COLUMN

渋谷を起点に、世界と日本をつなぐエコシステムを実現する!シブヤスタートアップス株式会社 会長 渡部志保さん【後編】

  • INTERVIEW
2026.01.27

今回は、ベンチャーエコシステムサミット2025にご登壇いただいた、シブヤスタートアップス株式会社 会長の渡部さんにインタビューさせて頂きました。
(このインタビューは2025年11月に実施いたしました。)

前編の記事は、こちらからご確認ください。

◆スタートアップ支援を選んだ理由

-杉原-
さて、ここからは少し時計の針を戻してお話を伺いたいと思います。モルガン・スタンレーでのアナリストからキャリアをスタートされ、Google、さらにはメルカリやELSA Speakといった最前線のスタートアップで華々しい経歴を積んでこられました。そんな渡部さんが、なぜ今スタートアップ支援という道を選ばれたのでしょうか。

-渡部-
正直なところ、一番は「ご縁」に導かれたというのがありますが、自分なりに振り返ると二つの理由があるように思います。

一つは、私を育ててくれた「渋谷」という街への恩返しです。外資系企業やスタートアップで経験を積み、改めて自分の原点を見つめたとき、ホームカミングのような感覚で、この街に何かを還元したいという思いが自然と湧いてきました。

もう一つは、私の人生のキーワードでもある「逆張り」の精神です。 シリコンバレーなどの王道キャリアであれば、ユニコーン企業で働くか、あるいは自ら起業し、後に投資家になる……といった道が一般的かもしれません。でも私は意図せずに「主流ではない道」を選ぶ事が多かった気がします。今回も例外ではないかもしれません。

例えば、リーマンショック前(2008年)の時代に、モルガン・スタンレー投資銀行部から第二新卒としてGoogleへ転職したときも、日本におけるテック業界の認知度も投資銀行ほど確立されておりませんでした。実はもう一つの選択肢として、学生時代に学び夢でもあったジャーナリズムを活かせる「外資系テレビ局の経済レポーター」というオファーもあったんです。私はGoogleを選びました。考え抜いた決断というよりかは予感かもしれません。未知の業界に飛び込むことは一見難しそうですが、ワクワク感もあると思います。Googleでは、面接をしてくださった方々が楽しそうに仕事をされていた事も印象的でした。

「10人中9人が選ばない道」を選んでみる。リスクも大きそうですが、そうすれば、多くの気づきがあると思いますし、予想もしなかった新しいステージにキャリアを導けるかもしれない。自分のスキルが職場でお役に立つというのは大前提ですが、今回のスタートアップ支援という選択も、そんな私の「逆張り人生」の延長線上にあるものなのかもしれません。

◆渋谷の魅力

-杉原-
ありがとうございます。
「渋谷」という街の話が出ましたが、シブヤスタートアップスを率いる渡部さんから見て、渋谷にはどのような魅力があると感じていらっしゃいますか?

-渡部-
「ボヘミアン指数」という指標を用いると分かりやすいかもしれません。社会学者のリチャード・フロリダが提唱したもので、人口あたりの芸術家やクリエイターの割合を示す指標です。この指数が高い街ほど、多様性や寛容性に富み、結果として経済発展やイノベーションが起きやすいと言われています。まさに渋谷は、このボヘミアン指数が極めて高い、変化に対してオープンな街。そこが最大の魅力ですね。

◆日本の魅力や課題

-杉原-
確かに、日本で最もその指数が高いのは渋谷でしょうね。 世界を渡り歩いてこられた渡部さんから見て、日本の魅力や、逆に課題だと感じる部分はどこにありますか。

-渡部-
魅力については、日本人である私からは逆に見えにくいものですが、食の豊かさや治安の良さ、ものづくりやおもてなしといった「当たり前の質の高さ」は、一歩海外へ出るといかに稀有なことかが分かります。

一方で課題というより特徴に近いのですが、日本のビジネスシーンでは「ステークホルダーへの配慮」を非常に重視しますよね。独自の「察する文化」は美徳でもありますが、意思決定のスピードという面では弱点にもなり得ます。 例えば、国家主導でスピーディーに動く中国や、自由と利益を追求するリバタリアニズムのアメリカ、規制は多いが官民の役割が明確な欧州。日本はそのどれとも違い、時には同調圧力や暗黙の了解にたよる時も多く、チーム内の全員がシンクロしながらしなやかに、かつ慎重に、物事を進めている印象があります。いい面もあるものの、「よそ者」が組織に入ってきた時に、そのようなシステムやルールは簡単に壊れてしまいます。

また、日本人が「これは仕方ない」「こういうものだ」と諦めていることの中に、実は膨大なビジネスチャンスが眠ってるかも。例えば、日本独特の「中抜き構造」や「過剰な書類・承認プロセス、アナログ前提の業務フロー」による不当な高コストや低い効率性を是正するだけでも、それは立派な事業になります。「よそ者」の視点が入ることで、日本の当たり前を疑い、新しい価値を生み出せるはずです。

-杉原-
日本独特の合議制は、全員が納得するまで時間をかける分、決定後の後戻りが少ないという長所もありますが、今の時代、変化への対応が遅れるという弊害も目立ちますね。この「見えない壁」は参入障壁として機能してきた反面、日本人がグローバルで通用しにくくなっている要因かもしれません。

-渡部-
そうですね。ただ、その壁の内側で育まれてきた独自文化やクリエイティビティ、そして安全性は、世界に誇れる日本の「文化」そのものです。

もう一つ、アメリカに住んでいて痛感するのは、日本の社会保障の充実ぶりです。起業を志したとき、日本では「保険はどうするの?」という心配をせずに済みます。これは挑戦する上での強烈なアドバンテージです。

-杉原-
確かに! 私がGoogleに入社した直後、米国で研修を受けた際、最初のセッションで参加者が一斉に質問したのは「保険はあるか?」でした。人事が保険の充実をアピールする姿を見て、日本での当たり前が世界では特権なのだと驚いた記憶があります。

-渡部-
本当にそうなんです。アメリカでは救急車を呼ぶだけで数十万単位かかる事もあるし、治療費はさらに別という世界ですから。失敗してもセーフティーネットがある。だからこそ、私は「日本で起業したらいい」と、自信を持って言いたいですね。

◆日本の成長市場について

-杉原-
未来の展望についてもお伺いさせてください。起業や新規事業という視点で見たとき、これからの日本において、特に有望だと考えられる成長市場はどの分野でしょうか?

-渡部-
それは間違いなく超高齢化・少子化に紐づく領域です。 介護そのものはもちろん、その周辺にあるあらゆるビジネスに大きな可能性があります。それが業務効率化のSaaSなのか、ロボティクスなのか、あるいは生成AIなのか。アプローチは様々ですが、この分野のソリューションは今後ますます重要になります。

例えば、私たちが支援している企業の一つに、AIを搭載したゲームで遊ぶだけで認知症の早期発見ができるアプリを開発しているスタートアップがあります。早期発見ができれば、適切な治療によって進行を劇的に遅らせることが可能です。こうした技術は、これから確実に求められます。

日本は世界で最も早く高齢化が進む課題先進国ですが、それは裏を返せば、世界に先駆けて解決策を提示できる市場の最前線にいるということです。 さらに日本は、ディープテックやエッジAI、量子コンピューティングといったハードウェア面での技術蓄積もあります。こうした最先端のハードウェアと、社会課題を解決するソフトウェアが掛け合わさる領域は、非常に強力な成長分野になると確信しています。

-杉原-
心から賛同します。そうしたイノベーションを、シブヤスタートアップスや私たちディ・ポップスグループが協力して支援することで、さらに大きな可能性が広がっていきますね。

ところで、昨今の生成AIの急速な浸透は、ビジネス環境を根本から変えようとしています。「消える職業」や「新たに生まれる職業」、あるいは「人間に問われる能力」など様々な議論がありますが、渡部さんご自身は現状をどう捉えていますか。

-渡部-
私は、テクノロジーは目まぐるしく変化し流行り廃りもありますが、人間の根底にある「文化」というものは、そう簡単には変わらないものだと考えています。

もちろん、AIのポテンシャルは極めて高く、上手に活用すれば効率化が進み、消えていく職業も確実にあるでしょう。ただ、私たちにとって「AIと共存する道を探る」以外に選択肢はないのも事実です。AIは人間には不可能な処理を瞬時に行えますが、それをどう使いこなすかが重要になります。

これからの時代は、教育の現場も大きく変わるはずです。これまでのように「答えを出す力」を競うのではなく、「AIに対して、いかに精度の高い問い(プロンプト)を投げかけられるか」という、問いを立てる力の方が重要になります。

ただ、世界が明日からガラリと全く別の場所になってしまうかと言えば、私はそうは思いません。人間がそれを許容し、コントロールする意思を持ち続ける限り、テクノロジーが人間を置き去りにして暴走することはないのではないかと考えています。

-杉原-
そのような未来予測や社会環境の変化を踏まえたとき、起業家やシブヤスタートアップスにとっては、どのような影響があるとお考えですか? これは大きなチャンスでしょうか、それともチャレンジでしょうか。

-渡部-
間違いなくチャンスだと捉えています。 現在、私たちが支援している企業の7割以上がAIを活用した企業になっていますが、これは特別なことではなくなりつつあります。かつて、あらゆるスタートアップがインターネットを活用することを前提としたように、これからはAIを使いこなすことがごく当たり前の風景になっていくでしょう。

ここで重要なのは、AIはあくまで目的ではなく手段だということです。 例えばUberは、本質的には「配車サービス」の会社であって、テクノロジーはそのためのインフラに過ぎません。最高の効率でサービスを回すために、テクノロジーを徹底的に活用しているに過ぎないのです。

これからのスタートアップも同じです。「AIの会社」と名乗らなくても、自社のミッションを最高効率で達成するために、当たり前のようにAIを使いこなす。そんな実利を伴った企業が主流になっていくはずですし、そこには無限のビジネスチャンスが広がっていると考えています。

◆シブヤスタートアップスが考える、スタートアップエコシステムとは

-杉原-
それではシブヤスタートアップスが考える、「スタートアップエコシステム」について教えてください。

-渡部-
スタートアップエコシステムは、単にスタートアップが存在するだけでなく、成長した企業が次世代の顧客や支援者となり、そこに投資家も加わって、成長のサイクルがその中で完結する状態だと考えています。

現在、日本には支援するリソースはあるものの、スタートアップの数そして人材自体がまだ不足しているのではないかと考えています。そこで私たちは、海外にいる日本に興味を持つ優秀な人材を招聘し、日本のスタートアップエコシステムがより良くなるような取り組みを試みます。

私たちのコミュニティには、ブロックチェーン「Polygon」の共同創業者の創業したスタートアップや、Googleの卒業生コミュニティであるXooglerの共同創業者によるスタートアップなど、スーパースターが52名ほど集まっています。彼らは米国のトップVCから資金を調達できるような実力者たちです。

なぜこうした人材を渋谷に招聘するのか。それは、周囲にユニコーン企業を作る友人がいれば、自分にとってもそれが「当たり前の選択肢」になるからです。逆に、小規模なIPO(上場)が当たり前の環境にいれば、そこが基準になります。

私の役割は、いわばオーケストラの指揮者です。私自身が楽器を弾く(事業を作る)のではなく、最高の演奏ができるプレイヤーを集め、彼らが最高のパフォーマンスを発揮できる環境を整えていくこと。それが、私たちが目指すエコシステムの形です。

◆「ベンチャーエコシステムの実現」について

-杉原-
さて、最後に、ディ・ポップスグループが目指す「ベンチャーエコシステムの実現」について、共感すること、協業できる領域などがあれば、ぜひお願いします。

-渡部-
そうですね、私が協業の可能性を感じるのは「人材の多様性」という領域です。

今、私たちが支援している海外出身の起業家たちは、高い技術力を持つ一方で、日本には詳しくありません。私は、これからのスタートアップはアイドルグループのような多国籍チームが最強だと考えています。各国の出身者がチームにいることで、海外展開の際に現地の販売網やニーズを即座に掴めるからです。「日本人だけ」「外国人だけ」にこだわる必要は全く無いと思っています。

「Sakana AI」や 「Shisa AI」のように、日本の国家戦略を担うAIモデルを開発している創業チームに外国人がいるということも興味深いと思っております。GoogleやOpenAIが米国企業である以上、有事の際にAIインフラが止まる事もあり得るので、自国のAIモデル開発は大事なプロジェクトです。さらに、自国のLLMを開発することはインターネットでは残らないかもしれない日本の文化の細かい部分をAI時代に継承する事にも繋がります。このような日本のインフラ作りの分野にも外国人人材が参入してきています。
こうした多様性を持ってこそ気づける日本の課題や価値は非常に多い。彼らのような「外からの視点」を持つ優秀な人材と、日本国内で強固な基盤を持つ企業が手を取り合い、人材の流動性を高め、多様なチームを支援する仕組み作りで、ぜひ連携していきたいですね。

☆インタビューアー
D-POPS GROUP アドバイザー 杉原 眼太

【シブヤスタートアップス株式会社】
代表者:会長 渡部 志保
代表取締役社長 田坂 克郎
所在地:渋谷区東一丁目29番3号 Shibuya Bridge B棟
設 立:2023年2月
U R L:https://upshibuya.com/

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  • INTERVIEW
2026.07.27
auプランに組み込まれた子どもの安全を守るアプリ「コドマモ」の挑戦|Adora株式会社・冨田社長インタビュー~Part2~
全3回にわたるインタビューの第2回となるPart2では、「コドマモ」がauだけにとどまらず、ドコモ・ソフトバンクを含む3大キャリア全てとの協業へと広がった経緯、さらには韓国・台湾への海外展開の現状、「コドマモ for School」という学校向けサービスの取り組み、そして大人の詐欺対策という新たなフロンティアへの挑戦を紹介します。(このインタビューは2026年6月に実施しました。) ◆ 「コドマモ」加入後の状況と反響 ―杉原― サービスプラン組み込み後の「コドマモ」の評判はいかがですか?加入状況や現場の声などを、差し支えない範囲でご紹介いただけますか? ―冨田― 店頭でご案内いただいた結果、コドマモを利用し始める率がコツコツと上がってきています。使ってくださったユーザーが使い続けてくださっているということも数字に表れてきています。良いものとして受け止めていただけているという実感がありますね。 まだ改善できる余地はたくさんあります。営業現場の方が売りやすくなるための新機能開発や改善も続けていますし、現場へのインタビューも今後どんどんやっていく予定です。より本格的なユーザーの声、営業現場の声はこれから届いてくる感じですが、数字面ではすでにかなり良い傾向が出ています。 U12バリュープランに加入した人の中でコドマモにきちんとログインID登録している人の割合が、サービスリリース直後よりもだんだん上がってきています。 ―杉原― それはおそらく、営業現場でだんだん説明に慣れてきたこと、個人として使っている営業担当者が現れてきたことで、勧めやすくなってきたという面もあるのでは? ―冨田― そのような側面はあると思います。また、微力ながら弊社側でも改善を行なってまいりました。最初は店頭でご案内いただいて加入しようとしたときに、間違って有料プランに加入してしまうというケースが初期にありました。プランに組み込まれているので本来は無料で使えるはずなのに、通常のアプリストアの有料プランに入ってしまうという混乱です。 そのユーザーの声を受けて、オンボーディングの中でどちらから来たのかを確認し、auから来たユーザー向けの独自の導線を用意して、わかりやすく整理しました。その改善の結果、そういった声はだいぶ減ってきました。走りながら改善を繰り返してきたということですね。 ―杉原― アプリの完成度だけでなく、オペレーションの改善が利用者数を増やすために重要ですよね。 ◆ 3大キャリア全てとの協業へ拡大 ―杉原― KDDI様のauショップ各店で紹介されていることはもちろん素晴らしいのですが、NTTドコモ様、ソフトバンク様の系列ショップでも取り次ぎが広がっているそうですね。他の2社との協業状況はいかがでしょうか? ―冨田― 我々は大きな社会課題を解決するという意識でやっているので、複数の通信キャリア様とご一緒できることは、最初から目指していたことでもあります。最初にドコモショップでのお取り扱いが始まり、次にauで料金プランに組み込んでいただき、その後ソフトバンク様のショップでも全店取り扱いいただいています。 もちろん始まるまでにはいろいろな運用の調整があり、現場の方々が大変頑張ってくださいました。今では利用者数もしっかり増えてきていて、本当にありがたいですね。 ―杉原― ソフトバンクさんの販売店の取り次ぎ数、急激に伸びていますよね。 ―冨田― ものすごく伸びています。ソフトバンクC&Sの皆様のご尽力と、代理店の皆さんの頑張りで、今年の頭からぐっと勢いが出てきました。 ―杉原― au様との取り組みで経験したオペレーション上の課題以外に、NTTドコモ様、ソフトバンク様特有の課題にぶつかったりはしましたか? ―冨田― それぞれのキャリアがすでに展開されているサービスと競合しないようにするという点は特に意識しました。例えばソフトバンクさんには独自のセキュリティサービスがあるので、そういったものと競合しないか、互いに悪影響を与えないかということをテストしながら進めました。ただ一方的に「売ってください」というのではなく、お互いのために細かな調整をしながら進めているという感じです。 現場でバグやトラブルが出てしまうと、忙しい店頭の皆さんが案内したくなくなってしまいますから、そういったことが起きないよう、何かあればすぐに対応できる体制は常に整えています。 ◆ 韓国・台湾への海外展開の現状 ―杉原― 昨年にはコドマモの海外展開も開始されています。どの国に進出済みで、どのような状況か、簡単にご紹介いただけますか? ―冨田― 韓国と台湾に展開しています。実際にやってみて難しいことも色々ありましたが、モバイルアプリの良いところは、翻訳して広告を打って小さく検証するということが50〜100万円程度の予算でできるという点です。 韓国については、出してみた上でしっかりニーズがあることが確認されてきました。危険なチャットの検知機能が思った以上に刺さっています。最初は位置情報機能のほうがメインかと思っていたのですが、蓋を開けてみると最初から危険チャットの検知が購入の最大の理由になっていました。ユーザーインタビューをしていると、韓国の親御さんが「子どもがドラッグに関わっていないか心配」とおっしゃるケースもあり、日本では聞かないような声もあって、ローカルな課題感の違いを感じます。 ただ韓国ではLINEよりカカオトークが主流なのですが、カカオトークへの本格対応がまだできていない部分があります。これをやれば伸びるという感触はあるので、もう少しバージョンアップしてから本格的に広告費などを投じていきたいと考えています。 台湾はLINEが広く使われているので、今出してみて非常に低いコストでユーザーを獲得できています。市場ニーズも高く、日本以上にしっかり使ってくれる方もいらっしゃいます。これからさらに力を入れていきたいと思っています。台湾の次はタイなど、アジア各国へも広げていきたいですし、WhatsAppに対応できればインドネシアやイギリスをはじめとする様々な国への展開も見えてきます。 ―杉原― 本当に積極的ですね。創業した時から世界を見ていらっしゃいますよね。 ―冨田― この事業はグローバルに共通するニーズを解決できるものだと思っています。最初からそこを見据えています。日本からグローバルに頑張る事業が出てくると、やはり応援したくなりますよね。そうなれればいいなと思ってやっています。 ◆ 「コドマモ for School」— 自治体・学校向けの取り組み ―杉原― 足は長いですが、とても興味深い活動として、全国の自治体と連携した学校向けプラン「コドマモ for School」について簡単にご紹介いただけますか? ―冨田― 「コドマモ for School」は、学校で使用されている学習用タブレット端末に入れるサービスです。通常の「コドマモ」が親子のスマホに入れるサービスであるのに対し、「for School」はお子さんたちのタブレット端末の安全な利活用を促進するものです。 機能としては、性的な自撮り写真のやり取りや、いわゆる「裸の画像のやりとり(グルーミング)」を検知してアラートを出す機能や、ウェブサイトの見守り機能などがあります。基本的な機能は通常版と大きくは変わりませんが、ステークホルダーが自治体・教育委員会になるという点が異なります。 ―杉原― これまで通信キャリア3社と折衝してこられたわけですから、会社としての信頼度も大きく上がってきていますね。 ―冨田― 本当にありがたいことだと思っています。 ◆ 次の挑戦 — 大人向け詐欺対策サービスの開発 ―杉原― 続いて、コドマモに続く現在開発中の新サービスや新機能についてご紹介いただけますか? ―冨田― 今作っているのは、より広く一般向けに、SNSを通じた詐欺対策のサービスです。日本のみならず世界中で、特に投資詐欺やロマンス詐欺など、SNSやチャットを通じた詐欺が深刻な社会問題になっています。毎日何億円もの被害が発生している状況です。 電話詐欺は有名ですが、チャット経由の詐欺も非常に大きな問題です。弊社であればSNSにおける詐欺を検知できるという強みがあります。コドマモが子どもを対象にしているのに対し、大人の詐欺被害を検知して守るというサービスを絶賛開発中です。1日でも早くリリースできるように取り組んでいます。 一方で、詐欺被害に遭う方は自分からアプリをインストールしようとはなかなかならないので、子ども以上にステークホルダーの皆さんと一緒に動くことが重要だと考えています。様々な方にご意見をうかがいながら進めているところです。 ―杉原― こういうサービスを考えると、ますます大手企業との連携・提携ができる会社作りが重要になってきますね。 ―冨田― そうですね。弊社は技術力のある小さな開発チームではありますが、大企業さんや自治体さんと一緒に我々ならではの特徴を出しながら社会実装していくことが、大きな社会問題を解決するために不可欠だと思っています。 ☆インタビューアー 株式会社ディ・ポップスグループ アドバイザー 杉原 眼太 【Adora株式会社】 会社名:Adora株式会社 代表者:代表取締役 冨田 直人 設 立:2023年7月 サービスサイト:https://corporate.kodomamo.com/ja Part 3では、 ・平均年齢26〜27歳 — 未来を作るチームの構成 ・「Sunny・System・Solid」 — 3つのバリューを策定 ・ベンチャーエコシステムの実現について などについてお伺いしています。 Part3もぜひご覧ください! Part1の記事はこちらからご確認ください。  
  • INTERVIEW
2026.07.23
auプランに組み込まれた子どもの安全を守るアプリ「コドマモ」の挑戦|Adora株式会社・冨田社長インタビュー~Part1~
全3回にわたるインタビューの第1回となるPart1では、子ども向けSNS見守りアプリ「コドマモ」を開発・運営するAdora株式会社・冨田社長が語る、創業から現在に至るまでの急成長の軌跡に迫ります。株式会社ディ・ポップスグループが2024年7月に出資して以来の約2年間で何が変わったのか。auの新料金プラン「U12バリュープラン」への組み込みという異例の快挙はどのような経緯で実現したのか。泥臭く走り続けてきたスタートアップのリアルな歩みをお伝えします。(このインタビューは2026年6月に実施しました。) ◆ 出資から2年、創業から3年を振り返って ―杉原― 本日は、2024年7月に出資をさせていただき、ベンチャーエコシステムの仲間になっていただいた、Adora株式会社の冨田社長にインタビューさせていただきます。冨田社長には2024年9月にもインタビュー記事の作成にご協力いただいておりますが、その後も急成長を続ける「コドマモ」などについてさらに深掘りをさせていただきます。(前回の記事はこちらをご参照ください。) 冨田社長とは、2024年の5月に出会いましたよね。あれから2年が経ちました。また、2023年7月の創業からは約3年ですね。弊社の出資と協業開始からの約2年、そして創業以来の3年を振り返って、いかがですか?感想をお聞かせください。 ―冨田― そうですね。ご出資いただいたことで、社内のメンバーだけではなく社外の方も含めて「みんなの事業、みんなの会社」だという意識が改めて強くなりました。責任感をより強く持って頑張らなければという気持ちが湧いてきましたし、苦しいときもありながら、一生懸命泥臭くやってきたなと思います。気づけばあっという間でしたね。 ―杉原― 3年って長いですか?短いですか? ―冨田― 短いですね。やばいな、もっと頑張らなきゃなって感じです。 もちろん、できる限りすべてにおいてベストを尽くし続けてきたという自負はあります。ただ、後から振り返ればもっとこうすればよかったということはたくさんあります。でも、その時々のベストを尽くしてきたのは事実なので、仕事していたらあっという間だったというのが率直な感想ですね。 ―杉原― 2年間の事業の進み具合を振り返ると、ちょうど弊社が出資させていただいた頃は、本田圭佑さんのファンドからの資本調達活動を始めたばかりのフェーズでしたよね。そこから加速した感じはありますか? ―冨田― ありますね。あの頃はドコモショップさんとの取り組みも始まった時期で、売り上げもほとんどない状態でした。夢は語っているけれど、まだトラクションが全然ついてきていないという段階で、これはいけるのかなという感じでした。そんな段階で信じてコミットしていただいたことはとても嬉しかったです。 そこからドコモショップとの提携や有料サブスクの販売も始まり、徐々にトラクションが出てきました。出資いただいた時点では売り上げがほぼゼロだったところから、最初の1年はサービスを磨き続けること、ショップとの提携関係を構築することに注力していました。その1年間の下積みがあって、2025年の夏から秋ごろにぐっと売り上げが伸び、一気に10倍どころではない成長を遂げました。 3年間を振り返ると、準備期・資本調達期・加速期という流れがあって、2025年から2026年にかけてグッと実績が出てきたんじゃないかなと思います。 ◆ auの新料金プラン「U12バリュープラン」への組み込みという快挙 ―杉原― この間の最大のイベントといえば、主力サービス「コドマモ」がKDDI様のauスマートフォン向け2025年夏の新料金プラン「U12バリュープラン」に組み込まれたことではないでしょうか。 ―冨田― そうですね。もともとディ・ポップスさんの店舗での取り扱いは走っていたんですが、通信キャリアの料金プランに正式に組み込ませていただくのはこれが初めてのことで、本当に大きなイベントでした。 ―杉原― 創業からまだ2年半ほどの会社のサービスをauが料金プランに組み込むのは、かなり異例のことだと思います。世間にまだ普及していないブランドを大企業が採用するのはリスクもあると思いますが、どのような経緯でこの大きな提携が実現したのでしょうか? ―冨田― KDDIさんのほうで「子どもたちの安全を守るサービス」を探されていた中で、弊社のサービスを発見していただいたのがきっかけです。KDDIさんの社内でも、従来のフィルタリングにとどまらず、「スマホを禁止するのではなく、使わせながら守る」という本質的なアプローチが必要だというディスカッションがあったそうで、その中で弊社のサービスに目を留めていただいたとのことです。(KDDI記事:https://mugenlabo-magazine.kddi.com/list/adora/) ―杉原― KDDIさんが他のサービスも調査した上でAdora社を選んだ要因は何だと思いますか? ―冨田― 利用時間の管理サービスは他にもあるかもしれませんが、LINEをはじめとするSNSのチャットの見守りにしっかり力を入れているのは、今も市場で弊社だけだと思っています。日本で最も普及しているSNSのセキュリティ対策ができるというのは大きなポイントだったと思います。 また、愛知県警と連携していたり、国内のパートナーとの実績も積み上げてきていたことも評価されたのではないかと思います。もちろんKDDIさんとしても、ブランドイメージに関わる話ですから慎重に、本当に任せられるかをじっくり検討していただいた上での提携でした。 ―杉原― 単にサービスを紹介するだけでなく、開発も伴いますよね。 ―冨田― そうです。auのIDでログインできる連携機能なども実装しました。KDDIのユーザーさんがスムーズに加入できる仕組みを開発したというところです。 ◆ 他社には真似できない技術的優位性 ―杉原― コドマモにはAI技術やセキュリティ技術が深く組み込まれていますが、この技術力の高さが評価されたのでしょうか?特に優れていると考える技術的な優位性や、開発において特に工夫・苦労されたポイントを教えてください。 ―冨田― チャットを見守るというのはシンプルに聞こえますが、実際にそれを実現するためには、裏側でさまざまな技術が必要です。従来は分析が難しかったSNSのチャット内容を解析できるようにしたこと自体に大きなイノベーションがあります。 自然言語で危険かどうかを判定するモデルや、画像が不適切かどうかを判定するモデル、それを端末上で軽量に動かす仕組みなども開発しています。チャット自体を分析可能にするという、これまで誰もやってこなかったことを実現したというところが、大きな技術的優位性だと思っています。 それと同時に、使いやすいUI・UXへのこだわりも重要です。私自身も開発チームの中でコミットして、みんなの努力で磨いてきました。どんなに優れた技術でも使いやすくなければ社会実装されないと思っているので、わかりやすく使いやすいアプリにすることを常に意識してきました。 ―杉原― LINEなどのSNSのやりとりを読み取り、分析して危険なチャットを検知するこの仕組みは、他のスタートアップがすぐに作れるものではないという自信がありますか? ―冨田― はい。今ではAIが既存のアプリをさっと作れるようになっていますが、世の中にすでにあるものを作るのとは違います。まだ誰も作っていないものを実現するのはAIだけに任せても難しい。そこに我々の技術チームの強みがあると自負しています。 また、ユーザーインタビューやユーザーデータの分析を細かく積み重ねてきたことで、継続率(リテンションレート)も毎月上がり続けています。 ―杉原― 最近は安定し始めましたね。 ―冨田― 一般的なCtoCのサービスはリテンションレートがどんどん下がっていくことが多いのですが、弊社の場合は6か月ほどでしっかり下げ止まっています。適切なユーザーに刺さっているという検証ができているという意味では、プロダクトマーケットフィットに近い状態に来ているかなと思っています。技術力だけでなく、UXや総合的なブランディングも含めて、親御さんにとって使えるアプリができているということだと思います。 ―杉原― 難しい技術を極めるだけでなく、ユーザー目線で使えるものをという意識が、冨田社長の総合プロデューサーとしての役割なんですね。 ☆インタビューアー 株式会社ディ・ポップスグループ アドバイザー 杉原 眼太 【Adora株式会社】 会社名:Adora株式会社 代表者:代表取締役 冨田 直人 設 立:2023年7月 サービスサイト:https://www.kodomamo.com/about-us Part 2では、 ・「コドマモ」加入後の状況と反響 ・3大キャリア全てとの協業へ拡大 ・「コドマモ for School」— 自治体・学校向けの取り組み などについてお伺いしています。 Part2もぜひご覧ください!
  • INTERVIEW
2026.07.17
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