COLUMN

「起業したくなる国へ」一般社団法人スタートアップ協会・砂川大氏インタビュー|連続起業家が語る、スタートアップが自由に挑戦できるエコシステムの作り方~Part2~

  • INTERVIEW
2026.07.07

全3回にわたるインタビュー Part2(Part1はこちら)では、スタートアップ協会が最も力を入れてきた政策提言の具体的な成果として、「ストックオプション改革」の全貌に迫ります。保管委託要件という知られざる制度の壁が、いかに起業家のリターンを「紙切れ」にしてきたか。そして砂川氏たちがどのようにしてその問題を政府に持ち込み、政策に盛り込むという成果を上げたのか——政策立案の裏側を詳しく語っていただきます。(このインタビューは2026年5月に実施しました。)

◆レピュテーションを積み上げる — 政府に「代表性」を認めてもらうための信用構築

—杉原—
25,000社を代表するとまではいかなくても、代表として政策提言をするためには、それなりの「顔」を見せる必要があると思うんですが、政府に対してどのように説明しているのですか?

—砂川—
レピュテーション(信用・評判)だと思います。少しずつ積み上げていくしかない。活動していく中で「こいつはまともだな」とみんなが評価していくし、透明性を担保しながら、重要な話をするときは理事会を通してガバナンスをしっかり取っています。会社のようにしっかりした仕組みで運営することで信用を作っていく。

今回、私も少し長期政権になってきたので、今年から共同代表になっていただいた方と一緒に、きちんとバトンパスをしていきたいと思っています。

◆ストックオプション改革 —「紙切れ」を「リターン」に変えた政策提言

—杉原—
協会の活動として特に「政策提言関連」がユニークだと思います。具体的に日本のスタートアップ政策に影響を与えた、新制度作りに深く関わったという成果の例をご紹介いただけますか?

—砂川—
ストックオプション関連は非常に頑張って作りました。理由は明確で、スタートアップに優しいエコシステムを作るためには、まず希少性の高いリソースである起業家が、日本で起業したいと思うエコシステムでなければならない。そのためには、起業家たちがチャレンジした分ちゃんとリターンが行くように設計することが非常に大事です。

日本のストックオプションの歴史は「恐る恐る作ってきた」という感じで、アメリカと比べたら全く優遇されていない状況でした。リスクの高い船に乗るということは、それなりのリワードがあって然るべきです。給料も安い、チャレンジしなければならない、ではリターンはどこで得るかといったら、やはりストックオプションですよね。

ところが、設計通りにいかず紙切れになってしまうケースが非常に多かった。例えば、あまり知られていませんでしたが、以前は税制適格ストックオプションに「保管委託要件」という要件があって、それが故に保管委託を受けてくれる金融機関が必要だったんです。でも実態として受けてくれる金融機関がほとんどない。1社だけあったんですが、そこに預けるためには紙で株式発行が必要になり、それが他の全株式の発行も引き起こす。ものすごく大変なオペレーションになるんです。「こんなことやってられない」となりますよね。

こういう実務をやった人間じゃないと問題がわからない。我々が「実は出来ない」ということをちゃんと教えていかなければいけなかったんです。

—杉原—
米国だとIPO前にFacebookなどの株式をファンドに売ってエグジットしている人がいますね。日本ではあまり聞かなくて、みんなIPOを待っているような。

—砂川—
それともう一つ、日本では退職するとストックオプションは原則として消えてしまいますが、外資では退職してもそれまで貢献した分は権利として残る(権利確定済みのストックオプションは維持される)んです。スタートアップに賭けて汗を流した時間が報われないというのは、リスクとリターンが全く合っていない。それを一つひとつ直しに行ったのが今回のストックオプション改革です。

—杉原—
スタートアップで早い段階から関わっているリーダーたちにとって、ストックオプションによるリターンを得られるよう、4年間で変えてきたということですね。岸田内閣でのスタートアップ支援の動きについてはどうでしたか?

—砂川—
岸田内閣の2〜3年目頃に「スタートアップ育成5か年計画」が策定されたんです。スタートアップ協会では、そこに本当に必要な内容を反映すべく働きかけたのです。その結果、140項目あるうちの10項目をドラフトさせていただくことができました。

そういうことを地道にやっていくんです。政策立案担当者もスタートアップのプロではないので、何をやらなければいけないか、何が引っかかっているか、どの条文がいけないか、スタートアップはどう思っているのか、アメリカではどうなっているか。そういったことを全部調べて、我々が持っていって「具体的にこういう風にしてほしい」と説明するわけです。

その後、自民党のスタートアップ議連(議員連盟)に持っていき、骨太の方針の中に反映いただき、骨太の方針が政府の方針として予算配分されるというプロセスをやっています。

—杉原—
今の話を聞いているだけで、協会の仕事はすごいエネルギーがかかりますね。ご自身の会社を経営しながらやっていたんですね。

—砂川—
ありがたいことに、スマートラウンドの中に非常に優秀な人間がたくさんいたので、一時期は協会の仕事の方にかなり時間を振り向けたことがあります。かなりの時間を割いてやっていました。

◆Googleに3日目で「3年で辞める」と宣言した連続起業家の本音

—杉原—
砂川さんは連続起業家ですよね。起業した位置情報サービスの株式会社ロケーションバリューをNTTドコモに売却し、ロックアップ後にGoogleに入社されています。そして早々と退社して2018年5月に起業されています。

—砂川—
実はGoogle入社3日目に中小企業向け営業部門の方々を集めてもらって講演したんですが、その時に「3年で辞める」と宣言しています。では、なぜGoogleに入ったかというと、優秀なエンジニアをスカウトするためだったんです(笑)。Googleの人事担当は苦笑いしていましたが。

最初のスタートアップで最も苦労したのが、優秀なエンジニアを探すことだったんです。ドコモに売却して「次もスタートアップをやろう」と思っていた時に、「Googleに誘われてたな」と思い出して話を聞きに行ったら、PM(プロダクトマネージャー)のポジションだったので、3年だけ行ってみるか、となったんです。

—杉原—
そして2018年5月に株式会社スマートラウンドを起業されたと。読者の方のためにサービスについて簡単にご紹介いただけますか?

—砂川—
smartroundはスタートアップと投資家のための情報共有プラットフォームです。資金調達前と後で目的が異なります。

調達前は、いわゆるCRMです。スタートアップ側からすれば投資家を検索・管理して、交渉状況やデータ共有の状況を把握するツール。投資家側も同じで、スタートアップを発掘し、交渉状況や社内の投資委員会の通過状況を管理するためのツールとなります。

そして資金調達後は「機関決定」のためのツールです。投資契約書・株主間契約書がある場合、取締役会前にリードインベスターから事前承諾を取らなければならないのですが、承諾を取り付け、その後、取締役会にかけて、最後に株主総会にかけて期間決定をするというプロセスを、会社法に基づいてしっかり行うためのツールです。定款、登記簿、株主間契約書などを全てデータとして保持しておき、それを元に法律に準拠して何をしなければならないかを判別していく仕組みです。

最後はデータ共有で、VCは一つのファンドから100〜200社に投資するわけですが、各社の状況や権利関係を把握するのが実は非常に難しい。しかもスタートアップが提出する書類はフォーマットがバラバラだったり間違いがあったりする。それを全部統一して、オンラインプラットフォームでコントロールできるようにしているのがsmartroundです。

◆smartround以前は全部エクセル — 日本VCエコシステムの遅れ

—杉原—
smartroundがなかった時代はどうしていたんですか?

—砂川—
大手含めてみんなエクセルでした。アメリカでVCをやってきた人間からすると「何十年遅れてるんだ」という感じでしょうか。アメリカはもっとテクニカルにやっていたので。

なぜ日本のVCがそこまでやっていなかったかというと、成り立ちの問題があります。アメリカの場合は機関投資家(エンダウメントやペンションファンド)がVCにLP出資するので、VCも激詰めされてデータをちゃんと見ないといけない緊張感があります。日本の場合は事業会社がLPなので「ざっくりお任せ」的なところがある。そういうツールを作らないと要求に応えられないアメリカと、それほどでもない日本、という差がありました。

—杉原—
ニーズはスタートアップにも投資家にもあるわけですね。今はどのくらい普及していますか?

—砂川—
ベンチャーキャピタルファンドで300近くに使っていただいていますし、スタートアップは7,500社になっています。

—杉原—
その数はすごいですね。競合はあるんですか?

—砂川—
米国には20社あります。最大手が「Carta(カルタ)」という会社で、それぐらいアメリカは成熟している。日本はスマートラウンドだけです。ただ、部分的にそれぞれに競合はいます。投資家側の投資管理だけをやっている会社、スタートアップ側のツールだけをやっている会社、ストックオプション管理だけをやっている会社など、パーツごとには競合がいますが、当社は全部を包括的にやっている唯一の会社です。

ネットワーク効果が非常に重要で、VCとスタートアップ両方が使っているから便利なんです。電話と一緒で、相手が電話を持っていなければ電話に意味はない。だから両側をやらないといけないと考えています。。

~Part3へ続く~

☆インタビューアー
D-POPS GROUP アドバイザー 杉原 眼太

 

【プロフィール】砂川 大
一般社団法人スタートアップ協会 代表理事 / 株式会社スマートラウンド 代表取締役CEO
三菱商事を経てハーバードMBA取得後、米国VCでディレクターとして勤務。帰国後に株式会社ロケーションバリューを創業しNTTドコモへ売却。Googleでアンドロイドの統括部長などを努めた後、、2018年に株式会社スマートラウンドを創業。2022年に一般社団法人スタートアップ協会を設立し代表理事に就任。スタートアップ育成5か年計画の策定にも関与するなど、日本のスタートアップ・エコシステム形成に取り組む。

一般社団法人スタートアップ協会:https://www.startup-kyokai.org/
株式会社スマートラウンド:https://jp.smartround.com/corporate

次回・Part3では、
・幅広い人脈の作り方 —「Facebookで友達だけど話したことない人とランチ」という企画
・起業に否定的だった時代から東大生が普通に起業する時代へ
・ベンチャーエコシステムの実現について
などについてお伺いしています。Part3もぜひご覧ください!

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全3回にわたるインタビューの第1回となるPart1では、連続起業家・砂川大氏が2022年に一般社団法人スタートアップ協会を設立するに至った原点を探ります。経産省の有識者会議で感じた「起業家側の代表がいない」という違和感、そしてどのように団体設立へとつながったのか。ミッションである「スタートアップによる、スタートアップのための政策立案」の意味、PTAに例えた運営の難しさなど、スタートアップエコシステムの底上げを狙う活動の全貌に迫ります。(このインタビューは2026年5月に実施しました。) 【プロフィール】砂川 大 一般社団法人スタートアップ協会 代表理事 / 株式会社スマートラウンド 代表取締役CEO 三菱商事を経てハーバードMBA取得後、米国VCでディレクターとして勤務。帰国後に株式会社ロケーションバリューを創業しNTTドコモへ売却。Googleでアンドロイドの統括部長などを努めた後、2018年に株式会社スマートラウンドを創業。2022年に一般社団法人スタートアップ協会を設立し代表理事に就任。スタートアップ育成5か年計画の策定にも関与するなど、日本のスタートアップ・エコシステム形成に取り組む。 一般社団法人スタートアップ協会:https://www.startup-kyokai.org/ 株式会社スマートラウンド:https://jp.smartround.com/corporate ◆ 「起業家側の代表がいない」— 有識者会議での違和感が団体設立のきっかけに —杉原— まず初めに、4年前の2022年2月、この一般社団法人スタートアップ協会を設立された経緯を教えていただけますか? —砂川— 元々、Googleに入る前に「ロケーションバリュー」というスタートアップをやっていたんですよ。また、さらにその前にアメリカで独立系VCに勤務していたので、いろんな立場からスタートアップに関わってきました。 日本に帰ってきてスタートアップを経営していた時に「あれ?」と思うことがすごく多かったんです。2005年に起業したんですが、会社法の制定が2006年なので、その前の商法ベースで会社を作っている時代なんですね。法律がカタカナ表記で非常に読みにくく、しかも現在のような優先株という概念が整備されてなかったんです。だからベンチャーキャピタルからの出資は普通株で受けるしかなく、そのリスクを回避するためにバイバック条項(買い取り条項)が入ったりしていました。 2006年に会社法が制定されてから優先株が本格的に使われるようになったのが2010年頃。私はその過渡期を両側で見てきている、かなりレアな人間なんです。 そういった背景を知っていたので、2019〜20年頃、当時経済産業省の室長をされていた石井さんという方に、「投資契約の内容に詳しそうだから、有識者会議に来てくれないか」と声をかけていただいたんです。 ところが、会議に行ってみると、アカデミアの人たちやベンチャーキャピタルの人たちばかりで、起業家側がほとんどいないんですよ。「スタートアップの契約を議論しているのに、なんでスタートアップじゃない人たちばかりいるの?」と。投資する側と投資を受ける側は利害が相反するんです。例えばM&Aの時に、どちらが多く取るかという話に必ずなりますから、投資契約書というのは非常に微妙な代物なんです。 そのことを石井さんに伝えたんです。そうしたら「誰にアプローチしたらいいかわからなくて」と言われたんです。それが設立のきっかけだったんです。 ただ、そこから時間がかかりました。仲間集めもしなければならないし、自分の仕事もある。一般社団法人の作り方すら手探りでしたし、準備にも時間がかかりました。 —杉原— その時って、もうご自身の会社も起業していましたよね。 —砂川— 2018年に株式会社スマートラウンドを起業して、2019年にサービスをローンチしたところでした。 —杉原— それでも、有識者会議での課題意識を提言したら「じゃあ作ったら?」と言われて、よく決意されましたね。「誰かがやらなきゃ」という気持ちだったんですか? —砂川— まさにそうです。ありがたいことに、最初のスタートアップをエグジットしているので、金銭的にはそれほど困っていない。であれば後進のために何ができるかを考えるのは自然なことでした。その思いでスマートラウンドもやっているんです。smartroundはルールの中で最適にオペレーションするためのサービスですが、ルール自体がよくない場合はどうにもならない。だったらルールも直していこう、という発想です。 ◆ 協会のミッションは「政策提言」— 唯一無二の活動と、その意味 —杉原— 協会のHPの活動内容や各種ワーキンググループの活動、外部連携の活動を拝見すると、本当に幅広い方面で検討会やイベントに参加したり、レポートを発信されたりしていますね。最も注力されている活動はどのあたりになりますか? —砂川— 注力しているのは政策提言で、もうこれは唯一無二です。他のことはどちらかというと付随するような形です。正直、政策提言が全てだと思っています。我々のミッションは「スタートアップの互助により日本を『スタートアップのための世界最高の環境』に進化させる」こと。そして、世界で一番スタートアップに優しいエコシステムを作ることを目指してやっていますので、やはりルールを変えていかなければいけないんです。 —杉原— スタートアップのための政策を作った時に、投資家は賛同してくれるんですか? —砂川— 当然賛同してくれます。理由は明確です。多くのスタートアップが生まれ、成功するスタートアップが出てきて初めて、VCはそのアップサイドを取れるわけです。日本のスタートアップの数が減り、成長軌道に乗れなければ、VCは産業として成立しない。なので、そこはもう明確に利害が一致します。 —杉原— 一方で、意図してのことではないと思いますが、大企業中心の日本社会を変えようというニュアンスもあるんですか? —砂川— 大企業には大企業の役割があると思っています。僕も三菱商事にいましたが、今でも大好きですし、例えばインフラを作るとか、エネルギー施策をやるとか、レアアースを発掘しに行くとか、大企業だからこそできることがありますよね。だからそれは役割分担です。 ただ、イノベーションを起こして種を0から1で作っていくのはスタートアップの方が得意です。例えばAIを大企業が全ての新技術を同時並行で導入し、社内情報を全部放り込めるかといったら、セキュリティ上絶対にできない。スタートアップはできる。機動力が違うんです。 ◆正会員はスタートアップ経営者のみ — 強みと「PTA的な難しさ」 —杉原— 砂川さんご自身もスマートラウンドの創業社長としてスタートアップを経営されていますが、他の理事の方々も皆さんスタートアップの創業社長の方々ですよね。起業家が運営する支援団体の強みと、逆に課題や難しさがあれば教えてください。 —砂川— 弱みも強みも、スタートアップだけが運営しているというところに集約されます。我々は正会員を全員スタートアップ経営者に限定しています。それ以外の方は入れないようになっています。 —杉原— スタートアップの定義はどのようにされているんですか? —砂川— 難しい問いですよね。明確な定義は世の中にはないので、急成長を目指している会社で、それを満たしているかを1社1社審査してやっています。例えば、受託開発をずっとやってきたが新しく自社プロダクトを作って急成長した会社も、スタートアップですし、できたばかりでプロダクトもないけど目指しているところは上場、という会社もスタートアップです。 —杉原— スタートアップだけで率先している団体であるというところが特徴であり強みであり、課題でもある。その課題というのは? —砂川— まさにそこです。それぞれに本業があるので、この活動に割ける時間やパッションには濃淡があります。イメージとしてはPTAみたい、とよく言うんですよ。皆さん経営者ですから上下関係もなくて、意思決定もすごく難しい。事業ドメインも皆さんバラバラで、経営者の皆さんですのでしっかりとした意見を持っていますが、興味の範囲は違うことも多い。 誤解していただきたくないのは、我々は25,000社のスタートアップを代表している団体だとは思っていないんです。そんなことは無理ですし、そもそも全く興味がない人たちを代表する必要もない。ルールメーキングやスタートアップ全体のエコシステムを良くしたいと思って参加いただいている方々の中で、どう意見を調整していくかという話だと思っています。 また、団体の中に自社の競合がいたらどうするんだという話もありますが、経団連だってみんな競合しているわけで、同じ話です。ただ、うちの場合は全体のエコシステムを底上げするということだけに集中しているので、特定の一社だけが利するという話ではなく、全体のためになることをメインに政策提言しています。 —杉原— 同じ業界内の団体であれば同じ方向を向きやすいけれど、スタートアップ協会はそうではないですね。 —砂川— そうですね。業種はそれぞれ違うけど、スタートアップという立場の企業がちゃんと浮かばれるような政策を作ろうという意味ではまとまれる。業種・業態に特化した議論はしていないので、そういうことをやりたい場合は、例えばフィンテック協会やシェアリングエコノミー協会など、関連する他の団体と連名でやるという形を取ります。我々が主体的に動くのではなく、彼らが動いているものに協力する。そうじゃないと物事って動かないんですよね。 ◆「よくある間違い」を繰り返させないために — オフレコ会という仕組み —杉原— 協会の設立趣意書には「連続起業家でもない限りスタートアップ経営者は、『よくある間違い』を知らないまま、先輩経営者と同じミスを繰り返してしまうのです」とあります。こうした同じミスの繰り返しを防ぐための活動にはどのようなものがありますか? —砂川— 本当に多岐にわたりますが、私が一番詳しいところで言えば、資本政策の話ですね。例えば「500万出すから会社の株式50%をください」といった要求に応じてしまうと、次のファイナンスができなくなってしまうんです。でも何も知らなければ「500万もくれるんだから当たり前じゃないですか」と思ってしまいますよね。全く違うんですが。 また先人が得てきた知見がフィードバックされていかないという問題もあります。スタートアップ協会の難しさとして、会員がみな「卒業」していくんですよ。上場したりM&Aされたりすると、もうスタートアップじゃなくなる。緩やかな枠で集まっているだけなので、お互いのために何かしようという意識があまり強くない人も多い。むしろ出し抜いてやろうというくらいのマインドの世界ですから、結束が弱くなりがちです。それを逆回転させていくのが我々の目指しているところです。 そういう観点で、あまり外には出ていませんが、会員内でやっていてとても人気なのが「オフレコ会」です。表の舞台では絶対に言えないようなことが、スタートアップには色々と起こるじゃないですか。致命的なトラブルも。それをみんなに共有することで同じ失敗を避けられるようにしています。また「この投資家はちょっとやばい」という情報を実名で共有するようなことも。 —杉原— これはいいですね。経営者は孤独だとよく言いますから。同じ立場の仲間と情報共有できる場が、この組織に入ることで生まれる。ちなみに会費はあるんですか? —砂川— 毎月1,000円です。 —杉原— めちゃくちゃ安い!驚きました! —砂川— ぶっちゃけ赤字ですよ(笑)。学生の部活かよってくらいのレベルです。 ◆「恩送り」がエコシステムを変える — ニューヨーク変革の事例から —杉原— 本当は誰かに勝つのではなくて、みんなが成功したっていいわけですからね。起業した人たちが1,000人いたら1,000人成功したっていい。でも知見をシェアしようという気がない人が多いと、それぞれ粒で終わってしまうと。 —砂川— すごくいい例があります。かつてIT不毛の地だったニューヨークは、ネット広告会社「DoubleClick」を成功させ、MongoDBなど有力企業を次々と立ち上げたケビン・ライアン氏という一人の起業家の存在によって、シリコンバレーに次ぐ世界第2位のスタートアップ都市へと変貌を遂げました。この一人の偉大な起業家が起点となり、メンターシップやエンジェル投資、優秀な人材の輩出を地域に循環させていく「恩送り」の仕組みがニューヨークをスタートアップ都市へと育てたんです。 何が言いたいかというと、そういう人さえいれば変わっていく可能性がある。日本でもみんなでシリコンバレーを作りましょうと言っている人たちがいっぱいいるわりには、誰も協力し合っていないので何も起こらない。そういう「ドライブをかける」という部分がやはり大事なんじゃないかと思っています。 —杉原— アメリカ側のVCファンドのリーダーって、みんな元々は連続起業家ですもんね。 —砂川— そうですね。日本の場合、金融の会社からそのままVCになってきた人が結構多くて、自分ではスタートアップをしていないよという人が多い。さらに言うと、起業家もずっと辞めずに上場後もずっと社長で居続けるんですよね。批判しているわけではないですが、実態としてそうなっている。アメリカの場合、例えばAOL創業者のスティーブ・ケースもそうでしたが、「教える側」「投資する側」として戻ってくるという世界観がエコシステムを生み出しています。 ~Part2へ続く~ ☆インタビューアー D-POPS GROUP アドバイザー 杉原 眼太   次回・Part2では、 ・レピュテーションを積み上げる——政府に「代表性」を認めてもらうための信用構築 ・ストックオプション改革——「紙切れ」を「リターン」に変えた政策提言 ・Googleに3日目で「3年で辞める」と宣言した連続起業家の本音 などについてお伺いしています。Part2もぜひご覧ください!
  • INTERVIEW
2026.07.02
採用DXで人事を刷新。HRクラウド中島社長と「採用一括かんりくん」の挑戦 ~Part3~
Part 1・Part2では、中島社長の創業の原点から、「採用一括かんりくん」の急成長と、AI活用による採用革新をお届けしました。Part 3では、創業から続いた組織マネジメントの苦悩と乗り越え、CESでのヒューマノイド体験、D-POPS GROUPとの出資関係の背景、そして「1万社導入」を目指す5年後のビジョンをお届けします。 ◆ 創業から5年間の「最大の危機」――組織マネジメントの失敗 -杉原- 13期目に入ったということで、この12年間の中で最大の危機はどんなことでしたか? -中島- 組織マネジメントが大きな壁でした。私はマネジメントをほとんど知らない状態で会社をスタートしています。ありがたいことに「中島さんと働きたいです」と言って入社してくれる方たちはたくさんいたんですが、実際入社してもらった後、マネジメントが全然できていなかったんです。自分は外ばかり見ていて、社員を放置してしまっていたんです。 それが原因で、入っては辞めて、入っては辞めてをずっと繰り返していたというのが最初の5年間で、とても辛かったです。私の責任なんですけどね。 -杉原- それは2億円の債務超過よりも大きな危機だったんですか? -中島- そうですね。お金に関しては社員が少人数でしたので、自分が営業して稼げばなんとかなる状態でした。人の問題のほうが精神的に辛かったですね、同じことを繰り返してしまっていましたから。 大きく変えたのは、採用においてカルチャー採用にシフトしたことと、評価制度を変えて、本人たちがどれだけ頑張ればどれだけ成長していくかを可視化できるようにしたこと。この2つです。2018年入社の方たちからだいぶ落ち着き始めました。僕自身がプレイヤーから経営者へ移行できなかった、やらなかった失敗です。 -杉原- カルチャーフィットや人事評価制度の設計は重要ですよね。オフィスの入り口にあるコアバリュー10か条やクレドは、とても共感できるものばかりなのですが、これらはその頃に作られたんですか? -中島- そうですね。ただ、あの時からだいぶ中身も変わっています。会社の経営テーマというものを毎年作っていて、去年のテーマは「未来プラス思考」、その前は「ワンチーム」というテーマでやっています。そういったテーマがクレドに加わることは多いです。 ◆ 100名突破――企業文化の浸透と次期幹部育成 -杉原- この4月に18人も社員さんが加わって社員が100名を超えたとのこと。この規模になってくると企業文化の浸透やスピードの問題も出てくると思うのですが、どのように取り組まれていますか? -中島- ちょうど100名になるところで、今まで役職を3階層でやってきたところを4階層に変えました。今やっているのは次期幹部育成のため、私が毎月研修をやっています。文化の浸透がしっかりできていないことがスピードの遅さに繋がると思うので、私がどういう考えで経営しているのかを、今15人ぐらいの次期マネージャーたちに研修しています。 -杉原- 社員の皆さんが集まる機会はありますか? -中島- 毎月表彰式があります。月1で小さい表彰式、クォーターに1回大きい表彰式、年間にもっと大きい表彰式という流れなんですが、月1のものはこのオフィスで表彰式をやって、その後みんなで懇親会をしています。 -杉原- それは営業成績だけでなく、いろんな職種が対象なんですよね? -中島- そうですね、誰でも受賞できるチャンスがあります。 ◆ 企業バリュー「Honest・Respect・Challenge」に込めた思い -杉原- ホームページには、企業バリューとして「Honest(誠実・素直)」「Respect(尊敬・尊重)」「Challenge(挑戦)」を掲げています。ディ・ポップスグループが掲げるバリュー「誠実・謙虚・感謝の心で、共に学び、共に成長する」とも極めて類似しています。この類似点への想いや感想を聞かせてください。 -中島- 我々が『明日の仕事が楽しみな世の中を創る』というビジョンを掲げているので、それを一番大事にしている会社でありたいと思うんですね。うちの社員たちも仕事に本気で向き合って楽しんでほしいというのがあって、そのために大事なものが「Honest(誠実・素直)」「Respect(尊敬・尊重)」「Challenge(挑戦)」になります。 仕事が楽しくなっていくためには、やっぱり自己成長がないと楽しくない。成長していくには素直さや謙虚さがないと成長していかないし、チャレンジ・挑戦していかないといけない。 また、会社側からも挑戦する場所を提供することが大事ですし、尊重という意味でいくと、うちにはエンジニア、マーケティング、セールス、カスタマーサクセス、管理部と多岐に渡っていることから横の連携がすごく大事な会社なので、ちゃんと相手を尊重し合うことは大事にしようと。チームでやっているんだという思いを込めて3つのバリューにしています。 -杉原- お話を伺っていて、中島社長は素直さや誠実さにあふれる方だなと感じましたし、社員の皆さんにもそのバリューが伝わっているんだと思います。 -中島- この3年間で新卒で入社した社員が30名ほどいるんですが、その中で辞めたのは1名だけなんです。 -杉原- それは素晴らしいですね!採用基準に特徴はあるんですか? -中島- 採用基準というほどでもないのですが、とにかく素直でいい子であることが一番ですね。どれだけスキルが高くて仕事ができても、素直であることが一番大事です。 ◆ CESで体感したヒューマノイドの未来 -杉原- ところで、年明けにCESに視察されたと伺いました。世界の潮流について感じたことや気になったことを教えてください。 -中島- これはもう中国企業のヒューマノイドですね。ロボットの上にAIが組み合わさると世界が変わるなということをお肌で感じました。犬型のロボットもあって、すごい速度で走るんです。センサーが、AIを搭載しているので、銃を持って戦争で使われるイメージがすごく湧いてきたんです。想像するのも怖いですが、今後こうなるんだなと思いましたね。 人材業界でいくと、広義な意味でヒューマノイドも入ってきます。我々はブルーワーカーのお客様も多いので、今人手不足で採用できないという状況に対して、別の選択肢としてヒューマノイドはどうですかという提案は、事業としてなくはないので、情報を仕入れていこうと思っています。 -杉原- その出張の際に、ディ・ポップスグループの千本会長、後藤社長ともご一緒されたと聞きました。また帰国後は千本会長とゴルフもご一緒されたと伺いました。ベテラン経営者のお二人とのお付き合いを通じてどんな感想を持たれましたか? -中島- 千本さんがおっしゃった、「とにかく社会のためになる、とてつもないでかいことをやる」という言葉が、自分の中ですごく響いています。それと、いつもお会いするたびに「創業して何年?売り上げは?社員数は?」と聞かれて答えると、「全然ダメだね」と言われるんです。そのたびに毎回悔しいなと思うんですが、いつもそうやってエネルギーをいただいています。一方で「えらいじゃん!」とすごく褒めてくださることもあり、そのたびにまた頑張ろうと思えます。 ◆ D-POPS GROUPからの出資を受けた理由 -杉原- 上場を見据えているHRクラウド社さんに対しては、数多くの出資候補企業があったと思うのですが、D-POPS GROUPからの出資を受け入れていただいた理由、また出資を受けてよかったと思われたことはありますか? -中島- たくさんあります。まず、なぜお願いしたかというと、後藤さんが創業前からずっと応援してくださったということ。創業したタイミングで、最初の事業が人材紹介だったんですが、後藤さんから「1人採用するのにいくらでサービス提供してるの?」と聞かれて、「80万円です」と答えたら「じゃあ5人分お願いするよ」と最初に言っていただいたんです。当時お金も全然回らなくて大変だった時期に、400万円いただいたのは経営として本当に助かりました。 そして今でも年1~2回、後藤さんに経営アドバイスをいただくのですが、その時にいただくアドバイスがグッと心に刺さるものばかりで、何度も助けていただいたという恩がたくさんあります。その恩を返したいという気持ちがあって、後藤さんに出資をお願いしたんです。 -杉原- 時々後藤さんから話を聞きますが、恩返し出資だったんですね。 -中島- まさにそのパターンで、恩返しをしたいということでお願いしました。まだ上場できていないので完全な恩返しはできていませんが、HRクラウドがしっかり大きくなって上場できたら恩返しができるなと思っています。 ◆ ベンチャーエコシステムへの共感――「日本を強くしたい」 -杉原- D-POPS GROUPが目指している「ベンチャーエコシステムの実現」に対して、共感する部分はどんなところですか? -中島- 「日本を強くしたい」というのが私の根底にあります。理由は、私の祖父から戦争の話をよく聞いていたのと、祖父の弟が特攻隊に在籍をしていて、その時の日記を読ませていただいたことが今も頭に残っているからです。やっぱり日本を強くしたいんですよ。 日本を強くしたいから、我々も仕事が楽しみな人たちを作っていきたいという考えなんですが、そこにおそらく通ずるものだと思うんです。ベンチャーエコシステムって、結局ベンチャーが日本を変えていくと思うので、それをその土台から支えていらっしゃるベンチャーエコシステムというのは、日本を強くするという思いの中で共感できるものです。 -杉原- 千本会長もよくおっしゃいますが、これまで日本を大きくしてきたのはベンチャーですもんね。ベンチャーを強くすること・応援することが日本を強くすることにつながるというのは本当にそうですね。 ◆ 5年後のビジョン――「1万社」と「ビッグデータ活用」 -杉原- 今後さらに成長を加速させるために準備している新しい機能やサービス、もしくは「5年後に目指す姿」について教えていただけますか? -中島- 5年後には導入社数が1万社を超えたいということと、その1万社があるおかげで出てくるビッグデータを活かしたビジネスを展開していきたいです。1800社の企業様にお使いいただいている採用プラットフォームなので、かなりのデータ量が集まってきていて、それを活かしたAIビジネスをどんどん進化させていくことができると、常にワクワクしています。 そのためにはやっぱり人がまだまだ足りないなと思っていて、人をもっと育てていく、強い組織文化と柔軟性のある企業を作りたいと思っています。 -杉原- その将来のビジョンに向けての一手として、去年の10月にオフィスをここ紀尾井町に移転されましたよね。 -中島- 移転を決めた理由はロイヤリティを高めるのがテーマでした。それは社内外です。お客様とのロイヤリティ、社内メンバーとのロイヤリティ。ここで懇親会やユーザー会をやったり、先週の金曜日もここに寿司職人の方をお呼びして新入社員歓迎会をやりました。 ◆ 読者へのメッセージ -杉原- 最後に、読者の方に一言お願いします。 -中島- 僕の経営人生もそうなんですが、やっぱり1人の力じゃできなかったなと思います。いろんな人の支えがあって今こうして会社を続けてこられています。 まだまだ小さい会社なんですが、いろんな仲間にも恵まれてきたので、いろんな人の力を借りるということが大事だと思います。その繋がりを作るということも。そして、その一端を担っているのがベンチャーエコシステムだと思います。そういうものをうまく活用すると成長しやすいんじゃないかなと思います。 ☆インタビューアー D-POPS GROUP アドバイザー 杉原 眼太 【HRクラウド株式会社】 代表者:代表取締役社長 中島 悠揮 所在地:東京都千代田区紀尾井町3-6 紀尾井町パークビル7階 設 立:2014年4月 コーポレートサイト:https://hr-cloud.co.jp/  
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2026.06.26
採用DXで人事を刷新。HRクラウド中島社長と「採用一括かんりくん」の挑戦 ~Part2~
Part 1では、中島社長の起業家としての原点と、27歳での創業に至るまでのストーリーをお届けしました。Part 2では、採用DXを革新する主力サービス「採用一括かんりくん」の誕生秘話と驚きの機能、コロナ禍を追い風に変えた成長戦略、そしてAI活用の最前線についてお届けします。 ◆ 中堅・中小企業の「採用三重苦」を解決するサービスへ -杉原- 人材業界のプラットフォーマーになることをミッションとして掲げていらっしゃいますが、具体的にはどんな顧客向けにどのような製品を展開されているんでしょうか? -中島- 今の現状でいくと、新卒採用を5名以上されている中堅・中小企業様向けに、採用のAIエージェントサービスを提供しています。 中堅・中小企業様の悩みは、母集団が集まらないということと、辞退されてしまうということと、人手が足りないという三重苦です。 楽天や学情で営業をやっていて、いろんな中堅・中小の企業様の経営者や人事と話をするたびに、この悩みを共通でおっしゃっていました。それをクリティカルに解決するサービスが世の中になかなかない。そこから最初は人材紹介事業からスタートして、今に至るという流れです。 -杉原- 人材紹介に加えて、採用業務をロボットとAIが自動化するサービスも提供していたということですね。 ◆「採用一括かんりくん」――人事の仕事を8割削減する仕組み -杉原- 主力サービスの「採用一括かんりくん」について改めて教えていただけますか? -中島- 人事の方って、ほとんどの会社がExcelかスプレッドシートなどで採用管理されています。マイナビとかリクナビ、オファーボックスやその他人材紹介会社など、いろんな媒体を使って応募者を集めますよね。 集まってきた応募者情報をExcelに転記して、説明会のご案内の有無、参加の有無、アンケート回収、一次選考の案内…ということをスプレッドシートで何千人という管理をする。とにかく手間がかかって大変なんです。 しかも1人1人に個別にメール送ったり電話をしたりとか。面接の評価の後、面接官にどうだったか聞いて、やり取りが発生して。最近は面接がオンラインなので、面接日程が確定したらオンラインのURLも発行して送って…みたいなことを何千人ってやらなきゃいけないんです。 -杉原- 確かにこうやって並べるとかなり大変ですね。それをどう自動化するんですか? -中島- 我々のシステムは、まずクラウド上で管理ができる、かつ自動化が強いシステムです。応募者がまず媒体に集まってくると、自動的にかんりくんに登録されます。登録されたら、応募者に自動的に説明会の案内を送信します。 しかも応募者はその案内がLINE上に届くので、LINEのメッセージをタップするだけで予約ができる。予約をすると説明会の詳細案内が来て、オンラインのURLも自動的に発行される。説明会が終わったら、かんりくんの機能でアンケートを送る。 そのアンケート上で求職者の方が「次回選考に進みたい」ボタンをポチっと押すと、またLINEに次の選考案内が届く。学生はLINEで次の選考の予約が完了して、オンラインのURLも勝手に送信されるという、人事の方が何もしなくても全部回っていく仕組みです。 そして実際、人事の仕事は8割減るんです。実際にインタビューさせていただいた株式会社ボールド様は、年間300名の新卒採用をされているんですが、人事は1人で回しているんですよ。 ☆株式会社ボールド様の導入事例 https://www.career-cloud.asia/lp/interview/bold 300名の採用ということは、1,000人ぐらいの応募者がいるわけじゃないですか。それを人事1人で回すのは、普通ならありえないですよね。弊社も中途採用でかんりくんを使っていて、人事がゼロの状態で年間20名の採用ができています。 でも人事担当者にしかできないことがあります。面接と面談はやはり人がやるべき業務です。それ以外のプロセス管理は「採用一括かんりくん」が勝手に自動的に動きますので、人事担当者は人がやるべき業務に集中してほしいという思いでシステムを作っています。 ◆ なぜ「採用一括かんりくん」というネーミングなのか -杉原- ところで、このサービスのネーミングがいいですよね。「採用一括かんりくん」って、ひらがなで「かんりくん」ですし、CMもライトな印象で。 これにはどんな意図があるのでしょうか? -中島- そうですね。大手であればかっこいい横文字のサービス名にして、PRにコストをかけて、ようやく大衆が名前を覚え始めるんですが、我々はそんなに多額のPRコストをかけられない。 だから1回聞いたら何をやっているサービスかわかる、かつ勝手に広まっていく、というのが大事だなと思ったんです。「採用一括かんりくん」って聞いたら、採用を一括で管理できるシステムなんだなとわかる。人事の方の間で「何使ってるんですか?」という会話になると、「うち、かんりくん使ってます」とすぐ出てくる。それが横文字のサービス名だったら、「あ、なんだっけ…」ってなっちゃいますよね。 -杉原- 言われてみれば、確かにそうですね。これは社長のアイデアなんですか? -中島- 私のサーフィン仲間でよくしていただいている先輩経営者がいまして、よく経営の相談をさせて頂いているんです。このサービスを立ち上げるときに、「サービス名は何がいいですかね」と相談したら、「採用一括かんりくんがいいんじゃないか」とアドバイスをいただいたんです。 社名も、もともとはRootsという社名だったんですが、その方に「何をやっているかわからないから、HRクラウドにしたらどうか」とアドバイスいただきました。 -杉原- 中島社長が素直な性格だからこそ、素晴らしい先輩経営者に囲まれているんですね。ネーミングを取り入れるところもまさにそうですね。 ◆ コロナ禍を転機に――追い風を掴んだ「勝負の判断」 -杉原- 「採用一括かんりくん」の利用アカウント数が1800社を突破されていますが、ここまでの過程に転換期はありましたか? -中島- まずコロナの時が大きかったですね。コロナまでは100社ぐらいまでしか伸びていなかったんです。営業にちゃんと力を入れられておらず、そのころはまだ人材紹介に力を入れていたということもあって、100社ぐらいで止まっていました。 それが2020年のタイミングでコロナが来て、一旦企業の採用が縮小になったんですが、その後やっぱり採用が必要だねということで採用が動き始めた。コロナ禍なのでリモートで採用するという企業さんが増え始めたんですね。そうすると、リモートで採用するにはクラウド上で管理しないといけないよね、採用管理システムはどこだ、ということで「採用一括かんりくん」への問い合わせが急に増え始めました。 そのタイミングで、「これはチャンスだ」ということでタレントを起用してCMを打ったという流れなんですが、裏話もあって。 実は弊社は人材紹介業をやりながら、システムへの投資もずっとしてきたので、2億円の債務超過にまでいっていたんです。かなり危機的な状態になっていたタイミングでコロナが来て、人材紹介業の売り上げも半減してしまって。これはまずいなと。 そのときに国のセーフティーネットで2億円ぐらいの借り入れができた。そこへ「採用一括かんりくん」の問い合わせが増え始めて、「いや、これは勝負に出よう」と、借り入れた2億円を使ってPRを打ちました。私の中で、人生最大の勝負でしたね。 1年で300社ぐらい一気に導入企業が増えて、そこから現在1800社になりました。NewsPicksにも広告を出して、また今回CMを打ったりもして、ここ数ヶ月は昨年対比倍の勢いで導入していただいています。 ◆ AI活用の最前線――ChatGPT・Claudeを活用した採用DX -杉原- 昨年来、続々とAIスカウト、アトラクトAIなどのAI機能がリリースされていますが、これは明確な戦略の一環ですか? -中島- そうですね。人事の業務をなくしていくということと、採用に転換させるということ。先ほどお伝えした三重苦を解決するために必要なことを考えた時に、とにかく多すぎる人事の業務をAIとロボットで自動化させていかなきゃいけない。 あと、辞退されてしまうという課題に対して、本来人事の方がきちんと面接フィードバック文を作って、「ぜひ次回の選考においでください」という愛のある文章を作って送らなきゃいけないんですが、人事の方々が多忙すぎてなかなかできていないんです。それをAIが代替していく。人事の作業を軽減しつつ、集まってきた応募者の志望度を上げていく、『アトラクトする』ことに焦点を当ててサービスを開発してきました。 -杉原- 生成AIが大ブームになる前から考えていたんですか? -中島- RPA(注:Robotic Process Automation)に関しては、かなり他社よりも1歩先に進んでいるシステムになっていましたね。自動化というロボットの機能はすごくありました。ただAIは全然着手できていなかったんです。 技術的には、Claude(アンソロピック)やChatGPTにデータを飛ばして、返ってきたものを「採用一括かんりくん」上で表示するという形です。我々の方でプロンプトを組ませていただいて、人事専門の辞退率を下げる愛のあるメッセージを自動生成するノウハウがあるのがこのサービスの肝ですね。 ☆インタビューアー D-POPS GROUP アドバイザー 杉原 眼太 【HRクラウド株式会社】 代表者:代表取締役社長 中島 悠揮 所在地:東京都千代田区紀尾井町3-6 紀尾井町パークビル7階 設 立:2014年4月 コーポレートサイト:https://hr-cloud.co.jp/   Part 3では、 ・組織づくりの危機と成長 ・CESでの未来体験 ・D-POPS GROUPとの関係 ・ベンチャーエコシステムについて共感すること などについて伺っています。Part3もお楽しみに!
  • INTERVIEW
2026.06.18
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