COLUMN

「登山と経営」ーベンチャー企業経営と登山との類似性

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2025.09.29

ディ・ポップスグループでは、ベンチャーエコシステムを、「共通のアイデンティティと理念の元に集まり、革新性の高い事業モデルにより、社会課題解決に挑戦し続ける企業群の集合体を支える、成長と永続のためのプラットフォームのこと」と捉え、その理想の形の実現に向けて日々挑戦と努力を続けています。
※詳しくはこちらをお読みください。「ベンチャーエコシステムとは?

今回の記事では、ベンチャー企業経営を登山に例えながら、その心構えや、地道な一歩の積み重ねやリスクへの対処の重要性などを記述します。

1. 登山と経営との類似性

登山家は、初めて登る大きな山の麓に立つと、思わず息を飲みます。その頂の高さ、そこまでの距離、そして険しさに心がざわつきます。期待と不安、ワクワクと怖さが入り混じった、何とも言えない感覚。まさに「武者震い」という言葉がぴったりです。

でも、いざ歩き出すと、山頂はすぐに視界から消えてしまいます。代わりに目に入るのは、足元の岩、濡れた木の根、分かれ道、急坂。体力を消耗しすぎないようペースを調整し、呼吸を意識しながら、一歩一歩を積み重ねていく。それと同時に、天候の急変や茂みの物音にも注意を巡らす。

登山というのは、派手さのない地味な営みの連続であり、また大きな危険を伴います。

この感覚は、「起業」や「ベンチャー企業での仕事」にとてもよく似ています。社会課題を解決するために掲げた、大きな目標を掲げながらも、日々の実務は地味で、予測不能で、簡単ではない。そして人生をかけて大きなリスクを背負います。

以下に登山と経営の類似性をいくつか例示します。

(1) 登山:準備 → 経営:ビジョン設定

登山には "準備" が欠かせません。どの山に登るのかを決め、地図を調べ、ルートを決め、アタックに必要な装備と体力を付ける。経営で言えば、それはビジョンの設定、資金や情報の収集、プロダクトの開発チームや営業体制の準備にあたります。

(2) 登山:パーティー → 経営:チーム編成

登山では仲間の存在も重要です。自分と同じくらいの体力で、登山スタイルや目的を共有できる人と登るのが理想です。これは、「誰を最初のバスに乗せるべきか」が重要であるとも言われるスタートアップや新規事業のチームビルディングとそっくりです。

(3) 登山:外部環境の把握 → 経営:市況の変化への対応

登山中は、常に外部環境に目を配る必要があります。突然の天候の変化、足元の不安定な岩場、見落としがちな分岐点。事業運営においては、市況の変化や競合の動き、見落としがちな製品の不具合や顧客の声といった“環境変数”にあたります。

(4) 登山:現在位置の把握 → 経営:KPIのトラッキング

実行フェーズにおいては現在地の把握も大事です。GPSで正確な現在位置と高度の把握、そして自身の心拍数や発汗量、時には血中酸素濃度のチェックが必要です。一方の経営では、KPIや財務データのチェック、メンバーの体調の把握などがそれに当たります。

(5) 登山:勇気ある下山 → 経営:事業撤退やピボット

そして、外部環境の変化や自身の体力の限界や怪我により、どうしても継続できないと判断したときは、勇気を持って引き返すことも選択肢に入ります。それは経営で言えば、事業撤退や縮小、もしくはピボット。いずれも命や株主やメンバーを守るためのリーダーとしての決断であり、時には後の大成功につながる英断となります。

(6) 諦めない心

そして最後に、挑戦する勇気、諦めない心、粘り強さというものが、登山にもベンチャー企業経営にも欠かせません。前項の勇気ある下山や事業撤退と相反するようですが、「もう無理」と思うか、「あと一歩」と思うかで、失敗と成功に大きく結果が分かれる場面が多々あります。この心の在り方はベンチャー企業運営にとっての重要な要素でもあります。

2. 座学と実践の大きな違い

現代は情報が洪水のように溢れています。経営者の自叙伝やそのノウハウ本、マーケティング本、MBA関連の書籍などは、数えきれないほど出版されています。その壮絶な経験を知ること、そして語ることで、あたかも自分もその一部であるかのような錯覚に陥ることがあります。事業運営に必要な知識を書物から学ぶことは決して無駄なことではありません。しかし、これらの考え方や物語を読むことは、登山に例えるならば「山の情報を読むこと」や「高い山を見たこと」にすぎません。

では、「登山の経験」とは何でしょうか?

それは、高尾山のような身近な山であっても、自分の足で一歩ずつ登り、汗をかき、息を切らし、頂上からの景色を肌で感じる体験です。途中で雨に降られ、道に迷い、足の痛みに耐えながら、それでも前に進む。その中で、「もう少し頑張ろう」と自分を鼓舞する力や「今日はここまでだ」と引き返す勇気が養われる。これらの感情や決断は、本を読んだだけでは決して得られません。

この体験こそが、私たちの仕事における「小さな実践」に例えられます。

一つひとつの顧客開拓、販路開拓、新規事業の立ち上げ、採用といった、「小さな登山」のような業務の実践の積み重ねが、やがて大きな山を登るための「筋力」となり、「判断力」となります。

頭の中にある情報と、身体で覚えた感覚は、全くの別物です。私たちは、知識だけでは決して経営者にはなれません。しかし、日々の業務で小さな山を登り続けることで、いつか大きな事業という山に挑む力が身につき、そして不断の努力により成功へと導かれます。

壮大な偉業も、まずは小さな一歩から始まり、そしてその積み重ねでこそ成し遂げられるのです。

3. 登山の足と経営能力の鍛え方

登山家の格言に、「山の足は山でしか鍛えられない」というものがあります。事業運営でも同じです。仕事の能力は、机上の学びだけでは決して高められません。

(1) ジムトレと山トレの違い

平らな道を何十キロもウォーキングしたり、ジムでランニングマシンで走ったり、バーベルで筋トレを繰り返しても、本物の「山を登る足」を作ることはできません。

登山道は、平坦な道だけではありません。木の根や細かな砂利で足を滑らして手を怪我をすることもあれば、浮石に足を置いてしまい捻挫することも、時には転倒して大怪我をすることもあります。急な坂を何百メートルも登り続けたり、岩山を登ったり下ったりする行為は、ジムでスクワットを繰り返しても都内のビルを何段登っても得られない、独特な負荷を体にかけるのです。

様々な山の、様々なコンディションでの登山の経験を繰り返していく中で、体幹や心肺機能は徐々に山に適応し、鍛えられていきます。それは、ジムでどれだけトレーニングを積んでも得られない、本物の「山登りの足」なのです。

(2) 仕事の能力は仕事でしか高められない

これは、仕事の能力にも同じことが言えます。

コンサルタントは、経営理論やSWOT分析やマーケットリサーチを駆使して、美しく完璧な事業戦略プランを描くことができます。ビジネススクールに通えば、多くのセオリーや成功事例を学び、中には交渉術の授業でロールプレイもするかもしれません。

しかしそれは、登山の例で挙げたジムでのトレーニングに過ぎません。

顧客との契約交渉が土壇場で破談になった際の絶望感と、また別の場では破断の原因を事前に回避して無事規約締結できた時の喜び。新規事業の資金調達がうまくいかず、撤退の決断を迫られた時の苦悩。チームメンバーとの意見衝突を、粘り強く対話して乗り越えた時の高揚感・・。

これらはすべて、教科書やロールプレイでは決して味わうことのできない、ビジネスという「実践的な山」でしか得られない経験です。

教科書と違い、実際の現場は一つとして型通りには進みません。ロールプレイと違い、ビジネスの現場の相手は真剣な、生身の人間です。市場環境も刻々と変化します。教科書に描かれた、完成した理論ができた当時と現在とでは、時間軸が数年から数十年ずれています。

現代の社会環境、技術的環境、競合環境においてのビジネス理論は、今、正に読者の皆さんがその事例を作っているところなのです。

そして、何度も様々なビジネスでの「山場」を経験するうちに、私たちは本物の事業運営のスキルを身につけていきます。失敗を繰り返す中で、成功への最短ルートを直感的に見つけ出す。顧客との対話から、言葉にはならない真のニーズを汲み取る。チームメンバーのわずかな表情の変化から、プロジェクトの危険な兆候を察知する。

これらの能力は、座学では絶対に身につかない、仕事を通してのみ鍛えられる「勘」や「判断力」なのです。

4. 備えの重要性

(1) 資金的な備え

登山において、荷物の重量は気になるところです。軽ければそれだけ体力の消耗が減り、長時間の行動が楽になります。しかし、軽さを追求しすぎてしまうと、命取りになることがあります。

気温や行動時間を考慮した十分な飲料水。計画上必要な食事。エネルギーを補給する行動食。いざという時のための雨具や救急セット。これらはどれも登山において欠かすことのできない備えです。予備の飲料、非常食、万が一に備えた装備があるかどうかで、緊急事態が発生した場合、その後の行動や判断は大きく変わります。そして何よりも、"心の余裕"がまったく違います。

これは、経営の世界でもまったく同じです。会社を軽く、効率的に回すことは大切ですが、バッファを削りすぎると、いざというときに耐えられません。

たとえば、ある日突然、製品の不具合が発覚して全品回収しなければならなくなったら。
あるいは、コロナ禍のように、社会経済活動が数ヶ月単位で止まってしまったら。
売上がゼロに近づく状況でも、半年間は生き延びられる運転資金が手元にある──
これは多くの経営の教科書や実務家が口を揃えて言う“最低ライン”です。

キャッシュの余裕があれば、"心の余裕”となり、危機の中でも冷静に動けます。

資金繰りに追われて判断を誤ることも減りますし、余裕があれば、社会全体が不安定な時に、攻めの一手を打つという挑戦をすることも可能となります。

(2) 人的リソースの備え

バッファが必要なのは、事業運転資金だけではありません。人的なリソースも同じです。人員をギリギリで回している組織は、休暇を取る余裕がなくなり、心身の疲労が蓄積します。
体力的にも精神的にも限界に近づけば、判断力や創造力は確実に落ち、離職リスクも高まります。こうした負のスパイラルに入ると、組織全体が疲弊してしまいます。

一方で、人員や時間にバッファのあるチームは違います。突然のトラブル対応や新しい挑戦にも柔軟に動けますし、改善活動や学びの時間を持つことができます。メンバーにとっての“心の余裕”は、組織全体の安定感につながります。

(3) バッファは重要な投資

登山では、非常用の水や食料、救急セットを持つことは「重くなるからやめよう」とは考えません。それは余計な負担ではなく、生きて帰るための最低限の備えだからです。

経営における現金の余力、人員の余裕、時間のバッファも同じです。平時には“無駄”に見えるかもしれませんが、有事にはそれが唯一の命綱になります。そしてその余裕こそが、次の一手を打つ原動力となり、新しい領域に挑戦するエネルギーとなるのです。

軽さと予備、すなわちバッファのバランスをどう取るか。登山でも経営でも、そこに真の力量が表れます。ゴールに辿り着くために、そして安全に帰るために。バッファを持つことは、”心の余裕”を生むという効果があり、事業運営において、運転資金と、共に働くメンバーの心の余裕は、成功に導くための戦略投資と言えるのです。

5. 登山も経営も判断の連続

登山では常に臨機応変な判断が求められます。どんなペースで登るべきか、どのタイミングで休憩を取るか、水分やエネルギーの補給をするか、自分の体の調子と現在位置から、自らが判断せねばなりません。そもそも、天候によっては登山自体を中止するという判断も自ら行う必要があります。

経営者の間ではトライアスロンというスポーツも人気があります。しかし、トライアスロンの場合は、「決められたルールの中で」、「順位を競うレース」、「万全に安全が確保された競技場での戦い」です。天候が悪い場合、中止するか否かの判断は運営側が行います。企業で言えば、「取締役会の決定により」と言ったらいいでしょうか。規定のある中で競い合うタイプの競技は、どちらかというと大企業の役員や雇われプロ経営者に向いているのではないでしょうか。

一方で登山は、「自然と向き合い、環境の変化に適応し、常に危険と向き合いながら、自分の判断で進む挑戦」と言えます。

設立間もないスタートアップ、誰も挑戦したことのなり領域に挑むベンチャーの経営者やその企業で働くビジネスパーソンの姿勢や考え方も同じです。日々難しい判断の連続、常にリスクと向き合いながら、絶え間ない努力を続け、大きな社会課題に挑む。

このように、ベンチャー企業経営は正に登山に例えられるのではないでしょうか。

—-
以上、(株)ディ・ポップスグループが取り組むベンチャー・エコシステムを実現する活動の参考として、ベンチャー企業経営の心構えを登山に例えて記述させていただきました。

これからもご支援、応援の程よろしくお願いします。

D-POPS GROUP アドバイザー 杉原眼太

付録:ベンチャー・エコシステムのメンバーをサポートする杉原は、ベンチャー魂を示す活動として、「ユニコーンTシャツを着て日本百名山を踏破する」という挑戦に取り組んでいます。

 

 

 

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2026.06.10
アップセルとは? ~売上総利益を劇的に改善する方法② アップセルとクロスセルの違い~
アップセルとは、顧客が購入しようとしている商品やサービスよりも、高機能だったり高品質だったりする高単価の商品を提案し顧客単価を上げ売上を上げる手法です。家電量販店などでより高性能のCPUを搭載したパソコンを勧めたりすることが最も一般的なアップセルの事例と言えます。 今回も小売業の事例を元に、企業の基本的な収益力を示す売上総利益に着目し、売上総利益の上げ方 その②として「アップセル」について解説してまいります。 1.経費も時間もかからずに絶大な効果が得られる手法 前回は「クロスセル」を取り上げ、会社経営の本丸である売上総利益に着目したわけですが、今回も売上総利益の上げ方 その②として「アップセル」を取り上げ、引き続き売上総利益に着目して参ります。 以下復習ですが、売上総利益は非常に単純な指標で、売上高から原価を差し引いた利益のことで粗利と言ったりもします。アップルや任天堂の様に商品やサービスそのものが、独自性があり差別化されていれば競争の非常に少ない世界で高い売上総利益を上げることができます。 今回も独自性があり差別化された商品やサービスの作り方で売上総利益を上げる方法ではなく、同じような商品を扱う競争環境の中で、如何に売上総利益を上げるか?ということを取り上げて参ります。今回取り上げるアップセルは、前回のクロスセル同様経費も時間もかからずに売上総利益に対し絶大な効果が得られる手法です。 ではなぜアップセルが重要か?クロスセルとの違いは何か?を以下順を追ってご説明いたします。 2.アップセルとは まず、アップセルとは、顧客が購入しようとしている商品やサービスに対し、高機能・高品質などの高単価の商品を提案し顧客単価を上げ売上を上げる手法です。 【例】 スーツを購入しようとすれば、 ブランド品や、良い生地を使った高単価のスーツを勧められる スマホを購入しようとすれば、 メモリの大きいモデルやカメラ機能の高い高単価のPROモデルを勧められる エアコンを購入しようとすれば、 省エネ性能の高いモデルやセンサー機能の付いた高単価モデルを勧められる 車を購入しようとすれば、 SUVやミニバンタイプ、ハイブリット車といった高単価車を勧められる といった様なことが代表的で、このほかにもアップセルの事例は枚挙にいとまがありません。上記の様に直接的に勧められなくても、例えば洗剤などの日用品の様に、大容量商品や2個セットの様に、通常品より1個単価を安くしてまとめて量や数を売ることもアップセルと言えます。 アップセルとなりえる商品やサービスは、リアル店であれWEB店であれメインの位置におかれ、メーカーとしては広告を行うメイン商品になり、店員のオススメやWEBのリコメンド商品となり、一般の普及モデルから高機能や高品質をうたい提案される商品やサービスになります。 商品やサービスを販売する業態や業種であれば、ほとんどの企業でアップセルとなりえる商品やサービスをもち、アップセルを実践していると思います。アップセルは成功させれば、売上総利益に対し絶大な効果を及ぼします。 次項ではなぜアップセルは効果があるのかを、クロスセルとの違いを含めて見ていきたいと思います。 3.なぜアップセルが重要か? 売上と売上総利益から見るアップセル そもそもアップセルは売上を上げ、売上総利益を上げることを目的とした手法の一つです。なぜアップセルが重要か?と考える際には、売上の構成要素と売上総利益の構成要素に着目する必要があります。 売上を構成する要素は2つあり、1つが数量、もう1つが単価です。以下の例を見てみましょう。 【例】 1台10万円のPCが100台売れると売上は1000万円 これを1台20万円のPCにアップセルできると100台売って売上は2000万円 これを1台20万円のPCに60台アップセルでき60台しか売れなくても売上は1200万円 売上を上げるには、顧客に商品を購入いただく必要があるわけですが、同じ数を販売してもアップセルにより単価が向上していれば売上は高くなります。アップセルの結果として販売数が低くなっても単価が向上しているため売上が高くなります(上記の例では単価が倍なので、販売数が元の単価の50%以上売ることができれば、売上が上がります。) 数量と単価が売上を構成する要素であり、この組み合わせが売上になっているということを理解すると効率的に売上を上げることが出来ます。 よくあることですが、販売数だけをみて販売数を上げようとすると、思いつく対策の1番はディスカウント、つまり安売りですが、10万円のPCを2割引きの8万で売り、20万円のPC100台の売上を稼ぐには250台を売らなければなりません。 さらに重要になるのが売上総利益を構成する要素で、売上から原価を引いたものが売上総利益なわけですが、上記の例を売上総利益にしたものを見てみましょう(以下は利益率を同じ30%として例にしています) 【例】 1台10万円で原価7万円のPCが100台売れると売上は1000万円、利益は300万円 1台20万円の原価14万円のPCが100台売れると売上は2000万円、利益は600万円 上記の10万円のPCを8万円で250台売れると売上は2000万円、利益は250万円 売上を上げるためにディスカウントをして販売をした結果、仮に売れて販売数が上がり売上が上がっても利益はディスカウントする前より減ってしまいます。売上から原価を引いたものが売上総利益の構成要素なわけで、この組み合わせが売上総利益になっているということを理解すると効率的に売上総利益を上げることが出来るわけです。 では、ディスカウントすると利益が下がるから違う方法で販売数を上げようとすると、ECなら広告費を追加したり、店舗なら出店をしたり、法人営業なら営業マンを増強したりすることが一般的な対策になると思いますが、この対策だと売上総利益は増えますが、経費が増えるのでその先の営業利益が減ってしまう可能性が非常に高くなります。 上記の例でおわかりいただけたと思いますが、結局機能や品質をしっかり顧客に伝えるアップセルをしっかりやることが、売上を上げ、売上総利益を上げる最も有効な手段の1つといえるわけです。 4.アップセルとクロスセルの違いとは ではアップセルで顧客にどんどん単価の高い商品を提案すればいいのか?そういうわけではありません。例えば軽自動車を買いに来た人にレクサスをお勧めしてもまず売れないでしょう。顧客の予算に合わせ的確なメリットを提示したアップセルで無ければ単なる無理やり販売になってしまい購入体験における顧客満足を落とす結果になり経営としてマイナスの結果になってしまいます。 高機能、高品質をお勧めするアップセルに限界がでた場合に、売上を上げる力を発揮するのが前回解説したクロスセルです。 クロスセルは、前回解説しており詳細は省きますが、顧客が購入した商品やサービスに対し、関連する商品やサービスを追加で提案することで、買い上げ点数を増やし顧客単価を上げることで売上を上げる手法です。 【前章の例を使い説明すると】 1台10万円のPCを100台売ると売上は1000万円、利益率が30%で利益が300万円 これを1台20万円のPCに60台アップセル、10万のPCが40台売れ合計100台で売上は1600万円、利益率が30%で利益が480万円 アップセルだけだとここで終了になりますが ここに、無線ルーター、記憶装置、マウス、セキュリティソフト等の周辺機器が一緒に売れ 合計単価が3万円で販売数の50%に添付、利益率50%とすると 50組×3万円=売上150万円、利益75万円となり PCの売上にプラスすると売上1750万円、利益が555万円になります 1台10万円のPCをただ100台売るだけと比べ、アップセルとクロスセルを組み合わせることで、売上が1.75倍、利益では1.85倍にすることができます。 前章で売上を構成する要素は単価と数量である旨解説いたしましたが、単価を上げることに効果があるのがアップセル、数量を上げることに効果があるのがクロスセルというわけです。 単価と数量の組み合わせが売上になっており、アップセルとクロスセルで単価と数量を最大化しかつ無理が無いように最適化できると、ただ販売するだけにくらべ飛躍的かつ効率的に売上を上げることが出来ます。さらにどちらの手法もディスカウントをして数量を上げる手法ではないため売上だけでなく売上総利益も確実に上げることが出来るわけです。 アップセルとクロスセルは経費も時間もかからずに売上だけでなく売上総利益に対しても絶大な効果が得られる手法であることはご理解いただけたかと思います。ここでアップセルとクロスセルの違いを以下にまとめてみます。 【アップセル】 目的 顧客単価の向上により売上を上げる 提案 高機能/高品質/大容量等による価値のある商品/サービスの提案 【クロスセル】 目的 顧客購入点数の向上により購入数を増やし売上を上げる 提案 関連性の高い商品/サービス等を追加で購入することにより価値を生む提案 上記の様にまとめられます。 アップセル、クロスセルは売上を構成する要素の単価と数量にそれぞれ違う手法で効果を発揮することで売上をあげ、ディスカウントをする手法ではないため、売上総利益の構成要素にも影響せず、さらに広告費や人件費、家賃といった経費も増えないため売上増加が営業利益まで直結して増加する利益を上げるための最も有効な手段の1つです。どちらも地味ですが経営に及ぼす効果は絶大と言い切ってよいと思います。 5.まとめ 今回は、アップセルの効果とクロスセルとの違いについてお話をさせていただきました。 アップセルもクロスセルも非常に地味ではありますが、それぞれの重要性の教育が従業員になされ、無理やり販売にならないように顧客メリットを明確に提示でき、いろいろなテクノロジーを使いこなすことで売上や利益の最大化に絶大な効果が得られる手法であります。 広告出稿、出店、営業人員を増やす等の経費を伴う行動をする前に、アップセルとクロスセルで売上、利益を最大化しておくことが効率的に利益を出すための経営ポイントになります。 今回のアップセルと前回のクロスセルは、過去にお話しした「在庫回転率」「一人当たり売上高」「坪効率」として取り上げた、在庫、人件費、家賃のCFや経費の後にあえて取り上げております。1番最初の「在庫回転率」から一連の流れとしてご一読いただきますと経営のポイントがより見えてくると思います。まだお読みでない方は是非ご一読いただけますと幸いです。 今回のアップセルを通してディ・ポップスグループとしてお伝えしたいことは、これまで同様ビジネスはヒトにより成り立っているということです。商品を購入いただくお客様もヒトであり、商品を販売する販売員も、テクノロジーを使うのもすべてはヒトであります。 AIをはじめとするテクノロジーを使いこなさなければビジネス上で競争に勝ち生き残ることはできないと思いますがテクノロジーだけでは生き残ることはできないと思います。テクノロジーが良いから、経営戦略が良いから、ビジネスが成功するのではなく、ヒト × テクノロジー × 経営戦略の掛け算が大切であるとディ・ポップスグループは考えます。 この考えの元、ディ・ポップスグループはヒトが輝くために、また社会課題解決のためにベンチャー企業に対して、出資を通じた支援と効率という数字だけではない価値を通じたグループエコシステムの実現を目指しています。 これからもご支援、応援の程よろしくお願いします。 D-POPS GROUP 常務執行役員 渡辺哲也
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2026.05.20
名経営者からの学び ー ”考え方が人生を分かつ”(中村天風)
ベンチャーエコシステムの実現のためには、起業から世界的大企業に育てるまでを行ってきた、過去の名経営者から謙虚に学ぶ姿勢が欠かせません。 「名経営者からの学び」シリーズでは、筆者が影響を受けた名経営者や思想家らの言葉をご紹介し、実体験からの想い、事業や実生活で活かされた事例などをご紹介していきます。 第三回目は、グループのアドバイザー、杉原が担当致します。 1. ”考え方が人生を分かつ”(中村天風) 心が、積極的か、あるいは消極的かで、人生に対する考え方がぜんぜん両極端に相違してきてしまう。心が積極的であれば、人生はどんな場合も明朗、颯爽溌剌(さっそうはつらつ)、勢いの満ちみちたものになりますけれども、反対に消極的だと、人生のすべてがずっと勢いをなくしてしまいます。人生を考える自分の心が消極的だと、すべてが哀れ惨憺(さんたん)、光のない、惨めなものに終わりはしませんか。 人生がたった一回かぎりである以上、たった今からでき得るかぎり完全な状態でいかされなければいけません。 ーー「中村天風 一日一話」(財団法人天風会 [編]、PHP研究所発行)より、原文のまま引用 2. この言葉を選んだ理由 私事ですが、1990年からこれまで一貫して、それぞれの時代において、”ベンチャー”と言われていた企業に勤めてきました。その中でも特に、現在のKDDIの前身にあたる第二電電での経験が、その後の仕事人としての基礎を作り、また、長年挑戦を続ける心の土台となった、”ベンチャー精神”を鍛えてくれたのだと、今でもあの時の経験に感謝をしています。 その、第二電電の創業者の稲盛和夫氏は、名経営者として、日本のみならず、中国や世界でも名が知られており、経営者らに尊敬されています。その稲盛和夫氏が影響を受けた思想家の一人が、この中村天風氏です。当時、上司や事業部長から、(当時流行った)ランチェスター戦略本やMBA本を読むことを勧められましたが、それよりも何よりも、真っ先に読むように言われたのが、この天風の書籍でした。 天風自身のロングセラー書籍には、「心を磨く」と「運命を拓く」ですが、一日一話形式で編集されたこの書物、「中村天風 一日一話」は、天風書籍のエッセンスを一話ごとに短く簡潔にした、非常に読み易い本です。”中村天風”という名前は聞いたことはあるが、まだ手にしたことがない、改めて読み返したいがどの本を読み返そうか、という方々には、まずこの本をと、お勧めしたい一冊として選びました。 ちなみに、今世界で最も名が知られたスポーツ選手の一人であり、日本人として誇らしいスーパースターである、大谷翔平選手がメジャーに行く前に天風の書籍を熟読していた、と話題になりました。 3. 自らの経験とこの思想への想い 90年代から2000年にかけて、社会人としてのイロハもまだ身に付いていない20代に、いきなり新規事業の立ち上げ部門(後にPHS事業となるDDIポケット電話準備室)に配属され、わずか6人の営業戦略の立ち上げ部隊の一員として、昼夜土日の境のないような激務をしていました。今だから言えますが、パワハラやワークライフバランスなどという言葉がまだ無くて、上司の命令は絶対、理不尽がまかり通る職場でした。 そのような、ややもすると不平不満を抱えたり、逃げ出したくなったりするような環境に放り込まれた身でも、私は物事の明るい面を見るように心掛け、困難を避けず、積極的な姿勢を保ち、人が見ていないところでも努力を続けることができました。それはひとえに、この天風本をバイブルにしていたから、と言っても過言ではありません。 この中村天風の書籍の中で度々触れられる、そして天風の代表的な思想である、”常に心を積極的に保つ”、という習慣を得たことで、あの時代だけでなく、その後の仕事人生に長く影響を与え、困難を乗り越える力を付け、チャンスを得て、数々の貴重な経験を積むことができました。 この「一日一話」の中には、表現は違えども、数々の積極思考の重要性、心の在り方の重要性を説く一節が散りばめられています。 いくつか挙げると、 ”心の思考が人生を創る” 「人間の健康も、運命も、心一つの置きどころ」心が積極的方向に動くのと、消極的方向に動くのとでは、天地の相違がある。 ”意志の力” 極限すれば、人生を幸福にするのも不幸にするのも、心の統制にかかっていると言ってもいいくらいなのである。この心に対する絶対の統制力を有する意志の力というものこそは、広い意味で、人を美しく向上させる原動力だと言える。 ”尊く、強く、正しく、清く” 自然法則にそむかないようにするには一体どうすればいいかというと、第一に「心」の態度を終始一貫いかなる場合があろうとも積極的であらしめることです。積極的であらしめるということは、尊く、強く、正しく、清く生きることなんであります。およそこのことぐらい人生および生命に対して大事なことはないのであります。 ”不平不満を口にしない” どんな場合があっても不平不満を口にしないこと。この不平不満が心の中にあると、どうしてもその言葉が積極的になりません。不平不満のある人は、始終上ばかり見て、下を見ないでいる。はたはみんな幸福で、自分だけがこの世の中で一番不幸な人間のように考えている。 ーー「中村天風 一日一話」より引用 これらの言葉に励まされ、自らを奮い立たせ、前向きに仕事に取り組んだおかげで、冷静に物事に対処し時代の流れを読むことができました。その後、PHSのモバイルインターネットサービスの立ち上げ、AOL社でのブロードバンドの立ち上げ、Napster社での音楽配信事業の立ち上げ、Google社での検索シェア向上の仕組み作りなどに従事して、インターネット業界の歴史と共に歩んでこられました。 現代のビジネスパーソンは、日々変化する、そして溢れる程の情報の洪水に揉まれています。日々の仕事で必要な知識だけでなく、生成AIやAIエージェント、AIロボティクス等、世界の最新の技術情報を追いかけなければなりません。また、自分の仕事が「AIに代替されてしまう職業」になるのではないか、と不安な気持ちを持たざるを得ないような環境に置かれています。 知識や情報を詰め込むことも、技術力を備えることも大事です。しかし、人間がAIと根本的に異なるもの、人間としての資産は、情報や知識ではなく、”心”です。技術や知識はその時代ごとに変わりますし、後から身に付けられます。しかし、前向きな心や積極的な考え方というものこそが、土台となり、時代の変化に関係なく自分の内面に積み重なる財産になるのだな、と私は思います。 今、私の手元に、もう20年程ずっと財布にしまっている、御守のような小さな紙の切れ端があります。そこには、自分でしたためた「生活信条七ヶ条」が記されています。 そのうちの最初の3条、 一、常に物事を前向きに考える 二、常に向上心を保ち勤勉を心掛ける 三、力の及ばぬことに不平不満を言わない は、すっかり自分の言葉、信条になりましたが、今思えば、この中村天風の書籍(及びカール・ヒルティの「幸福論」)から引用して簡素化した言葉だったということを思い出しました。 このような積極的思考法を世に広めてくれた、実業家であり、また思想家でもある中村天風氏に感謝します。 4. 読者の方々へのメッセージ 今回は、少し古い人物の著書を挙げさせていただきました。また、著名な経営者ではない、しかし、著名な経営者に影響を与えた思想家、という観点で選ばせていただきました。 筋違いな書籍ではないかな、と最初は思いましたが、誰もが知る大谷翔平選手が読んでいる、と聞いた時は、やっぱり普遍的な思想なんだな、と嬉しく思ったと同時に、スポーツ選手にも、そして経営者の皆さんにも響く言葉がたくさん詰め込まれているなと思ってご紹介致しました。 益々先が読めない時代になっていますが(ちなみに人類の歴史ではいつの時代もそう言われていた)、ここで紹介した中村天風氏の書籍を手に取っていただくことで、積極的な心の持ち方を保ち、前向きに元気はつらつとして、新規事業や起業した事業に取り組んでいく原動力になれば幸いです。 皆さんの仕事、事業、そして人生そのものが、明るく、幸福に満ち溢れたものでありますように! ディ・ポップスグループでは、「ベンチャーエコシステム作りを目指す」をビジョンに掲げ、エコシステム内の企業群が持続的に成長できる仕組みづくりと、アドバイザー陣による伴走支援に取り組んでいます。 ※詳しくはこちらをお読みください。「ベンチャーエコシステムとは?」 こちらの記事が、ベンチャー創業者および事業責任者の皆様にとって少しでもお役に立てたら大変嬉しく思います。 D-POPS GROUP アドバイザー 杉原眼太
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2026.05.13
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