
ディ・ポップスグループでは、ベンチャーエコシステムを、「共通のアイデンティティと理念の元に集まり、革新性の高い事業モデルにより、社会課題解決に挑戦し続ける企業群の集合体を支える、成長と永続のためのプラットフォームのこと」と捉え、その理想の形の実現に向けて日々挑戦と努力を続けています。
※詳しくはこちらをお読みください。「ベンチャーエコシステムとは?」
その実現のためには、起業から世界的大企業に育てるまでを行ってきた、過去の名経営者から謙虚に学ぶ姿勢が欠かせません。
「名経営者からの学び」シリーズでは、筆者が影響を受けた名経営者や思想家らの言葉をご紹介し、実体験からの想い、事業や実生活で活かされた事例などをご紹介していきます。
第一回目は、グループのアドバイザー、杉原が担当致します。
1. ”道”(松下幸之助)
自分には自分に与えられた道がある。天与の尊い道がある。どんな道かは知らないが、他の人には歩めない。自分だけしか歩めない、二度と歩めぬかけがえのないこの道。広い時もある。せまい時もある。のぼりもあればくだりもある。淡々とした時もあれば、かきわけかきわけ汗する時もある。
この道が果たしてよいのか悪いのか、思案に余るときもあろう。なぐさめを求めたくなる時もあろう。しかし、所詮はこの道しかないのではないか。
あきらめろと言うのではない。いま立っているこの道、いま歩んでいるこの道、ともかくもこの道を休まず歩むことである。自分だけしか歩めない大事な道ではないか。自分だけに与えられているかけがえのない道ではないか。
他人の道に心をうばわれ、思案にくれてたちすくんでいても、道はすこしもひらけない。道をひらくためには、まず歩まねばならぬ。心を定め、懸命に歩まねばならぬ。
それがたとえ遠い道のように思えても、休まず歩む姿からは必ず新たな道がひらけてくる。深い喜びも生まれてくる。
ーー「道をひらく」(松下幸之助著、PHP研究所発行)より、原文のまま引用
2. この言葉を選んだ理由
これまでに多くのビジネス書、経営関連本、MBA関連本、未来予測本を乱読してきました。その中で、いくつかはその年のベストセラーになったものの、その数年だけのブームに終わったり、未来予測は外れたり(それもまた勉強にはなるが)、名経営者と言われた人がその後凋落したり逮捕されたりというケースも、ありました。
一方で、著者の方が亡くなった後も、長年ベストセラーであり続けるような名著と呼ばれる本は、時代が変わっても普遍的に重要なポイントを教えてくれる、誰にとってもバイブルや羅針盤とも言える本であり、定期的に立ち止まって読み返すべき、価値ある書籍です。
「道をひらく」は、パナソニックホールディングスを一代で築き上げ、その後の数多くの経営者らに影響を与えた、松下幸之助氏のベストセラー本です。私は、折り目や蛍光ペンだらけとなって読み倒した本と、改めて購入した、きれいな本を持っていますが、改めて読むと、経験を積んだからこそ深く共感できることや、今でも新鮮であり、新たな気付きを与えてくれる書籍です。
その本の正に最初のページのタイトルが、”道”です。
この機会に、この本を初めて手に取った30数年前の思いを振り返りたいと思います。
3. 自らの経験とこの言葉への想い
「道をひらく」を購入したのは、会社員となってまだ間もない、20代前半だったと思います。私はその当時、明確なキャリアプランを描けておらず、起業するほどの強い情熱や社会課題意識もなく、何となく会社員を選んでいた、主体性に欠ける若者でした。
そして、運の悪いことに?その時代、すなわち昭和から平成にかけては、「24時間働けますか?」というフレーズのCMが流行るなど、とてもブラックな(笑)環境で、連日、満員の通勤電車に乗って7時半に出社、終電やタクシーで帰るという生活で、じっくりとキャリアをデザインしたり、起業プランを練ったりする熱意も余裕もない若者でした。
この本を読み始めた時に、まず、この「広い時もある。せまい時もある。のぼりもあればくだりもある。淡々とした時もあれば、かきわけかきわけ汗する時もある。この道が果たしてよいのか悪いのか、思案に余るときもあろう。なぐさめを求めたくなる時もあろう」という冒頭の文を読んだ時に、泣きそうになった覚えがあります。・・いや実際泣いていた気がします。心身共に疲れていたのでしょう。
しかし、その後に続く、「道をひらくためには、まず歩まねばならぬ。心を定め、懸命に歩まねばならぬ」という言葉が心に響き、その言葉に奮い立たされ、この後に続く数々の言葉に励まされ、「何としてでも自分だけの道を切り開いていこう、決して逃げず、諦めず、歩みを止めず、たとえそれが険しくても、自分だけの道を作って行こう」と決心することができた、という思い出があります。
あの時代背景の中で、ある人は失踪してしまい、ある人は自分の意見や意志は捨て言われたことだけをやる姿勢になり、またある人はストレス解消のため、度が過ぎる酒や煙草やギャンブルに走ってしまったりと、険しすぎる道から脱落していく先輩方や同僚達の姿を見ました。
が、私はこの「道をひらく」に出会い、その中の数々の言葉を信じて歩み続けたおかげで、目の前の道を踏み外すことなく、そして新しい道を作っていくことができました。
そして徐々に・・といっても30年程もかかってしまいましたが、自分の道、すなわち社会における役割が、「数多くの国内・海外ベンチャー企業の立ち上げ期とその後の栄枯盛衰の期間に従事してきた経験を通して、ベンチャー起業家やそこで働く人々をサポートする伴走者」という役割ではないか、と思うに至ったのです。
「それがたとえ遠い道のように思えても、休まず歩む姿からは必ず新たな道がひらけてくる」という言葉の通り、20代、下っ端で四苦八苦していた頃には上記のような役割、すなわち自分の道、はイメージなどできませんでした。しかしその後の人生において、逃げずに、常に与えられた環境で与えられた目標を達成し、自ら発案し行動を起こし、そしてまた新時代の潮流を感じたら勇気をもってその領域に挑戦する、ということを続けた結果、「新たな道が開けた」という経験をたくさん積み重ねることができました。
不安とコンプレックスの塊だった10代から20代前半を経て、しかしこの本のこの言葉に出会い、その後の人生を歩み、今日この記事を書いていて改めて思います。「歩み続ける者には、必ず道は開ける」のだと。そして、自分の道を切り開いてきた結果、「深い喜びも生まれてくる」のだと。
この本を世に出してくれた松下幸之助氏に感謝すると共に、これまで、登りも下りもあった険しい道を、かきわけ、切り開いてきた自分自身を、今なら褒められるなと感じています。
4. 読者の方々へのメッセージ
自分に与えられた道、すなわち人生という道は、他人と比べるものではありません。他人の人生を羨んだり妬んだり、輝かしい経歴の有名人と比較して嘆いたり、逆に自慢したり過度に誇ったりするべきものではありません。ただ、自分なりに歩み続け、努力し続ける。
あらかじめゴールを立てて歩むことが理想的でしょう。でも、ゴールが明確でない道に価値が無いということではないと思います。今はゴールが見えていなくても、しっかりと歩み続ける中で、突如明確になることもあります。
人生は選択の連続だと言われるように、自分の道にも定期的に分かれ道、すなわち右に行くか左に行くかの選択を迫られるシーンが登場するものです。また乗り越えねばならない大きな壁が登場するものです。それらの選択と挑戦の連続の結果、自分だけの道が描かれます。
舗装された、もしくは決められたレールの上を歩むのか、より険しく先が見えないけれども大きな可能性を秘めた道を選ぶのか。
時代は常に変化します。特にAIがどんどん浸透する今後の10年は激動になると思います。そんな時代背景の中で築いていく道は、ある人にとっては突如途切れてしまうような困難なものに、またある人にとっては新時代を切り開くものにもなり得ます。
ぜひ、AI時代を大きなチャンスにすべく、そして後に「深い喜びが生まれる」ような、自分自身の道を切り開いて下さい。
以上、こちらの記事が、少しでも皆様のお役に立てたら大変嬉しく思います。
D-POPS GROUP アドバイザー 杉原眼太
