアのグローバル化を牽引するAI言語習得スタートアップ』という姿を5年スパンで目指しつつ、ミッションである『真の言語習得を実現し、人生の可能性と選択肢を広げる』ということを10年スパンで実現していきたいと考えています。 また、組織としては昨年1年で規律をかなり強化しました。スタートアップは自由で自律的な組織であることが多く、我々もフルリモート中心のハイブリッドで働いています。私自身、本来はルールをあまり作りたくない人間なのですが、規模が60人を超えてくると、どうしてもミスや事故が起きてしまいます。そこで規律やアカウンタビリティ(説明責任)を強く求めるように舵を切りました。 最近読んだ本に、「自律も高いが規律も高い会社こそが偉大な会社になれる」という話があり、非常に共感したんです。自律だけ、あるいは規律だけでは不十分で、その両方を高い次元で両立させたい。その先にビジョンの達成があると思っています。 -杉原- 自律と規律は相反するようでいて、実は共存するものですよね。Googleなども、自由に見えてガバナンスや目標達成への意識は凄まじく高い。どう働くかは自由だけれど、ミッションに対する責任は徹底している。そこは表裏一体ですね。 -立石- おっしゃる通りです。今回のオフィス移転やカルチャー醸成へのこだわりも、間違いなくその一環ですね。 ◆ アジアから世界へ ─アジアのグローバル化を牽引する -杉原- アジアをはじめ、海外展開も計画や視野に入っているのでしょうか? -立石- そうですね。私たちはビジョンとして『アジアのグローバル化を牽引するAI言語習得スタートアップ』になることを掲げています。以前に台湾市場に挑戦して今は一度止めている状態ではありますが、今後も機会を見定めて、まずは東アジア、その次は東南アジアへとサービスを広げていきたいです。ゆくゆくはヨーロッパなど、世界中に広げていきたいと考えています。 -杉原- 東南アジアだけでも6億人以上の人口がいますからね。 -立石-  ええ、市場としても非常に魅力的です。世界中で英語で苦労している人は何十億人もいますから、そこに対して価値を届けていきたいですね。まず日本で成功して、そこから広げていくと。 ◆ 読者の方々へ ─「今までとは違う英語学習を」 -杉原-  最後に、この記事を読んでいる方々へ一言お願いします。このコラムは、経営者や起業家、投資家といったプロの目線を持つ方々がじっくり読んでくださっています。 -立石- 今、AIの進化の凄まじさは誰もが毎日感じていることだと思います。そういう時代だからこそ、従来のやり方を疑い、変えてみる姿勢が問われていると感じます。英語学習についても、ぜひ今までとは違った新しいやり方にトライしてみていただきたいです。 ポジショントークに聞こえるかもしれませんが、AIの力で海外との仕事がやりやすくなっていく中で、ビジネスパーソンにおける英語の重要性は今後ますます高まっていくはずです。今の若者世代は英語ができるのが当たり前という層も増えています。現役世代で活躍されている皆様も、そうした若い世代に負けずに英語をブラッシュアップして、自分なりの英語を身につけるために、ぜひスピークバディを活用いただければ嬉しいです。 ☆インタビューアー D-POPS GROUP アドバイザー 杉原 眼太 【株式会社スピークバディ】 会社名:株式会社スピークバディ 代表者:代表取締役 CEO 立石 剛史 所在地:東京都中央区日本橋3-14-3 +SHIFT 日本橋桜通り3階 設 立:2013年5月 コーポレートサイト:https://www.speakbuddy.com/ Part1の記事はこちらからご確認ください。 Part2の記事はこちらからご確認ください。
  • INTERVIEW
2026.04.28
英語嫌いから5,000時間の学習へ。スピークバディ立石社長がAI英会話で実現する「真の言語習得」~Part2~
Part1では、立石社長が5,000時間の学習を経て、英語の課題をテクノロジーで解決しようと決意した原点をご紹介しました。 続くPart2では、累計300社以上に導入され急成長を遂げる『AI英会話 スピークバディ』の核心に迫ります。『Duolingo』や『Speak』といった競合サービスとの決定的な違いはどこにあるのか。 「いつでも、どこでも、誰でも続けられる」だけでなく、日本人が本当に話せるようになるための独自の言語習得理論と、こだわりの設計思想を立石社長に語っていただきました。 (このインタビューは2026年3月に実施しました 。) ◆ 『AI英会話スピークバディ』とは──4つの優位性 -杉原- では、そのような経緯を経てここまで大きく育った『AI英会話スピークバディ』のサービス内容について、読者の方に向けてご説明いただけますか? -立石- 『AI英会話スピークバディ』は、従来の人間が相手の英会話レッスンではなく、AIのキャラクター(我々は「バディ」と呼んでいます)を相手に英会話のレッスンができるサービスです。ただキャラクターと応答するだけではなく、一つのストーリーの中で必要な英会話表現を学んでいくような設計になっています。それらの表現もレベル別に設定されているので、自分のレベルに合うキーフレーズをレッスンごとに学んでいけるのが特徴です。 なぜこれが対面の英会話よりも良いのか、という点には4つのポイントがあります。 1つ目は、いつでもどこでもできるという点。 2つ目は、コストの面でも、人間相手よりだいぶ抑えて学習ができる点。 3つ目は、特に日本人に多いのですが「人と英語を話して間違えるのは恥ずかしい」とか「外国の人と話すのが怖い」といった心理的不安の壁を超えられる点です。AI相手なら、それらを感じることなく堂々と間違えられる。 最後は学習効率です。AIで分析ができるので、人間の先生とレッスンをやるよりも、効率的な学習サイクルが作れる。この4つがAI英会話の優れているところです。 -杉原- いつでもどこでもというのは大きいですよね。 1レッスンはどのくらいで完結するのですか? -立石- そうですね、1レッスン15分ほどで完結します。実際、オンライン英会話のレッスンなのに「わざわざ服を着替えて、髪をセットして、お化粧をして・・・」と準備が必要なのが大変だというお客様の声もありました。そういった手間がなく、気軽にできるというメリットは確かにあると思います。 ◆ Duolingo・Speakと何が違うのか -杉原- 今、『Duolingo』や『Speak』といった類似サービスも増えています。スピークバディが、それら他のサービスと比べて「ここが優れている」「ここが特徴的だ」という点をご紹介いただけますか? -立石- 『Duolingo』については、我々もサービスとして非常にリスペクトしています。ただ、彼らはスピーキングというよりは、どちらかというと単語や文法を学ぶ、総合的な学習サービスだと捉えています。かつ、非常にゲーム性を重視されているので、入門・初心者の方には特に始めやすく、ゲーム感覚で他言語に触れる機会になると感じています。 一方で我々は、よりスピーキングに特化しています。日本の中学・高校で英語はある程度やってきたけれど、話せないという方々には、スピークバディの方が合っていると捉えています。 また、スピーキングという点ではアメリカ発のAI英会話アプリ『Speak』もありますが、彼らよりも我々が優れていると感じる点は、一つは使いやすさです。UI/UXが非常に使いやすく、続けやすい作りになっていること。もう一つは、言語習得理論に則って、ユーザーが本当に話せるようになるための設計をしっかりしていること。この2つを融合させている点が、我々が勝っているところだと考えています。 -杉原- 結構しつこく復習させられますもんね。忘れた頃に(笑)。 -立石- そうですね。復習についても「エビングハウスの忘却曲線」に則って、ちゃんと繰り返し学習して習得できるようにしています。様々な言語習得理論のノウハウを詰め込んでいるのは、我々の強みですね。 あとは名前の通り、バディがついているという点です。『Speak』などは比較的機械的な相手と話すイメージですが、AI英会話スピークバディはストーリー性があったり、具体的なキャラクター設定がそれぞれなされていたりします。現実的なシーン設定の中で、まるで人間のようなIP(キャラクター)と話すという世界観にしているので、そこが根本的な思想として違うかなと思っています。 -杉原- デザインについても、かなりキャラクターが立っていますよね。インド人訛りの上司が出てきたりしてすごく実世界に近い会話ができる感覚があります。全体的に一つの世界観の中にいるかのようなデザイン性を感じるのですが、ここはこだわりポイントなのですか? -立石- そうですね。うちはデザインには非常にこだわっている会社ですし、デザイナーが非常に優秀であるという自負があります。グッドデザイン賞も受賞しています。 実は、うちのデザイナーは現在全員が外国籍なんです。私自身、もともと欧米など海外のUI/UXデザインがすごく好きだったので、そうした外国籍のデザイナーに作ってもらっているのが一つの特徴ですね。 あとはやはり、創業当初から継続が大事だと考えている中で、継続の鍵は楽しさにあるというコンセプトを持っています。社内ではよくバディ感やバディネスと言っているのですが、キャラクターもそうですし、体験全体の中でそれらが感じられるかどうかを重視してこだわっています。 ◆ 300社超が導入──法人市場での急成長 -杉原- 法人顧客の開拓には実際に力を入れていらっしゃるんですか? どのような企業様が、どのような目的で導入されているのでしょうか。 -立石- ここ3年ぐらいは法人のお客様の開拓に非常に力を入れています。企業のグローバル化に伴うコミュニケーションの必要性から、累計の導入数は現在300社を超えています。自己啓発や福利厚生の一環でご導入いただくことが多いですね。 企業の種類としては、グローバル企業はもちろんですが、最近は人的資本経営の流れもあり、業種に関わらず「社員の自己啓発を応援したい」という企業様にご導入いただいています。英語ができるようになりたいという方は、どの会社にも必ずいらっしゃいますから。多い業種としてはIT、製造業、接客業などがありますが、我々は業種・職種別のコンテンツも提供しており、今後も法人向けのコンテンツは強化していく考えです。 -杉原- 導入企業からの反響はいかがですか? -立石- 導入いただいた法人のお客様からは、「社員の英語を話すことへの抵抗感がなくなった」とか、「英語のミーティングに積極的に参加できるようになった」といったお声をいただくのが、本当に嬉しいですね。よく人事や研修の担当者様がおっしゃってくださるのは、「こんなに英語研修で反響があったのは初めてだ」ということです。 -杉原- 社員の方から人事の方に、反響が届くのですね。 -立石- そもそも募集した際の応募人数が、想定の何倍も多いんです。対人の英会話研修に比べると、10倍ぐらいの人数が集まることもあります。やはり「気軽に始められる」という点が大きいのではないでしょうか。 実際、接客で必要というケースでは、ホテル業界などでも導入いただいています。インバウンド需要が増える中で、海外の旅行者の方がふらっとお店に来た時の英語アレルギーの壁を少しでも下げるのに、すごく役に立っているようです。 ◆ 従来の英語研修とは一線を画す、社員に優しい研修 -杉原- 大企業だと、英語研修に「TOEICで何点取らなきゃいけない」といった要件がついているケースも多いですよね。 -立石- そうなんです。これまでの英語研修って、受講すると「TOEICで何点取らなきゃいけない」とか「受講回数が少ないと自腹になる」といったものがありましたよね。その点スピークバディはコストを抑えてより幅広い方に使っていただけるのが一番の強みです。強制的な研修というよりは、福利厚生として「自分で選んで学習する」という形ですね。 -杉原- 継続率が高いからこそできることですね。法人顧客は今も伸びているのですか? -立石- はい、法人は今もすごく伸びています。もし英語研修で困っている会社様がいらっしゃったら、ぜひご紹介いただければ幸いです(笑)。 ☆インタビューアー D-POPS GROUP アドバイザー 杉原 眼太 【株式会社スピークバディ】 会社名:株式会社スピークバディ 代表者:代表取締役 CEO 立石 剛史 所在地:東京都中央区日本橋3-14-3 +SHIFT 日本橋桜通り3階 設 立:2013年5月 コーポレートサイト:https://www.speakbuddy.com/   次回・Part3では、 ・資金ショート寸前に全員を集めた「正直な告白」 ・「自律と規律」を両立する偉大な会社づくり ・アジアのグローバル化を牽引するAI言語習得スタートアップへ などについてお伺いしています。Part3もぜひご覧ください!
  • INTERVIEW
2026.04.21
英語嫌いから5,000時間の学習へ。スピークバディ立石社長がAI英会話で実現する「真の言語習得」~Part1~
D-POPS GROUPは、2025年12月に『AI英会話 スピークバディ』を運営する株式会社スピークバディへの出資を実施しました。(詳細はこちらをご覧ください。) なぜ、かつて学年最下位と言われるほど英語が苦手だった人物が、最先端のAI英会話サービスを創り上げたのでしょうか 。本連載(全3回)では、代表取締役・立石剛史社長の起業家としての軌跡と、同社が描く未来を紐解きます 。 Part1では、TOEIC280点から5,000時間の学習を経て、外資系投資銀行での経験や世界一周の旅からAI英会話の着想に至るまでの驚きのストーリーをお届けします 。 (このインタビューは2026年3月に実施しました 。) ◆ 高校で学年最下位だった英語との出会い -杉原- まず初めに、AI英会話スピークバディのアプリを開発したきっかけを教えていただけますか? -立石- なぜ英語というフィールドを選んだかというところですが、私自身、学生時代は英語が非常に苦手だったというところが大きいです。英語はずっと積み上げの学習が必要ですが、中学1年生の時に挫折してから、ずっとそのまま授業についていけませんでした。高校の時には、英語の先生に「学年で一番英語ができない」と言われるほどでした。 -杉原- 学年で一番英語ができなかった方が英会話アプリの会社の社長になられたんですね(笑)。 -立石- おっしゃる通りですね。高校時代はそうだったのですが、大学生の時の就職活動で外資系の投資銀行に内定をいただいて、そこで新卒のキャリアをスタートしたのが学習のきっかけになりました。 -杉原- 外資系企業なのに英語の面接はなかったのですか? -立石- 英語の面接、ありましたね。最終面接は、ボードルームで当時のシティグループ証券の社長と各部署の役員の方がずらりと並んでいるという場でした。当時はそういうプレッシャーに耐えられるかというところを問われていたのもありますし、投資銀行というのは「人」しか資産がないような業態なので、人格を見られるような場でもあったのだと思います。 その10対1の面接では、基本は日本語で進むのですが、最後に人事部長から「じゃあ英語で質問するから英語で答えて」と言われました。そこまではずっと日本人の面接官の方だったので、英語については「この人は慶應大学も出ているし、多分できるだろう」くらいの感じで進んでしまっていたんですね。 ですが、私は英語が全くできない、TOEICでも280点みたいなレベルだったので、人事部長から聞き取れない英語の質問が来たら必ずこう答えようと、自分の中で準備していたんです。 「I can’t speak English. But I will study hard. So, no problem!」 そこは自信を持って言ったんですけど、もうそれしか覚えていなくて。当時はそのフレーズを暗記するだけでも大変だったくらいなのですが、そうしたら、全員が凍りついてしまって。「えっ、何?」みたいな。「その英語力でここを受けたんだね。ここは外資系だよ、どうするの?」という話になりました。 ただ、就職活動は大学3年生の時にやったので、「ここから卒業まで1年間あります」と。私はその時、会計士の試験にその年の最年少で受かったばかりで、20歳だったのですが、1日14時間毎日勉強していたんです。勉強と寝る以外のこと、つまり風呂、食事、移動すべてを2時間で済ますというのをやっていたので、1日参考書1冊を終わらせるペースでいつも勉強していました。だから「ここから1年間あるので、英語なんて余裕です。嘘ではないです。」と、本気で思って言いました。 当時は、TOEICで750点ぐらい取れれば、英語なんてペラペラなんだろうなと思っていましたし、会計士試験のように「落ちたらまた1年間受けられない」という試験に比べたらプレッシャーも全然ない。「明日からやります」と言ったら、「なんかきみ、やりそうだな」と。それでも「さすがに落ちただろうな」とは思いました。外資系なのに英語ができないわけですから。 ただ、その日のうちに人事の方に呼ばれまして。当時のシティの社長が激押ししていたそうなんです。「ああいう人を取れといっていたよ。君、どんな話をしたの?」と言われたのですが、その時に言ったのは「僕は英語はできないかもしれませんが、人間の頭の能力にそんなに差がないということが、会計士試験の受験でよく分かりました。もう気合いの世界です。気合いを出せばやれないことがないということはよく分かったので、絶対やりきります」と言って。そうしたら社長が「ああいう面白いやつを一人取ろう」ということで、採用してもらえたという経緯がありました。 ◆ 5,000時間の学習が教えてくれた日本人の英語問題 -立石- そこから何年もかけてTOEICは満点にして、英検1級も取って、ここまで累計5,000時間ぐらい英語の学習をしてきました。 その5,000時間をかけて痛感したのは、「これは自分が就活の時に思っていたよりも、よっぽど大変だ」ということです。これは日本人の、本当に一番大きい課題かもしれないと僕は感じたんですよね。外資系で英語ができなくて苦労したのもそうですし、その後に日本の証券会社に転籍してからも、香港に駐在して中国語と英語を使って仕事をする機会がありました。語学ができないと全く仕事にならない。 香港では中国語もある程度やって、日常会話ぐらいはできるようになりましたが、やはり言葉が通じないと仕事になりません。日本人は非常に優秀なのですが、英語ができないということで、外資系時代も本社や他の海外支店の人たちから馬鹿にされているのが、すごく我慢ならなくて。グローバルで人々が集まって研修などをやると、日本人は全然英語ができなくて喋れないんだけれども、出すアウトプットは日本人が一番いいんです。 そういう中で、「日本人は優秀なのに英語ができないから馬鹿にされている」という現状を変えたいというのが、僕の根幹の思いとしてあります。僕自身は5,000時間を使いましたが、それは多くの人がやれることではない。その時間をとにかくテクノロジーの力で短縮したい。これが、英語をテーマに選んでAI英会話スピークバディを開発し始めた根本のところですね。 ◆ 『家で英語を話してくれるドラえもん』を作りたい -杉原- 起業したいという気持ちは、学生の頃からあったのですか? -立石- そうですね。就活の時に「この投資銀行で働いたら、将来自分が会社をやる時にも活きますか?」と質問していたのを覚えています。でも、その後ずっと7年間ぐらい激務をこなしていたので、すっかりそういう気持ちも忘れていました。ただ、世の中の役に立つようなサービスを自分も作りたいという気持ちがすごく強くなってきた時に、「元々自分は会社をやりたかったんだよな」というのを思い出しました。それで、海外転勤から帰ってきたタイミングで会社を辞めて起業しました。 辞めてからビジネスプランを考え出した、という形です。一度そういう背水の陣の状況に持っていって、そこから、とりあえずずっとやりたかった世界一周の旅に出て、旅をしながらプランを練りました。練りながら、世界一周をしながら自分でアプリ開発も並行して進めていたんです。その世界一周している時に作った英語学習アプリをリリースしたら、App Storeで総合ランキング1位を取りました。 -杉原- 総合ランキング1位は凄いですね! そのアプリは、今のスピークバディの原型になったようなものなのですか? -立石- そうですね、それがスピークバディの原型になったと思います。世界一周もしましたし、その時、短期留学もしたのですが、やっぱり海外にいながらも、英語での会話の相手が欲しいわけです。でも、いきなり英語で友達を作るのって、すごく大変じゃないですか。みんな簡単に「外国人の恋人を作ったらいい」と言いますが、僕も実際に行って作ろうとしてみたものの、そんなこと簡単にできるもんじゃない、というのを痛感しました(笑)。 それで、海外にいる時に「家に英語を話してくれるドラえもんがいたら、それでいいのにな」と思ったんです。その「英語で話してくれるドラえもん」を作りたい、というのが英会話サービスのスタートですね。 最初に出した英語学習アプリにも音声認識機能を入れていて、それは多分、日本で初めて英語音声認識の機能を入れたアプリだったと自負しています。ただ、当時の2014年頃の音声認識機能はまだ精度が低かったんです。しかし、そこから1、2年経つ中で、音声認識技術が飛躍的に良くなっているのを感じて、「これなら将来的にAIとの英会話が作れる」という確信が持てたので、2016年に今まで作っていたアプリを全部止めて、AI英会話に全集中し始めました。 ◆ 「どこがAIやねん」と言われた2016年の苦労 -杉原- 2016年に今の元となるアプリをリリースした時から、既にAIという言葉をつけていたのですか? -立石- そうですね。2016年にリリースした時も「AI英会話」という名前をつけていました。最初は資金もなかったのでクラウドファンディングから始めたのですが、それがすごくうまくいって400万円ほど集まったんです。その時から「AI英会話」という形で打ち出していました。 -杉原- 特に最近のAIの普及速度や進化の速度はものすごく早いですよね。言語系はこの1、2年で急激に発展していますが、立石さんはかなり先駆けですよね。 -立石- 当時はうちだけでしたね。ただ、リリース直後は結構悩まされました。「これのどこがAIなんだ」と、2016年当時はすごく言われましたね。「喋っても全然認識しないぞ」と。 当時の音声認識は、キャラクターと電子音声で話せるという程度のものでした。会話AIもまだ発展途上だったので、ツリー構造で「こう言ったらこう返す」とプログラムしているレベルで、今のようなフリートークは全然できなかったんです。それで「どこがAIやねん」というレビューがすごく増えてしまったので、実は2017年頃に一度AIの冠を外したんです。AIとつけると期待値が上がって星1レビューがつくので、一回外そうと。 ただ、2019年ぐらいから音声認識技術が劇的に良くなったのと、自社製の音声認識エンジンを作ったことで精度がぐっと上がったんです。そのあたりから、会話AIとしての質もだんだんと良くなってきました。 -杉原- 今は『バディチャット』などを体験すると、普通にくだらないことを言ってもちゃんと内容に合わせて返してくれますね。単なるパターン認識ではないですよね。 -立石- そうですね、脱線してもちゃんと返してくれます。今は「これはAIだ」と胸を張って言えるなと思ってやっています。2015、16年頃はハイプサイクルで言うところの過剰期待の時期で、AI、AIと盛り上がった後に幻滅期が来ましたよね。その時期は「何がAIだ、そんなのできっこない」とずっと言われ続けていたのですが、だんだんと本物になっていきました。 -杉原- 昔から取り組んでいる方からしたら、この数年のブームは「何を今さら」という感じですか? -立石- そうですね。予想通りだなという思いもありますし、一方でやっと気づいてくれたかと時間差を感じる部分もあります。実はGPTに関しても、私たちはGPT-2の時から「これ、すごい使えるね」と話していたんです。だから4.0になっても、私たちからすると「あの時から凄かったよね」という感覚なんです。 『音声認識』と『言語化して理解し返答するAI』、そして『ユーザーの英語レベルに合わせて問題を出す』という各要素がすべて噛み合い出したのが、ちょうどここ数年です。この数年で推論のレベルがガッと上がったので、今のバディチャットのようなレベルの高いフリートークを提供できるようになった。やっと時代がスピークバディに追いついてきたという感じですね。 ~Part2へ続く~ ☆インタビューアー D-POPS GROUP アドバイザー 杉原 眼太 【株式会社スピークバディ】 会社名:株式会社スピークバディ 代表者:代表取締役 CEO 立石 剛史 所在地:東京都中央区日本橋3-14-3 +SHIFT 日本橋桜通り3階 設 立:2013年5月 コーポレートサイト:https://www.speakbuddy.com/ 次回・Part2では、 ・AI英会話スピークバディのサービス内容と4つの強み ・Duolingo・Speakとの差別化ポイント ・法人市場での急速な成長と導入企業の声 などについてお伺いしています。Part2もぜひご覧ください!
  • INTERVIEW
2026.04.15
一覧を見る