
今回は、カイロプラクティック歴約40年のプロフェッショナル・山口博院長にインタビューいたしました。
まず初めに、山口先生の経歴を簡単にご紹介させていただきます。
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山口先生は、一冊の本との出会いを機に、それまでの仕事を辞め、夜間バイトをしながらカイロプラクティックの勉強をし、そして1987年(昭和62年)にカイロ院での勤務を始められました。そしてより自分の考えを出して治療をしたいという思いから独立し、現在も続く、「青山一丁目カイロプラクティック院」を開業され、これまでに延べ9万人を超える治療経験があります。また、日本姿勢教育協会理事として、放送大学で講座を担当されたり、各種メディアに登壇したりと、長年この分野での重鎮として貢献してこられました。
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今回は、ベンチャーエコシステム作りの参考として、企業経営者にとって、体は資本であるということを学ぶ、「プロフェッショナル」へのインタビューということで、山口先生にお時間をいただきました。
(このインタビューは2026年4月に実施しました。)
■ 「健康ブレーカー」とは何か — 突然、体が限界を迎える瞬間
-杉原-
事前に先生からいただいたレポートで印象的な言葉がありました。「一生懸命頑張っている方が、病気ではないのに突然体調を崩されてしまうことがあります。これは健康ブレーカーが落ちたような状態だと考えています。電気ブレーカーに例えてご説明しますと、容量ギリギリで電気を使っている時に電子レンジを使用してブレーカーが落ちた状況です」とのことでした。自分の身に起きたり、同僚に起きたりなど、意外と当てはまることがあるのではないかと思います。この言葉の意図について詳しく教えてください。
-山口-
一生懸命仕事をされていると、体が疲れていることは自覚できると思うんです。ただ、そのとき痛みがないとどうですか。「痛みがなければセーフ、大丈夫」だと思いますよね。
この「痛みがなければ大丈夫」という考え方でいると、健康ブレーカーは突然落ちやすくなります。なぜかというと、体はかなりの疲労状態にあっても、関節の動きが硬くなっていたり、筋肉に乳酸などの疲労物質が溜まっていても、アドレナリンなどの「頑張るホルモン」が分泌されてパフォーマンスを維持できるからです。また、脳には少しの異変信号が入ってきても、仕事に差し支えないよう情報を遮断する機能があります。そうでないと、私たちは仕事ができないんですね。
電気に例えると、通常の方が30アンペアの容量だとすると、アドレナリンが出ている経営者の方は60アンペア近くまで容量が上がっているイメージです。ですから、たくさんの電気を使っていてもブレーカーは落ちない。ところが、そのギリギリの状態で何か些細なきっかけがあった瞬間にブレーカーが落ちてしまうんです。ぜひ、そうなる前に対処していただきたいと思っています。
■ 体は「言葉」ではなく「張り・凝り」でサインを出している
-山口-
電気に例えると「使いすぎかな」と感じる段階が、体でいうと「張り」や「凝り」なんです。その段階でキャッチして、何か手を打ってほしいんですね。
体は言葉では話せません。だから、凝りや張りで「しんどいよ」と教えてくれているんです。たとえば「あと30分座り続けたら立った時に腰が痛くなる」とは言えない。でも、座っているうちに腰が重だるくなる。そういう形でサインを出しています。
危険なのは、その痛みを薬だけで抑えて無理をし続けることです。腰痛を薬で止めながらゴルフをし続けた結果、気がついたら激痛になり、病院に行ったら圧迫骨折だった、というケースも実際にあります。
これは、家の中でボヤが起きて火災報知器が鳴ったのに、うるさいからと止めて放置してしまうようなものです。そのまま放置すれば家が燃えてしまう。薬は決して否定しません、絶対に必要なものです。ただ、薬で痛みを抑えながら無理をし続けることは、体を壊す原因になります。
-杉原-
結構、経営者の皆さんやハードワークをしてきた方々には心当たりがあるんじゃないかと思います。病院に行っても「先生には伝わらないだろうな」という背中の鈍い痛みがずっと続いていて、でもストレスがなくなったら自然に消えてしまった。そういう経験をされた方も多いのではないでしょうか。ストレスが多かった時代の私の事ですが。(笑)

■ 来院者は会社員から大型客船の船長まで 多彩なリーダーたちの共通点
-杉原-
2つ目の質問ですが、青山一丁目カイロプラクティックにはどんな職業の方々が訪れているんでしょうか?
-山口-
一番多いのは会社員の方や主婦の方ですね。ただ、経営者の方やリーダーの方もたくさんいらっしゃいます。
たとえば、日本で最も大きな客船の船長さんもいらっしゃっています。大型客船の航路はあらかじめ決まっていますが、そのときどきの波や風の状況に応じて、少し手前を行くか大回りするかを判断し、乗客ができる限り安全で快適な船旅ができるように導くのが船長の役割です。
つまり、大勢の命を預かる最高責任者なんです。ですから、自分の体が健康でなければならない。そういう思いで来院されています。
-杉原-
確かに、企業に例えると、大型客船のクルーたちは従業員で、乗船しているお客様たちはサービスを受けるお客様ですよね。そしてキャプテンは社長やCEOにあたります。そのトップが健康でなければ、安全なサービスは提供できません。
-山口-
そうですね。企業もまったく同じです。また、世界的なテーマパークで責任者を務めていた女性の方も来院されています。テーマパーク、ショップ、ミュージック、映画といった部門の責任者を担われており、素晴らしい業績を残されています。ご自身もトレーニングを真剣に取り組まれながら、体のメンテナンスとして定期的に来てくださっているんです。
ある時、その方の友人のテレビ局の社長さんに「自分がこの仕事をちゃんとできているのは、カイロプラクティックで体を見てもらっているからだ」とおっしゃったと伺いました。私たちの仕事は、その方が「うまくいってよかった」と笑顔になる瞬間を支える黒子の仕事ですから、本当に嬉しかったですね。
また、今でも定期的に来院されているのが、アナログからデジタルへのテレビ移行を推進したテレビ局の重鎮の方です。アナログからデジタルへの切り替えには受像機をはじめすべての機器を変える必要があり、大手家電メーカーに「これからテレビ局はこういう仕様にするので対応した製品を作ってください」と交渉されていた。家電メーカー側も先行きが見えない中で大きな投資をして工場を作るのは容易ではない。その交渉がどれほど大変だったか、その方の部下の局長がうちに来られた際に「私にはとてもあんな交渉はできません」とおっしゃっていたほどです。
私たちが今、当たり前のようにデジタル放送を使えているのは、そうした方々の努力があったからです。その方が体が非常に辛かった時期に来てくださって、少しでも役に立てたことが本当に嬉しかったです。ベンチャーエコシステムの皆さんも、ぜひ体を大事にしてください。
ご来院される経営者の方々は、お忙しい中、ゴルフ、テニス、登山、楽器、他にもいろいろありますが、何かのスポーツや趣味をされている方が多いです。私が、運動や趣味で使用した道具、演奏された楽器など、使われた後はどうされますかとお尋ねしますと、ほとんどの方が、勿論、きれいにしてからしまいますよと仰られます。
自分の使った道具がきれいになるのは気持ちがいいですよね。その大切に扱う、思うというお気持ちを、わずかで結構ですのでご自身のお体にも向けていただけますかとお願いしています。道具は大切にしていても、ご自身のお体は無理をされたままの方が多いのです。 疲れた体をそのままにして次々と仕事をしたり、疲れたまま寝てしまうと、体の中に疲労がどんどん積み重なって症状に結びつく事があります。短時間で結構ですので、仕事の間や帰宅後、関節や筋肉をゆっくり動かされると、血流も改善する事ができて健康に役立ちます。
■ 定期的に来院する経営者に共通する「ひどい経験」と姿勢への認識
-杉原-
今、何人かの経営者の方の事例をあげていただきましたが、きっかけは体の不調だったとして、その後は定期的に来られるようになっているんでしょうか。どんな通い方をされているんですか?
-山口-
もちろんブレーカーが落ちてから来られる方もたくさんいらっしゃいますが、会社の経営者の方は、ブレーカーが落ちないように定期的に来院される方が多いです。
その理由は、そういった方々はどこかで一度、ひどい経験をされているからです。ブレーカーが落ちてから来ると、痛みはきつい、回復までの時間は長い、費用もかかる。だから定期的にケアをしていれば、症状が出ても軽く済む、あるいは出ないようにできる。それを経験的に知っているんですね。
ベテランの経営者ほど、定期的にチェック・修正することの重要性を理解されています。ただ、その理解に至る前には、たいていひどい経験をされているわけですが。
骨折のように疾患の場所が明確にわかるものはわかりやすい。でも、正しい姿勢の維持や体の調子を整え続けることの重要性については、なかなか認識されにくい部分があります。
よく「姿勢を正す」というと健康法の一種と捉えられがちですが、実は姿勢を正すということは「今やっていることを成功に導くための投資」と考えていただきたいんです。会社のトップがいて、役員がいて、社員がいて、家族がいて、取引先がいて、株主がいる。そのトップの体調は組織全体に影響します。だから、健康というのは「やりたいことを実現するための投資」なんです。
■ 悪い姿勢が体に与えるメカニズム 「動物」である私たちが動かないとどうなるか
-杉原-
役職や業界によって立ちっぱなしの仕事、座りっぱなしの仕事、様々ありますが、経営者の方は会議室で5時間会議、というのもよくある話ですよね。悪い姿勢が続くと体にどのような悪影響が出るのでしょうか。そのメカニズムを教えてください。
-山口-
まず基本的なことをお伝えすると、私たちは「動物」です。文字通り、動く物なんです。
座りっぱなしで関節を動かさない、筋肉を使わないでいると、血流が悪くなります。血液は酸素と栄養を運び、老廃物を取り除く役割を持っています。それが滞ってしまうとどうなるか。たとえば、朝から晩まで働いてもらうのに食事も出さない、トイレも使わせない、という状態を想像してください。誰でも倒れてしまいますよね。座りっぱなしで血流を悪くしてしまうと、それと同じことが体の中で起きているんです。
具体的には、足を組む姿勢、低い位置のモニターなど、こういったものが問題になります。私が一番申し上げたいのは、長い時間過ごす椅子の高さ、デスクの高さ、モニターの位置、キーボードの配置、これらが非常に重要だということです。5分10分ではなく、何時間も同じ姿勢でいるわけですから、そのセッティングがいかに体に影響するかは計り知れません。
-杉原-
意識はしているんですが、良い姿勢をなかなか長く続けられないんですよね。気づくと崩れてしまっていて。あと、現代のビジネスパーソンはスマホ1台で仕事ができてしまう部分もありますが、うつむいた姿勢はやはりよくないですか?
-山口-
スマホの操作で頭が15度、20度、30度と前に傾くと、肩にかかる負担は大きく増加します。スマホを操作する姿勢だと、体重の約3分の1が肩にかかるとも言われています。頭の重さは体重のおよそ10パーセント。仮に2リットルのペットボトルを2本として計算したとき、胸の前で持つのと腕を伸ばして持つのとでは、負担が全然違いますよね。5分も持てないほど疲れる。その疲れが肩に蓄積されることで、肩こりや集中力の低下につながるんです。

~Part2へ続く~
☆インタビューアー
D-POPS GROUP アドバイザー 杉原 眼太
【青山一丁目カイロプラクティック】
院 長:山口博
所在地:東京都港区南青山2-2-15 ウィン青山740
公式サイト:https://aoyama1.jp/
次回・Part2では、
・スタートアップ経営者の体は「OS」— 姿勢は生産性を最大化するための投資
・ストレスは体を固くする — 精神的疲労のメカニズム
・カイロプラティックの道へ進んだ理由
などについてお伺いしています。Part2もぜひご覧ください!
