
全3回にわたるインタビューの最終回となるPart3では、創業から13年の歩みの中で直面した最大の危機を振り返ります。
キャッシュ残り3ヶ月という極限状態を、全社員への正直な告白でどう乗り越えたのか。そして、10カ国以上の多国籍チームが体現する自律と規律を両立した組織文化、さらにはアジアのグローバル化を牽引するという壮大な未来ビジョンまでをお聞きしました。
D-POPS GROUPとの出会いが、同社の「ユニコーンへの挑戦」をどう加速させるのか。その全貌を公開します 。
(このインタビューは2026年3月に実施しました 。)
◆ 起業して分かった「1年がものすごく長い」という感覚
-杉原-
設立からちょうど13年が経ちますが、この間にはコロナ禍などもありました。この13年の中で、立石社長ご自身や会社として、どのような成長や壁があったのでしょうか?
-立石-
設立自体は結構前になりますが、最初の3年ほどはAI英会話以外の英語学習アプリを作っていましたし、自分の個人資本で運営していました。AI英会話を本格的に始めて、ベンチャーキャピタルの方々からご出資いただいた2016年頃から、状況がガラッと変わったという感覚があります。
そういう意味では、道のりとしては結構長かったなと思いますし、起業して驚くのは「1年がものすごく長い」ということですね。年を取ると1年が短く感じるというジャネーの法則がありますよね。私も投資銀行で7年目ぐらいになった時は、同僚と「もう1年終わっちゃうね」と話していました。それは、それまで経験してきたことで大体の仕事がこなせるようになってしまい、新しい刺激が減っていたからだと思うんです。
ところが起業すると、次から次へと新しい課題が出てきます。その都度、新しいスキルを身につけたり解決策を考えたりしなければならないので、本当に1年がものすごく長く感じます。それを10年以上続けてきたので、非常に長く、かつ面白いプロセスでした。
コロナ禍についても、始まった当初は、いわゆる巣ごもり需要で、AI英会話もすごく恩恵を受けたんです。ただ、海外に行けない時間が長く続くと、悲しいことに日本人は英語学習をしなくなってしまった。「出張もない、外国人も日本に来ない、旅行にも行けない」という状況で、英語について考える機会が激減してしまった。その時期は英語学習業界全体が低迷し、我々にとっても非常に大変な時期でした。でも、今はしっかり需要が戻っています。

◆ 最大の危機 ─ キャッシュ残り3ヶ月で全社員に「正直な告白」
-杉原-
これまでの歴史の中で、あえて一つ挙げるとすれば、最も苦労した大きな壁は何でしたか?
また、その壁をどう乗り越えたのでしょうか?
-立石-
やはり、資金調達の前段階で、会社のランウェイ(資金が尽きるまでの期間)が限られているという状況ですね。そうなると私自身もそうですし、社員もみんな焦るわけです。ベンチャーの場合、成長のためにどんどん採用を加速させている中で、「資金を集めなければならない」という課題と「組織をまとめなければならない」という課題が一気に押し寄せた時は、本当に大変でしたね。
AIサービスの開発というのは、最初はなかなか人間を超えられないので、数年間は鳴かず飛ばずの時期が続くんです。でもある時、急に「人間を超え始めたな」というポイントが来て、ググッと伸びる。その転換点だった2019年頃が、一番苦労した時期でした。
ちょうどシリーズAの資金調達をする直前で、会社のキャッシュが残り3ヶ月ほどになっていたんです。私は資金調達に奔走して死に物狂いなのですが、当時のメンバーはどこかのほほんとしているように見えて。その温度差に、当時は耐えられなくなってしまったんです。
それまでは、メンバーに財務的な心配をさせたくないという思いから、具体的な数字や資金繰りの話は共有していませんでした。でも、もう限界だと思い、全員を集めて正直に話しました。「今、会社にキャッシュがいくらあって、毎月これだけ減っている。割り算するとあと3ヶ月だ」と。「うちは25日が支払い日だから、この月までは払える。けれど、3ヶ月後のこの日の給料は払えません」ということも正直に伝えました。
話す前は、リスクも感じていました。蜘蛛の子を散らすように、みんな去っていくかもしれないなと。でも、このままの温度差で続けることはできないと思ったので、すべてを共有してみることにしたんです。
結果として、残念ながら一人は辞めてしまいましたが、残りの10名のメンバーは「なんとか乗り切りましょう」と言って頑張ってくれたんです。あの時は本当に、みんなものすごく踏ん張ってくれました。そこで温度差がなくなり、私自身も「みんなこれで頑張ってくれるんだ」と勇気をもらいました。まずは自分の元上司の方に頭を下げてブリッジ融資をお願いし、ランウェイを3ヶ月ほど延ばしました。そして、その3ヶ月の間に新しく開発した機能が、見事に当たったんです。
そこからKPIがぐわっと伸びて、売上も上がりました。そうなると「これなら出資するよ」と言っていただけるようになり、シリーズAで約3億円を調達することができました。あの時が一番しんどかったですね。それ以来、今は細かい費用についてもできるだけ共有するようにしています。キャッシュが今いくらあるのか、といったことも含めてですね。
-杉原-
そうすることで、社員の皆さんも「同じ船に乗っている」という実感を持てるのではないでしょうか。
-立石-
そうですね。結局、同じ情報を持っていないと同じ意思決定にはたどり着けません。情報をオープンにすれば、最終的には認識が合うと信じています。
◆ 社員の3分の1が外国籍 ─ 10カ国以上の多国籍チームが生む強みと苦労
-杉原-
ところで、スピークバディさん自体、社内が非常にグローバルですよね。この多国籍チームであることのメリットや楽しさ、そこから生まれる独自の文化などはありますか?また、逆に苦労されていることなどもあれば教えてください。
-立石-
今、社員の3分の1ほどが外国籍で、出身国でいうと10カ国以上のメンバーが在籍しています。かなりバラバラですね(笑)。ダイバーシティと言うと聞こえはいいのですが、実際にまとめるのはものすごく大変です。考え方も価値観も、みんなバラバラですから。そこは本当に苦労するところではあります。
ただ、メリットとしては、自分たちにはなかったような考え方が自然と入ってくるという点があります。日本人の常識にとらわれない発想や、海外の進んでいる部分を柔軟に取り入れられるのは一つの魅力ですね。あとは、やはり語学の会社ですので、入社する日本人のメンバーも「英語を学んできた」「国際的なチームで働きたい」という志向の人間が多いんです。そういったメンバーにとって、外国籍のメンバーと国際的なチームで働ける環境があることは、一つの喜びになっていると感じます。
また、先ほどのデザイナーもそうですが、エンジニアなどの日本国内では人口が少ない職種についても、外国籍まで視野を広げることで優秀な人材を採用できるというのは、経営上の大きな強みだと思っています。全社会議なども英語と日本語の両方で行う必要があるので、同時通訳を入れたりして運営は結構大変ですが(笑)。
◆ D-POPS GROUPとの出会い
-杉原-
先日、弊社での事業説明会と懇親会にご参加いただきました。あの日のイベントはいかがでしたか?
(事業説明会の様子はこちらから)
-立石-
まずは、あれだけの人数の方々が集まってくださったことに、すごく驚きました。皆さん経営者ですからね。そのレベルの方々があれだけ集まって、我々の話をしっかりと聞いて質問をしてくださったり、協業の提案やアイデアをたくさんくださったりしたのが印象的でした。
説明会の時はまだ少し距離があるように感じた部分もあったのですが、懇親会になってお酒も入り、こちらの身の上話や皆さんの考えを聞き出してから、一気に仲間に入れていただいたような感覚になりました。御社はすごくファミリー感のある会社なのだなと強く感じました。
実は今、研究開発段階にあるリリース前の機能があるんです。説明会でそのアイデアをお話ししたところ、皆さんの反響がものすごく強かった。一緒に参加した執行役員の森本とも「あれは当たるね」と話していました。あれだけ強い反応が返ってくるということは、この方向性は間違いないぞ、とありがたい確信に変わったんです。
-杉原-
スピークバディさんには、すでに数多くの支援者や出資企業がいらっしゃる中で、今回私たちの出資を受け入れていただいた理由と、実際に受け入れて良かったと思われる点があれば教えてください。
-立石-
やはり後藤社長や杉原さんはじめ、関わる方々が我々の話を非常に真剣に聞いてくださる方々だなと感じ、一緒に成長していきたいと思えたのが一番の理由です。それと、ディ・ポップスグループさんは非常にユニークな会社ですよね。私自身も「こういう会社を作りたい」と思わせてくれる要素がすごく多いんです。
資金調達の際、チームのメンバーにも「自分が心から尊敬できる経営者の方に株主になっていただきたいし、そういう会社を目指していきたいから、ディ・ポップスグループさんからの出資は絶対に受けたい」と伝えていました。素直に「ぜひ出していただきたい、学びがある」と思えました。

◆ 「自律も高く、規律も高い」偉大な会社へ
-杉原-
弊社が目指している「ベンチャーエコシステムの実現」というビジョンについて、共感する部分や思うところはありますか?
-立石-
何よりも「ユニコーンを作る」という志に強く共感しています。実は私、もともとPCにステッカーを貼るタイプではないんですよ(笑)。「せっかくの綺麗なパソコンが汚れてしまう」と思っていたのですが、御社のユニコーンのステッカーはデザインが純粋にかっこいいですし、何より「ユニコーンになってくれ」という期待を込めていただいている。その志を忘れないためのリマインダーとして、今は大切に手元(PC)に貼っています。
-杉原-
自社のステッカーすら貼っていない綺麗なPCなのに、有難いです(笑)。
では、スピークバディさんが目指す5年後、10年後の未来の姿を教えてください。
-立石-
最近、特に意識しているのは「偉大な会社を作りたい」ということです。抽象的ではありますが、「この会社があってよかった」と皆さんに言っていただけるような存在になりたい。そのために、自分たちのミッションやビジョン、バリューを改めて信じ抜くことが大事だと、一周回って感じています。
先ほどお話しした『アジアのグローバル化を牽引するAI言語習得スタートアップ』という姿を5年スパンで目指しつつ、ミッションである『真の言語習得を実現し、人生の可能性と選択肢を広げる』ということを10年スパンで実現していきたいと考えています。
また、組織としては昨年1年で規律をかなり強化しました。スタートアップは自由で自律的な組織であることが多く、我々もフルリモート中心のハイブリッドで働いています。私自身、本来はルールをあまり作りたくない人間なのですが、規模が60人を超えてくると、どうしてもミスや事故が起きてしまいます。そこで規律やアカウンタビリティ(説明責任)を強く求めるように舵を切りました。
最近読んだ本に、「自律も高いが規律も高い会社こそが偉大な会社になれる」という話があり、非常に共感したんです。自律だけ、あるいは規律だけでは不十分で、その両方を高い次元で両立させたい。その先にビジョンの達成があると思っています。
-杉原-
自律と規律は相反するようでいて、実は共存するものですよね。Googleなども、自由に見えてガバナンスや目標達成への意識は凄まじく高い。どう働くかは自由だけれど、ミッションに対する責任は徹底している。そこは表裏一体ですね。
-立石-
おっしゃる通りです。今回のオフィス移転やカルチャー醸成へのこだわりも、間違いなくその一環ですね。
◆ アジアから世界へ ─アジアのグローバル化を牽引する
-杉原-
アジアをはじめ、海外展開も計画や視野に入っているのでしょうか?
-立石-
そうですね。私たちはビジョンとして『アジアのグローバル化を牽引するAI言語習得スタートアップ』になることを掲げています。以前に台湾市場に挑戦して今は一度止めている状態ではありますが、今後も機会を見定めて、まずは東アジア、その次は東南アジアへとサービスを広げていきたいです。ゆくゆくはヨーロッパなど、世界中に広げていきたいと考えています。
-杉原-
東南アジアだけでも6億人以上の人口がいますからね。
-立石-
ええ、市場としても非常に魅力的です。世界中で英語で苦労している人は何十億人もいますから、そこに対して価値を届けていきたいですね。まず日本で成功して、そこから広げていくと。
◆ 読者の方々へ ─「今までとは違う英語学習を」
-杉原-
最後に、この記事を読んでいる方々へ一言お願いします。このコラムは、経営者や起業家、投資家といったプロの目線を持つ方々がじっくり読んでくださっています。
-立石-
今、AIの進化の凄まじさは誰もが毎日感じていることだと思います。そういう時代だからこそ、従来のやり方を疑い、変えてみる姿勢が問われていると感じます。英語学習についても、ぜひ今までとは違った新しいやり方にトライしてみていただきたいです。
ポジショントークに聞こえるかもしれませんが、AIの力で海外との仕事がやりやすくなっていく中で、ビジネスパーソンにおける英語の重要性は今後ますます高まっていくはずです。今の若者世代は英語ができるのが当たり前という層も増えています。現役世代で活躍されている皆様も、そうした若い世代に負けずに英語をブラッシュアップして、自分なりの英語を身につけるために、ぜひスピークバディを活用いただければ嬉しいです。
☆インタビューアー
D-POPS GROUP アドバイザー 杉原 眼太
【株式会社スピークバディ】
会社名:株式会社スピークバディ
代表者:代表取締役 CEO 立石 剛史
所在地:東京都中央区日本橋3-14-3 +SHIFT 日本橋桜通り3階
設 立:2013年5月
コーポレートサイト:https://www.speakbuddy.com/
