COLUMN

【エグゼクティブインタビュー】藤崎 一郎 顧問(元在アメリカ合衆国日本大使)~後編~

  • INTERVIEW
2024.10.16

今回は、「ベンチャーエコシステムの実現」のため2023年4月よりディ・ポップスグループの顧問に就任していただいた藤崎 一郎 顧問(元在アメリカ合衆国特命全権大使)へ、弊社代表取締役の後藤がインタビューいたしました。

今回はインタビューの後編になります。
前編は以下のURLからご覧ください。
【エグゼクティブインタビュー】藤崎 一郎 顧問(元在アメリカ合衆国日本大使)~前編~

 

-後藤-
それでは次の質問です。

一般の日本の大企業(新日鉄や伊藤忠等)でも社外取締役をされた経験があられますが、外務省で仕事をすることと、大きな違いを感じられたこと、また共通するものと感じられたことは、どのようなことでしょうか?

-藤崎-
大企業と外務省で大きな違いを感じたところは、外務省にいるときは決断にあたって常に対外説明、つまりアカウンタビリティを考えていました。民間ではそこが違うと感じました。

役所におりますと、マスコミと国会というのにさらされて、ちょっとでも何か不備があると対外的に発表が必要になります。例えばどこかの税務署で30万円紛失した場合、それを発表しなかったら大騒ぎになる。そして、 隠蔽工作をした等と言われてしまいますよね。警察だってそうです。

一方で、民間会社で同様に30万円の紛失があった場合、紛失後にすぐに見つけたら、今後はしっかり管理するようにいわれるだけで済みますし、基本的には経営陣の判断でコントロールできる。

役所にいる私どもはそこにエネルギーをかけすぎてるなと思います。

もう一点違うところは、外務省は大企業に比べるとフラットな社会でした。若い人もトップの場に行き発言が許されていました。大企業はヒエラルキーが厳しいように思います。

-後藤-
私も、世の中ほとんどの会社がピラミッド構造になってるので、若い人がチャンスを持ってやろうとしても、特別にものすごい努力したりとか能力が高い人がいても、昇進するまでものすごく時間がかかる。だから、そういった世の中でも、「若者にチャンスがある会社もあるよ」という選択肢を作ってあげないと未来がないなと思いました。それが会社を創ったことの 理由の1つでもあります。

-藤崎-
そうですよね。それは本当に大事です。そうじゃないと海外に逃げちゃうよね、みんなね。

-後藤-
今はそこからさらに発展しています。若者にチャンスのある会社を作ろうっていうところから、今はとにかく日本に起業家を増やして、挑戦するカルチャーや、 懐の深い社会をどんどん広げていこうと思っています。そうすることで、若い人たちが選択肢を持って、どういう会社で働くとか、どういうところに挑戦するか、あるいは起業するっていうこと自体も世の中から称賛されるような社会を、作っていく必要があると思って今頑張ってるんですよね。

-後藤-

それでは、外務省で様々な国と交渉をされてきた藤崎さんにお聞きしたいのですが、

世界的な複数の大国と付き合う場合のパワーバランスの取り方に関して、グローバルの中で、日本のプレゼンスをしっかりと堅持し、向上させる上で、アメリカやEUとの関係、また他のBRICSなどの大国と、どのようにバランスを取るべきだとお考えでしょうか?

-藤崎-
最近大企業のトップと話したときに、「ウクライナや北朝鮮、中国の行動に鑑み、民主主義、平和など、性善説はここ10年は封印して、性悪説でいくべきではないか」と話されました。私は「いえそれは同時です。表向きは性善説ですが、裏では常に性悪説です。誰が何をしてくるかわからないという備えをするのが安全保障の考えです」と言いました。

日本が北朝鮮、ロシア、中国の隣国であることを考えると安全保障のために米国に依存せざるを得ません。しかしそれはまったく同じ政策をとらなければならないという意味ではありません。米国と違い日本はキューバ、イラン、ミャンマーと常に良好な関係を維持していますし、米国が出てもTPPやパリ協定を続けました。声高にいわずにうまくやっているのです。グローバルサウスもBRICSも決して一枚岩ではありません。そのうちのインド、南ア、ブラジルなどとはできるだけいい関係を構築していくことが大事です。

海外に行くと、日本に対しての信頼感とか良いイメージをもっているっていう人が多いですよね。なので、今のままで基本的にいいんじゃないだろうかと思っています。

ただ、気を付けていかなきゃいけないのは、インドですね。インドという国は、中国が悪者になってるおかげでいい国のようになっていますが、なかなかしたたかな国です。インドとは何回かしか交渉はしたことないですが、最も難しい交渉相手でした。

-後藤-
産経新聞の連載の中で、 日本が頼りないという風に国民は言うけれど、素晴らしい功績としては、戦後70年くらい、 戦争が1度もないことを挙げていましたよね。なるほど、確かに素晴らしい功績だなと思いました。

-後藤-

では続いての質問です。

日本はバブル崩壊後から、失われた30年とよく言われていますが、グローバルに見て、日本の経済成長や発展が遅れをとってしまったのは、なぜだと思われますか?米国の社会学者エズラ・ボーゲル氏の「Japan as Number One: Lessons for America」の著書が出版された時とは、大きく様変わりしたかと思います。

-藤崎-
そもそもナンバーワンになることもあり得ませんでした。こんな狭い国で資源もなくて、それでも1億人もの人が暮らしている。こんな狭い国土にいるところは、相当な食べ物などを輸入しなきゃいけないんだからナンバーワンになるはずがないのに。友人でしたから言いにくいですが、おだてて本を売ろうという戦略です。

日本は資源もなく背伸びしないことが大事です。米国に言われて産業政策をすっかりやめたのがよかったか。やはりシリコンバレーみたいなものを政府と経済界でつくるべきだったでしょう。

一方で、日本ほどクリーンで快適なところはないと思います。アカセキレイ(安全、確実、清潔、規律、礼節の頭文字)というソフト面が非常に素晴らしい国です。

日本は人口減少化と言いますが、小さな国土の日本に人口1億もの人は本当はいらないかもしれない。国の大きさはせいぜいカリフォルニア州くらいで、そこにアメリカの3分の1の人口がいるんですから。そして日本の80%は山なんです。もう少し、日本の人口は減ってもいいかもしれません。 

昔の自動車産業などのような国内市場なんかいらないんで、例えば台湾のTSMCやフィンランドのノキアのように、国内市場関係なく事業を起こしていく。そういうことも考えながら、産業政策というものを作っていくべきだったんじゃないかなと思うんです。だから、そういうまさにベンチャーなりそういうものをやるということを全然してこなかったのが、ここに繋がっちゃってるんじゃないかなと思いますけどね。

-後藤-
今慌ててというか、5年前ぐらいからですかね、もうとにかくスタートアップベンチャーを後押ししないといけないという流れがありますよね。 政府もそうですし、あと大企業もベンチャー投資を加速したりとか、今やっとという感じなので、本当だったら30年前に進めないといけなかったことが今やっと本腰が入ったと感じています。

-後藤-

それでは最後に、駐米大使時代様々なアメリカの大統領と仕事をされた藤崎さんですが、

これまでにお会いされたアメリカの歴代大統領、もしくは各国の大統領や首相の中で、最も印象深く、心に残っている方は、どなたでしょうか?またそれはなぜですか?

-藤崎-
まずビル・クリントン大統領はね、演説をしてると、400人の聴衆がいても、みんな自分に話してると感じてしまうような話術を持った人らしいんですよ。そして、彼のすごいところは、とんでもない秀才なんですよね。アメリカで1年で50人くらいしか選ばれないローズ・スカラーという大学の優等生しか利用できない奨学制度で、オックスフォード大学に行くんですね。 

ところが、この方は全然授業を聞いていなかったらしいんです。ただね、これは人から聞いた話なんですけど、その50人の秀才たちが 集まって、この中で将来アメリカのリーダーになる人は誰だろうと言ったら、多数が「クリントンだ」といったらしいんですね。

全然勉強してない。でも勉強はできる。それだけじゃなく、一種の人間力だったと思うんですね。秀才ばかり集まって多数がクリントンさんを指名したと言うのはすごい能力ですよね。

それともう1つ、私との関係で申しますと、 小渕元総理が亡くなった時、私は外務省の北米局長だったんです。そのときクリントンさんは小渕元総理のお葬式に来られました。 お葬式の後、赤坂の迎賓館でレセプションがあったんですね。私は北米局長だったので、アメリカの大統領を案内する係だったんです。私が先導役で、クリントンさんを案内しました。その時クリントンさんは、私の後姿を見ることがほとんどで、会話も少しだけだったんですね。

その4ヶ月後に、森元総理が沖縄サミットをやったんです。その時、平和の礎っていうところで、クリントンさんがスピーチをすることになっていました。 実はそのとき、クリントンさんは中東の和平交渉をやっていたので来られるかどうかわからなかったんですよ。でもなんとか来てくださってスピーチをされました。

そのあとクリントンさんと握手をするために列ができたんです。私は、1番前の列にいたんですが、地元の方が握手したいと前のほうに来られたので、私はあとでまた会談の時お話しするタイミングがあるから、どうぞと言って、席を譲って後ろに行ってたんですよ。そしたらクリントンさんが握手をされているときに、ぱっと私を見てね、「お前ここにいるのか!」って言ったんですよ。4ヶ月前に東京で先導役としてお会いしただけなのに、特別な記憶力をお持ちなのか、あるいはこの人は人たらしで有名だから、4人ごとくらいに声をかけていたのかもしれません(笑) そんな人間力のある方でした。

一方で、バラク・オバマ大統領はね、 やっぱり秀才なんですけど、 黒人の方ということもあってなのか、自分が秀才だということを印象づけることを大切にされる方でした。

クリントンさんは自分の秀才さを一切見せないですよね。ここは違いがあるなと思いました。

-後藤-
逆にもう元々能力が高い方だからこそ、脳ある鷹は爪を隠すというか。

-藤崎-
そうなんでしょうね、おそらく。そして白人でもあるしね。
オバマさんもね、とってもかっこよくて、大体出てくるとワイシャツを腕まくりしてるでしょ。だけどね、本当はものすごい詰めの鋭い人なんですよね。

 

-後藤-
本日はお忙しい中、お時間を作っていただき本当にありがとうございました。
たくさんの学びと刺激をいただきましたので、これからの日本社会のために必ずベンチャーエコシステムを作り上げたいと思います。

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【あとがき ~株式会社ディ・ポップスグループ 代表取締役 後藤和寛~】

日本の外交で最も重要とも言える駐米大使や在ジュネーブ国際機関日本政府代表部特命全権大使などを歴任された藤崎さんにインタビューさせて頂き、本当に重みのある素晴らしいお話や経験談、そしてアドバイスをたくさん頂く事が出来ました。

あまりに楽しみでワクワクが止まらず、前日は特に、夢の中でも質問させて頂きたいことが頭に浮かぶほどでした。そしてたくさんの質問に、真摯にお答え頂きましたが、そのお答えはどれも会社経営に相通じるものばかりでした。

非常に難しい外交や政治の中で決断を出していく事は、想像を絶するものがあります。経営でもあまりに様々な目の前の事象が、さらに複雑に絡み合っている中から、出来る限り適切な解を出すことが常に求められます。そんな中で、藤崎さんからお話頂いた経験談やアドバイスは、私や、今現在リーダー役を担っている方々だけでなく、未来にその役目を担う方々にも、大変参考になる金言ばかりでした。

こちらの記事では、ストレートな内容のお話も非常に多かったため、掲載が出来ないことも多かったですが(笑)、実際は記事の内容の10倍ほどのインタビューをさせて頂きました。現在でも日米協会の会長や、中曽根平和研究所の顧問(前理事長)など、重職をされていますが、これからの日本の未来のために、藤崎さんの知見や経験を次の若い世代に是非継承していって頂きたいと、切に感じるプライスレスな機会になりました。

最後に、貴重な機会を頂いたことに、心より感謝申し上げます。

 

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2026.06.02
「健康は最高の投資」40年のキャリアが語る、経営者の体と姿勢の真実|青山一丁目カイロプラクティック・山口博院長インタビュー【Part2】
全3回にわたるインタビュー Part2では、経営者の孤独と精神的ストレスが体に与える深刻な影響をテーマに掘り下げます。施術前に患者の「歩き方」「表情」「声質」を観察するプロの視点と、投資家として起業家を評価する際の「人物のOS」チェックの共通点が明かされます。カイロプラクティック院長が語る「姿勢と表情は相互に影響し合う」という身体の真実、そして山口先生がカイロプラクティックの道へ進んだ原点のエピソードもお届けします。(このインタビューは2026年4月に実施しました。) Part1はこちらからご覧ください。 ■ スタートアップ経営者の体は「OS」— 姿勢は生産性を最大化するための投資 -杉原- IT業界やテック業界に勤める若い起業家にとっても、この話は非常に重要だと思います。起業家も物心ついた頃からスマホが当たり前の世代が多くなっているので、彼らにもわかりやすく「姿勢が悪いと何が起きるか」を説明していただけますか。 -山口- 先ほど申しましたように、姿勢を正すということは単なる健康法ではなく、今行っている事業を成功させるための投資、生産性を最大化するための投資と考えていただきたいです。経営者やスタートアップのみなさんなどにとって、体というのは「OS」です。 どんなに優れたアプリ(スキルや戦略)があっても、OSがちゃんと動かなければ意味がありませんよね。そのOSが、まさに経営者ご自身の体なんです。 -杉原- OSがバグっていたら、いいアプリがあっても、頭の中にある構造を具現化できないですよね。 -山口- まさにそうです。健康と姿勢はもちろん姿勢だけではありませんが、姿勢も深く関係しています。そういうことをぜひお伝えしたいと思っています。 ■ ストレスは体を固くする — 精神的疲労のメカニズム -杉原- 当ディ・ポップスグループのグループ会社は25社、また出資をしている会社は30社ほどあります。みんな経営者で、様々なフィールドで社会課題の解決に向けて頑張っています。 ただ、資金繰り問題や人事問題など、経営者になると様々なプレッシャーがあり、それを人に言えない立場の方も多いんですよね。経営者の孤独というか、誰にも話せない悩みを抱えながら頑張っています。そういう状態は、やはり体に不調をきたしやすいものなのでしょうか。 -山口- 何かを支えたり持ったりする肉体的な疲労というものがありますよね。そして、もう1つは気を使うこと、問題を解決しなければならないプレッシャー、人の間に挟まれて困ることなど、そういったメンタル的・精神的な疲労も筋肉を固くさせます。 むしろ、運動性の疲労は体を動かせばある程度解消できますが、精神的な疲労の方が体への影響が大きいことも多いんです。 昔の言葉に「借金で首が回らない」という表現がありますよね。思い悩むことが続いたり、辛いことが重なったりすると、首が硬くなって眠れなくなったり、頭痛がしたりする。昔の人はこういった身体症状を的確に言語化していたんです。「借金で首が回らない」は、ストレスによる典型的な身体症状なんですね。 この言葉が生まれた頃は「ストレス」という言葉自体がまだなかった。今の言葉で言えば、まさに「ストレスで首が回らなくなる」ということです。 以前、外資系企業の社長さんで日本語があまりわからない方が来られたことがあります。その方の頭痛や首の痛みはストレスから来ていると思いましたので、英語で「How do you like your new boss?(新しい上司はどうですか?)」と聞いた後に、英語の表現「He's a pain in the neck(あいつが首を痛めている、つまり"あいつには頭が痛い")」の話をしたんです。日本語でも英語でも、ストレスは首を痛める。これは普遍的な事実なんですね。 ■ 脳神経が首・肩を直撃する — ストレスの身体メカニズム -杉原- 抱え込み続けると体に来るんですね。 -山口- 一番気を使う人や、全く気が合わない人と1日仕事をすると、座っていなくても夕方になると首が硬くなって頭痛がすることがよくありますよね。それは肉体的な疲労ではなく、精神的な疲労から来るものです。 なぜかというと、肩より下の多くの動きは「脊髄」という感情のない部位から出る神経の影響が多く、感情がない部位から出ているので、どれほど気を遣っても足が動かなくなる、手が動かなくなるということは起きません。ところが、首から上(特に頭や首、肩)は「脳神経」という、感情を処理する脳から直接出る神経が関係しています。脳のストレス状態、気疲れやイライラ、心配が脳神経を通じて、首や肩の筋肉を一気に緊張させてしまうんです。 脳神経は12対ありますが、その中でも11番目の「副神経」が、肩や首を動かす「胸鎖乳突筋」などの筋肉に影響します。この神経がストレスの影響を受けると、首が回らなくなったり、肩がガチガチに固まったりします。 また、神経は左右のどちらか一方に出る特性があります。右利きなのに左の肩や首だけが特にきつい、という場合は、スマホの持ち方などの習慣的な問題だけでなく、神経から来ている可能性もあるんです。 ■ 蒸気機関車好きの青年が、カイロプラクティックの道へ -杉原- さすがプロの先生ですね(笑)。 ところで、先生は学生時代からこの道を目指されていたんですか? -山口- いえ、全然そんなことはないんです(笑)。学生時代は蒸気機関車が大好きで、日本中を北海道から九州まで写真を撮りに歩き回っていました。いわゆる「撮り鉄」ですね。 ただ、とにかくお金がないものですから、夜中の12時に出発して深夜3時頃に乗り換え、朝6時頃着くような、ハードなスケジュールで移動していました。家に帰ってくると体がかなりきつかったんです。実家が新宿にあったので、紀伊國屋書店に行って、立ち読みしながらストレッチの本を参考にしていたんです。 大学を卒業してからも、紀伊國屋書店に通う習慣が続いていたのですが、ある日、整形外科のコーナーに「背骨の歪みがこんな病気を引き起こす」というタイトルのカイロプラクティックの先生が書いた本があったんです。なぜそこにあったのかはわかりませんが、手に取ったのが、この世界に入るきっかけになりました。 その本の内容が非常に面白かった。それまで私は、痛みというのは無理をしたり、どこかにぶつけたりすることで生じるものだと思っていました。ところがその本には、悪い姿勢だけでも体のさまざまな部分に不調が出ると書かれていた。これは面白いと思って、すぐに問い合わせの電話をしたら、「カイロプラティックを教えてくれるところがある」と教えていただきました。 ■ 会社を辞め、深夜アルバイトをしながら朝まで勉強した日々 -山口- 数カ月悩みましたが、思い切って会社を辞め、アルバイトをしながら勉強することにしました。当時は赤坂プリンスホテルの「ポトマック」という喫茶店で働いていて、夕方4時頃から深夜12時半頃まで仕事をして、送迎で早稲田まで帰る。そして夜が明けるまでずっと勉強する生活でした。 ところが、その勉強が全く苦にならなかったんです。アルバイトで交感神経が緊張した状態が続いていたせいか、深夜でもものすごく集中できた。大学受験の時のように、頭がフル回転していました。解剖学の本を見ながら、夜明けまで没頭して勉強し、外が明るくなって人が歩き始める気配がすると眠り、午後に起きてアルバイトへ行く日々でした。 後から考えると、父親が戦時中に衛生兵として負傷した兵士の治療に携わっていたことも、何かのDNAとして自分の中にあるのかなと思うことがあります。父は軍医ではありませんでしたが、衛生兵として多くの方の治療をしていました。私も医師ではありませんが、多くの方々の健康に携わるこの仕事を続けているのは、そういうつながりを感じるからかもしれません。 -杉原- 独立は何年前のことですか? -山口- 最初の独立は40年くらい前ですね。 若かったので、自宅の住所をカイロ研究所として、四季報に掲載されている会社数十社に案内を送りました。お酒を飲みながら「どのくらい返事が来るかな」と待っていましたが、もちろん来るはずがないですよね(笑)。当時はパソコンがなかったのでワープロで作ったテキストだけの文書で、図版もなく、紹介者もいない。「御社の社員の方々の健康のために、ぜひ役立ちたいです」というだけの手紙でした。 ただ、この話を大学の恩師や友人にしたところ、3名の方が会社と交渉してくださって、「週に1回、または月に2回なら医務室や社員休憩所を使っていいですよ」という許可を正式にいただきました。勝手に行くのではなく、きちんと会社を通して活動することができました。 その後、渋谷の著名な先生から声をかけていただき、日本でもトップクラスのカイロプラクティック院に入ることになりました。そこには総理大臣経験者が3名、プロスポーツ選手、大手商事会社・大手不動産会社・航空業界の役員の方々、著名な芸能人など、各界の著名人が多数来院されていました。 -杉原- それは修行時代と言っていいんですか?(笑) -山口- そうですね、独立する前の修行時代でした。 そこで、自分にまったく注意を払ってくれない患者さんもいらっしゃいました。ところが院長が来ると、本当に嬉しそうにニコニコとお話しになる。それを見て「よし、頑張るぞ」と闘志が燃えましたね。自分の体を守ってくれる先生の前に来た若造に、わざわざ話しかけてくれなくても当然です。でも、いつか自分もそうなろうと強く思いました。 ■ 歩き方・表情・声質から読み解くプロの観察眼 -杉原- やはり施術する上で、会話は大事なんでしょうか。 -山口- 絶対に必要です。入ってきたときの歩き方、話したときの反応、普段と比べた変化など、施術だけでなく、こうした観察全体が治療の一部です。 うつ状態に近い方は、入ってきたときにもう背中が丸まってうつむいているんですね。「こんにちは」と声をかけたときの反応でも、この方は何かあるなとわかります。歩き方、座り姿、表情、声質、そういったものを総合的に踏まえて施術に向かっています。 -杉原- すごく共感します。ビジネス開発の仕事をしていた時代も、投資家として起業家と面談する時も同じで、事業モデルはどうか、事業領域はどうか、技術的にどう解決したか、といった質問はもちろんしますが、実はそれよりも、部屋に入ってきた時の表情、質問に答える時の自信の溢れ方、面談者にとって「当たり」の質問をされた時の目の輝きなどをを見ています。まずOSとしての人物をしっかり見ようと思って。人物チェックという意味で同じですね。 -山口- 背中が丸まった人の印象について、以前早稲田の学生にアンケートを取ったことがあります。「自信がなさそう」「弱々しい」「人生うまくいっていなさそう」といった回答が多く集まりました。また、猫背は老けて見える一因でもあります。 反対に、背筋が伸びていると若々しく見えるだけでなく、表情筋が上がり、脳の血流も改善します。逆に姿勢が崩れると脳の血流が悪くなって不活性化してしまいます。姿勢を正すことは、まさに内面と外面の両方に影響を与える「投資」なんです。 -杉原- 確かに猫背だと自信がなさそうに見えますよね。あと、面談した時に表情を見ます。どうしても悪い予感がする人がいて、気がマイナスだなとか。どれだけ言葉で語られても、深く付き合うのはどうかなと思ってしまう。 あるいは同じ人でも久しぶりに会った時に「元気ですよ」と言う時の姿勢や目力と表情を見て、なんか調子が悪いな、もう少し深く何かあれば相談してねというように、寄り添い方を変えたりもしますね。 -山口- 表情は体に影響しますし、また体も表情に影響する。これは双方向なんです。たとえば、胃が荒れると背中にも症状が出ることがあります。胃の内部を直接触ることは私たちにはできませんが、背中を緩めることで胃の状態を間接的に改善できることもある。うつ状態も同じで、背中を緩めることで気持ちが少し楽になることもある。体と心はしっかりつながっているんです。 ~Part3へ続く~ ☆インタビューアー D-POPS GROUP アドバイザー 杉原 眼太 【青山一丁目カイロプラクティック】 院 長:山口博 所在地:東京都港区南青山2-2-15 ウィン青山740 公式サイト:https://aoyama1.jp/ 次回・Part3では、 ・青山一丁目への移転と、テレビ出演につながった「利他の精神」 ・本田宗一郎氏が語った「経営者が健康でなければならない本質的な理由」 ・ベンチャーエコシステムとの共通点 などについてお伺いしています。Part3もぜひご覧ください!  
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2026.05.29
「健康は最高の投資」40年のキャリアが語る、経営者の体と姿勢の真実|青山一丁目カイロプラクティック・山口博院長インタビュー【Part1】
今回は、カイロプラクティック歴約40年のプロフェッショナル・山口博院長にインタビューいたしました。 まず初めに、山口先生の経歴を簡単にご紹介させていただきます。 -------------------------------------------------- 山口先生は、一冊の本との出会いを機に、それまでの仕事を辞め、夜間バイトをしながらカイロプラクティックの勉強をし、そして1987年(昭和62年)にカイロ院での勤務を始められました。そしてより自分の考えを出して治療をしたいという思いから独立し、現在も続く、「青山一丁目カイロプラクティック院」を開業され、これまでに延べ9万人を超える治療経験があります。また、日本姿勢教育協会理事として、放送大学で講座を担当されたり、各種メディアに登壇したりと、長年この分野での重鎮として貢献してこられました。 -------------------------------------------------- 今回は、ベンチャーエコシステム作りの参考として、企業経営者にとって、体は資本であるということを学ぶ、「プロフェッショナル」へのインタビューということで、山口先生にお時間をいただきました。 (このインタビューは2026年4月に実施しました。) ■ 「健康ブレーカー」とは何か — 突然、体が限界を迎える瞬間 -杉原- 事前に先生からいただいたレポートで印象的な言葉がありました。「一生懸命頑張っている方が、病気ではないのに突然体調を崩されてしまうことがあります。これは健康ブレーカーが落ちたような状態だと考えています。電気ブレーカーに例えてご説明しますと、容量ギリギリで電気を使っている時に電子レンジを使用してブレーカーが落ちた状況です」とのことでした。自分の身に起きたり、同僚に起きたりなど、意外と当てはまることがあるのではないかと思います。この言葉の意図について詳しく教えてください。 -山口- 一生懸命仕事をされていると、体が疲れていることは自覚できると思うんです。ただ、そのとき痛みがないとどうですか。「痛みがなければセーフ、大丈夫」だと思いますよね。 この「痛みがなければ大丈夫」という考え方でいると、健康ブレーカーは突然落ちやすくなります。なぜかというと、体はかなりの疲労状態にあっても、関節の動きが硬くなっていたり、筋肉に乳酸などの疲労物質が溜まっていても、アドレナリンなどの「頑張るホルモン」が分泌されてパフォーマンスを維持できるからです。また、脳には少しの異変信号が入ってきても、仕事に差し支えないよう情報を遮断する機能があります。そうでないと、私たちは仕事ができないんですね。 電気に例えると、通常の方が30アンペアの容量だとすると、アドレナリンが出ている経営者の方は60アンペア近くまで容量が上がっているイメージです。ですから、たくさんの電気を使っていてもブレーカーは落ちない。ところが、そのギリギリの状態で何か些細なきっかけがあった瞬間にブレーカーが落ちてしまうんです。ぜひ、そうなる前に対処していただきたいと思っています。 ■ 体は「言葉」ではなく「張り・凝り」でサインを出している -山口- 電気に例えると「使いすぎかな」と感じる段階が、体でいうと「張り」や「凝り」なんです。その段階でキャッチして、何か手を打ってほしいんですね。 体は言葉では話せません。だから、凝りや張りで「しんどいよ」と教えてくれているんです。たとえば「あと30分座り続けたら立った時に腰が痛くなる」とは言えない。でも、座っているうちに腰が重だるくなる。そういう形でサインを出しています。 危険なのは、その痛みを薬だけで抑えて無理をし続けることです。腰痛を薬で止めながらゴルフをし続けた結果、気がついたら激痛になり、病院に行ったら圧迫骨折だった、というケースも実際にあります。 これは、家の中でボヤが起きて火災報知器が鳴ったのに、うるさいからと止めて放置してしまうようなものです。そのまま放置すれば家が燃えてしまう。薬は決して否定しません、絶対に必要なものです。ただ、薬で痛みを抑えながら無理をし続けることは、体を壊す原因になります。 -杉原- 結構、経営者の皆さんやハードワークをしてきた方々には心当たりがあるんじゃないかと思います。病院に行っても「先生には伝わらないだろうな」という背中の鈍い痛みがずっと続いていて、でもストレスがなくなったら自然に消えてしまった。そういう経験をされた方も多いのではないでしょうか。ストレスが多かった時代の私の事ですが。(笑) ■ 来院者は会社員から大型客船の船長まで 多彩なリーダーたちの共通点 -杉原- 2つ目の質問ですが、青山一丁目カイロプラクティックにはどんな職業の方々が訪れているんでしょうか? -山口- 一番多いのは会社員の方や主婦の方ですね。ただ、経営者の方やリーダーの方もたくさんいらっしゃいます。 たとえば、日本で最も大きな客船の船長さんもいらっしゃっています。大型客船の航路はあらかじめ決まっていますが、そのときどきの波や風の状況に応じて、少し手前を行くか大回りするかを判断し、乗客ができる限り安全で快適な船旅ができるように導くのが船長の役割です。 つまり、大勢の命を預かる最高責任者なんです。ですから、自分の体が健康でなければならない。そういう思いで来院されています。 -杉原- 確かに、企業に例えると、大型客船のクルーたちは従業員で、乗船しているお客様たちはサービスを受けるお客様ですよね。そしてキャプテンは社長やCEOにあたります。そのトップが健康でなければ、安全なサービスは提供できません。 -山口- そうですね。企業もまったく同じです。また、世界的なテーマパークで責任者を務めていた女性の方も来院されています。テーマパーク、ショップ、ミュージック、映画といった部門の責任者を担われており、素晴らしい業績を残されています。ご自身もトレーニングを真剣に取り組まれながら、体のメンテナンスとして定期的に来てくださっているんです。 ある時、その方の友人のテレビ局の社長さんに「自分がこの仕事をちゃんとできているのは、カイロプラクティックで体を見てもらっているからだ」とおっしゃったと伺いました。私たちの仕事は、その方が「うまくいってよかった」と笑顔になる瞬間を支える黒子の仕事ですから、本当に嬉しかったですね。 また、今でも定期的に来院されているのが、アナログからデジタルへのテレビ移行を推進したテレビ局の重鎮の方です。アナログからデジタルへの切り替えには受像機をはじめすべての機器を変える必要があり、大手家電メーカーに「これからテレビ局はこういう仕様にするので対応した製品を作ってください」と交渉されていた。家電メーカー側も先行きが見えない中で大きな投資をして工場を作るのは容易ではない。その交渉がどれほど大変だったか、その方の部下の局長がうちに来られた際に「私にはとてもあんな交渉はできません」とおっしゃっていたほどです。 私たちが今、当たり前のようにデジタル放送を使えているのは、そうした方々の努力があったからです。その方が体が非常に辛かった時期に来てくださって、少しでも役に立てたことが本当に嬉しかったです。ベンチャーエコシステムの皆さんも、ぜひ体を大事にしてください。 ご来院される経営者の方々は、お忙しい中、ゴルフ、テニス、登山、楽器、他にもいろいろありますが、何かのスポーツや趣味をされている方が多いです。私が、運動や趣味で使用した道具、演奏された楽器など、使われた後はどうされますかとお尋ねしますと、ほとんどの方が、勿論、きれいにしてからしまいますよと仰られます。 自分の使った道具がきれいになるのは気持ちがいいですよね。その大切に扱う、思うというお気持ちを、わずかで結構ですのでご自身のお体にも向けていただけますかとお願いしています。道具は大切にしていても、ご自身のお体は無理をされたままの方が多いのです。 疲れた体をそのままにして次々と仕事をしたり、疲れたまま寝てしまうと、体の中に疲労がどんどん積み重なって症状に結びつく事があります。短時間で結構ですので、仕事の間や帰宅後、関節や筋肉をゆっくり動かされると、血流も改善する事ができて健康に役立ちます。 ■ 定期的に来院する経営者に共通する「ひどい経験」と姿勢への認識 -杉原- 今、何人かの経営者の方の事例をあげていただきましたが、きっかけは体の不調だったとして、その後は定期的に来られるようになっているんでしょうか。どんな通い方をされているんですか? -山口- もちろんブレーカーが落ちてから来られる方もたくさんいらっしゃいますが、会社の経営者の方は、ブレーカーが落ちないように定期的に来院される方が多いです。 その理由は、そういった方々はどこかで一度、ひどい経験をされているからです。ブレーカーが落ちてから来ると、痛みはきつい、回復までの時間は長い、費用もかかる。だから定期的にケアをしていれば、症状が出ても軽く済む、あるいは出ないようにできる。それを経験的に知っているんですね。 ベテランの経営者ほど、定期的にチェック・修正することの重要性を理解されています。ただ、その理解に至る前には、たいていひどい経験をされているわけですが。 骨折のように疾患の場所が明確にわかるものはわかりやすい。でも、正しい姿勢の維持や体の調子を整え続けることの重要性については、なかなか認識されにくい部分があります。 よく「姿勢を正す」というと健康法の一種と捉えられがちですが、実は姿勢を正すということは「今やっていることを成功に導くための投資」と考えていただきたいんです。会社のトップがいて、役員がいて、社員がいて、家族がいて、取引先がいて、株主がいる。そのトップの体調は組織全体に影響します。だから、健康というのは「やりたいことを実現するための投資」なんです。 ■ 悪い姿勢が体に与えるメカニズム 「動物」である私たちが動かないとどうなるか -杉原- 役職や業界によって立ちっぱなしの仕事、座りっぱなしの仕事、様々ありますが、経営者の方は会議室で5時間会議、というのもよくある話ですよね。悪い姿勢が続くと体にどのような悪影響が出るのでしょうか。そのメカニズムを教えてください。 -山口- まず基本的なことをお伝えすると、私たちは「動物」です。文字通り、動く物なんです。 座りっぱなしで関節を動かさない、筋肉を使わないでいると、血流が悪くなります。血液は酸素と栄養を運び、老廃物を取り除く役割を持っています。それが滞ってしまうとどうなるか。たとえば、朝から晩まで働いてもらうのに食事も出さない、トイレも使わせない、という状態を想像してください。誰でも倒れてしまいますよね。座りっぱなしで血流を悪くしてしまうと、それと同じことが体の中で起きているんです。 具体的には、足を組む姿勢、低い位置のモニターなど、こういったものが問題になります。私が一番申し上げたいのは、長い時間過ごす椅子の高さ、デスクの高さ、モニターの位置、キーボードの配置、これらが非常に重要だということです。5分10分ではなく、何時間も同じ姿勢でいるわけですから、そのセッティングがいかに体に影響するかは計り知れません。 -杉原- 意識はしているんですが、良い姿勢をなかなか長く続けられないんですよね。気づくと崩れてしまっていて。あと、現代のビジネスパーソンはスマホ1台で仕事ができてしまう部分もありますが、うつむいた姿勢はやはりよくないですか? -山口- スマホの操作で頭が15度、20度、30度と前に傾くと、肩にかかる負担は大きく増加します。スマホを操作する姿勢だと、体重の約3分の1が肩にかかるとも言われています。頭の重さは体重のおよそ10パーセント。仮に2リットルのペットボトルを2本として計算したとき、胸の前で持つのと腕を伸ばして持つのとでは、負担が全然違いますよね。5分も持てないほど疲れる。その疲れが肩に蓄積されることで、肩こりや集中力の低下につながるんです。 ~Part2へ続く~ ☆インタビューアー D-POPS GROUP アドバイザー 杉原 眼太 【青山一丁目カイロプラクティック】 院 長:山口博 所在地:東京都港区南青山2-2-15 ウィン青山740 公式サイト:https://aoyama1.jp/ 次回・Part2では、 ・スタートアップ経営者の体は「OS」— 姿勢は生産性を最大化するための投資 ・ストレスは体を固くする — 精神的疲労のメカニズム ・カイロプラティックの道へ進んだ理由 などについてお伺いしています。Part2もぜひご覧ください!
  • INTERVIEW
2026.05.27
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